ちさかの回です!
花音ちゃんの家へお見舞いに行く千聖さんの話。
どうぞご堪能あれ!
【松原家 花音の部屋】
チュンチュン
花音「……うぅ、うーん……。」
朝だ。
……起きないと。
起きて、学校に行く準備、しないと。ムクリ
ヨロッ
あ、あれ?
……何か、変……。
体が、思うように動かない……あ……。クラッ
ボフンッ!
花音「……」
歩こうとしたら体がよろけ、ベッドに倒れてしまった。
……何で?
どうして?
私、どうして、こんな……。
ガチャ
花音の母「花音?そろそろ起きないと……って、何してるの?」
花音「あ、いや、その、これは……。」
花音の母「?」
花音「……歩こうとしたら、何か、クラッとして……。気づいたら、ベッドの上に倒れちゃってて。」
花音の母「クラッと?そういえば、花音の顔……。ごめん、ちょっといい?」
花音「う、うん。」
花音の母「……ピト。! すごい熱!」
花音「え?」
花音の母「花音、すごい熱よ!?いったいどうして……?昨日、何か思い当たるようなことした?」
花音「お、思い当たるようなこと?……ううん、特に。昨日は、ただひたすら、劇の練習をしてただけで……」
花音の母「劇?……あ、もしかして、文化祭の?」
花音「うん……。」
花音の母「……きっと、原因はそれね。」
花音「? どういう、こと?」
花音の母「頑張りすぎたのよ。ただひたすらってことは、結構長時間練習してたんでしょ?」
花音「うん。昨日だけじゃなくて、一昨日も、その前の日も。」
花音の母「そんなにやったら、疲れも出てくるはずよ。……分かった。学校にはお母さんが電話しておくから、花音はぐっすり休みなさい。」
花音「! だ、大丈夫だよ、これくらい。今日はみんなと、劇の打ち合わせもしなきゃだし…「花音。」! お母、さん?」
花音の母「文化祭が大切なのは分かるけど、お母さんはそれ以上に、花音のことが大切だし、心配なの。だからお願い。今日は無理しないで、ゆっくり休んで。」
花音「……お母、さん……。」
花音の母「分かった?」
花音「……うん、分かった。わがまま言って、ごめんなさい。」
花音の母「いいのよ。……それじゃあ、お母さんは学校に電話してくるから。後で風邪薬と冷えピタ、持ってきてあげるからね。」
花音「うん……。ありがとう、お母さん。」
花音の母「ううん。じゃあ、また後でね、花音。」
ガチャリ
……そっか、風邪か。
……風邪なんてひいたの、いつぶりだろ?
あ、でもそういえば、中等部のとき、一回だけ風邪ひいたことがあるっけ。
そのときは確か、千聖ちゃんがお見舞いに来てくれたんだよね。
あの頃はまだ、千聖ちゃんと会ったばかりで……。
……ふふっ♪
懐かしいなぁ……。
……zzz。
~数時間後~
zzz……。
zzz……。
……パチッ
花音「……うーん……。」ムクリ
……いったいどれくらい寝ていたのだろう?
目が覚めた私は額に手を当てる。
……熱、下がってる……?
……今なら、歩いてもよろけたりしないかも。
そう思った私は、ベッドから降りて机の上の時計を確認する。
……13:30……。
私、6時間以上も寝てたんだ……。
……お腹、空いたな。
……台所行こ。
【松原家 台所】
花音「あー、ん。」
モグモグ……。
うん、美味しい。
今日のお昼ごはんは、トーストとスクランブルエッグ、サラダと牛乳だ。
お昼ごはんというより、朝ごはんに近い。
ちなみにお母さんはこの時間仕事に行っており、今家には私1人だ。
1人で食べるお昼ごはん、……なんだか、不思議な感じだ。
花音「……今頃、みんな何してるのかなぁ?」
やっぱりお昼は、自分を除いた5人で食べているのだろうか。
自分が休んだことを、みんなはどう思っているのだろうか。
自分がいなくても、劇の練習はするのだろうか。
そんな風な疑問が、頭にどんどん浮かんでくる。
その中でも、一番気になったものが……。
……“劇”。
……今なら。
……熱が下がって、朝の時よりは動けるようになった今なら、大丈夫かもしれない。
……できるかもしれない。
花音「……よし。グッ!」
お昼ごはんを食べ終わり、歯磨きをした後、私はすぐに2階の自分の部屋へと向かった。
そして、あるものを手に取り、1人あることを始めた。
……みんなに、遅れをとらないために。
私は今、自分のできることをやろう。
~再び数時間後~
【松原家 リビング】
花音「……はぁ……はぁ……はぁ……」
だ、だいぶ、良い感じに……演技できるようには、なってきた気が、する……。
あとは、……だ、誰か、練習相手を……。
……うっ。クラッ
花音「……えへへ。少し無理、……しすぎちゃった、かな。」
と、とりあえず、一旦休もう……。
水、水を……。フラ~
『ピンポーン』
花音「!」
え!?
も、もしかしてお母さん、もう帰ってきたの!?
いつもはもっと遅い時間のはずなのに……。
……あ、でも、そっか。
私が風邪ひいてるから、早く帰ってきてくれたのか。
……あれ?
でももしお母さんだったら、チャイムなんて鳴らさないよね?
自分の家なんだし、私がいること知ってるはずだから、鍵なんてかけないだろうし……。
じゃあ、いったい誰……
『ピンポーン』
! いけない!待たせちゃってる!
と、とにかく今は、ドアを開けないと……。
……ピタッ
……ふ、不審者とかだったらどうしよう……。
……な、ないか。
大丈夫だよね、きっと。
あ、そうだ、宅配便だ。
うん、きっとそうだよ、宅配便だよ。
……うぅ、で、でも、もしかしたらって場合もあるし……。
ふぇぇ~、頭がぐるぐるするよ~……。
『ピンポーン……ピンポーン』
???「……花音、いないのかしら?」
! そ、その声は……!
タッタッタ…….
……ガチャ!
花音「千聖ちゃん!」
千聖「! か、花音!?良かった~、ちゃんといたのね。」
花音「ご、ごめんね?その、開けるの、遅くなっちゃって……」
千聖「いいのよ。それと、私のほうこそごめんなさい。」
花音「え?」
千聖「ちゃんと花音に伝えておけばよかったわね。今からお見舞いに行くって。」
花音「だ、大丈夫だよそれくらい。」
千聖「ふふ、ありがと。……でも、安心したわ。」
花音「ふぇ?」
千聖「花音のことだから、不審者が来たと思って心配してるかもと思ったけれど、そんなことなかったみたいね。」
花音「! ……」
千聖「……あら?どうしたの花音?……もしかして、図星だった?」
花音「……///」
千聖「……な、なんか、ごめん……
ギュッ!
……え?か、花音?」
花音「……来てくれたのが、千聖ちゃんで良かった///。」グスッ
千聖「……もう、花音ったら。恥ずかしがってるのか泣いているのか、どっちなのよ。」
花音「グスッ……どっちもだよ///……。」
千聖「どっちもって……。でも、あなたらしいわね。」
花音「えへへ……。」
クラッ
千聖「え?」
花音「!」
千聖「ちょっと、かの…「はぁ、はぁ……」!?」
花音「はぁ、はぁ、はぁ……」
千聖「花音!?しっかりして花音!?」
花音「……ち、千聖、ちゃん……。わ、私……」
千聖「大丈夫よ花音!すぐに私が部屋へ連れていくから!」
花音「……あ、ありが、と、う……。」
千聖「花音!?大丈夫!?しっかりして!!しっかりするのよ!!花音ーーー!!!」
【松原家 花音の部屋】
千聖「ほんとにごめんなさい、花音。」
花音「い、いいんだよ。悪いのは、安静にしてなかった私なんだから……。」
千聖「でも私は、あなたがこんなになるまで体調が悪かったのにも気づかず、わざわざ玄関まで来させたり、玄関であんな長時間話を……」
花音「そんな長時間でも、ないと思うけど……。」
千聖「とにかく、こうなってしまった責任は私にもあるの。……本当に、ごめんなさい。」
花音「もう謝らないでよ、千聖ちゃん。千聖ちゃんの気持ちは、十分伝わったよ。」
千聖「……花音……。」
……落ち込んでる千聖ちゃん、可愛い……。
って、こんなときに何考えてるの私!!ブンブン!
千聖「どうしたの?花音。やっぱり、怒って…「ち、違うよ!?違うの!ただ、その、……あ、暑いから、首でもふって暑さを紛らわそうと……」暑い……。! わ、私、替えの冷えピタ持ってくるわ!花音、ちょっと待ってて!」
花音「え!?あ、ひ、冷えピタなら、台所のテーブルの上にあると…「分かったわ!」……」
……あんなに焦ってる千聖ちゃん、久しぶりに見たなぁ。
それだけ、私のことを大切に思ってくれてるってことなのかな?
……ふふっ、なんてね。
……それにしても、千聖ちゃんが来てくれたときは嬉しかったな~。
結構本気で不審者かもって思っちゃってたから、千聖ちゃんの顔を見た途端、嬉しくてほんとに泣いちゃいそうで、涙をこらえるの大変だったんだよね。
まぁ、結局泣いちゃったんだけど。
……ガチャ!
千聖「花音、持ってきたわよ!」
花音「あ、ありがとう千聖ちゃ……って、箱ごと持ってきたの!?」
千聖「ええ。いちいち1枚ずつ持ってくるより、箱ごと持ってきたほうが楽でしょ?」
花音「ま、まぁ、そうだけど……」
千聖「それじゃあ花音、貼るわよ。」
花音「ふぇぇ!?じ、自分で貼るよぉ……。」
千聖「病人はじっとしてなさい。ほら、動かないで。」
花音「うぅ……、は、はい……。」
なんか、恥ずかしい///……。
……でも、やっぱり千聖ちゃんは、優しいなぁ。
千聖「……」ピト
花音「……」
千聖「……熱、下がってきたみたいね。」
花音「ほんと!?良かった~。」
千聖「この調子なら、今日の夜くらいには治りそうね。」
花音「夜か~。じゃあ明日から、また学校に…「それはまだ分からないわ。」え?」
千聖「温度の変わり目が激しい時期だし、明日になってまた熱が上がってしまうということも起こりうるでしょ?だから、まだ安心はできないわ。」
花音「そ、そんな~……。」
千聖「まぁ、あくまで可能性の話だけどね。」
花音「それはそうだけど~……」
千聖「……」
花音「うぅ……。……!そうだ。ねぇ、千聖ちゃん。」
千聖「何?花音。」
花音「今日、学校どうだった?劇の練習、やった?」
千聖「学校の様子は普通だったわよ。劇の練習も、ちゃんとやったわ。」
花音「そうなんだ。……ねぇ。」
千聖「ん?」
花音「空見くん、どうだった?……ちゃんと練習、してた?」
千聖「気になるの?」
花音「う、うん、まぁ……。だって、あんなことがあったんだし……。」
千聖「……大丈夫よ。楓とはもう、仲直りしたから。」
花音「! ほんと!?ガバッ!」
千聖「ちょっと花音、いきなり起き上がらないの。」
花音「あ……。ご、ごめん///……。」
千聖「花音はほんとに、楓のことが好きなのね。」
花音「! ち、違うよ///!好きとかじゃなくて、その、……単純に、空見くんは友達だから……。気になって……。」
千聖「……そうね。楓は友達、私もそうよ。」
花音「え?」
千聖「今回の騒動を経て、私も、楓は大事な友達なんだと、改めて気づくことができたの。」
花音「千聖ちゃん……。うん、そうだね。空見くんは、私達の大事な友達!」
千聖「ええ。」
……そっか。
千聖ちゃんと空見くん、仲直りできたんだ。
……できれば、千聖ちゃんと仲直りする前に、私に一度話してほしかったけど、……仲直りできたなら、いっか。
千聖「……せっかくだから、花音に少し愚痴を聞いてもらおうかしら。」
花音「え?……ぐ、愚痴?」
千聖「ええ。楓についてのね。」
花音「ふぇぇ!?空見くんとは、仲直りしたんじゃないの!?」
千聖「それとこれとは話が別よ。私の話したいのは、楓の演技についての愚痴よ。」
花音「空見くんの、演技?……あ。(察し)」
もしかして……。
空見くんの演技についての愚痴って……。
千聖「楓にはもっと、自分は主人公なんだという自覚を持ってほしいわね。セリフも棒読みだし、演技も下の下の下だし、しゃべりながらするしぐさもまるでなってない。それに加えて……」クドクド
やっぱり、こうなっちゃうよね……。
お花見のときに1回演技についての愚痴は聞いたけど、どうして千聖ちゃん、空見くんの演技に関してこんなに厳しいんだろう……。
やっぱり、千聖ちゃん自信が女優だから、っことかな?
……まぁそれはいいとして、この愚痴、いつまで続くんだろう……。
花音「へぇ、千聖ちゃんが私の代役を……。」
千聖「ええ。楓1人でやっても練習にならないからって、美菜ちゃんに相談して代役を急遽選ぶことにしたの。」
花音「それで、千聖ちゃんが推薦されちゃったと……」
千聖「あら、よく分かったわね。」
花音「話の流れ的に、そうなったのかなぁって。」
千聖「まぁ、誰だってそう思うわよね。そう、当然立候補する人はいなくて、みんなの推薦で私が代役になったの。」
花音「……でも私、代役が千聖ちゃんで良かったなって思うよ。」
千聖「え?」
花音「千聖ちゃんなら、私の代わりをしっかり努めてくれる、……千聖ちゃんになら、私の役を託せるって、そう思う…「花音。」ふぇ?」
千聖「私を信じてくれるのは嬉しいけれど、託すのはダメよ。今回の劇の主役は、楓と私じゃなくて、楓と花音なんだから。」
花音「……う、うん、そうだね。」
千聖「……」
花音「……あ、そ、そうだ千聖ちゃん。私、千聖ちゃんにお願いがあるの。」
千聖「お願い?……いいわよ。何でも言って。」
花音「あのね、私、この休み中、ずっと1人で役の練習をやってたんだ。」
千聖「役の練習を、ずっと1人で?……そりゃあ、疲れも出るわけだわ。」
花音「あはは……。」
千聖「呼んでくれたらいつでも手伝ったのに、どうして1人で練習なんか……。」
花音「だって、……あんなことがあった後だったし、千聖ちゃんには迷惑かなと…「あなたからの頼みが迷惑だなんて思ったこと、一度もないわよ。」……うん、それは、分かってるんだけど……」
千聖「……まぁいいわ。それで、話を戻すけど、お願いって?」
花音「あ、うん。えっと、お願いっていうのはね……」
千聖「もう、僕のことなんてほっといてよ。誰に嫌われようと、◯◯さんの知ったことじゃ…「そんなことない!」!」
花音「そんなこと、ないよ……。私以外にも、◯◯くんが嫌われるのを望んでない人、いっぱいいるんだよ?」
千聖「そんなのありえないよ。だって僕は…「何で?」え?」
花音「何でそんなに、自分のことを責めるの?◯◯くんは悪くない。悪いのは、あの人達なのに……。」
千聖「……」
花音「ねぇ、何か言ってよ!」
千聖「……◯◯さんには、僕の気持ちなんて、何1つ、分からな……
ギュッ!
!?」
花音「……分かるよ。」
千聖「……◯、◯◯さん、いったい、何を…「◯◯くんの気持ちなら、私がよく知ってる。」……」
花音「だって◯◯くんは、昔からそうだったもん。昔から、何1つ変わってない。……昔からの、私の、……」
千聖「……」
花音「……分からないわけがないよ。だって私、……◯◯くんのこと、昔から、ずっとずっと好きだったんだもん。ギュッ」
千聖「……///」
花音「……ふぅ。えっと、どうかな?千聖ちゃん。」
千聖「///」
花音「? 千聖ちゃん?どうしたの?顔赤いよ?」
千聖「……え///?あ、……ご、ごめんなさい///。……わ、私としたことが、つい、ぼうっとしてしまっていたわ……。」
花音「? う、うん……。」
……まだ、心臓がバクバクしてる……。
まさか花音の演技に、こんなに、ドキドキさせられるなんて……。
……/////!!
あぁもう!!
花音の顔まともに見れないじゃない///!!
花音「……私の演技、そんなに、ダメだった?」
千聖「! ち、違うの!違うのよ花音!あなたの演技、とっても良かったわ!まるで、……まるで……。……そう!映画の俳優さんレベルの演技だったわ!」
花音「ふぇぇ!?は、俳優さん!?そ、それはちょっと、大げさじゃ、ないかなぁ?」
千聖「そんなことないわよ!花音、もう少し自分に、自信を持ちなさい?」
花音「……自信、かぁ。」
千聖「そう、自信。」
花音「……分かった。うん、ありがとう、千聖ちゃん。……そうだよね、千聖ちゃんが良かったって言ってくれてるんだもんね。うん、なんか自信、出てきたかも!」
千聖「その調子よ、花音。」
花音「あ、でも、千聖ちゃんの演技も凄かったなぁ。」
千聖「え、私?」
花音「うん。だって、男の子の役なのに、千聖ちゃん、全然違和感なく演じてたんだもん。流石、女優さんだね。」
千聖「……ふふ♪ありがとう、花音。」
花音「えへへ♪」
花音……。
私の言葉に嘘はない。
花音の演技は、冗談抜きで素晴らしいものだった。
もしあの演技を多くの観客の前で演じていれば、その観客全員が、花音の演技に惹き付けられるだろう。
あそこまでの演技力を身に付けるには、かなりの練習が必要だ。
この休み中、この子は朝から晩まで、長い時間ずっと練習をしていたのだろう。
……花音。
そうまでして、あなたを駆り立てるものは何なの?
花音「このシーンのときは、もっと切なく……。手の動きはこう……、いや、こうかなぁ?」
千聖「……花音、あなたは一応病人なのよ。そろそろ寝なさい。」
花音「あ、待って千聖ちゃん。ここのシーンの動きを確認してからでもいい?」
千聖「でも、あなたは…「お願い千聖ちゃん!ここだけだから!」……もぅ、仕方ないわね。」
花音「千聖ちゃん!」
千聖「そのシーンだけだからね?そこの確認が終わったら、速やかに寝るのよ?」
花音「はーい。」
ほんと、私は花音に甘すぎるわね。
個人的には千聖さんが花音ちゃんに甘える感じのちさかのが好きです。