田舎から引っ越してきた僕と個性的な人達   作:知栄 砂空

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どうも、知栄砂空です。

このタイトルの意味は、今回の話を最後まで読むと分かります。
 
ほんと、そのままの意味です。


29話 “もう”、じゃなくて、“まだ”

ー2-A教室ー

 

楓「ふわぁ~。」ガラガラガラ

 

花音「あ、空見くん、おはよう。」

 

楓「おはよう、松原さん。ん?」

 

橋・音「! ササッ!」

 

楓「……あのー。僕の席で、何やってんの?」

 

橋山「な、何もやってないよ?ねぇ宮村。」

 

音羽「はい!空見さんにはまだ、関係のないことですので!」

 

楓「は、はぁ……。」

 

……もしかして、文化祭関係?

 

まぁ、実行委員の仕事なら、確かに僕には関係ないか。

 

千聖「あなた達。まさかとは思うけど、何か変なこと企んでたりしないでしょうね?」

 

橋山「し、してないよ。やだなー白鷺さん。」

 

音羽「さ、もうすぐHRが始まりますよ。早く席につきましょう。」

 

タタタ……

 

楓・花・千「……」

 

千聖「……怪しいわね。あなた達もそう思うでしょ?花音、楓。」

 

花音「う、うん。」

 

楓「まぁ、はい。」

 

あんな動揺のしかた、怪しさ以外のなにものでもないよな……。

 

千聖「……いいわ。とりあえず、様子を見ましょう。もしものことがあった場合は、私がきちんと言っておくわ。」

 

花音「そのときは、お手柔らかにしてあげてね……。」

 

千聖「そうね、……考えておくわ。じゃ、また後でね。」

 

花音「うん、また後で。」

 

楓「……ていうか、何で僕の席でやってたの?もぅ、ゴミとかちゃんと捨てといてよ。パッパッ」

 

花音「空見くん。」

 

楓「ん?」

 

花音「今日はお昼、いっしょに食べれないよね?」

 

楓「え?……あ、そっか。図書委員の集まりがあるんだ。ごめん松原さん。」

 

花音「そんな、いいよ謝らなくて。みんなも知ってるから。」

 

楓「明日なら、たぶんいっしょに食べれるよ。」

 

花音「“明日以降”じゃなくて?」

 

楓「あ、……うん、そうだね。」

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~昼休み~

 

【花咲川女子学園 図書館】

 

「……みんな集まりましたね。それではこれより、図書委員会を始めます。お願いします。」

 

『『『お願いします。』』』

 

「……今回集まってもらったのは他でもない、文化祭についてです。図書委員会は毎年、各自おすすめの本を選び、その選んだ本の紹介をこの紙に自由に書き、それらを展示するという企画を実施しています。ですが、今回は少し方針を変えていきたいと思っています。」

 

「方針?」

 

「どういうこと?」

 

昼休みが始まってから10分後に全員が集まり、先生が全員集まったのを確認するとすぐに委員会が始まった。

 

今みんなの前に立ってしゃべっているのは、3年生の企画・運営係の人だ。

 

名前は覚えていないが、氷川さんみたいな真面目な人だってことだけは覚えてる。

 

「あの、具体的には、どういうふうに……?」

 

「いくつかのジャンル別に別れて、それぞれその別れたジャンルの本を読んで紹介するんです。」

 

『『『!』』』

 

「それはまた……新しい試みですね。」

 

「いくつのジャンルにするか、それはまだ決めていませんが、それぞれ2人ずつくらいに別れてもらおうかと思ってます。」

 

「なるほどー。」

 

「それは面白そうなアイディアだね。」

 

「それじゃあ私は、恋愛ものにしようかな~。」

 

 

 

 

 

楓「それぞれのジャンル別かー。……じゃあ僕は、ミステリー系かな。白金さんは?」

 

燐子「私も……ミステリー系に……しようかと。」

 

楓「そうなんだ。じゃあ同じだね。」

 

燐子「はい。……同じジャンルなので……やりやすいと……思います。」

 

 

 

 

 

「……皆さん、誰が”自分の好きなジャンル“と言いました?」

 

楓・燐「へ(え)?」

 

「え、違うの?」

 

「自分の好きなジャンルを選んじゃダメなの?」

 

「それを今から説明します。そのために集まってもらったのですから。」

 

楓・燐「……」

 

『『『……』』』

 

「……くじ引きです。」

 

『『『……え?』』』

 

「何のジャンルの本を紹介してもらうかは、くじ引きで決めたいと思います。」

 

「……え?」

 

『『『えええええーーー!!??』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~委員会終了後~

 

『次回の集まりは未定です。が、みなさん、自分が何のジャンルの本を紹介することになるのか、期待と不安を膨らませながら待っていてください。』

 

 

 

 

 

楓「……あんなこと言われたって、不安しか残らないよ……。」

 

委員会は5分もかからず終わった。

 

今僕は、白金さんといっしょに教室へ戻っている途中なのだが、……あの人の言葉が頭から離れん……。

 

燐子「びっくり……しました。とても真面目な人なので、……失礼かもしれませんけど、そういう斬新な企画を思い付くような人ではないと……思ってましたから……。」

 

楓「斬新、ねー。……白金さんはどう思う?あの企画。」

 

燐子「……私は、面白いと思います。」

 

楓「え!?」

 

燐子「あの人が言っていたのをまとめると、……図書委員全員がくじを引き、それぞれがその引いたジャンルに別れる。ジャンルがいくつあるかは分かりませんが、それぞれ2人ずつくらいと言っていたので、……5、6ジャンルくらいでしょうか。そして、それぞれに分かれた2人が、その担当のジャンルの本を読み、紹介を紙に書き、展示する。……紹介を紙に書いて展示するという部分は、従来のやり方と同じですね。」

 

楓「……怖くないの?」 

 

燐子「怖い?」

 

楓「白金さんは、自分の担当するジャンルが何になるか、不安で怖くなったりしないの?」

 

燐子「……不安にはなりますけど、怖くはないです。確かに、ホラーだと怖く感じるかもしれませんが、それは全部本なので。くじで自分の紹介する本のジャンルを決める、私はこの企画は面白いと思いますし、楽しみです。どんな本になるか、どんな本に出会えるのか。今から考えただけでもワクワクします!……はっ!す、すみません、空見さん。私ばっかり、……しゃべって……しまって。」

 

楓「いや、いいよ。……白金さんってさ。」

 

燐子「?」

 

楓「本当に本が好きなんだね。」

 

燐子「……はい!」

 

白金さんの話聞いてたら、僕も考えが変わってきたかも。

 

どんな本になるか、どんな本に出会えるか、か。

 

……確かにそう考えたら、楽しみで、ワクワクするかも。

 

まぁ、不安な気持ちは変わらないけど……。

 

 

 

 

 

彩「……!あ、空見くん!燐子ちゃん!お帰り!」

 

 

 

 

 

楓「? 何で丸山さんが、A組から?」

 

燐子「さ、さぁ……?」

 

 

 

 

 

彩「2人とも早く、こっちこっち!」

 

楓「……丸山さん、どうしてA組に……って、氷川さん!?」

 

紗夜「お疲れ様です。空見さん、白金さん。」

 

……何が、どうなってんの?

 

……ん?キョロキョロ

 

楓「あれ、松原さんがいない……。」

 

千聖「花音なら、実行委員の集まりに行ったわよ。」

 

楓「実行委員の?」

 

千聖「ええ。美菜ちゃんといっしょにね。」

 

楓「あ、そうなんですか。……」

 

 

 

 

 

千聖『花音ね、ずっと楓といっしょにお昼を食べたがってたのよ。オリエンテーションの日くらいから、ずっと言ってたわ。楓といっしょにお昼ごはんを食べたい。今日こそは楓をお昼に誘うんだって。』

 

 

 

 

 

花音『今日はお昼、いっしょに食べれないよね?』

 

 

 

 

 

……文化祭準備期間だから、松原さんと昼ごはん食べる機会、減っちゃうかもな。

 

燐子「あの……それで、皆さんはどうして、ここに……?」

 

千聖「彩ちゃんが、みんなでお昼を食べたいそうよ。」

 

楓・燐「……」

 

彩「ちょっと2人ともー!何そのリアクション!」

 

楓「ご、ごめん。……なんとなく、そんな気がしたからさ。」

 

彩「? どういうこと?」

 

千聖「彩ちゃんは平常運転で安心って意味よ。」

 

彩「え?……そ、それは、どう受け止めればいいんだろう……。」

 

紗夜「普通に受け止めればいいんじゃないですか?それは、白鷺さんなりの誉め言葉なんでしょう?」

 

彩「え、そうなの?千聖ちゃん。」

 

千聖「……ご想像にお任せするわ。」

 

彩「えー!何それー!」

 

燐子「ふふ、今日も賑やかですね。」

 

楓「うん。……賑やかなのは、いいことなんだけど……。」

 

グ~

 

千・彩・紗・燐「!」

 

そろそろ腹へった……。

 

燐子「……空見さんも、平常運転ですね……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 中庭】

 

彩「ん~!気持ちいい~♪」

 

紗夜「晴れていて良かったですね。」

 

燐子「気温も……丁度いいです。」

 

千聖「中庭でお昼……。花音がいないのが、ますます悔やまれるわ。」

 

楓「そう、ですね。」

 

丸山さんの提案で、僕達は中庭でお昼を食べることになった。

 

まだ昼休みなのでそれなりに人もいて、中には鬼ごっこで遊んでいる人達や、ギターを弾いている人もいる。

 

……ん?

 

ギター?

 

 

 

 

 

香澄「……あ!空見先輩!」

 

りみ「え、どこどこ?……あ、ほんとだ。」

 

たえ「おーい!空見先ぱーい!」

 

有咲「ちょ、香澄待てって!空見先輩はいいけど、他の人達が……」

 

沙綾「まぁまぁ落ち着いて、市ヶ谷さん。」

 

 

 

 

 

楓「……」

 

彩「? 空見くん、あの子達と知り合いなの?」

 

楓「いや、まぁ、知り合いというか、なんというか……」

 

燐子「空見さんの人脈……広い……ですね。」

 

紗夜「あの人も、ギターを……」

 

千聖「紗夜ちゃんは、そこなのね……。」

 

 

 

 

 

香澄「空見先ぱーい!こっちこっちー!早く来てくださーい!」

 

有咲「香澄!先輩に迷惑だって!」

 

 

 

 

 

楓「……どうすりゃいいんだろ。」

 

千聖「行ってあげればいいんじゃない?」

 

楓「でも、みんなはそれで……

 

 

 

 

 

香澄「先輩達も来てくださーい!」

 

有咲「だー香澄!!お前ほんとマジ黙れえ!」

 

 

 

 

 

……。」

 

紗夜「……行きましょうか。」

 

楓「……なんか、すみません。」

 

彩「あ、謝らなくていいよ。それに、人数は多いほうがいいし。ね、千聖ちゃん、燐子ちゃん。」

 

燐子「は、はぁ……。」

 

千聖「まぁ、それはそうだけど……。」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「奇遇ですね、空見先輩。ほら、座って座って。」

 

りみ「先輩達も、もしだったらここに座ってください。」

 

千聖「ごめんなさい。……私達なんかが、お邪魔してもよかったの?」

 

香澄「全然大丈夫です!むしろ大歓迎です!ね、さーや!」

 

沙綾「うん。……先輩達、香澄の言う通りですよ。」

 

千聖「……じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわね。……あなた達は、みんな1年生?」

 

沙綾「はい。……あれ?松原先輩は、いっしょじゃないんですか?」

 

千聖「花音は、実行委員の集まりのほうに顔を出してるの。」

 

沙綾「あ、……そう、なんですか。」

 

香澄「ねぇみんな、せっかく先輩達がいるんだし、自己紹介しない?」

 

たえ「賛成!」

 

りみ「じ、自己紹介?……2年生相手だと、ちょっと緊張するかも……」

 

たえ「私、花園たえ。ギターやってます。」

 

有咲「自己紹介の仕方が唐突すぎんだろ!」

 

彩「あはは……、面白い子達だね。」

 

香澄「私、戸山香澄です!ここにいるみんなで、バンド組んでます!ギターボーカルやってます!」

 

え、バンド?

 

しかもここにいるみんなで?

 

……は、初耳だ……。

 

彩「へぇー、あなたもボーカルやってるんだ。」

 

香澄「あなた“も”ってことは、先輩も!?」

 

彩「うん。私、丸山彩。よろしくね、えっと、香澄ちゃん、でいいのかな?」

 

香澄「はい!」

 

彩「じゃあ次は、……千聖ちゃん!」

 

千聖「私?……白鷺千聖よ。私は彩ちゃんと同じバンドで、ベースをやっているわ。」

 

りみ「! べ、ベース……」

 

千聖「あなた、Glitter Greenの牛込ゆりさんの妹さんよね?香澄ちゃん達といっしょにステージに上がって演奏してるとこ、見てたわよ?」

 

りみ「そうだったんですか!?……」

 

千聖「そ、そんなにかしこまらないで?……あなたの演奏、とても良かったわ。迷惑じゃなければ今度、またあなたの演奏を聞いてみたいのだけれど。」

 

りみ「め、迷惑だなんてそんな!……あ、ありがとうございます!えっと、私、牛込りみっていいます!」

 

千聖「ふふ、よろしくね、りみちゃん。」

 

りみ「は、はい!」

 

香澄「りみりん、肩ガッチガチだよ?」

 

りみ「だ、だって、緊張するんだもん……。」

 

有咲「白鷺千聖……ってもしかして、あの天才子役の!?」

 

千聖「天才ではないけれど、まぁ、もと子役の、ね。」

 

沙綾「白鷺先輩、芸能人だったんですか……。」

 

楓「……」  

 

香澄「……すごい。」

 

彩「? 香澄ちゃん?」

 

香澄「すごいです!そんな人が同じ学校にいて、しかもバンドもやってるなんて!私、今度白鷺先輩のバンドのライブ、見てみたいです!」

 

千聖「……」

 

香澄「……あれ?」

 

有咲「香澄、お前のせいで白鷺先輩固まっちゃった…「ふふ。ありがとう、香澄ちゃん。」!」

 

千聖「あなたも、あのときステージにいたわよね?確か、カスタネットを演奏してた……」

 

有咲「! あ、あれは、香澄に無理矢理付き合わされて…「え~?でも楽しかったでしょ~?」べ、別に、楽しくなんか……」

 

楓「……」

 

たえ「市ヶ谷有咲、キーボードやってます。」

 

有咲「っておいこらおたえ!勝手に私の自己紹介するな!」

 

千聖「……香澄ちゃんの言っていたここにいるみんなって、この1年生5人のことでいいのかしら?」

 

沙綾「あ、いえ、私はバンドはやってなくて……」

 

りみ「香澄ちゃんと私と、おたえちゃんと有咲ちゃんの4人です。」

 

千聖「そうなの?」

 

あ、そうなんだ。

 

てっきり、山吹さんもバンドやってるのかと……。

 

 

 

 

 

沙綾『ここに写ってるの、友達のドラムなんです。友達が、私とドラムをいっしょに撮ったら絶対合うって言って、遊びで撮った写真なんです、これ。』

 

 

 

 

 

……今思えば、普通遊びであんな写真撮るかな~?

 

千聖「自己紹介を続けましょうか。それじゃあ次、燐子ちゃん。」

 

燐子「は、はい!えっと……し、白金……燐子です。……キーボード……やってます。」

 

有咲「キーボード……!」

 

燐子「あ、……お、同じ……ですね。」

 

有咲「そ、そうですね……。」

 

沙綾「良かったね、市ヶ谷さん。同じキーボード仲間がいて。」

 

有咲「……ま、まぁな。」

 

香澄「有咲、もしかして照れてる~?」

 

有咲「て、照れてねーよ別に///!」

 

香澄「そのわりには顔赤いよ~?」

 

有咲「あーもううるせーうるせーうるせー///!!」

 

彩「えーっとー、あと自己紹介してないのは……

 

紗・沙「私ですね(私だね)。……え?」

 

あ、……か、かぶっちゃったね。」

 

沙綾「……お、お先にどうぞ。」

 

紗夜「そうですか?では。……氷川紗夜です。花園さん、でしたっけ?その人と同じ、ギターをやっています。」

 

たえ「ギター……氷川先輩も。」

 

紗夜「花園さん。……もう一度、弾いてみてもらえないでしょうか?」

 

たえ「え?」

 

紗夜「さっきの音を、さっき弾いていた花園さんの音を、もう一度聞いてみたいんです。」

 

たえ「……分かりました。」

 

楓・千・彩・燐・香・り・有・沙「……」

 

たえ「……!」

 

『~♪』

 

楓「!」

 

『~♪~~♪♪』

 

紗夜「……」

 

彩「うわぁ~……」

 

香澄「おたえカッコいい!」

 

『~~♪♪~♪~~~♪♪♪』

 

紗夜「これが、花園さんの音……。」

 

『~~~♪♪♪~~♪♪

 

……~♪』

 

『『『……』』』

 

たえ「……ふぅ、こんな感じですかね。」

 

パチパチパチパチ……!!

 

彩「すごいカッコよかったよ!えっと……たえちゃん!」

 

千聖「素晴らしい演奏だったわ。」

 

たえ「ありがとうございます。」

 

紗夜「……」

 

たえ「どうでしたか?氷川さん。」

 

紗夜「……ええ、とても素晴らしく、気持ちのいい演奏でした。……花園さん。もしよろしければ今度、一緒にセッションしてみませんか?」

 

たえ「セッション……。」

 

千聖「すごいじゃないたえちゃん。紗夜ちゃんからセッションのお誘いをもらうなんて。」

 

香澄「おたえ!」

 

たえ「……はい。そのときは、よろしくお願いします。」

 

紗夜「ええ、こちらこそ。」

 

沙綾「……じゃあ、最後は私だね。」

 

香澄「よっ!待ってました!」

 

沙綾「香澄大袈裟。……山吹沙綾です。バンドはやってませんけど、みんなとは仲良くさせてもらってます。」

 

楓「沙綾んちのパン、すごく美味しいんですよ。」

 

千聖「パン?……もしかして、商店街にある山吹ベーカリーの……」

 

沙綾「あ、はい、そうです。」

 

紗夜「知ってるんですか?白鷺さん。」

 

千聖「花音が、たまに買ってきてくれるのよ。この店のパン、美味しいから食べてみてって。」

 

楓「松原さんが……」

 

千聖「バンドの仲間にもたまにお裾分けしてるのだけど、みんな美味しいって言って喜んでくれるのよ。ね、彩ちゃん。」

 

彩「うん!」

 

沙綾「そうなんですか。ありがとうございます!」

 

彩「パンの話してたら私、その店に行ってみたくなっちゃった。ねぇ千聖ちゃん、今度いっしょに行こうよ!」

 

千聖「ええ、いいわよ。時間があったらね。」

 

紗夜「……これでみんな、一通り自己紹介を終えました…「まだです!」え?」

 

たえ「そうです。まだ空見先輩が残ってますよ。」

 

楓「! え、ぼ、僕!?」

 

燐子「あ、確かに。」

 

楓「いや納得しないでよ白金さん!別に僕のことはみんな知ってるんだし、今更自己紹介なんてしたって…「でも、空見くん以外みんなやってるよ?」っ!で、でもそれは……」

 

千聖「いいじゃない楓、やってあげれば。」

 

楓「いや、でも…「私も、空見先輩に自己紹介、してもらいたいです。」え、う、牛込さん……。」

 

有咲「私も、りみに賛成。」

 

香澄「おぉ、珍しく有咲が真っ先に賛成を……。」

 

沙綾「じゃあ、私も。」ニコッ

 

楓「山吹さんまで……。」

 

千聖「どうする?楓。9対1よ。」

 

じゅ、9対1……。

 

あ、厚が強い……。

 

楓「……分かりました。しますよ、自己紹介。」

 

香澄「やったー!」

 

たえ「自己紹介のトリだー。」

 

楓「……そ、空見楓です。えっと、好きなことは、読書と、……ゲームをすること、です。」

 

香澄「はい!好きな食べ物は何ですか!?」

 

楓「え?す、好きな食べ物……。ラーメンとか、焼きそばとか。あとは、ポテトサラダとか、チーズケーキとか、かな。」

 

たえ「好きな本のジャンルは、何ですか?」

 

楓「ジャンル?……ミステリー系、とか……」

 

沙綾「どんなゲームが好きなんですか?」

 

楓「どんなゲーム?……そうだなー。パズルゲームとか……あ、音ゲーも少しやるかな。」

 

りみ「あ、あの!好きなパンの種類とかって、ありますか?」

 

楓「パンの種類か~。これはもう、迷わずジャムパン。朝ごはんは毎日それだよ。」

 

香澄「はい先輩!もう1個いいですか!?えっとー、どんな質問にしようかなー?」

 

有咲「いやそこは考えとけよ!」

 

楓「ま、まだやるの~?」

 

たえ「当然ですよ。空見先輩って、恋人いたことあるんですか?」

 

楓「こ、恋人!?」

 

香澄「あ、思い付いた!今まででキラキラドキドキしたことって何ですか?」

 

有咲「大雑把すぎるだろ!」

 

りみ「す、好きな動物は何ですか?」

 

有沙「あ、えっと……休みに外出するならどこに行きますか?」

 

たえ「今まで何人の人を好きになったことが……」

 

楓「え?あ、えっと、その、あー、うー、……こ、この質問攻めいつ終わるんだよーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

香澄「さようならー!先輩達ー!」

 

有咲「香澄、お前もうちょっといい言い方なかったのか?」

 

たえ「またいっしょにデートしましょうねー、空見先輩。」

 

りみ「お、おたえちゃん!?」

 

沙綾「花園さん、空見先輩をからかわないの。」

 

 

 

 

 

楓「はぁ、疲れた……。」

 

彩「面白い子達だったね、千聖ちゃん。」

 

千聖「まぁね。楓、あなたいつの間にあの子達と仲良くなったのよ。」

 

楓「い、いろいろありまして……。」

 

燐子「そ、そういえば……後半のあの人達の……空見さんへの質問攻め……すごかったですね。」

 

紗夜「そうですね。……あれは、オリエンテーションのときのことを思い出しました。」

 

彩「あー、あれか~。」

 

千聖「沙谷加ちゃんと、沙谷加ちゃんのクラスの子達からのあれね。」

 

楓「あのときの菊地さん達は、……ほんとに、怖かったです。」

 

千聖「あんな大人数で、楓1人を囲んでものね。」

 

楓「あれは、……マジでトラウマ級でしたよ……。」

 

紗夜「確か丸山さんは、今でも菊地さんと連絡を取り合っているんですよね?」

 

彩「うん!この前も、いっしょに喫茶店へケーキ食べに行ったばっかで……あ。」

 

千聖「へぇ、ケーキを?」

 

彩「! ち、違うの千聖ちゃん!あの、ケーキとはいっても、これくらい、ほんのこれくらいで…「彩ちゃん?」ひぃっ!」

 

千聖「あとでお説教ね♪」ニコッ

 

彩「……うぅ、は、はい……。」

 

……し、白鷺さん、怖え……。

 

燐子「……ふふ。」

 

紗夜「どうしたんですか?白金さん。」

 

燐子「さっきの自己紹介、楽しかったなと思って。」

 

紗夜「楽しかった?」

 

燐子「はい。……そのオリエンテーションのときも、自己紹介したの、覚えてますか?」

 

楓「!」

 

彩「覚えてる!覚えてるよ燐子ちゃん!」

 

千聖「彩ちゃんのせいで、一瞬場が静まりかえったあれね。」

 

彩「もぅ~!それは思い出させないでよ~!」

 

あぁ、そういやあのときも自己紹介したっけな。

 

菊地さんの一件のせいで忘れてた……。

 

紗夜「あのときは、松原さんもいて、6人で自己紹介をしたんですよね。」

 

千聖「ええ。あのときはまだ、私達も楓のことをまだあまり知らなくて。」

 

彩「体育館の隅で体育座りしてた空見くんを、私がみんなのところへ連れていってあげたんだよね。」

 

千聖「隅で体育座り?そうだったの?楓。」

 

楓「は、はい……。丸山さんに手を引いて連れてってもらったんですけど、周り全員女子だし、まだ学校に慣れてないのもあって、みんなの視線が痛く、恥ずかしかったのを覚えてます……。」

 

彩「あはは……、あのときはごめんね。私も急いでたから、つい手を……」

 

楓「いや、もう1ヶ月も前のことだし、いいよ。」

 

彩「! ……1ヶ月、か。」

 

紗夜「? どうかしたんですか?白鷺さん。」

 

千聖「……確かに。楓がこの学校に転校してきてから、もう1ヶ月なのよね。」

 

紗・燐「!」

 

ん?

 

何だ?

 

なんか一瞬、空気が変わったような……。

 

彩「……そう考えると、早いね。1ヶ月って。」

 

紗夜「公民館ライブやお花見も、つい最近やったような感覚ですが……」

 

燐子「早い……ですよね。……時が経つのって。」

 

……あのー。

 

ちょ、ちょっと待って?

 

ど、どうしたの?

 

何があったの!?

 

え、何でいきなりこんな空気になってんの!?

 

……うぅ、苦手なんだよなぁこういうの……。

 

なんか気まずくて、今すぐにでもこの場を離れたいくらい、この空気が苦手なんだよな……。

 

千聖「……でもみんな、こうも言えるのよ?」

 

彩・紗・燐「?」

 

え?

 

千聖「もう1ヶ月だけど、……“まだ”1ヶ月、ってね。」

 

紗・燐「!」

 

楓・彩「し、白鷺さん(ち、千聖ちゃん)……。え?」

 

千聖「ふふふ♪被っちゃったわね。」

 

紗夜「……まだ、1ヶ月、ですか。」

 

燐子「確かに……そうですね。」

 

千聖「そうよ。楓が来てから、まだ1ヶ月しか経ってないの。これから何が起こるのか、どんな未来が待っているのか。それは誰にも分からない。」

 

楓「な、なんか、話がすごい大袈裟になってきてません?」

 

千聖「それくらいの心構えで、この先を過ごしていきましょうってことよ。」

 

彩「そのためにまずは、2週間後に迫ってきた文化祭だね!」

 

千聖「ええ。やらなきゃいけないことは山ほどあるわ。特に私達のクラスは、今から準備しても間に合わないかもしれないくらい。」

 

楓「! え、白鷺さん、それ、マジですか……。」

 

千聖「大マジよ。だから、クラス全員で力を合わせて、死ぬ気で準備しなきゃ、楽しい文化祭を迎えることはできない。」

 

楓「……白鷺さんって、意外と文化祭楽しみなんですね。」

 

千聖「! そ、そういうのは今はいいの!とにかく、私が言いたいのは……」

 

彩「みんなで楽しい文化祭にしよう!ってことだね!」

 

千聖「……え、ええ。まぁ、彩ちゃんの言う通りよ。」

 

紗夜「楽しい文化祭、ですか。」

 

燐子「氷川さん。私……やりたいです。……楽しい……文化祭。」

 

紗夜「……ええ、そうね。……やってみますか、死ぬ気で。」

 

彩「私、この文化祭で、最高の思い出を作りたい!空見くんが転校してきてから初めての文化祭、空見くんとも、みんなとも!」

 

千聖「……と、みんなは言っているけど、あなたはどうなの?楓。」

 

楓「! ……ぼ、僕は……」

 

……文化祭なんて、楽しいと思ったことは一度もない。

 

いつも1人だったし、クラスの出し物もほとんど手伝ったことないし、何よりこういう行事が好きじゃないし。

 

……でも。

 

楓「……少しなら、僕も、……頑張って、みようかな。」

 

彩「空見くん!」

 

千聖「よく言ったわ、楓。そのためにもまずは、午後の話し合いよ。できれば今日で、劇のストーリー、登場人物、配役くらいは決めておきたいところだけど。……まぁそれは、宮村さん達次第ね。今日の朝から、ずっとそれについて話し合っていたから。」

 

楓「! やっぱり朝のやつって、劇についての話し合いだったんですか!?」

 

千聖「ええ、おそらくね。」

 

彩「……すごいなぁ千聖ちゃん、もうそんなとこまで考えてるんだ。」

 

紗夜「白鷺さん達に負けていられませんね。私も、やるからには全力で挑みます。」

 

彩「いや、紗夜ちゃん、これ別に勝負じゃないからね?全力で挑む必要ないからね?あ、でも、準備には全力で挑まないとか。」

 

燐子「忙しく……なりそうですね。」

 

白鷺さん、いつからそんな文化祭にやる気に……。

 

いや、もしかしたら白鷺さんって、こういう行事ごとには燃えるタイプだったりして……。

 

……まぁいいや。

 

……頑張るって言っちゃったからには、それなりに頑張らないとな。

 

彩「千聖ちゃんのクラスの劇、楽しみだなぁ。」

 

千聖「楽しみって、まだストーリーも決めてないのよ?」

 

紗夜「模擬店、何を出しましょうか……。」

 

燐子「文化祭ならではの模擬店を出せたら……面白そう……ですよね。」

 

……なんか、この人達となら。

 

……この文化祭を、本当にいい思い出にできそうな気がする。

 

なんとなく、だけど。

 

……そんな気がする。




3期のEDでちさかの(ちさかの……でいいんだよな?あれは……。)とさよひなが見れて嬉しかったです。

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