『さっきから聞いてたら邪魔だの消えろだの、何度も同じ言葉を繰り返してるだけじゃねえか!うるせえんだよ!僕はさっきから違うって言ってんだ!少しは聞く耳持てよ!』
……うるさい。
『逆ギレして何が悪いんだよ!人の言うことに聞く耳も持とうとしないお前が悪いんだろうが!僕は別に自分の役に不満なわけじゃねえし、練習が面倒くさく思ってるわけでもねえのに。何が邪魔、消えろだよ、ふざけんじゃねえ!!』
……うるさい、うるさいうるさい!
『人の話も聞こうとしないお前に、そんなこと言われる筋合いねえんだよ!!あ?あげくのはてには自分が女優だからってドラマの撮影話なんか出しやがって、意味分かんねえんだよ!人に邪魔だの消えろだの言うんだったらな、まずは他人の話に耳を……』
うるさいって言ってんのよ!!
『!?』
……もう耳障りなのよ!!あなたの声は!!
なによ、人の気も知らないで、暴言ばかり並べて、キレるだけキレて。
……もうあなたの声なんて聞きたくない、顔なんて見たくないのに、どうして……。
……どうしてあなたは、そうやってたびたび私の脳裏を横切ってくるの?
ほんと、イライラする……。
……イライラするのよ!!
今はあなたのことなんて、微塵も思い出したくないの。
……お願いだから、私の頭から離れて。
……お願いだから、私の脳裏から出てって!!
「……ちゃん。……千聖ちゃん。」
千聖「はぁ、はぁ、……!え?」
スタッフ一同『……』
千聖「……あ。……いや、その……」
日菜「千聖ちゃん、さっきから変だよ?一人でずっと変な動きして。」
千聖「……ご、ごめんなさい。私としたことが、つい集中力が乱れていたわ。」
いけない。
私ったら、こんなときに何を……。
……しっかり、しっかりするのよ、白鷺千聖。
私が今、やるべきことは何?
千聖「……えっと、次は、今人気急上昇中のペットショップでの収録ですよね?」
スタッフ「え?あ……、まぁ、そうですけど……」
千聖「? どうしたんですか?何か問題でも?」
日菜「千聖ちゃん、そのペットショップに着いてから、もう十分も経ってるんだよ?」
千聖「え?……じゅ、十分?」
スタッフ一同『……』
日菜「うん。今みんな、千聖ちゃん待ちなんだよ。」
千聖「……ご、ごめんなさい!今すぐ準備します!」
スタッフ「い、いえ、急がなくて大丈夫…「そんなわけにはいきませんよ!」……は、はぁ。」
日菜「でも、珍しいねー。千聖ちゃんがボーッとするなんて…「準備できたわ!いくわよ日菜ちゃん!」グイッ! うわっ、千聖ちゃん、急だなぁ。」
白鷺千聖、仕事に切り替えるのよ、そして集中するの。
あの人のことなんか忘れて、今は仕事に、……このロケに、全神経を集中させるのよ。
日菜「千聖ちゃん、心なしか張り切ってるねー。」
千聖「私のせいでみなさんにご迷惑をおかけしてしまったんだもの。てきぱきと動いて、遅れを取り戻さなきゃ。日菜ちゃん、あなたも協力してちょうだい。」
日菜「はーい。」
カメラマン「それではいきまーす。5、4、3、……」
……ブー、ブー、ブー……。
~楓&彩side~
-喫茶店-
楓「……一応、メールは送ってみたけど……」
彩「あとは、千聖ちゃんがそれに気づいてくれるかどうか、だね。」
楓「うん。……」
彩「……空見くん?」
楓「……白鷺さん、ちゃんとメール、見てくれるかな?」
彩「……大丈夫だよ。」
楓「大丈夫って……、その自信、どこから…「私、見たもん。」……見たって、何を?」
彩「昨日と一昨日、事務所でパスパレのレッスンがあったんだけど、……千聖ちゃん、そのレッスンの合間に、ある写真を見てたんだよ。」
楓「ある写真?」
彩「うん。何だと思う?」
楓「……さ、さぁ……。」
彩「……みんなでお花見に行ったときの写真だよ。」
楓「え?」
彩「しかも千聖ちゃん、その写真の空見くんの部分だけを拡大して見てたんだよ。」
楓「僕の部分、だけ?」
彩「だから、……きっと千聖ちゃんも、空見くんと仲直りしたいって思ってるはずだよ。」
楓「……でも、それだけで…「千聖ちゃんを信じよう。」ガシッ! !」
彩「……」
……そんな熱い目で見られたら、……信じるしかないじゃん。
楓「……分かったよ。」
彩「ありがとう、空見くん。」
楓「ところで丸山さん、……どうして白鷺さんがその写真を見たって分かるの?」
彩「え?そりゃあ、千聖ちゃんが写真を見てるのをこっそりと……あ!」
楓「……白鷺さんにバレたら、怒られるね。」
彩「……あ、あはは、大丈夫大丈夫。バレやしないよ、……たぶん。」
楓「……はぁ。」
絶対、いつかバレるな。
~千聖&日菜side~
-ロケ地-
「これで、今日の収録はおしまいになります。お疲れ様でしたー。」
日菜「んー、終わったー!」
千聖「日菜ちゃん、あなたはもっと自分がアイドルであるという自覚を…「もう、そんな固いこと言わないの。ほら、早くバス乗ろバス。」……はぁ。」
ほんと、日菜ちゃんは相変わらずね。
……これで、今日の仕事は終わり。
帰ったら、……まずはお風呂かしらね。
日菜「? 千聖ちゃん、千聖ちゃんの携帯、ランプがついてるよ。」
千聖「え?……あら、ほんと。これはメールの着信ね。」
こんな時間に誰から……。
……花音かしら?
日菜「……ジー」
千聖「ちょっと日菜ちゃん、勝手に人の携帯を覗かない…「あー!空見くんだー!」え?」
……う、嘘……。
何で、楓が……。
……メールの内容は……。
『今から、駅前にある喫茶店に来れますか?
そこで話をしたいです。 楓』
千聖「……」
日菜「シンプルな文章だねー。話?って何だろう?」
千聖「……スッスッスッ」
日菜「! 千聖ちゃん、入力早いねー。……え?」
千聖「……これで送信っと…「ちょっと待って!」何?日菜ちゃん。」
日菜「何?“あなたにする話はない“って。空見くんの話、聞かなくていいの?」
千聖「……いいのよ。それに私、今はあの人のことなんて考えたく…「えー!気になるじゃーん!ねぇ行こーよー。」何で日菜ちゃんも行く前提になってるのよ。嫌よ、わざわざこんな人の話を聞きに行くなんて。」
日菜「千聖ちゃん、その“話”っての、気にならないの?」
千聖「気にならないわ。ほら、分かったら早く離れて。返信のメールを送信しなきゃだから。」
日菜「……それってもしかして、彩ちゃんが言ってた、”学校の出来事”に関係ある話だったりする?」
千聖「! ど、どうして日菜ちゃんが、そのことを…「彩ちゃんが教えてくれたんだよ。」……彩ちゃん、またお説教かしらね。」
日菜「……行こうよ千聖ちゃん。ううん、行くべきだよ。」
千聖「行かないわよ。別に話なんて気にならないし、何より会いたくな…「千聖ちゃん!」ガシッ! ! ひ、日菜ちゃん?」
日菜「絶対に行った方がいい!じゃないと千聖ちゃん、この先一生後悔することになるよ!」
千聖「……そ、そんなこと……。だいたい、どうして日菜ちゃんに口を出されなきゃいけないの?これは私の…「千聖ちゃんだけの問題じゃない!」っ!ちょっと、こんなところで大きな声出したら……」
日菜「千聖ちゃんも空見くんも、あたしの友達だから、あたしの問題でもあるんだよ!」
千聖「……わけが分からないわよ、日菜ちゃ…「だって空見くんは、あたし達パスパレのこれからの活動をもっと大きなものにしてくれる何か、いわば新たな可能性なんでしょ?」……」
スタッフ「? 何です氷川さん?その、新たな可能性って…「スタッフさん達には関係ありません。」えぇ……。白鷺さん、辛辣……。」
千聖「……日菜ちゃん、それはあなたの主観でしかないの。楓はそんな大層な人物じゃ…「あたしだけじゃないよ!彩ちゃんもイヴちゃんも、麻弥ちゃんも思ってることだもん!」……だから何よ。」
日菜「空見くんと千聖ちゃんがこのまま仲直りできなかったら、……その可能性の実現は、なくなっちゃう。……だから…「日菜ちゃんに何が分かるって言うの!?」!?」
千聖「あなたは彩ちゃんから話を聞いただけなんでしょ!?実際にその場にいたわけでもないあなたが、いちいち勝手なこと言わないで!!」
日菜「……」
スタッフ「ちょ、ちょっと白鷺さん、流石にそれ以上は…「あなたは黙っててください!」! す、すみません!」
千聖「はぁ、はぁ、はぁ……」
日菜「……言いたいことはそれだけ?」
千聖「え?」
日菜「彩ちゃんから聞いたよ。空見くんに対して邪魔とか消えろとか、いっぱいひどいことを言ってたって。」
千聖「そ、それは、……楓が、ずっと黙ってたから……」
日菜「ずっと黙ってたから、イライラしたから、そんなことを言ったんだ。」
千聖「……」
日菜「……千聖ちゃんはそうやって、あたし達の仲も悪くするつもりなんだ。」
千聖「! ち、違う!私、そんなつもりじゃ…「でも、させないよ。」……え?」
日菜「あたし、これからもずっと、千聖ちゃんの友達でいたいから、……パスパレの、大事な仲間でいたいから。」
千聖「ひ、日菜、ちゃん。……さ、さっきは、その、……ごめん…「謝るのは、あたしじゃないでしょ?」え?」
日菜「あたしじゃなくて、……空見くん、でしょ?」
千聖「! ……そ、それとこれとは、話が別…「千聖ちゃんさ、昨日と一昨日のパスパレの練習の合間、空見くんの写真見てたでしょ。」! な、何で、そのことを……」
日菜「彩ちゃんといっしょに見てたからね。」
千聖「あ、彩ちゃんと?……はぁ。彩ちゃんには、あとでお説教ね。」
日菜「千聖ちゃん、……表ではひどいこと言ったつもりだけど、心の奥では思ってるんじゃないの?空見くんと仲直りしたい、これからも空見くんと、大切な友達でいたいって。」
千聖「……そんなこと、あるわけ…「じゃあ何であのとき、空見くんの写真を見ながら、ため息なんかついてたの!?」え!」
日菜「気づいてないとでも思った?彩ちゃんは見逃してたとしても、あたしはずっと見てたから分かるんだよ!写真を見てるときの千聖ちゃん、すごく悲しそうな顔しながらため息ついてた!」
千聖「……」
日菜「言い返さないってことは、……図星なんだね。」
千聖「……あなたはいったい、何がしたいの?わざわざ私と楓の問題に踏み込んで。」
日菜「あたしはただ、千聖ちゃんと空見くんに仲直りしてほしいだけだよ。それ以上でも、それ以下でもない。」
千聖「……それ以上でもない、っていうのは、嘘ね?」
日菜「……えへへ♪」
千聖「……はぁ。私の負けよ。分かった、楓と仲直りするわ。」
日菜「ほんと!?」
千聖「ええ。……まさか、あなたに論破される日が来るなんてね。」
日菜「え~、それどういう意味~?」
千聖「さて、そうと決まったら楓に返信しないと。」
日菜「ね~え~!さっきのこと、どういう意味なの~?」
千聖「もう、何でもないわよ。」
日菜「何でもないわけないでしょ~!ねぇ教えてよ~!」
千聖「私はメールを打つので忙しいの。自分で考えなさい。」
日菜「ぶ~!千聖ちゃんのけち~。」
千聖「……」
確かに、日菜ちゃんの言う通りだ。
私は心の奥底では、楓と仲直りしたいと思っているし、この先もずっと友達でいたいとも思っている。
でも、だからと言って、……素直に仲直りする気はない。
これは、私のプライドでもなんでもなくて……。
……仲直りするかしないかは、今の楓の気持ちを聞いて判断する。
……なんてね。
ほんとは、ただ純粋に、今の楓の気持ちを聞きたいという、私のわがままなのだけれど。
千聖「……」スッスッス……ピロン♪
これでOK、と。
~楓&彩side~
楓「……『ピロリン♪』! 返事来た!」
彩「ほんと!?見せて見せて!」
楓「ちょ、ちょっと待って。えーっとー、……これだ!……」
『分かりました。
20分で着くと思うので、そこで待っていてください。
それと、日菜ちゃんもいっしょに連れていきます。
千聖』
楓「え?ひ、日菜さんも?な、何で?」
彩「……あ!そういえば!」
楓「え、何?」
彩「今日千聖ちゃん、日菜ちゃんといっしょにロケがあるんだった。」
楓「ロケ?……いや、そうだとしても、何で日菜さんがいっしょに来ることになるの……?この話に、日菜さんは、……言いにくいけど、あまり関係ないんじゃ……」
彩「うーん……。……あ!」
楓「こ、今度は何?」
彩「そういえば私、日菜ちゃんにこのこと話しちゃったんだ。」
楓「え?……!?こ、このことってまさか、……僕が白鷺さんと言い合いになったってこと!?」
彩「う、うん……。」
楓「う、う、……嘘でしょ~!?」
彩「ほ、ほんとだよ。……勝手に話しちゃったことは、その、ごめん……。」
楓「……ま、マジかよ~……。」
こういうことは、むやみに人に話すものでもないと思うんだけどな~。
……はぁ、まぁいっか。
言っちゃったもんは仕方ないし、たぶん丸山さんも悪気があって言ったわけじゃなさそうだし。
彩「……で、でもさ、空見くん。」
楓「ん?」
彩「こういうのって、たいてい第三者の意見が必要だって言うよね?」
楓「……そんなこと、言う…「薫さんから借りて読んだ本に書いてあったの!」薫……、え、誰?」
彩「だから、勝手に話しちゃったことは謝るけど、そのおかげで第三者の意見が聞けるって考えたら、日菜ちゃんに話したの、悪くはなかったんじゃないかなって思うんだ。」
楓「……つ、つまり、丸山さんは何を…「あれ?でも私が日菜ちゃんに教えたんだから、第三者は日菜ちゃんじゃなくて私……?いやでも、私は一応その現場にいたし、直接的に関わっていないのは日菜ちゃんだからやっぱり日菜ちゃんが第三者……?うぅ、分からなくなってきたよ~。」……」
そもそもこの話に、第三者も第四者もいらないと思うんだけど……。
……それにしても白鷺さん、どうして日菜さんを連れてくるだなんて……。
おそらく日菜さんが“いっしょに行きたい”って言ったんだろうけど、あの人なら“これは私達の問題だから”、みたいなことを言ってついてくるのを阻止しそうなのに……。
うーん……。
……カランコロン
楓&彩「!!」
日菜「……あ!いたー!」
彩「日菜ちゃん!ほんとに来たんだ……。」
日菜「ぶー。なんかそれ、ほんとは来てほしくなかったーみたいな言い草だよー?」
彩「そ、そんなことないよ!?ね、空見くん。」
楓「(え!そこ、僕に振るの……?)う、うん。」
日菜「ふーん……。んじゃまぁ、そういうことにしといてあげようかな。」
楓「は、ははは……。」
???「人を呼び出しておいて無視なんて、随分といいご身分ね、楓。」
! ……。
千聖「……」
楓「し、白鷺、さん……。」
千聖「それにしてもびっくりだわ。まさか、彩ちゃんといっしょだったなんて。」
彩「うっ……。」
ヤベェ……。
白鷺さんが喋り出しただけで、一気に空気が変わった……。
千聖「楓からあのメールが送られてきた時点でおかしいとは思ったけど、……そういうことだったのね。」
楓&彩「!!」
日菜「そういうことって?」
千聖「おおかた、彩ちゃんが楓を呼び出して、私と仲直りするよう説得し、それに応じた楓が仲直りすることを決心して、まずは私に謝るためにあのメールを送ったってところかしら?」
楓&彩「(ほ、ほぼほぼ当たってる……!)」
日菜「すごーい!千聖ちゃん、まるで名探偵だね!」
千聖「少し考えれば分かることよ。」
楓&彩「(いや、少し考えただけじゃ普通そこまで考えつかないよ……。)」
千聖「それで?……これからどうするつもり?」
楓「え?」
千聖「今から直球に謝りでもするの?悪いけど、それなら私はすぐにでも帰らせてもらうわ。そんな簡単に仲直りできるなんて思ってる人に、話すことなんて何もないから。」
楓「べ、別に僕、そんなことは…「じゃあどうするの?」そ、それは……」
千聖「あのね楓、私だって好きでここに来てるわけじゃないの。仕事で疲れて、今すぐにでも帰ってシャワーを浴びたい気分なの。それをあとにしてわざわざ来てあげてるの。」
楓「……」
千聖「……何?突然こんなぐちぐち言われると思ってなかったから言い返せないの?」
楓「……そういう、わけじゃ…「そういうわけだから何も言い返せないんでしょ!?」……」
彩「ち、千聖ちゃん、ここ喫茶店だから…「あのときみたいに、反論してみなさいよ!あのときと同じように、キレて何か言い返してみなさいよ!!」! ……」
日菜「……」
千聖「はぁ、はぁ、……これだけ言って、まだ黙ってるつもり?」
楓「……ん。」
彩&日菜「?」
千聖「何?聞こえないんだけど。喋るときはもっとはっきり…「ごめん、白鷺さん。」! ……それは、何に対してのごめんなの?」
楓「ずっと考えてたんだ。白鷺さんと、どうすれば仲直りできるのか。……普通の方法じゃ仲直りなんかできないだろうってことは分かってた。だから、普通じゃない、別の方法で、白鷺さんと仲直りする方法を、ずっと探してたんだ。だから、白鷺さんがずっと喋ってるとき、何も言い返せなかった。……ほんと、ごめん。」
彩「! ……空見、くん?」
日菜「へぇー……。」
千聖「……」
楓「……ここじゃ店の人に迷惑だよ、白鷺さん。」
千聖「そうね。……じゃあ、場所を変えましょう。」
楓「うん。」
日菜「……どうなるんだろうね、これ。」
彩「う、うん……。」
楓「……」
千聖「……」
-公園-
彩&日菜「……」
千聖「ここなら、誰にも迷惑はかからないわ。」
楓「こんなところに、公園があったんだ……。」
千聖「さっきの喫茶店へは、花音とも来たことがあるの。その帰りによくこの公園でお話してるのよ。」
楓「ふーん……。」
千聖「……」
楓「……」
彩「……ひ、日菜ちゃん!空気が、空気が重すぎるよぉ!」ヒソヒソ
日菜「大丈夫大丈夫。すぐに慣れるって!」
彩「慣れる気がしないよ~!」
千聖「……それじゃあ、聞かせてもらえるかしら?ずっと考えてたっていう、普通じゃない別の方法で、私と仲直りする方法を。」
楓「……」
千聖「……?楓?どうして黙ってるのよ。」
楓「……」
千聖「……まさかあなた、私をからかってるの?だとしたら、……ものすごく腹立だしいわよ。」
楓「……別に、からかってるわけじゃないよ。……ただ。」
千聖「ただ?」
楓「……考え事をしてただけだよ。」
千聖「!」
スタスタスタ
彩&日菜「あ!」
ガッ!
楓「うっ!」
千聖「バカにするのもいい加減にして!!そこまでして私を怒らせたいわけ!?」
彩「千聖ちゃん!ダメだよ!」
千聖「離して彩ちゃん!私はこのバカでグズな男がどうしても許せないのよ!」
日菜「……」
楓「……いい加減にするのはどっちだよ。」
彩&千聖「え?」
日菜「……ふふ。」
楓「仲直りしたいなら、……仲直りしたいって言えよ!!」
千聖「!」
彩「え?……そ、空見くん?」
楓「さっきからベラベラベラベラ心にもないようなこと喋りやがって。バレバレなんだよ、お前が思ってるようなことなんか。」
千聖「……」
……スッ
楓「けほっ!けほっ!……はぁ、はぁ……」
彩「え?……え?ど、どういう、こと?」
日菜「……ぷっ、あはははは!!」
彩「! ひ、日菜ちゃん!?もう、何がどうなってるの~!?」
千聖「……楓。あなた、何言って…「白鷺さんも僕と同じなんでしょ?」……」
楓「仲直りしたい、これからもずっと友達でいたいって、心の底から思ってるんでしょ?」
千聖「……だ、だからそれは…「それは?……何?」……そ、それは……」
楓「……本心、なんでしょ?」
彩「! そ、そうなの?千聖ちゃん。」
千聖「ち、違う!私は…「じゃなきゃ、わざわざこんな公園まで来ないもんね。」! ……」
彩「え、ひ、日菜ちゃん?」
日菜「今すぐにでも帰ってシャワー浴びたいなんて言っておいて、喫茶店からそこそこ距離のあるこの公園まで来るってことは、そもそもすぐ帰る気なんてないってことだよね。」
彩「え、……え?」
千聖「……」
日菜「あんなにいっぱい空見くんを罵倒してたのは、空見くんの本心を聞き出したかったからでしょ?でもそれが、逆に自分の本心を空見くんに暴露される形になってしまった。」
彩「日菜ちゃんは、いったいどっちの味方なの……?」
千聖「……」
楓「……白鷺さん。」
千聖「……ええ、そうよ。」
楓「え?」
千聖「日菜ちゃんの言う通りよ!あなたの今の気持ちが知りたかったから、本心を聞き出したかったから、わざとあなたのことを罵倒し続けた!」
楓「……」
千聖「あなたの言う通り、私も仲直りしたいと思ってた。これからもずっと、あなたとは友達でいたいと思ってた。」
楓「……」
千聖「これが私の本心よ。どう?これで満足?」
楓「……」
彩「……空見、くん?」
日菜「……」
楓「……良かった。」
千聖「え?」
楓「白鷺さんも、そう思っててくれて。……正直、怖かった。」
千聖「……」
楓「白鷺さんの思ってることと言ってることの差が激しかったから、ほんとにそう思ってくれてるのかって、不安で不安で……。」
千聖「ちょっと、……楓?」
楓「やっぱり、……ダメだね。少しは慣れてると思ったけど、全然、……慣れてなかった。」
彩「空見くん……。もしかして、泣いてる?」
楓「……あんなに罵倒を浴びて、正直、すごく辛かったよ。辛かったし、怖くもあった。……それなりに覚悟はしてたけど、……あれほどとは、思わなかったから……。」
千聖「そ、それは……、……確かに、少し言い過ぎたかも、しれないわね。」
楓「ありがとう。……ほんとに、ありがとう。」
千聖「もう、何よ。泣きながら言われても、説得力ない…「こんな僕でも、……友達でいたいと、思ってくれて……。」! ……」
彩&日菜「……」
千聖「……それは、こっちのセリフよ。」
楓「!」
千聖「こんな私を、あなたは友達として受け入れてくれた。芸能人だからって特別扱いせずに、一人の友達として、……白鷺千聖という、一人の女の子として、あなたは接してくれていた。そのことに、ずっと感謝していたの。」
楓「……」
千聖「あなたのような男の人は、あなたが初めてだった。……ねぇ聞いて。あなたはときどき、私を驚かせるほどの行動力を発揮することがあるの。」
楓「僕が……、そんなことを……?」
千聖「ええ。……そしてあなたには、人を引きつける何かがある。……おとなしくて、気弱で、頭が悪くて、お人好しで。そんなあなたにも、一つだけ、魅力的なものがあるとしたら、それは…「千聖ちゃん!ちょっとターイム!」え?」
日菜「空見くん、さっきより泣いてるー。」
楓「うぅ、……うっ、うう……」
千聖「……な、何で?」
彩「嬉し泣きなのか、悲し泣きなのか、分からないね……。」
日菜「あはは。空見くん、彩ちゃんみたーい!」
彩「ちょ、日菜ちゃん!それどういう意味!?」
千聖「確かに、彩ちゃん感が否めないわね。」
彩「千聖ちゃんまで!?もう~!何なの二人して~!」
楓「うっ、うぅ……」
この前楓、自分はメンタルが弱いって言っていたけれど、……確かに、その通りかもしれないわね……。
千聖「……落ち着いた?楓。」
楓「う、うん……。」
日菜「空見くんの泣き顔、面白かったな~。」
楓「///!ひ、日菜さん!その話は忘れてよ///!」
日菜「えぇ~?そんなこと言われても、当分は忘れられないと思うよ~。」
楓「そ、そんな~……。」
彩「まぁまぁ、空見くん。」
楓「何がまぁまぁなの丸山さん……。」
千聖「ふふふ♪」
楓「……ねぇ、白鷺さん。」
千聖「何?楓。」
楓「この前は、……ほんとにごめん。僕のせいで、数少ない文化祭の準備を1時間も無駄にして……。」
千聖「いいのよ。あれは私のせいでもあるのだし。おあいこということにしておきましょう。」
楓「おあいこ……。」
千聖「ええ。どう?」
楓「……うん、分かった。」
彩「! そうじゃん!」
楓&千聖「!」
日菜「何何?どうしたの?」
彩「考えてみたら、文化祭までもう2週間もないじゃん!」
千聖「ええ、そうよ。」
楓「うん。」
彩「何で2人ともそんな冷静なの!?」
千聖「別に冷静なわけではないわよ。」
楓「そんなこと言ったって、今日何ができるってわけじゃないでしょ?」
彩「……まぁ、そう、だけど……」
千聖「でも、明日からは死ぬ気でやらなきゃね、楓。」
楓「うん、そうだね。」
彩「……」
日菜「なんか2人とも、より仲良くなったんじゃない?雨降って地固まるってやつ~?」
千聖「ふふ、そうかもしれないわね。」
彩「……」
なんか千聖ちゃん、空見くんに甘くなった?
花音ちゃんに甘いのは知ってるけど、空見くんにも……?
……気のせい、かな?
グ~
彩&千聖&日菜「?」
楓「あ……///。」
千聖「……楓。あなた、またなの?」
楓「ご、ごめん///。おかしいなぁ、ちゃんと昼ごはん食べたんだけどなぁ。足りなかったのかなー?」
千聖「……楓、行くわよ。」グイッ
楓「え?行くって、どこへ?」
千聖「美味しいものを食べによ。お腹、空いたんでしょ?私が美味しい料理の店、連れてってあげるから。」
楓「美味しい料理の店……。い、いいの?」
千聖「いいのよ。ほら、分かったらさっさと行くわよ。」
楓「……うん!ありがとう、白鷺さん!」
千聖「……いいえ///。」
……気のせいじゃ、ないかも。
やっぱり千聖ちゃん、空見くんに対して甘くなってる……。
日菜「千聖ちゃーん!あたしも行くー!」
千聖「ええ、もちろんよ。……ほら、彩ちゃんも、行くわよ。」
彩「……え?あ、う、うん!タッタッタ」
ま、いっか♪
千聖ちゃんと空見くん、無事仲直りできたみたいだし。
一件落着かな♪
次回からは本格的に文化祭準備編です。
やっとか……って感じですけどすみません。
やっとです……。