SIX HUNDRED~俺の600族が最強過ぎなんだが~ 作:ディア
第17話 カントーに帰還
『ねえ、ご主人。ジャックは大丈夫なの?』
陸地に着きお土産を買っているとイリアが不安そうにジャックを海のど真ん中に置いてきたことを心配する。今更心配してもどうしようもないだろうに。
そもそもだ、ジャックをあそこに置いてきたのは修行の為だ。世界に通用するレベルのジャックを強くするには俺の下で修行するよりもああして野生の勘を取り戻した方が強くなれる。
「あいつのことだ。何一つ問題ない」
『いやそうは言っても流石に……』
「あそこら辺の海域は金銀財宝を積んだ宝物船が沈没したあたりだ。今頃喜んで海賊船奪ってサルベージしているだろ」
その宝物船には大概、強いポケモンがいるというのが定番、しかもそいつはジャラランガのジャックとは相性が悪い
『いやそっちじゃなくて、ジャックが他の財宝を狙う連中と遭遇したら相手を沈没させかねないわ。それが海賊とか野良のポケモンならいいけど国とかだったら流石にご主人も庇いきれないんじゃない?』
「……そういえばそうだった。あいつを強くさせたいあまりそれを忘れていた」
何てうっかりミス。あいつに隠密行動を教えておくべきだった。
「いやその考え方の時点で間違いでしょう」
俺の心を読んだ!? 艶やかなこの女性の声は何度も何度も聞いたことがある。そうだ、ポケウッドだ。ポケウッドで聞いたんだ。ポケウッドと言えばあの人しかいない。
「お久しぶりですナツさん」
カントー地方のジムリーダーにしてポケウッドの名女優、ナツメさんだ。ナツメさんではなくナツさんと呼ぶのは間違いではない。公の場でナツメさんの名前を呼ぶと大騒ぎになりかねない。
「久しぶりねシック君」
ナツメさんが微笑み、手を振るその姿はまさしく優しいお姉さんと言ったところだった。
「それでシック君、報告があるわ」
「報告?」
「貴方はポケモンリーグ出禁を解除されたわ。おめでとう。そしてもう一つ、シンオウ地方チャンプ推薦試合に貴方が選ばれたのよ」
「……はい?」
『やったー! おめでとうご主人!』
おいおい、どういうことだ? 推薦試合ってことは試合をするのはわかる。だがその前に着いているシンオウ地方チャンプは何だ?
「あら聞きたい?」
「ナツさん、一体それは?」
俺の予想が正しければシンオウ地方チャンプを決めるポケモンバトルの試合に招待されたってことになる。
「まさしく貴方が考えているその通りよ。シンオウ地方チャンピオンが不在の今、新たな候補として二人浮かび上がったの。そのうちの一人がシック君、貴方よ」
俺が候補の一人か。考えられるのはあのシロナさんとポケモンバトルをした時の動画か。
「他の候補は?」
「
レーティング団体の地方チャンピオンがポケモンリーグの地方チャンプになって統一しようって訳か。
「そのオカはどんなポケモンを使うんだ?」
「それは私の口からは言えないわ。だけど彼がタイトルを獲得した際の動画があるからそれを参考にしたらどうかしら?」
「一理ある」
もう一人の地方チャンプがどんな奴かこの目で見極める必要があるしな。
「まあシック君、積もる話はヤマブキジムでしましょう。案内するわ。そのカイリューを収納して」
イリアを収納するとナツメさんが優しく俺の手を包み込むように握る──とても柔らかで小さな手だ。俺は手フェチじゃないがこの手を見るとナツメさんを守りたくなってしまう。何を守るかはわからないがナツメさんに握られるとそういう母性愛が出てしまう。そんなことを考えていると景色が変わり、ヤマブキシティにテレポートしたと認識出来た。
「……」
「どうしたナツメさん?」
「……シック君、その気になるから私のことを考えないで」
「?」
ナツメさんが顔を紅潮させ、そう呟く理由がさっぱりわからない。俺がナツメさんのことを考えるなんて当たり前のことじゃないか。
「だからっ! 考えないでって言ったでしょっ!」
いでっ! なんだ、内臓が揺れている……?
「ポケモンバトルでどうしても勝ちたい時に使う必殺技、内臓揺らしよ」
それはリアルファイトだから反則だろ……
身体の中に眠るエネルギーを使い、内臓を元の場所に戻す。この技は故郷でよく使われる技だ。身体のエネルギーを別のエネルギーに変換し循環させることで身体能力の向上や身体の異常を治すことが出来る。この変換されたエネルギーを気と呼ぶ。
「えっ、何で超能力が効かなくなっていくの?」
内臓全体を気で覆い、超能力を無効化──というか押し返している──するとナツメさんが驚愕の声を出した。
「……ナツメさん、超能力で内臓を引っ掻き回さないでくれ。気を使えば何でもないとはいえ、不意討ちにやられると結構痛むから」
「と、とにかくヤマブキジムへようこそ。そこに座って待ってて。今お菓子とお茶を持ってくるわ。洋風と和風どっちが良いかしら?」
「洋風で」
いそいそとナツメさんがその場から姿を消す。
……しかしレーティングの方のシンオウ地方チャンプか。オカは間違いなくポケモンバトルの経験は豊富で、様々なポケモンを使ってくることは違いない。
レーティングの地方チャンプになれる条件はリーグの地方チャンプとは違って、一定の期間内の間にレートの点数が最高者のみがなれるというものだ。このレートというのは言わば自分の持ち点で、ポケモンバトルで勝てばレートの数が増え、逆に負けると減る。つまり勝てば勝つほどレートが上昇するので上位者達はポケモンバトルをしまくる戦闘マシーンとなる。
ただし対戦回数があまりにも多く負けることもしばしばあり、最高点者、つまりこの場合なら地方チャンピオンが変わりやすいのも特徴の一つだ。それは世界でも変わらず、今のレーティング団体は群雄割拠の戦国時代と言える。
『ご主人、バトルする場所があるんだからそこで戦わせてよ』
『イリアさん、少しは落ち着きなさい。ジムリーダーに許可を貰わなければ話になりません』
『えーっ!?』
イリアとマンダーがモンスターボールから出て、口論し合う。
「ところでマンダー」
『何でしょう?』
「お前の指示がイリアに100%伝わると仮定してイリアがジャックを打ち負かすことは出来るか?」
『……イリアさんだけでは無理でしょう。予想以上の戦果を挙げたとしても不可能ですね』
「相性の良いお前自身でも無理か?」
『ええ。残念ながらメガシンカした状態の私のギガインパクトが炸裂する前にジャックさんのれいとうパンチでイチコロです』
「それもそうか。じゃあギラギラ以外で一番勝ち目があるのは誰だ?」
『ダンさんです』
「ダン? あの爆弾厨のメタグロスがか?」
『ダンさんはレベルこそ私達に及びませんが相性は悪くありません。私の指示が100%通れば勝てます』
「そこまで断言するか?」
『まあもっとも彼の性格上、だいばくはつをしなければわるあがきしかしなくなりますから無理ですよ』
マンダーがそう告げ、ボールの中に戻るのを見て俺は大人しくなったイリアをボールの中に収納する。
マンダーの言うことはわかるが、ダンがジャックを打ち負かすなんて想像が出来ない。想像出来るのはジャックの背中にしがみついてだいばくはつをする姿だけだ。それでよくて相討ち、悪くて犬死にだ。そんな奴が果たして百戦錬磨の猛者であるオカに対応出来るだろうか、いや出来ない。
これから戦う相手はチャンピオンがコロコロ変わるとはいえレーティング団体の現地方チャンピオンだ。ジムリーダーのポケモンバトルの平均が一日あたり4戦という緩い中、あいつらは15戦は当たり前にこなす。その地方の頂点相手に同じ強さのポケモンを使ってポケモンバトルで勝てるかと言われれば無理だ。ならありとあらゆる合法的な手段を使って勝つしかない。人はそれをラフプレーヤーというのだが。
「お待たせシック君」
ナツメさんが宙に浮かせたポットの中身をいつの間にか置かれたティーカップに注ぐ。
「さて、ポケモンリーグ出禁を解除された理由を話しましょうか」
「ぜひお願いしたい」
「ポケモンリーグは二つに分別されているのは知っているわね?」
「
「それであっているわ。そのNPAの本部長──つまり幹部の一人が権力を使って貴方を無理やり出禁にさせていたわ」
……おいおい、そんな奴が本部長って世も末だな。俺が想像していたのはそれよりも一ランク下の幹部かと思っていたんだが。
「シック君が唖然とするのも無理ないわ。本部長は会長、副会長に次いで高い役職、つまりその組織団体のNo.3がなる役職……そんな人間が利益にもならない一人の人間の為に固執する訳がない……そう考えているでしょ?」
「ええまあ」
そこらの末端幹部あたりがやっているものだと思っていたからな。
「ところが竜の里との闇取引が明らかになって貴方はその犠牲にされていたわ」
「犠牲だと?」
そんな犠牲はリーグ出禁くらいしか……いやそれか?
「それよ。竜の里は貴方をリーグ出禁にするように取引して看板に泥を塗らないようにする代わり多額の寄付金を提供していたわ。だけど元本部長がしていたのはそれだけじゃなくヌメラ製造工場の建設にも関わっていた」
「あれに関わっていたのか!?」
思わず立ち上がり大声を出してしまう。ヌメラ製造工場とは色違いかつ隠れ特性のヌメラを大量生産する工場だ。表向きはポケモン研究所というものだったがその実態はゴルメの子供達を必要ないからという理由で殺しまくるという極悪非道な施設だ。その施設の建設に関わっていたということはゴルメの仇敵でもある。どこまでもふざけた野郎だ。
「ええ。でも貴方がそれを潰してくれたおかげで彼の悪行が明らかになった。その功績を称えてNPAは貴方の出禁を解除しただけでなく
「なるほど。その暫定を外すには別の団体のチャンプを負かす必要がある……ということか?」
「ええ。公式試合で何も実績を残していないシック君をいきなり地方チャンプに任命するのは問題があるらしいわ」
「それでレーティング団体の地方チャンプと戦えってことか」
「そう。貴方が勝てば正式なチャンピオン、負ければ何も残らない文字通り人生を懸けた大勝負……だけど大丈夫。貴方は私の応援があるから」
「イガミ技──イカサマのこと。この場合ナツメさんが読心術とテレパシーを使って相手の行動を先読みして教えたり、相手の腹を痛めたりすること──は止めてくれよ?」
「ふふっ」
いや微笑んでないでマジで止めてくれ。そんなことをしても嬉しくないし実力で勝てる。
「最後にシック君、貴方に予言するわ」
「予言?」
「まあ予言といっても占いみたいなものよ。……二日後に空港に行って茶髪を織り混ぜた赤髪を後ろに束ねた男性を呼び止めると良いことがあるわ」
やたら具体的だな。
「どの空港だよ……」
「カントー地方の空港よ。それ以外にも赤髪の男性がいるけど、茶髪を織り混ざっていないから別人だから注意して」
そんな赤髪の奴らが頻繁にいるのか? いやカントーや俺の故郷じゃ珍しいがイッシュやカロスじゃそういう髪の奴らは多かったな。とりあえず空港に行ってその男を探してみるか。
オリジナル設定解説
★NPA
・地方ポケモンリーグ協会のこと。ワタルやシロナなどの世間一般でいう地方チャンピオンはこちらのチャンピオンのことを指す
★NPR
・地方ポケモンバトルレーティング団体のこと。NPAとは違いこちらはレート戦で行われ、前期間でレートが最高だったトレーナーがチャンピオンとなる。早い話、ゲームにおけるレーティングバトルのようなシステム。
後書きらしい後書き。
やっちまったよ……オリジナル設定の盛り付けを!
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