SIX HUNDRED~俺の600族が最強過ぎなんだが~ 作:ディア
第1話 戦闘狂カイリュー、イリア
俺の名前はシック。ちょっとどころかかなり癖のあるポケモンの所有者だ。
さてそんな俺はジョウト地方のフスベシティに来ていた。
「久しぶりだなシック」
俺に声をかけてきたマント姿の男。かつてカントー地方でチャンピオンになったものの四天王に成り下がった後、チャンピオンが不在になってしまった為に再びチャンピオンになったワタルさんだ。経歴は複雑だが要はポケモンリーグのトップクラスの実力者だと思ってくれればいい。
俺とワタルさんの関係は師弟関係にあたるが、俺にとってもワタルさんにとっても色々不都合が起こるのでその関係は内密だ。
しかしそんな彼だが中々ぶっ飛んだことをやっている。彼は彼の持つカイリューに、はかいこうせんを放つように命じるような男だ。……それだけだと普通? まあ対象がポケモンだったら普通だわな。そう、何を隠そうワタルさんは人間に向けてはかいこうせんを放つように指示したんだ。いくら極悪非道な悪人とはいえ、人間に向けてはかいこうせんを放つように指示するのは極悪非道人のそれだ。
もっとも最近はなりを潜め、カントー地方のチャンピオンとして活躍している。人間にはかいこうせんを放たせるようなことは一切していない。
「お久しぶりです。ワタルさん」
「その様子だと、また一対一の手合わせか?」
「はい。こうしないと彼女が物凄く機嫌悪くなるので」
そう言って俺は彼女を出す。彼女とは恋愛の彼女ではなく、カイリューのことだ。俺のポケモンで唯一♀である為にそう呼んでいるだけのことだ。
『バトル? バトルなの? ご主人!?』
カイリューのイリアがそう言って俺をチラ見する。そう、イリアは♀であるにも関わらずよく言えば大のバトル好き。悪く言えば戦闘狂。このイリアは元々このフスベシティで釣り上げたミニリュウを育てたんだが、その時から戦闘狂の片鱗を見せ一回でもバトルに出さないと暴れまくる困った奴だった。しかしカイリューになってからは我慢──ポケモンの技ではない──を覚えて“はかいこうせん”を自重したワタルさんのようにイリアも自重をしてくれるようになった。それでも強い敵を見ると興奮を抑えきれずにたまに出てきてしまう事もある。バトルの時は素直に言うことが聞けるのでまだマシなんだがそれでも問題児であることには違いない。
ちなみにイリアや俺のポケモン達は全て俺の脳内で翻訳しているにしか過ぎないが、意思疎通に支障があるわけではないので問題ない。
「ああ。ワタルさんと試合だ」
『うっしゃーっ! カモーン!』
イリアが顎をしゃくり、左手を前に伸ばして指を真っ直ぐに伸ばして掌を上に向け、4本の指を2回連続で起こす。俺が教えた挑発の方法だが彼女はそれを良いポケモンバトルの礼儀だと思っていて、毎回ポケモンバトルの時にそれをするようになってしまった。
「カイリュー出番だ!」
そして向こう側もイリアと同じ種族のカイリュー。しかし性別は♂でアローラで見た時のぬしポケモンを彷彿とさせるような巨体だ。……こりゃ本気か? 意外と短気な性格だなワタルさんも。
「いくぞカイリュー、“はかいこうせんだ”!」
いやいや、いきなりはかいこうせんかよ。カイリューの最大の強みは攻撃で、特攻は強みになるほど高くない。特殊攻撃の分野に含まれるはかいこうせんはどちらかというと意表をつく時に使うものだ。
「イリア、“まもる”」
『了解、ご主人』
イリアが腕をクロスさせ、カイリューのはかいこうせんを防ぐと次の攻撃に備えて構える。
「イリア、“れいとうパンチ”」
『食らいなっ!』
そして“れいとうパンチ”がカイリューに炸裂し、倒れる……かと思いきやカイリューはそれに耐えきり、きのみを食べ始めた。四倍弱点を受けて耐えるほどカイリューは強くない。となればカイリューのもうひとつの特性を考慮すると答えが浮かび上がった。
「マルチスケイルか」
マルチスケイル。体力が万全の時に発動する特性で、この特性があると受けるダメージが半減されるというものだ。イリアもこのマルチスケイルの特性だが、ワタルさんのカイリューもマルチスケイルだとは思えなかった。その理由はマルチスケイルの特性のカイリューは非常に珍しい為で、イリアがマルチスケイルのカイリューだと知った時は感激の余り発狂しそうになったくらいだ。
「正解だ。カイリュー、反撃だ!」
いやいや反撃しようにも“はかいこうせん”の反動のせいで反撃出来ないでしょうよ。等と思っているとカイリューがはかいこうせんの反動が想像以上に早く終わり、れいとうビームを放とうとしている。
反動が終わるのは素早さがイリアよりも早いポケモンか、優先技で先手を取るかのどちらかしかない。“れいとうビーム”は優先技ではない為、前者の答えにたどり着く。だがイリアはカイリューの中ではかなり早い方──ブリーダー曰く準速──で、ワタルさんのカイリューの素早さに負けるほど遅くはない。さっきカイリューが食べたきのみ、カムラのみが起因しているんだろう。カムラのみは食べると素早さを上げてくれるんだが体力がピンチになるまで減らないと食べてくれないという欠点もある。
「イリア、“しんそくだ”!」
『はいさっ!』
カイリューの方が素早さで勝っているなら優先技を使えばいいだけのこと。イリアの“しんそく”でカイリューが倒れ、戦闘不能になる。
「見事だな。よくそのカイリュー、イリアをそこまで育てたな。シック」
「ありがとうございました、ワタルさん……」
その後に続く言葉を呑み込み、俺は頭を下げる。
「よさないかシック、俺のおかげじゃない。イリアがそこまで強くなったのはお前の功績だ。誇れ」
それを悟ったワタルさんが肩に手をおいて諭す。イリアは戦闘狂で手に負えなかったのを指導して助けてくれて以来、俺はワタルさんに師事してイリアと向き合えるようになった。感謝してもし切れない。
「はい」
頭を上げるとそこには別個体のカイリューがワタルさんを背負って羽ばたいて、宙に浮いた。
「じゃあ、またポケモンリーグの舞台で会おう!」
ワタルさんはああ言っていたがポケモンリーグで会える訳がない。何故なら俺はポケモントレーナーではあるもののポケモンリーグに出禁されていて公式大会に出場出来ない。どんなに良くても無冠の帝王にしかなれない。……原点にして頂点と呼ばれるポケモントレーナーに勝ってポケモンリーグに認めて貰えれば出禁もなくなるか? とりあえずシロガネ山に向かおう。あいつの故郷だしな。
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