田舎から引っ越してきた僕と個性的な人達   作:知栄 砂空

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お待たせしました!

八月に入ってようやく一本目……。

いつの間にかオリンピックも終わってるし、相変わらずの……って感じですが、今月は夏休みなので、ちょっといつもより頑張りたい気持ちではいます。

あ、今更ですが、フェス現ましろちゃん、無事40連で当てることができました!!

さらに初期フェス限紗夜さんが出たり、水着チュチュと水着パレオが揃ったりで、過去最高のドリフェスでした!!

ましろちゃん!出てくれて本当にありがとう!!!


58話 友希那とクロ

それは、写真を撮ろうと僕とこの人が携帯を取り出したときのことだった……。

 

 

 

 

 

「タイ!!」

 

 

 

 

 

楓・友「!?」

 

クロ「! みゃっ!?」

 

あ、あの人は……?

 

……さっき、コンビニを出るときにぶつかった……。

 

い、いや、てかそれより……タイって……。

 

「やっと……やっと見つけた……。タイ……タイーーー!!!」

 

クロ?「みゃっ!みゃー!!」ダダダダ……‼︎

 

友希那「クロ!?どこへ行くの!?クロ!!」

 

……な、何が、どうなってんだ……?

 

どうしてクロは、逃げ出して……。

 

それに、クロをタイって呼んでるこの人は、いったい……。

 

「……タイ……。」

 

友希那「……あなた、どういうつもり?気持ち良さそうに寝ていたところを邪魔するなんて、非常識だと思わないの?」

 

楓「ちょ、ちょっと!この人は大人ですよ!?」

 

友希那「そんなの関係ないわ。私は今、クロの眠りを阻害したこの人に対して、無性に腹が立っているの。」

 

「……クロ……。」

 

楓「……あ、あの……」

 

「……クロという名前は、あなたがつけたの?」

 

楓「え?あ、いや、つけたのは僕ではなくて、この人です。」

 

友希那「……」

 

楓「そう、あなたが……。良い名前ね。」

 

友希那「……それで私の気が収まるとでも?」

 

「……寝ているところを邪魔しちゃったのは謝るわ。でも……一つ、言わせてほしい。」

 

楓・友「……」

 

「あの子は……あなた達の言うクロは……

 

 

 

 

 

……もともとは、私の飼い猫なの。」

 

楓「!!」

 

友希那「……」

 

「これを見てもらえる?」

 

あ……さっきの、宗教勧誘の……!じゃ、じゃない!?

 

このチラシは……!

 

 

 

 

 

『黒猫を探しています。

 

見かけた方は○○○までご連絡ください。』

 

 

 

 

 

友希那「……」

 

楓「宗教勧誘じゃ、なかったんだ……。」

 

「あの子はタイ。もともと野良猫だったのを、私が保護したの。それから何ヶ月かいっしょに暮らして……この前夫の仕事の都合で引っ越すことが決まったんだけど、その話をした矢先に庭から逃げ出しちゃって、それっきり……」

 

楓「……そうだったんですか……。」

 

友希那「……」

 

「その日からずっと、このチラシを配り歩いていたの。いろんなところに貼らせてもらったりもしてね。」

 

楓「チラシを……。……!じゃあ、さっきコンビニに来てたのは……」

 

「そう、貼らせてほしいってお願いしに行ったの。」

 

楓「……なんか、すみません……。」

 

「いいのいいの。知らなかったんだもの、しょうがないことでしょう?」

 

楓「……」

 

この人はそう言ってるけど、僕は全然納得いってない。

 

しょうがなかった……そんなの言い訳だ。

 

知らなかったとは言えあんな態度をとってしまったことに、ものすごく後ろめたさを感じている。

 

だから僕は……。

 

楓「……あの、僕、クロ……タイを探すの、手伝います。」

 

友希那「!」

 

「ほ、ほんと?」

 

楓「はい。クロ……タイの体格から考えて、まだそんな遠くには行ってないはずですし、手分けして探せばすぐ見つけられると思うんです。」

 

「……そうね。じゃあ、お願いするわ。」

 

楓「は、はい!じゃあ、さっそく…「あと……」?」

 

「クロでいいわよ。そっちのほうが呼び慣れてるんでしょ?」

 

楓「あ……まぁ、はい。」

 

「それじゃあ私は、向こうのほうを探すから、あなた達はそっちのほうをお願い。」

 

楓「分かりました。」

 

友希那「……」

 

タッタッタッタ……

 

楓「……僕達も行きましょう。」

 

友希那「……」

 

楓「あの……行かないんですか?」

 

友希那「……言っておくけど、私はクロを探しに行くだけよ。」

 

楓「え?」

 

友希那「決して、あの人の猫を探すわけじゃないから。」

 

楓「……」

 

友希那「……それじゃ、行くわよ。」

 

楓「は、はぁ……。」

 

それは、同じ意味なんじゃ……。

 

……とにかく、今はクロを見つけるのが先だ。

 

無事見つかるといいけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「クロー。……クロー、どこだー?……クロー……。」

 

友希那「……」

 

……なんて、やみくもに呼んでも出てこないよな猫は。

 

……それより。

 

友希那「……」

 

楓「……あの、さっきからどうしたんですか?」

 

友希那「! く、クロなら、ちゃんと探してるわよ?」

 

楓「違いますよ。あなたの様子、さっきからおかしいですよね?」

 

友希那「っ!……」

 

楓「……やっぱり、あの人の言ってることが…「分かってるのよ!」!」

 

友希那「……もうあの子は、クロじゃないって。あの人の言う、タイなんだって。……あの子は……野良猫じゃ、ないんだって……。」

 

楓「……」

 

友希那「……あの人がクロのことをタイって呼んだときから、薄々感じてはいたわ。だって、タイって呼ばれた瞬間、クロの目が変わったんだもの。あの目は……自分の家族にしか向けない目だった。」

 

この人、そんな前から気づいて……。

 

それに、クロのこと、そこまでよく見てたんだ……。

 

友希那「でも、クロは逃げた。自分の家族が探しに来てくれたにも関わらず。なぜだと思う?……私は、あの人の話を聞いて、すぐ分かったわ。」

 

楓「……帰りたく、なかった?」

 

友希那「ええ、おそらく。どうしてかは分からないけど……たぶんクロには、クロなりの理由があるんだと思う。」

 

楓「クロなりの、理由……」

 

友希那「……それはともかくとして、クロの眠りを阻害したことに腹が立ったのはほんとよ。私だって、気持ちよく寝てたところを大声で起こされたりしたら、本気で怒るもの。あなただってそうでしょ?」

 

楓「ま、まぁ……」

 

友希那「だから私は、あの人を許すつもりはない。……でも、あなたには誤解してほしくなかった。」

 

楓「え?」

 

友希那「クロの飼い主が見つかった、そのことに対して少し悲しいのは事実だけど、怒っているわけじゃないから。いじけてもないし、ましてやそれが嫌だと思ってるわけでもない。……あなただけには、そのような誤解をしてほしくなかった。それだけよ。」

 

楓「……」

 

友希那「……さ、クロを探すわよ。早く見つけて、あの人に返してあげなきゃいけないもの。」

 

楓「……強いですね、あなたは。」

 

友希那「? 何か言ったかしら?」

 

楓「……いえ、何も。……よし。じゃあこっちも手分けしましょう。」

 

友希那「手分け……?」

 

楓「はい。僕はこっちを、あなたはそっちを探してください。30分後に、またここで落ち合いましょう。」

 

友希那「……ええ、分かったわ。」

 

楓「では、僕は向こうに。タッタッタッタ」

 

友希那「……バカね。別に私は強くなんてないわよ。……でも、無理にでも強くしていなくちゃ、この世界で生きていくことはできないもの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「……クロー?どこ行っちゃったのー?……大丈夫よー、怖くないから、出ておいでー?」

 

……あの人がいたら、こんな探し方はできないわね。

 

でも、いなくなったにゃーんちゃんを探すには、この手が一番有効なはずだから。

 

……クロは、絶対に私が、見つけ出す……!

 

友希那「……クロー?美味しいご飯もあるわよー。大丈夫、もうあの人はいないから……怖くないから出ておいでー。クロー。」

 

……ガサガサ

 

! 今、そこの茂みが動いた……?

 

クロ……!?

 

友希那「クロ……?ねぇ、そこにいるのはクロなの?」

 

ガサガサ……ガサガサ……

 

……な、何かいる……。

 

仮にあれがクロではないとしても、何か、他の生物が……。

 

ガサガサ……ガサガサ……

 

友希那「……」

 

ガサガサ……ガサガサ……

 

友希那「……」

 

ガサガサ、ガサガサ……ガサゴソ

 

友希那「!」

 

「にゃー。」

 

ね、猫……!?

 

この近所に、クロ以外の猫がいたなんて……。

 

……か、可愛い///……。

 

……!フンブンブン!

 

なんて言ってる場合じゃないわ。

 

クロを見つけないと……。

 

「にゃー。……ゴロン」

 

友希那「っ!……な、名残惜しいけど……これもクロのため……。にゃーんちゃん、ごめんなさい!タッタッタ」

 

「にゃ?……にゃー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ……はぁ……はぁ……。

 

クロのやつ……どこ行ったんだ……。

 

まだちっちゃいから、そんな遠くには行けないはずなのに……。

 

子猫だからって……なめちゃダメってことか……。

 

「……!あなた!」

 

ん?……あ!

 

楓「あの、そっちはどうでした?」

 

友希那「.ダメだったわ……。にゃーんちゃ……クロ以外の猫はいたけれど。」

 

楓「クロ以外の?」

 

友希那「……あ、あなたはどうだったの?」

 

楓「それが……僕も有力な情報な何も……」

 

友希那「そう……。」

 

楓「……そういえばいつの間にか、またここに戻ってたんですね。」

 

友希那「え?……あぁ、そうね。」

 

ということは、いずれあの人もここに……。

 

友希那「……クロに、会いたい。」

 

楓「え?」

 

友希那「え?……///!な、何でもないわ///!」

 

楓「……そうですよね。」

 

友希那「?」

 

楓「あの人の猫だったから探してるってのもあるんですけど、それとは関係なしに、ただ純粋にクロに会いたいですよね。こんなお別れなんて、嫌ですもん。お別れするならせめて、一目会ってあいさつをしてからお別れしたい。……ですよね。」

 

友希那「……ええ。」

 

……クロ……ほんとにどこに行ったんだ……。

 

他の野良猫に襲われたり、人に捕まったりしてなけりゃいいけど……。

 

保護されてるならそれでいいんだけど……。

 

いや良くないか。

 

保護されててもその家が分からなきゃ意味ないもんな。

 

……でも、たぶん僕以上に、この人のほうがクロのことを…「二人ともー!」!

 

クロの飼い主さん!

 

やっぱり来た!

 

友希那「どうだったの?そっちには、クロは…「いたわ!」!!」

 

楓「! いたんですか!?」

 

「ええ!……でも、怒ってるのか怯えてるのか……いくら声をかけても出てきてくれないのよ。返事もしてくれないし……」

 

楓「出てこない……?」

 

友希那「今すぐ、クロのいる場所に案内して。」

 

「! わ、分かった!……こっちよ!」

 

友希那「……何をぼさっと突っ立ってるの?早く行くわよ。」

 

楓「あ、は、はい!」

 

クロ、どうか無事でいろよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここよ!」

 

ここは……路地裏?

 

こんなところに、クロが……?

 

友希那「この路地裏に入って行ったということ?」

 

「ええ……。」

 

友希那「……行くわよ。」

 

 

 

 

 

うわぁ……ほんとにザ・路地裏って感じだな。

 

……なんか、最初に松原さんと会ったときのことを思い出すな。

 

まぁ路地裏違いだけど。

 

友希那「ここに、ほんとにクロがいるの……?」

 

「さっきはちゃんといたのよ?……もしかしたらもう、移動してるかもしれないけど……」

 

友希那「……」

 

楓「……「みゃー……」!?」

 

友希那「! 今の声!!」

 

やっぱり、ここにクロがいる……!

 

でもどこに……。

 

「タイー!どこー?タイー…「悪いけど、少し静かにしてもらえるかしら?」っ!ご、ごめんなさい……。」

 

友希那「……」

 

楓「……」

 

「……」

 

クロ「……みゃー。」

 

友希那「この声は……こっちよ!」

 

……すげーな、今の一瞬で位置を……。

 

「……」

 

友希那「クロー?いるんでしょ?怖くないから出ておいでー?」

 

クロ「……みゃー。」

 

友希那「! クロ!」

 

楓「いた!」

 

クロ「みゃー……。……!?」

 

「た、タイ…「みゃー!!」あ、タイ!」

 

友希那「あ……。」

 

楓「また、奥に戻っちゃった……。」

 

「ご、ごめんなさい……。」

 

友希那「……どうやらクロは、あなたに怯えてるみたいね。」

 

「!?」

 

楓「! ちょ、ちょっと、この人が気に入らないからって、何もそこまで言わなくても…「そういうつもりで言ったわけじゃないわよ。」じゃあ何で……」

 

友希那「言ったでしょ?クロには何か、帰りたくない、クロなりの理由があるって。」

 

楓「まぁ、言いましたけど……」

 

友希那「その原因はたぶん……あなたよ。」

 

「っ!……」

 

楓「……じゃあ、その根拠は何なんですか?」

 

友希那「それを今から聞くのよ。……あなた、最近心当たりないの?」

 

「心当たり……って言われても……」

 

友希那「何でもいいの。クロが嫌がるようなことをした、とか、最近クロの様子がおかしかった、とか、あとは……環境が変わった、とか。」

 

楓「……」

 

「嫌がるようなこと……様子がおかしい……環境……。……あ……」

 

友希那「何かあるのね?」

 

「……引っ越し……。」

 

楓・友「……え?」

 

「……そうよ、引っ越しよ。明日九州のほうに、夫の仕事の都合で引っ越すことになってるのよ。もしかして、それに何か関係が……」

 

楓「……九州……。」

 

「……!準備!そうよ準備よ!引っ越しの準備をしてたら、突然逃げ出して……。そのまま、家の外に……」

 

楓「……じゃあ、クロが逃げている理由って……」

 

友希那「……」

 

「.……!もしかしてタイは、引っ越すのが嫌で、逃げてたの……?」

 

クロ「……みゃー。」

 

楓「……なるほどな。」

 

友希那「……」

 

「……だ、大丈夫よタイ。引っ越してこことは全く違う町に行くのは怖いけど、すぐに慣れるわ。だから、ね?いっしょに帰りましょう?」

 

クロ「……みゃ。」プイッ

 

「……タイ……。」

 

これは……難しい問題だな……。

 

動物はもちろん、人間も元いた環境から新しい環境に慣れるのには抵抗があるし、時間もかかる。

 

前に僕がそうだったように。

 

ずっと暮らしていたこの地から離れるということは、すごく不安だし、辛くて、悲しいし、寂しい……。

 

きっとクロも、そうなのだろう。

 

僕も同じ気持ちだったから、クロの気持ちはよく分かる、

 

友希那「……スッ」

 

楓「? あの、何を……」

 

友希那「クロ、私の話を聞いてくれる?」

 

クロ「……」

 

友希那「私は……あなたと離れたくない。」

 

楓「……」

 

「……」

 

友希那「二週間前、この公園であなたと出会ったのよね。あのときの衝撃は、忘れもしないわ。」

 

「! 丁度、タイが逃げ出した日……。」

 

二週間前……。

 

そんな前に出会ってたのか、あの二人……。

 

友希那「出会ったときからとても人懐っこくて、あなたから私のほうへ駆け寄ってきてくれたのよね。……嬉しかった……本当に嬉しかったわ。スリッてしてくれたり、撫でさせてくれたり、撫でろと言わんばかりにお腹を見せたり……。ふふっ。……本当に、嬉しかったし、楽しかった。あなたも、そう思ってくれていたら、嬉しいのだけれど……。」

 

クロ「……みゃ、みゃ〜……」

 

楓「! 出てきた!」

 

友希那「……ナデナデ」

 

「……」

 

クロ「……みゃ〜♪」

 

友希那「……クロという名前も、あなたが黒いからという理由で私がつけた、安直な名前だけど……気に入ってくれているのよね。」ナデナデ

 

クロ「みゃ〜〜♪♪」ゴロゴロ

 

す、すごいゴロゴロ言ってる……。

 

友希那「……でもね、……"タイ"。」

 

クロ「みゃっ!?」

 

楓「!?」

 

「!?」

 

友希那「あなたには、きちんと変えるべき場所があるの。野良猫の時間はもう卒業。だから、……私達とも、もう……」

 

クロ「みゃー!!」

 

友希那「!?」

 

クロ「みゃー!みゃっ、みゃみゃーみゃみゃみゃみゃ!!みゃみゃみ…「わがまま言わないの!!」!!」

 

友希那「……あなたはタイなの。クロじゃないのよ……。それにあなたにはちゃんと……いっしょに暮らしている人が……家族がいるの。だから、もう家出なんてやめて、自分の帰るべきところに帰るのよ。ソー……」

 

クロ「! みゃっ!ガリッ!」

 

楓「あ!」

 

「あ!」

 

友希那「痛っ!……ジワ~」

 

楓「あ、あの……手から、血が……」

 

クロ「みゃっ……みゃー……」

 

友希那「……っ!ガシッ!」

 

クロ「みゃっ!?みゃー!みゃー!!」

 

楓「ちょ、ちょっと!今の状態でいきなり抱っこは……」

 

友希那「暴れないの!!」

 

クロ「みゃっ……」

 

友希那「……

 

 

 

 

 

……ギュッ」

 

クロ「!? ……みゃー……」

 

友希那「私だって、本当は寂しいのよ。あなたと別れるなんて嫌だ。もういっそのこと、私があなたを飼ってあげたいくらいよ。……でも、あなたにはあなたの帰るべき場所があるの。家族がいるの。だから……あなたとは、これでお別れよ。」

 

クロ「……みゃー……グッ」

 

友希那「大丈夫よ。私達なんかより、あなたの家族といたほうが、絶対幸せになれるわ。だって、少なくとも何ヶ月かは、いっしょに暮らしていたんだもの。そうでしょ?」

 

「……ええ。」

 

友希那「あなたと過ごしたこのかけがえのない時間は、私の中でとても大きなものとなった。おかげで、猫について話せる、数少ない友人もできた。」

 

楓「! ……」

 

友希那「クロ。……今まで……本当にありがとう。私に、安らぎと、喜びと……儚さと、尊さと……一生忘れることのない、時間と、思い出をくれて。」

 

クロ「……みゃー、みゃーん……!グッ!」

 

友希那「ダメよ。あなたは元いた場所に戻るの。……あなたとは、もう二度と会うことは出来ないかもしれないけど……私達との思い出は、どこへ行っても、覚えている限り、この胸の中に残り続けるわ。だからあなたも……前を向くのよ。」

 

クロ「……みゃーん……パッ」

 

友希那「……良い子ね。……はい。」

 

「……」

 

友希那「受け取らないの?あなたの飼い猫でしょ?」

 

「……でも……この子は、私より…「何言ってるのよ。」?」

 

友希那「タイはちゃんと、前を向こうとしているわ。だからあなたは.、それを正面から受け止めてあげるべきではないの?それが、……一つの命を預かった、飼い主としての務めでしょ?」

 

「! ……飼い主としての、務め……。……っ!」

 

友希那「……スッ」

 

「……おいで、タイ。」

 

タイ「……みゃっ。」

 

「……うん。確かに、タイは受け取ったわ。」

 

友希那「……」

 

楓「……あ、あの…「二人には、本当に迷惑をかけてしまったわね。」! い、いえ、そんな……。あ、く、クロ……じゃなかった。タイと、仲良く。」

 

「ええ、ありがとう。……あなたも、本当にありがとう。」

 

友希那「……別に。当然のことをしただけよ。」

 

「……明日にはもう九州に引っ越さなきゃだから、次会えるときはいつになるか分からないけど……機会があれば、いずれまた会いましょう。そのときは、ちゃんとタイも連れてくるわ。」

 

楓「は、はい!」

 

友希那「……」

 

「……それじゃあ、引っ越しの準備もあるから、私達は行くわね。」

 

楓「……はい。……タイ、またな。ナデナデ」

 

クロ「みゃ〜……。」

 

「……あなたはいいの?タイのこと、撫でなくて。」

 

友希那「……私は別にいいわ。さっき抱っこしたし。」

 

「……分かった。……それじゃあね、二人とも。」

 

楓「はい。……あの……お元気で。」

 

「ええ、あなた達も。……元気でね。」

 

そう言うとその人は、タイを抱えたまま、この路地裏を出て右に曲がっていった。

 

路地裏を抜けた後追いかけようとも思ったが、そうはせず、その場でじっとすることにした。

 

……するとそれから20秒後くらい、猫好きの人は何も言わず、静かにどこかへ歩き始めた。

 

少し心配だったため、僕も後からついて行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……」

 

友希那「……」

 

ここはいつもの公園。

 

僕とこの人がクロと遊んでいた公園だ。

 

楓「……あ、あの……」

 

友希那「……」

 

さっきからこの人は、ベンチに座って黙ったままだ。

 

よほど、クロとの別れが辛かったのだろう。

 

僕も辛かったが、この人と僕とではクロと接していた日数が違う。

 

僕は四日間だけだが、この人は二週間もいっしょにいたのだ。

 

僕の何倍も、この人のほうが辛いはずだ。

 

友希那「……私は……」

 

! ……。

 

友希那「私は……猫が好きよ。」

 

楓「……え?」

 

友希那「今まであなたには、嘘をついていたわ。でも、さっきのような出来事があった以上、もう隠す必要はない。私は……猫が好きなの。」

 

楓「……は、はぁ……?」

 

……あ、そういえば……。

 

 

 

 

 

楓『猫、好きなんですね。』

 

友希那『……別に、好きじゃないわ。』

 

 

 

 

 

……まだその設定、続いてたんだ……。

 

この人が猫が好きなことなんて、もう分かりきってたことなんだけどな……。

 

友希那「それから……それ。」

 

楓「ん?あ、お弁当ですか?」

 

友希那「ええ。……もらっても、いいかしら?」

 

楓「あぁ、はい。全然いいですよ。てか、そのために買ってきたんですから。ゴソゴソ」

 

友希那「……そうだったわね。……ありがとう。」

 

楓「え?」

 

友希那「っ!な、何でもないわ///!」

 

楓「? ……はい、どうぞ。」

 

友希那「ありがとう。……コンビニのお弁当なんて、初めて食べるわ。」

 

楓「え、そうなんですか?」

 

友希那「ええ。こういうのは、あまり食べないほうだから。」

 

楓「あ、そうなんですか……。」

 

友希那「じゃあ……いただきます。」

 

楓「あ、はい。」

 

ちなみに買ってきたパスタは、僕のもこの人のも和風パスタだ。

 

ハンバーグ弁当にしようとも思ったが……僕だけ違うのってのもなんかなーと思い、結局同じのにした。

 

友希那「……!……美味しい。」

 

楓「ほんとですか?良かったー。」

 

どうやら、この人の口に合ったみたいだ。

 

友希那「……」

 

楓「……?どうかしましたか?」

 

友希那「……でも……少し、しょっぱいわね。」

 

楓「え!?しょ、しょっぱい!?」

 

ま、マジ?

 

ちょ、ちょっと食べてみよう。

 

……あ、いただきます。

 

あむ……モグモグモグ……。

 

……別に、しょっぱくはないけどなぁ。

 

楓「うーん……別にしょっぱくはないような……。……!」

 

友希那「……ポロッ」

 

……なるほどな。

 

そういうことか。

 

楓「……コーヒーで、口直ししましょうか。」

 

友希那「……ええ。……そうね。」

 

飲み物でも飲めば、少しは気持ちが落ち着くだろう。

 

……やっぱり、ちょっと寂しいよなー。

 

たった四日間会っただけだけど……なんか、それ以上にいっしょにいた気がするんだよなー。

 

……いつかまた、会えるといい…「ちょっとあなた!」!?

 

楓「え?な、何です…「これブラックコーヒーじゃない!」え……だ、だって、昨日飲んでたから、それでいいかなって……」

 

友希那「昨日私が飲んでたのは、ブラックじゃなくて甘……!……」

 

楓「? 甘?」

 

友希那「……な、何でもないわ。」

 

え……な、何?

 

どういうこと?

 

……あ。

 

……もしかして……そういうこと?

 

楓「……なんか、意外ですね。」

 

友希那「……わ、悪い!?」

 

楓「いや……人間誰しも、苦手はあるものですから。僕にも、あなたにも。」

 

友希那「……スマホ。」

 

楓「へ?」

 

友希那「スマホを出してちょうだい。持っているわよね?」

 

楓「……まぁ、持ってますけど…「それなら出して、今すぐに。」わ、分かりました……。」

 

……あれ?

 

この流れって、まさか……。

 

友希那「……連絡先を、交換しましょう。」

 

ですよねー。

 

……ん?

 

でも、何か久しぶりな気がするなー。

 

楓「えーっとー……これか。」

 

友希那「……」

 

楓「……あのー、どうしました?」

 

友希那「……やり方を、忘れてしまったわ。」

 

楓「……マジですか。」

 

この人、弱点多くない?

 

なんか、心配になってくる……。

 

 

 

 

 

楓「……はい、たぶんこれで出来たと思います。」

 

友希那「あ、ありがとう。……」

 

……"友希那"?

 

……な、何て読むんだ……?

 

と、とも……き……?

 

友希那「……友希那(ゆきな)よ。」

 

楓「へ?」

 

友希那「友希那(ゆきな)。それが私の名前。」

 

楓「は、はぁ……。……あ、あのー……」

 

友希那「何?」

 

楓「名字って、設定してないんですか?」

 

友希那「? そんなの、名前だけで十分でしょ?」

 

楓「……そ、そうですか……。」

 

……ま、いっか。

 

ほんとは名字で呼びたいけど……聞くのも失礼だろうし。

 

友希那「……では、改めてよろしく。……楓。」

 

楓「あ、こ、こちらこそ。……ゆ、友希那さん。」

 

友希那「……ええ。」

 

こうしてまた一人、僕のスマホに連絡先が追加された。

 

……なんか久しぶりだな、こういう感じ。




最近、YouTubeのバンドリ公式がRoseliaやパスパレ、ハロハピなどの曲をフルであげていることに気付きました。

公式神か……??
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