SIX HUNDRED~俺の600族が最強過ぎなんだが~   作:ディア

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これまでのあらすじ。

シロガネ山の主ポケモンバンギラスに敗れたシックとイリア。イッシュ地方で修行を続けていると太ったサザンドラ、リックが捨てられ、それを保護するが元の持ち主が現れ、裁判を起こし、濡れ衣を着せられたが冤罪だと世間に認められたがリーグ出禁は解除されないままであり、イリアもリックも戻ってこない。そんな状況にシックは絶望に暮れていた。


第14話 リックと復讐とやり直し

さて、俺の壮絶な人生を語るにはこいつの存在はなくてはならないものだ。

 

サザンドラのリック

 

リックそのものに罪はないが、リックの元持ち主が俺に濡れ衣を着せ、人生は大きく変わってしまった。イリアと別れ、拘置所、刑務所に行くことになり、ありもしない罪を償う毎日が続いた。そして冤罪だとわかり釈放されたが、釈放された日にポケモンリーグから告げられたのはリーグ出禁。つまりジム巡りはおろかコンテストライブにも出場出来ない。この時俺はありとあらゆるものを失って生きる気力を失っていた。

 

 

 

 

 

「ワタルさん……不肖の弟子で申し訳ありません」

ここにはいない師匠に謝り、ビルの屋上から景色を見渡し、その場から飛び降りる。

 

滑空音と共に、無重力の状態が続く。しかしそれもまもなく終わり、地面に頭から激突し鈍い音とその衝撃がその場に響いた。

 

「……この程度じゃ死ねないか」

身体はほぼ無傷。骨折どころか血も流してすらいない。やはりあのバンギラスくらいしか俺を傷つけることが出来ないのか? こんな身体に生まれてきたのが憎らしく思えてしまう。

……いや全てが憎い。全てあいつが、悪い。

「殺す……! 殺してやる」

俺に残されたものはこの超人的な体と殺意。そして精神安定剤だ。

「……いかん。感情に惑わされるな」

殺意に呑まれかけ、俺は精神安定剤で感情をコントロールする。この精神安定剤は遅効性だが気休めにはなる。奴を物理的に殺しても無駄だ。精神的、社会的に殺さないと気がすまない。

 

 

 

「俺、いやそれ以上に悲惨な目に遭えば良いのか」

一人呟き、歩いていると見覚えのある太ったサザンドラが跳ねてやって来た。

『や、やっと会えた……!』

メタボリックな体に滝汗。この特徴のサザンドラは俺の知る限り一匹しかいない。

「リックか。何故お前がここに?」

リックは一回だけ俺の手元のポケモンとしていたが、裁判を起こされ元のポケモントレーナーの元に引き渡すことになった。つまりリックの持ち主は俺を貶めたポケモントレーナーの筈だ。

『……捨てられました』

「捨てられたってまたかよ!?」

どんだけあいつリックのことが嫌いなんだ? リックって名前の由来からしてもう嫌っているのはわかっていたつもりだがあいつのリック嫌いは異常だ。

『ええ。ポケモンバトルで俊敏な動きが出来ないから負けたと言いがかりをつけてきてこの有り様です。サー、もしよろしければ俺を再びサーのポケモンにしてくれませんか?』

ここでリックを俺のポケモンにしてもあいつがまた俺を貶めるだけだし、どうしたものか。……ん?

「条件がある」

『何でしょうか?』

悪魔的な発想が閃き、リックにも協力してそれを実行することにした。

 

 

 

数週間後、俺はきのみショップでバイトしていた。そのバイトの内容は接客とポフィンやポロック等のきのみを使った菓子の実演販売。女性の心を鷲掴みにしていた。ちなみに菓子の類いは別枠で売っている。

「いたいた、あの人よ。ね、イケメンでしょ? エリカ」

「うわ、凄いイケメン……! あんなイケメンがこのお菓子作っているなんて……疑ってごめんなさい」

中には俺目当ての客もいるが、最終的に菓子目的に靡く。それまで売れなかったきのみ屋が一ヶ月も経たない内に大繁盛していた。

「お嬢様、こちらのポフィンはどうですか? こちらのポフィンは冷静な性格や控えめな性格のポケモンにオススメですよ」

着物を着た女性エリカさんにそう勧めると顔を紅潮させ、すぐに頷いた。

「じ、じゃあそれで!」

「ありがとうございます。それでナツ様はいつものでよろしいですね?」

俺にナツと呼ばせる女性だが、本当の名前はナツメという名前でポケウッドが誇る大スターだ。そんな彼女が常連となったのは俺が作っていた菓子の匂いに惹かれ、食べてみると大絶賛。彼女がその味に感動してSNSに書き込むとあっという間に売れないきのみ屋が今じゃイッシュ地方の名店だ。

「ええ。お願いね」

彼女が微笑み、俺が提案した試食コーナーにある椅子に座って待っている間にリックがやって来た。

 

 

 

「お前か……ほらお食べ」

『頂こう』

腹を空かせたリックがポケモンフードを食べ終わる。そして例の物を催促する。

「わかったよ。お前は健気な奴だよ」

リックにきのみとポフィンが入った箱を渡すとリックはそれを受け取り、その場を去っていく。

 

「店員さん、今のサザンドラは?」

エリカさんが疑問に思い、口を挟む。

「あのサザンドラは飼い主に捨てられたにも関わらず、健気に飼い主に尽くしているんですよ。私はその健気さに感動してポケットマネーで彼にきのみとポフィンを提供してあげているんです」

「あのサザンドラにそんなことが……」

「……」

エリカさんとナツメさんが気まずそうに黙る。

「さあお嬢様方、こちらをどうぞ」

「このポフィンは?」

「カロリー低め特製ポフィンです。このポフィンは通常の1/3くらいのカロリーしかありませんので3個食べても通常のポフィンと同じだけのカロリー摂取しかしませんので安心して食べられます」

「まあ……! ナツメさん、食べましょう!」

「そうね……最近、太ってきたしこういうポフィンも悪くないわ」

エリカさんとナツメさんが気まずい空気から一転。通常通りのものになった。

 

 

 

そして翌日。TVを見るとサザンドラの元のトレーナーが無残に殺されるというニュースが流れた。殺したと思われる犯人は、トレーナーのポケモン達で既に逃亡していることからトレーナーはポケモン達に虐待をしていたことがわかった。

流石に虐待しているとは思わず、物理的に殺されるとは思わなかったが何にせよ復讐は成った。納得はしていないが。

『これで任務完了です。サー』

誰もいないところでリックと二人で話し合い、俺は口を開いた。

「……なぁ、リック。俺の下に来るか?」

『もちろんです!』

「わかった。大人しく捕まれよ」

モンスターボールを投げ、リックをゲットする。

 

 

 

「やはり、本当だったのね」

信じられないものを見たと言わんばかりに常連客のナツメさんが声を震えさせていた。

「ナツメさん、何故ここに?」

「あの時……私が最初にあの店に来る前、貴方の怨念を感じたのよ」

「怨念?」

「信じられないと思うけど私はエスパー。遠くにある怨念を嗅ぎ付けることくらい訳ないわ」

「それって陰陽師とかそっちの方面なんじゃないのか?」

動揺して俺は思わずタメ口でそう尋ねてしまう。

「あくまで感じるだけよ……ねえ、一つ聞いて良いかしら?」

「何でしょう?」

「これからどうするつもり?」

「どうすると言われても、いつも通り──」

「いつも通り、あのきのみ屋で過ごしていたら、貴方は永遠にイリアに会えないわ」

「何故、イリアのことを?」

「それだけじゃない。シロガネ山のバンギラスとのリベンジやボーマンダとの出会いも無くなるわよ」

「まさか、本当にエスパーだとでも言うのか……?」

「その通り。エスパーの中でも私は主に人の未来を見ることが得意で、最低5年先の未来を見ることが出来るわ」

「なら俺はどうすればいい?」

「アローラ地方で島巡りをしなさい」

「島巡りを……?」

「そう。それをすれば貴方は全てを取り戻すチャンスが訪れる。島巡りの手続きは私がしてあげるわ」

「何故、そこまで俺のことを?」

「色々理由はあるけど、貴方のことを気に入ったから……かな?」

「ナツメさん……俺とポケモンバトルをしてくれ」

「もちろん良いわよ」

 

 

 

「リック、リーグ出禁になってからの初陣だ」

『了解しましたサー!』

リックが元は他人のポケモンであるにも関わらず俺の命令に忠実な理由はしっかりと躾をしたのもあるが、俺の指示だとポケモンバトルに勝てると言うのが大きい。それまでリックは今は亡きトレーナーの指示だとポケモンバトルで苦戦することが多く、デブになってからは一度も勝ったことがなかった。散々にも程がある。しかし俺の指示だと連戦連勝で苦手な筈の妖でも勝ってしまった。

「さあ、行くわよエーフィ」

エーフィか……予想した通り、ナツメさんは(エスパー)使いか。

『さあマスター、あたしのきんのたまに力を!』

「何、下品なこと言ってんの! さっさと行きなさい!」

顔を紅潮させるとエーフィもまた顔が変化する。ただし、光悦した表情にだが。

『ああん、もっとぉっ! あたしのはどうがやってくるわ~!』

……オカマで、ドMのエーフィなんて初めて見た。あんな神聖そうに見えるのに何でこうも残念なんだ? 人生で一番ショッキングな出来事だ。

「リック、あくのはどう」

『見るに耐えねえよ! あんなん!』

リックのあくのはどうがエーフィに襲う。しかしエーフィはそれをマジカルシャインで相殺させていた。

『あ~、すっきりした。んもう、せっかちはやーよ』

それおまいう? しかし油断ならない相手だ。ナツメさんとエーフィのあのセリフは隠語だがダミー。俺達が想像するようなものではない。

「リック、あくのはどうで押し潰せ!」

『サー、イエッサー!』

あくのはどうがさらに強まり、エーフィのマジカルシャインが徐々に押されていくとエーフィが焦り出した。

『え、そんなダメっ、あ、あ、あーっ!』

エーフィが倒れ、ナツメさんはエーフィをボールに収納し俺の元に歩み寄る。

 

 

 

「流石ね、シック君。君ならこのくらいの芸当をやってのけると思ったわ」

「いやリックの力業なんですが」

「何はともあれ、これで自信ついたでしょ? これでアローラ地方に行きなさい」

ナツメさんがアローラ行きの飛行機チケットを渡し、手に握らせる。

「それまでの間に引き継ぎや荷物をまとめておきなさいよ」

そしてナツメさんと別れ、手元のチケットを見ると一週間後に使えるファーストクラスのチケットだった為にきのみ屋でバイトをしていると、数時間後にきのみ屋でいつも通り遭遇し、丁寧に接客しておいた。




後書きらしくない後書き。
前書きのあらすじは、シックが詳しく語れない部分を三人称で語らせて頂きました。もしいらないというのであれば、感想欄だと規約違反になりかねませんのでメッセージボックスの方によろしくお願いいたします。


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番外編で出す話はどんなものがいい?

  • ライバル達とのポケモンバトル
  • ルチアとの砂糖大噴火シーン
  • 他ヒロインルート
  • 主人公のその後の日常
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