SIX HUNDRED~俺の600族が最強過ぎなんだが~ 作:ディア
シンオウ地方でバッチを8個集め滞りなく
「さあいくぞブリタ!」
「いけ、マニューラ! れいとうパンチだ!」
マニューラ……やはりというべきか、SPRチャンプはブリタに対しての対策を取っている。マニューラにれいとうパンチ覚えさせることで氷タイプに特に弱いポケモンに弱点を突かせることが出来るだけでなく、必ずといっていいほど一撃で仕留められる。
『マニューラ。竜タイプの弱点をつけるれいとうパンチを最高威力かつ最速で出せるポケモンって言うじゃなーい?』
マニューラが突撃しているにも関わらず、ブリタは余裕そうに構える。そしてマニューラが攻撃するとそこにブリタの姿はなかった。
『何っ!?』
『でもオイラ回避率9割超えですからぁぁぁっ! 残念! アイアンテール切りっ!』
マニューラの弱点でもあり、
『はい次っ!』
「くそっ、あんな避け方有りかよ!」
それはごもっともだ。俺も相手側だったらそう呟き、キレてしまうだろう。
「ミミッキュ! 出番だ!」
出やがったな。竜使いの天敵が。
さてここでミミッキュの解説をしようか。ミミッキュはレーティング団体で一番使われているポケモンだ。その理由は特性とタイプ、そして技があまりにも強いからでありレーティング団体にいる奴らは必ずといっていいほど育成しており、対策ポケモンまで育成している。
そんなミミッキュの特性は一度だけいかなる攻撃──ただしかたやぶり等の特性を無効にするものは除く──を0にするという特性だ。この特性のおかげで積む、要するに変化技でミミッキュの攻撃力を爆発的に上げたり、きあいのタスキを持たせて二度以上耐えたりすることが出来るので長らくこのミミッキュはレーティング団体には認められなかったが、長年ガブリアスがレーティング団体のトレーナー所持ポケモン率一位として君臨する為にその対策としてようやく認められたポケモンだ。
しかしミミッキュの技が強力であるのは違いなく、みちづれを覚えるだけでなくアローラ地方では専用のZ技があるのも特徴だ。またタイプが霊・妖な為に無、闘、竜の三タイプを無効にする恐ろしいポケモンだ。こいつのせいでバランスが狂ったといっていいだろう。
「ブリタ、じしんだ!」
『オイラの心を揺さぶって見せろよぉぉぉっ!』
ミミッキュ相手に竜の技は通じない。となればアイアンテールかじしんのどちらかになるが、アイアンテールは命中率に不安があり命中率に不安のないじしんを選択するのは当たり前だった。
「いくぞミミッキュ!」
『了解!』
おいおい、相手もZ技使いかよ! わざわざ俺を倒す為だけにアローラの島巡りをやって来たっていうのか?
「これが俺達の全力技、ぽかぽかフレンドタイムだ!」
Z技は避ける事の出来ない必中技だ。ブリタもその例に漏れず、ぽかぽかフレンドタイムに直撃し、大ダメージを負う。
『このブリタ、死ぬものか!』
きあいのタスキを持たせて大正解だ。もし持たせてなかったら戦闘不能になっていた。
「ブリタ、アイアンテールだ」
ブリタのじしんは確かに命中率に不安はない。しかし今回に限りアイアンテールを選択した理由はミミッキュの弱点である鋼タイプの高威力の技であり、威力が倍増し、一撃で仕留められる。じしんだとこうもいかずじしんで攻撃するよりも効率がいいからだ。
『まるで将棋だな、おい!』
いや将棋は関係ねえだろ。それともアレか? マンダーに揉まれた影響が出てきたのか? ブリタがより強くなるには主体的に考え、より効率的に動かなければならない。その為将棋を通して先読み──予想を立て対策を打たせるようにした。将棋の腕は俺よりもマンダーの方が上でブリタの指導相手はいつもマンダーが務めていて、将棋と聞いてマンダーの顔が思い浮かぶのは必然のことだった。
『二体ゲッツ!』
ブリタが決めポーズをし、観客達を盛り上がらせる。推薦試合とはいえ、地方チャンプを決める試合だ。観客達がいるのは当たり前でリーグもそこから金を集めている……ジャックみたいな奴め!
「粉持ちじゃなくてタスキ持ちかよ。いくらなんでもあの判定おかしいだろ……カイリュー! お前にすべて任せた!」
『任せろいっ!』
ブリタの前に現れたカイリュー。ワタルさんのカイリューがそうであるようにおそらくこのカイリューもそのマルチスケイルだろ。そうでなきゃカイリューなんて出す訳がなく、他のポケモンにした方が強い。
「ブリタ、げきりん!」
『今のオイラは激おこプンプン丸だせ!』
「カイリュー、りゅうのまい!」
ブリタはいつでも仕留められるって自信でもあるのか? だがブリタは必中技でない限り避けてしまうぞ。
「カイリュー、つばめがえし!」
なるほど必中技を持っていたか。余程ブリタの対策をしていたんだろう。シロナさんだけでなくジムの公式試合を研究しつくしたんだろうな。しかし奴のミスを挙げるとすれば最初にミミッキュを出すべきだった。
『切腹ぅぅぅっ!』
「ブリタお疲れ様」
ブリタは対策されながらも三体目まで引き出したんだ。誇るべきだ。普通対策されていたらそのポケモンは必ずといっていいほど負ける。ところがブリタは負けるどころか二体まで倒し、しかも次に繋いでくれた。優秀以外の何者でもない。
「出てこい、ダン!」
『うひっ、ウヒヒヒィッ!』
ここしばらくだいばくはつをしてなかったせいか禁断症状が現れ、瞳孔が完全に開いていた。
『な、なんだこのメタグロスは!?』
カイリューがそれに後退りするほどドン引きし狼狽える。その姿は見ていて笑みを浮かべてしまうものだった。
「カイリュー、ほのおのパンチだ」
『ええいくそっ!』
ほのおのパンチがダンに炸裂し、ダメージを負うがそれは単なる挑発──ポケモンの技にあらず──でしかなかった。
「ダン。カイリューをつかんでだいばくはつ」
『ヒャッハー!!』
ダンがカイリューにしがみつき笑みを浮かべ、体を点滅し始めた。それを見たカイリューが必死にもがき暴れ、拘束を解こうとするがどうあがいても離れないように掴んでいるから無駄だ。
『バカ、やめ──』
『世界の、だぁぁぁいばくはつぅぅぅっ!!』
ダンがだいばくはつを起こし、相手の一体に止めを刺して決着が着いた。
『だいばくはつ……最高ぉっ……!』
顔を光悦させながら痙攣させるダンの姿に観客達はドン引きし、ブーイングの声が飛び散る……俺に。
「ふざけるな!」
「爆発オチなんてサイテー!」
「ポケモンバトルを何だと思ってる!」
「イケメンだからってやっていいことと悪いこともわからないの!?」
何を言われようとも痛くも痒くもない。俺はあくまでも悪役の道を進むと決めているのだから。そもそもだいばくはつを使うことの何が悪い? ダンが望んでやっていることだし、そこまで批判されるようなことでもないのだが。
批判されまくっても近づいてくる奴はいる。インタビューとカメラマン等マスコミ関係者だ。
「それでは新チャンピオンにインタビューをしたいと思います! 新チャンピオン、何か一言!」
「この試合は前哨戦でしかありません。前哨戦で勝つのは当たり前のことです」
「と言いますと?」
「SPAチャンプの座を返上し、
そのことに唖然とし、騒然とするマスコミ関係者達。WPAに挑戦することは遥かに過酷な道であり、鬼門とされている。特に世界チャンプを一人も輩出していないシンオウ地方では、WPAのことを魔界と呼ぶこともある。
「本気ですか!?」
「本気も本気。いつまで王様気取りでいるつもりだって、特攻してやりますよ。魔界にいる魔王にね」
「魔王……」
「それに丁度いいんですよ。あの魔王は快挙を成し遂げようとしている」
「……っ!」
気づいたか。魔王こと世界チャンプは世界防衛記録を叩き出そうとしている。その記録をもし俺が撃ち破ったら、ヒール以外の何者でもない。
「シロナ氏といい、オカといい、ジンクスを味方につけた私という壁を越えることは出来なかった。偉業殺しなんですよ私は。それならいっそのこと、世界チャンプの防衛記録を阻止しようと思い、WPAに挑戦することに決めました」
それで決めたことは全くの嘘だが、それ以外は事実として残っている。シロナさんの防衛記録更新、オカは史上初のSPA・SPR統一王者を目指していた。しかしそれは俺がどちらも防止してしまった。
「もしかして……本当にやりかねないか……?」
「いや傲慢過ぎる……」
「予言しましょう。世界チャンプの悪夢起きると」
俺の予言に周囲が動揺の声を上がると共に、俺は席を離れる。
「では詳しいことはまた後日」
控え室に入るとそこにはナツメさんが椅子に座っていた。
「シンオウ地方チャンプ獲得おめでとう、シック君」
「どうもナツメさん」
「しかし大胆ね。あんなえげつない勝ち方の上にWPAに挑戦するなんて……大胆さで言えばカントーでもいないわ」
「だいばくはつはダンが望んだことだ。ああしないと禁断症状が出て暴れてしまう。WPAに挑戦するのはジャック──ジャラランガと約束してしまったからな。俺が世界チャンプになって世界チャンプのポケモンにしてやるって」
「シック君……」
「じゃあな。ナツメさん、今度会う時は世界チャンプになった時だ」
俺の二つ名が【無冠の帝王】から【偉業殺し】となったのはそれからだった。……いつぞやに言われた【太陽の王子】はどこに行ったんだろうな。まあ【偉業殺し】の名前の方が事実だから好きだけど。
後書きらしい後書き
実をいうとこの話は当初第19話として投稿する予定でした。しかし書いているうちに他の話を挟んだ方が筆が進みそうだと感じて、このようになりました。
それでは恒例の。
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