八月に入ってようやく一本目……。
いつの間にかオリンピックも終わってるし、相変わらずの……って感じですが、今月は夏休みなので、ちょっといつもより頑張りたい気持ちではいます。
あ、今更ですが、フェス現ましろちゃん、無事40連で当てることができました!!
さらに初期フェス限紗夜さんが出たり、水着チュチュと水着パレオが揃ったりで、過去最高のドリフェスでした!!
ましろちゃん!出てくれて本当にありがとう!!!
それは、写真を撮ろうと僕とこの人が携帯を取り出したときのことだった……。
「タイ!!」
楓・友「!?」
クロ「! みゃっ!?」
あ、あの人は……?
……さっき、コンビニを出るときにぶつかった……。
い、いや、てかそれより……タイって……。
「やっと……やっと見つけた……。タイ……タイーーー!!!」
クロ?「みゃっ!みゃー!!」ダダダダ……‼︎
友希那「クロ!?どこへ行くの!?クロ!!」
……な、何が、どうなってんだ……?
どうしてクロは、逃げ出して……。
それに、クロをタイって呼んでるこの人は、いったい……。
「……タイ……。」
友希那「……あなた、どういうつもり?気持ち良さそうに寝ていたところを邪魔するなんて、非常識だと思わないの?」
楓「ちょ、ちょっと!この人は大人ですよ!?」
友希那「そんなの関係ないわ。私は今、クロの眠りを阻害したこの人に対して、無性に腹が立っているの。」
「……クロ……。」
楓「……あ、あの……」
「……クロという名前は、あなたがつけたの?」
楓「え?あ、いや、つけたのは僕ではなくて、この人です。」
友希那「……」
楓「そう、あなたが……。良い名前ね。」
友希那「……それで私の気が収まるとでも?」
「……寝ているところを邪魔しちゃったのは謝るわ。でも……一つ、言わせてほしい。」
楓・友「……」
「あの子は……あなた達の言うクロは……
……もともとは、私の飼い猫なの。」
楓「!!」
友希那「……」
「これを見てもらえる?」
あ……さっきの、宗教勧誘の……!じゃ、じゃない!?
このチラシは……!
『黒猫を探しています。
見かけた方は○○○までご連絡ください。』
友希那「……」
楓「宗教勧誘じゃ、なかったんだ……。」
「あの子はタイ。もともと野良猫だったのを、私が保護したの。それから何ヶ月かいっしょに暮らして……この前夫の仕事の都合で引っ越すことが決まったんだけど、その話をした矢先に庭から逃げ出しちゃって、それっきり……」
楓「……そうだったんですか……。」
友希那「……」
「その日からずっと、このチラシを配り歩いていたの。いろんなところに貼らせてもらったりもしてね。」
楓「チラシを……。……!じゃあ、さっきコンビニに来てたのは……」
「そう、貼らせてほしいってお願いしに行ったの。」
楓「……なんか、すみません……。」
「いいのいいの。知らなかったんだもの、しょうがないことでしょう?」
楓「……」
この人はそう言ってるけど、僕は全然納得いってない。
しょうがなかった……そんなの言い訳だ。
知らなかったとは言えあんな態度をとってしまったことに、ものすごく後ろめたさを感じている。
だから僕は……。
楓「……あの、僕、クロ……タイを探すの、手伝います。」
友希那「!」
「ほ、ほんと?」
楓「はい。クロ……タイの体格から考えて、まだそんな遠くには行ってないはずですし、手分けして探せばすぐ見つけられると思うんです。」
「……そうね。じゃあ、お願いするわ。」
楓「は、はい!じゃあ、さっそく…「あと……」?」
「クロでいいわよ。そっちのほうが呼び慣れてるんでしょ?」
楓「あ……まぁ、はい。」
「それじゃあ私は、向こうのほうを探すから、あなた達はそっちのほうをお願い。」
楓「分かりました。」
友希那「……」
タッタッタッタ……
楓「……僕達も行きましょう。」
友希那「……」
楓「あの……行かないんですか?」
友希那「……言っておくけど、私はクロを探しに行くだけよ。」
楓「え?」
友希那「決して、あの人の猫を探すわけじゃないから。」
楓「……」
友希那「……それじゃ、行くわよ。」
楓「は、はぁ……。」
それは、同じ意味なんじゃ……。
……とにかく、今はクロを見つけるのが先だ。
無事見つかるといいけど……。
楓「クロー。……クロー、どこだー?……クロー……。」
友希那「……」
……なんて、やみくもに呼んでも出てこないよな猫は。
……それより。
友希那「……」
楓「……あの、さっきからどうしたんですか?」
友希那「! く、クロなら、ちゃんと探してるわよ?」
楓「違いますよ。あなたの様子、さっきからおかしいですよね?」
友希那「っ!……」
楓「……やっぱり、あの人の言ってることが…「分かってるのよ!」!」
友希那「……もうあの子は、クロじゃないって。あの人の言う、タイなんだって。……あの子は……野良猫じゃ、ないんだって……。」
楓「……」
友希那「……あの人がクロのことをタイって呼んだときから、薄々感じてはいたわ。だって、タイって呼ばれた瞬間、クロの目が変わったんだもの。あの目は……自分の家族にしか向けない目だった。」
この人、そんな前から気づいて……。
それに、クロのこと、そこまでよく見てたんだ……。
友希那「でも、クロは逃げた。自分の家族が探しに来てくれたにも関わらず。なぜだと思う?……私は、あの人の話を聞いて、すぐ分かったわ。」
楓「……帰りたく、なかった?」
友希那「ええ、おそらく。どうしてかは分からないけど……たぶんクロには、クロなりの理由があるんだと思う。」
楓「クロなりの、理由……」
友希那「……それはともかくとして、クロの眠りを阻害したことに腹が立ったのはほんとよ。私だって、気持ちよく寝てたところを大声で起こされたりしたら、本気で怒るもの。あなただってそうでしょ?」
楓「ま、まぁ……」
友希那「だから私は、あの人を許すつもりはない。……でも、あなたには誤解してほしくなかった。」
楓「え?」
友希那「クロの飼い主が見つかった、そのことに対して少し悲しいのは事実だけど、怒っているわけじゃないから。いじけてもないし、ましてやそれが嫌だと思ってるわけでもない。……あなただけには、そのような誤解をしてほしくなかった。それだけよ。」
楓「……」
友希那「……さ、クロを探すわよ。早く見つけて、あの人に返してあげなきゃいけないもの。」
楓「……強いですね、あなたは。」
友希那「? 何か言ったかしら?」
楓「……いえ、何も。……よし。じゃあこっちも手分けしましょう。」
友希那「手分け……?」
楓「はい。僕はこっちを、あなたはそっちを探してください。30分後に、またここで落ち合いましょう。」
友希那「……ええ、分かったわ。」
楓「では、僕は向こうに。タッタッタッタ」
友希那「……バカね。別に私は強くなんてないわよ。……でも、無理にでも強くしていなくちゃ、この世界で生きていくことはできないもの。」
友希那「……クロー?どこ行っちゃったのー?……大丈夫よー、怖くないから、出ておいでー?」
……あの人がいたら、こんな探し方はできないわね。
でも、いなくなったにゃーんちゃんを探すには、この手が一番有効なはずだから。
……クロは、絶対に私が、見つけ出す……!
友希那「……クロー?美味しいご飯もあるわよー。大丈夫、もうあの人はいないから……怖くないから出ておいでー。クロー。」
……ガサガサ
! 今、そこの茂みが動いた……?
クロ……!?
友希那「クロ……?ねぇ、そこにいるのはクロなの?」
ガサガサ……ガサガサ……
……な、何かいる……。
仮にあれがクロではないとしても、何か、他の生物が……。
ガサガサ……ガサガサ……
友希那「……」
ガサガサ……ガサガサ……
友希那「……」
ガサガサ、ガサガサ……ガサゴソ
友希那「!」
「にゃー。」
ね、猫……!?
この近所に、クロ以外の猫がいたなんて……。
……か、可愛い///……。
……!フンブンブン!
なんて言ってる場合じゃないわ。
クロを見つけないと……。
「にゃー。……ゴロン」
友希那「っ!……な、名残惜しいけど……これもクロのため……。にゃーんちゃん、ごめんなさい!タッタッタ」
「にゃ?……にゃー……」
はぁ……はぁ……はぁ……。
クロのやつ……どこ行ったんだ……。
まだちっちゃいから、そんな遠くには行けないはずなのに……。
子猫だからって……なめちゃダメってことか……。
「……!あなた!」
ん?……あ!
楓「あの、そっちはどうでした?」
友希那「.ダメだったわ……。にゃーんちゃ……クロ以外の猫はいたけれど。」
楓「クロ以外の?」
友希那「……あ、あなたはどうだったの?」
楓「それが……僕も有力な情報な何も……」
友希那「そう……。」
楓「……そういえばいつの間にか、またここに戻ってたんですね。」
友希那「え?……あぁ、そうね。」
ということは、いずれあの人もここに……。
友希那「……クロに、会いたい。」
楓「え?」
友希那「え?……///!な、何でもないわ///!」
楓「……そうですよね。」
友希那「?」
楓「あの人の猫だったから探してるってのもあるんですけど、それとは関係なしに、ただ純粋にクロに会いたいですよね。こんなお別れなんて、嫌ですもん。お別れするならせめて、一目会ってあいさつをしてからお別れしたい。……ですよね。」
友希那「……ええ。」
……クロ……ほんとにどこに行ったんだ……。
他の野良猫に襲われたり、人に捕まったりしてなけりゃいいけど……。
保護されてるならそれでいいんだけど……。
いや良くないか。
保護されててもその家が分からなきゃ意味ないもんな。
……でも、たぶん僕以上に、この人のほうがクロのことを…「二人ともー!」!
クロの飼い主さん!
やっぱり来た!
友希那「どうだったの?そっちには、クロは…「いたわ!」!!」
楓「! いたんですか!?」
「ええ!……でも、怒ってるのか怯えてるのか……いくら声をかけても出てきてくれないのよ。返事もしてくれないし……」
楓「出てこない……?」
友希那「今すぐ、クロのいる場所に案内して。」
「! わ、分かった!……こっちよ!」
友希那「……何をぼさっと突っ立ってるの?早く行くわよ。」
楓「あ、は、はい!」
クロ、どうか無事でいろよ……。
「……ここよ!」
ここは……路地裏?
こんなところに、クロが……?
友希那「この路地裏に入って行ったということ?」
「ええ……。」
友希那「……行くわよ。」
うわぁ……ほんとにザ・路地裏って感じだな。
……なんか、最初に松原さんと会ったときのことを思い出すな。
まぁ路地裏違いだけど。
友希那「ここに、ほんとにクロがいるの……?」
「さっきはちゃんといたのよ?……もしかしたらもう、移動してるかもしれないけど……」
友希那「……」
楓「……「みゃー……」!?」
友希那「! 今の声!!」
やっぱり、ここにクロがいる……!
でもどこに……。
「タイー!どこー?タイー…「悪いけど、少し静かにしてもらえるかしら?」っ!ご、ごめんなさい……。」
友希那「……」
楓「……」
「……」
クロ「……みゃー。」
友希那「この声は……こっちよ!」
……すげーな、今の一瞬で位置を……。
「……」
友希那「クロー?いるんでしょ?怖くないから出ておいでー?」
クロ「……みゃー。」
友希那「! クロ!」
楓「いた!」
クロ「みゃー……。……!?」
「た、タイ…「みゃー!!」あ、タイ!」
友希那「あ……。」
楓「また、奥に戻っちゃった……。」
「ご、ごめんなさい……。」
友希那「……どうやらクロは、あなたに怯えてるみたいね。」
「!?」
楓「! ちょ、ちょっと、この人が気に入らないからって、何もそこまで言わなくても…「そういうつもりで言ったわけじゃないわよ。」じゃあ何で……」
友希那「言ったでしょ?クロには何か、帰りたくない、クロなりの理由があるって。」
楓「まぁ、言いましたけど……」
友希那「その原因はたぶん……あなたよ。」
「っ!……」
楓「……じゃあ、その根拠は何なんですか?」
友希那「それを今から聞くのよ。……あなた、最近心当たりないの?」
「心当たり……って言われても……」
友希那「何でもいいの。クロが嫌がるようなことをした、とか、最近クロの様子がおかしかった、とか、あとは……環境が変わった、とか。」
楓「……」
「嫌がるようなこと……様子がおかしい……環境……。……あ……」
友希那「何かあるのね?」
「……引っ越し……。」
楓・友「……え?」
「……そうよ、引っ越しよ。明日九州のほうに、夫の仕事の都合で引っ越すことになってるのよ。もしかして、それに何か関係が……」
楓「……九州……。」
「……!準備!そうよ準備よ!引っ越しの準備をしてたら、突然逃げ出して……。そのまま、家の外に……」
楓「……じゃあ、クロが逃げている理由って……」
友希那「……」
「.……!もしかしてタイは、引っ越すのが嫌で、逃げてたの……?」
クロ「……みゃー。」
楓「……なるほどな。」
友希那「……」
「……だ、大丈夫よタイ。引っ越してこことは全く違う町に行くのは怖いけど、すぐに慣れるわ。だから、ね?いっしょに帰りましょう?」
クロ「……みゃ。」プイッ
「……タイ……。」
これは……難しい問題だな……。
動物はもちろん、人間も元いた環境から新しい環境に慣れるのには抵抗があるし、時間もかかる。
前に僕がそうだったように。
ずっと暮らしていたこの地から離れるということは、すごく不安だし、辛くて、悲しいし、寂しい……。
きっとクロも、そうなのだろう。
僕も同じ気持ちだったから、クロの気持ちはよく分かる、
友希那「……スッ」
楓「? あの、何を……」
友希那「クロ、私の話を聞いてくれる?」
クロ「……」
友希那「私は……あなたと離れたくない。」
楓「……」
「……」
友希那「二週間前、この公園であなたと出会ったのよね。あのときの衝撃は、忘れもしないわ。」
「! 丁度、タイが逃げ出した日……。」
二週間前……。
そんな前に出会ってたのか、あの二人……。
友希那「出会ったときからとても人懐っこくて、あなたから私のほうへ駆け寄ってきてくれたのよね。……嬉しかった……本当に嬉しかったわ。スリッてしてくれたり、撫でさせてくれたり、撫でろと言わんばかりにお腹を見せたり……。ふふっ。……本当に、嬉しかったし、楽しかった。あなたも、そう思ってくれていたら、嬉しいのだけれど……。」
クロ「……みゃ、みゃ〜……」
楓「! 出てきた!」
友希那「……ナデナデ」
「……」
クロ「……みゃ〜♪」
友希那「……クロという名前も、あなたが黒いからという理由で私がつけた、安直な名前だけど……気に入ってくれているのよね。」ナデナデ
クロ「みゃ〜〜♪♪」ゴロゴロ
す、すごいゴロゴロ言ってる……。
友希那「……でもね、……"タイ"。」
クロ「みゃっ!?」
楓「!?」
「!?」
友希那「あなたには、きちんと変えるべき場所があるの。野良猫の時間はもう卒業。だから、……私達とも、もう……」
クロ「みゃー!!」
友希那「!?」
クロ「みゃー!みゃっ、みゃみゃーみゃみゃみゃみゃ!!みゃみゃみ…「わがまま言わないの!!」!!」
友希那「……あなたはタイなの。クロじゃないのよ……。それにあなたにはちゃんと……いっしょに暮らしている人が……家族がいるの。だから、もう家出なんてやめて、自分の帰るべきところに帰るのよ。ソー……」
クロ「! みゃっ!ガリッ!」
楓「あ!」
「あ!」
友希那「痛っ!……ジワ~」
楓「あ、あの……手から、血が……」
クロ「みゃっ……みゃー……」
友希那「……っ!ガシッ!」
クロ「みゃっ!?みゃー!みゃー!!」
楓「ちょ、ちょっと!今の状態でいきなり抱っこは……」
友希那「暴れないの!!」
クロ「みゃっ……」
友希那「……
……ギュッ」
クロ「!? ……みゃー……」
友希那「私だって、本当は寂しいのよ。あなたと別れるなんて嫌だ。もういっそのこと、私があなたを飼ってあげたいくらいよ。……でも、あなたにはあなたの帰るべき場所があるの。家族がいるの。だから……あなたとは、これでお別れよ。」
クロ「……みゃー……グッ」
友希那「大丈夫よ。私達なんかより、あなたの家族といたほうが、絶対幸せになれるわ。だって、少なくとも何ヶ月かは、いっしょに暮らしていたんだもの。そうでしょ?」
「……ええ。」
友希那「あなたと過ごしたこのかけがえのない時間は、私の中でとても大きなものとなった。おかげで、猫について話せる、数少ない友人もできた。」
楓「! ……」
友希那「クロ。……今まで……本当にありがとう。私に、安らぎと、喜びと……儚さと、尊さと……一生忘れることのない、時間と、思い出をくれて。」
クロ「……みゃー、みゃーん……!グッ!」
友希那「ダメよ。あなたは元いた場所に戻るの。……あなたとは、もう二度と会うことは出来ないかもしれないけど……私達との思い出は、どこへ行っても、覚えている限り、この胸の中に残り続けるわ。だからあなたも……前を向くのよ。」
クロ「……みゃーん……パッ」
友希那「……良い子ね。……はい。」
「……」
友希那「受け取らないの?あなたの飼い猫でしょ?」
「……でも……この子は、私より…「何言ってるのよ。」?」
友希那「タイはちゃんと、前を向こうとしているわ。だからあなたは.、それを正面から受け止めてあげるべきではないの?それが、……一つの命を預かった、飼い主としての務めでしょ?」
「! ……飼い主としての、務め……。……っ!」
友希那「……スッ」
「……おいで、タイ。」
タイ「……みゃっ。」
「……うん。確かに、タイは受け取ったわ。」
友希那「……」
楓「……あ、あの…「二人には、本当に迷惑をかけてしまったわね。」! い、いえ、そんな……。あ、く、クロ……じゃなかった。タイと、仲良く。」
「ええ、ありがとう。……あなたも、本当にありがとう。」
友希那「……別に。当然のことをしただけよ。」
「……明日にはもう九州に引っ越さなきゃだから、次会えるときはいつになるか分からないけど……機会があれば、いずれまた会いましょう。そのときは、ちゃんとタイも連れてくるわ。」
楓「は、はい!」
友希那「……」
「……それじゃあ、引っ越しの準備もあるから、私達は行くわね。」
楓「……はい。……タイ、またな。ナデナデ」
クロ「みゃ〜……。」
「……あなたはいいの?タイのこと、撫でなくて。」
友希那「……私は別にいいわ。さっき抱っこしたし。」
「……分かった。……それじゃあね、二人とも。」
楓「はい。……あの……お元気で。」
「ええ、あなた達も。……元気でね。」
そう言うとその人は、タイを抱えたまま、この路地裏を出て右に曲がっていった。
路地裏を抜けた後追いかけようとも思ったが、そうはせず、その場でじっとすることにした。
……するとそれから20秒後くらい、猫好きの人は何も言わず、静かにどこかへ歩き始めた。
少し心配だったため、僕も後からついて行くことにした。
楓「……」
友希那「……」
ここはいつもの公園。
僕とこの人がクロと遊んでいた公園だ。
楓「……あ、あの……」
友希那「……」
さっきからこの人は、ベンチに座って黙ったままだ。
よほど、クロとの別れが辛かったのだろう。
僕も辛かったが、この人と僕とではクロと接していた日数が違う。
僕は四日間だけだが、この人は二週間もいっしょにいたのだ。
僕の何倍も、この人のほうが辛いはずだ。
友希那「……私は……」
! ……。
友希那「私は……猫が好きよ。」
楓「……え?」
友希那「今まであなたには、嘘をついていたわ。でも、さっきのような出来事があった以上、もう隠す必要はない。私は……猫が好きなの。」
楓「……は、はぁ……?」
……あ、そういえば……。
楓『猫、好きなんですね。』
友希那『……別に、好きじゃないわ。』
……まだその設定、続いてたんだ……。
この人が猫が好きなことなんて、もう分かりきってたことなんだけどな……。
友希那「それから……それ。」
楓「ん?あ、お弁当ですか?」
友希那「ええ。……もらっても、いいかしら?」
楓「あぁ、はい。全然いいですよ。てか、そのために買ってきたんですから。ゴソゴソ」
友希那「……そうだったわね。……ありがとう。」
楓「え?」
友希那「っ!な、何でもないわ///!」
楓「? ……はい、どうぞ。」
友希那「ありがとう。……コンビニのお弁当なんて、初めて食べるわ。」
楓「え、そうなんですか?」
友希那「ええ。こういうのは、あまり食べないほうだから。」
楓「あ、そうなんですか……。」
友希那「じゃあ……いただきます。」
楓「あ、はい。」
ちなみに買ってきたパスタは、僕のもこの人のも和風パスタだ。
ハンバーグ弁当にしようとも思ったが……僕だけ違うのってのもなんかなーと思い、結局同じのにした。
友希那「……!……美味しい。」
楓「ほんとですか?良かったー。」
どうやら、この人の口に合ったみたいだ。
友希那「……」
楓「……?どうかしましたか?」
友希那「……でも……少し、しょっぱいわね。」
楓「え!?しょ、しょっぱい!?」
ま、マジ?
ちょ、ちょっと食べてみよう。
……あ、いただきます。
あむ……モグモグモグ……。
……別に、しょっぱくはないけどなぁ。
楓「うーん……別にしょっぱくはないような……。……!」
友希那「……ポロッ」
……なるほどな。
そういうことか。
楓「……コーヒーで、口直ししましょうか。」
友希那「……ええ。……そうね。」
飲み物でも飲めば、少しは気持ちが落ち着くだろう。
……やっぱり、ちょっと寂しいよなー。
たった四日間会っただけだけど……なんか、それ以上にいっしょにいた気がするんだよなー。
……いつかまた、会えるといい…「ちょっとあなた!」!?
楓「え?な、何です…「これブラックコーヒーじゃない!」え……だ、だって、昨日飲んでたから、それでいいかなって……」
友希那「昨日私が飲んでたのは、ブラックじゃなくて甘……!……」
楓「? 甘?」
友希那「……な、何でもないわ。」
え……な、何?
どういうこと?
……あ。
……もしかして……そういうこと?
楓「……なんか、意外ですね。」
友希那「……わ、悪い!?」
楓「いや……人間誰しも、苦手はあるものですから。僕にも、あなたにも。」
友希那「……スマホ。」
楓「へ?」
友希那「スマホを出してちょうだい。持っているわよね?」
楓「……まぁ、持ってますけど…「それなら出して、今すぐに。」わ、分かりました……。」
……あれ?
この流れって、まさか……。
友希那「……連絡先を、交換しましょう。」
ですよねー。
……ん?
でも、何か久しぶりな気がするなー。
楓「えーっとー……これか。」
友希那「……」
楓「……あのー、どうしました?」
友希那「……やり方を、忘れてしまったわ。」
楓「……マジですか。」
この人、弱点多くない?
なんか、心配になってくる……。
楓「……はい、たぶんこれで出来たと思います。」
友希那「あ、ありがとう。……」
……"友希那"?
……な、何て読むんだ……?
と、とも……き……?
友希那「……友希那(ゆきな)よ。」
楓「へ?」
友希那「友希那(ゆきな)。それが私の名前。」
楓「は、はぁ……。……あ、あのー……」
友希那「何?」
楓「名字って、設定してないんですか?」
友希那「? そんなの、名前だけで十分でしょ?」
楓「……そ、そうですか……。」
……ま、いっか。
ほんとは名字で呼びたいけど……聞くのも失礼だろうし。
友希那「……では、改めてよろしく。……楓。」
楓「あ、こ、こちらこそ。……ゆ、友希那さん。」
友希那「……ええ。」
こうしてまた一人、僕のスマホに連絡先が追加された。
……なんか久しぶりだな、こういう感じ。
最近、YouTubeのバンドリ公式がRoseliaやパスパレ、ハロハピなどの曲をフルであげていることに気付きました。
公式神か……??