SIX HUNDRED~俺の600族が最強過ぎなんだが~ 作:ディア
……すみません。遅れた理由にすらなっていませんね。
ホウエン地方、カイナシティ。かつてブリタと出会ったこの街だが、ブリタと出会ったときよりも遥かに賑わっていた。
「なんだこりゃ……?」
『ピカンと来たぜ! オイラの推測じゃルーちゃんがカイナシティでコンテストトレーナーをスカウトしていると見た!』
「そう言えばコンテストの服貰ったのに全然コンテストに参加してなかったな。せっかくだしブリタ、コンテストに参加するか?」
ここで着なきゃルーちゃんことホウエン地方のアイドルのルチアに貰った服がゴミになるしな。
『待ってやした!』
そしてコンテスト会場に向かい、出場するとコンテスト会場は信じられないほどガラガラで空いている席の方が多かったほどだ。しかし俺が初出場とは思えない点差で優勝してしまった為か人が戻り、コンテスト終盤には席が9割以上埋まっていた。
『うつくしさコンテストぉ~っ優勝ゲッツ!』
決めポーズでブリタがはしゃぎ写真撮影を終えると、そこに待っていたのは地味な格好をしたルーちゃんだった。
「シック君、おめでとう」
「それはブリタに言ってくれ」
「ブリタ、凄かったよ。次も凄いアピール期待しているから」
『へへっ、オイラ誉められた!』
「ところでシック君、今港で人間の言葉を話せるポケモンがいるらしいんだけど見に行かない?」
人間の言葉を話せるポケモンか。コンテスト会場の様子を見る限り、そいつが話題を呼んでいたから人が来なかったかもしれないな。
「よし行こう」
「それじゃ案内するよ。着いてきて!」
そしてルーちゃんに案内されるとそこには見たことのあるジャラランガが黄金片手に商売していた。
「さあさあイラシャイイラシャイ! どれもこれも幻の沈没船からサルページした宝物アルヨ!」
「ほらあそこで商売しているジャラランガが路上販売しているの。私もいろんなポケモンと関わってきたけどあんなポケモン初めて見た……って何で頭を抱えているの?」
「あれは俺のポケモンだ」
「ええっ!?」
「修行がてらに金銀財宝を積んだ沈没船があると思われる海域で、金にがめついジャック──あのジャラランガにサルページさせたんだ。世俗慣れし過ぎたあいつに野生の本能を呼び覚ますための修行だったんだが……あの様だ」
「うん、何となく言いたいことは察したよ」
それは何よりだ。
「おいジャック」
客がいなくなったところでジャックに声をかけるとポケモン語で答えた。
『おおシック。随分と見ない間に成長したじゃないか』
「お前、それはどうしたんだ?」
『サルページして得た宝物だ』
「いやお前らしくないな。もっと高く売り付けるはずだが」
『儂もそうしたかったんだが、ここにあるのはオークションに出して売れ残った余り物だ。高く売り付けようにも売り付けられない。サルページしたのは事実なんだが、どうも売れなくてな。こうしてバザーで売り飛ばしているって訳だ』
「オークションって……本当に世俗慣れしているんだね」
『それでどちらさんだい?』
それを聞かれたルーちゃんが辺りを見回し、ジャックに耳打ちする
「私、ルチアよ。こう見えて地方アイドルだからこっそり変装して………………しているの」
やはり小さい声なだけあって僅かに聞こえない部分がある。
『なるほどな。隅に置けない奴だな、お前は!』
高笑いしながらジャックが俺の肩を叩く。何がそんなに気に入ったんだろうか。
「ルーちゃん」
「何、シック君?」
「面白いことを考えたんだけど、ルーちゃんさえ良ければやろうと思うんだけいいかい?」
『なに? まさかあの伝説のビビリダマビリヤードをする気か!?』
ビビリダマビリヤード
その競技は通常のビリヤードのナインボールとほぼ同じだが、異なるのはカラーボールがビビリダマ及びマルマインになっていて白球やテーブルがそれに合わせたサイズになっているという点だ。
ビビリダマ達を寝かせた状態でビビリダマを突き奥深くまで穴を掘ったポケットに入れるとビビリダマ達が大爆発を起こし花火が打ち上がる。
しかしあまりにもビビリダマやマルマインがじばくやだいはくはつするのと、ポケモン愛護団体が喧しい為に現在では禁止されている競技で、伝説の競技の一つとも言える。
「するか、んなもん!」
当然、ジャックに対する答えはノーだ。いくら俺が気狂いだとしてもそこまでではない。それにだいはくはつはダンで見飽きている。
「え、違うの!?」
「!?」
俺がルーちゃんの方を見るとルーちゃんが専用のキューを持って、ビビリダマビリヤードを今すぐにやろうと言わんばかりだった。
「そんな訳ないだろうが。ましてやあれは場所を取りすぎる」
「それもそうだね」
『じゃあ一体何をするんだ?』
「ルーちゃん、ちょっといいか?」
「へぁっ!? ちょ……息が耳に……」
俺がルーちゃんに耳打ちするとルーちゃんが耳まで顔を紅潮させて心拍数を上昇させるが、それよりも優先すべきことがある。
「ルーちゃん、大丈夫か?」
「だ、大丈夫っ」
「それじゃ言うぞ」
俺が耳打ちした内容は、至ってシンプルなものだ。しかしそれはルーちゃんの仕事にも関わってくる可能性があり、考えすぎかもしれないが営業妨害で事務所に訴えられかねない。
「どうだ。ルーちゃんさえ良ければやるぞ」
「うん、良いよ。でもその代わりシック君」
「どうした?」
「今日、私と一緒に晩御飯一緒にして」
『それってもしかして──』
「もちろん良いぞ。なんなら回らない寿司屋で奢ってやるぞ」
ジャックが何か言おうとしたがそれを遮るうに俺が気前よく答えた。
『そこはムード的に高級レストランにしておけよ』
いや対して変わらないだろう。空気は俺は読んでいるぞ。
「うん。わかった」
ほらな。嫌がってないだろ?
『いや、そんなどや顔されてもな。はっきり言うぞ。ルーちゃんはお前のこと──』
「ジャック、それ以上言わないで」
『……儂に泣きついても知らんぞ』
さて、俺は超カイナ寿司の予約をしておかないとな。
数時間後、そこには多くの観客が大歓声をあげていた。
「うおぉぉぉぉっ!」
「いいぞーっ、ルチアちゃーん!」
「シック君イケメンーっ!」
ルーちゃんと同時に観客の方へ投げキッスをすると更に盛り上がる。
「さて、前座の路上ライブも終わりましたことですし、そろそろメインディッシュに移りたいと思います! 皆さんよろしいですか!?」
「いいともーっ!!」
「それではご鑑賞下さい、ルチアとシックのコンテスト式ポケモンバトルの勝負を!」
通常のポケモンバトルは時間制限こそ存在するが、それは意味をなさず相手が倒れるまで戦う為にポケモンの怪我も多い。その為、ポケモン愛護団体が立ち上がり、ポケモンバトルをしないように呼び掛けるが却ってポケモンバトルをある程度しなければポケモン達のストレスの元になりポケモン達の負担になってしまう。
そこで考案されたのがコンテスト式ポケモンバトルの原型だ。通常のポケモンバトルを点数制度を導入しただけでなく時間制限を更に厳しくし、ポケモンが倒れないようにした。
そしてよりポケモンを魅せる為に技の評価をするようにしたのがコンテスト式ポケモンバトルだ。
『さて、貴様らが何分持ちこたえられるか楽しみだ』
ジャックがルーちゃんのチルルに加え、ブリタとマンダーを挑発する。
『ホッホッホッ……チルルさん、ブリタさん、わかっていますね?』
マンダーのコメカミに青筋が浮かび上がり、チルルとブリタに合図を促す。
『いつでも行ける』
『無論だ』
ブリタとチルルがマンダーに答え、頷くとポケモンバトルが始まった。
「いくぞジャック! スケイルノイズ!」
早速、ジャラランガ専用の技であるスケイルノイズを使い、先制攻撃を放つ。
『Flame thrower 点火!』
『仕方ありませんね!』
「チルル、ハイパーボイス!」
『俺の芸術聞きやがれ!』
コンテスト用に鍛えたブリタのだいもんじ、マンダーのハイドロポンプ、そしてメガシンカし、メガチルタリスとなったチルルのハイパーボイスがスケイルノイズを相殺しようとする。
『くっ……私達とて鍛えていたのに関わらず、この様ですか……流石にやりますね』
しかしそれでも相殺するには威力が足らず、三匹にダメージを与えた。
「す、すげえっ! 何だ今の技!?」
「あのチルルのハイパーボイスでも打ち消せないなんて……」
このホウエン地方ではジャラランガは見かける種族ではない。故にそれだけでも希少価値があり、その専用技を見たとなってはその場が騒然とするのは当たり前のことだった。
『ルチアさん。私の声が聞こえますか? ジャックさんの弱点は飛、竜、妖、氷です。ブリタさんが竜の技、チルルさんが妖の技、私が飛の技を使えば彼の弱点をつけます。ルチアさん、貴女の合図で一斉に攻撃します』
「うん、わかった。皆私の声に合わせて」
『了解だ、確かに命令を受け取った』
受け取るのは構わないが声が聞こえているぞお前ら。
でもまあ一斉に攻撃するのは悪い点じゃない。避けることがままならぬまま大ダメージを負うだけでなくド派手で見栄えも良くコンテストにふさわしい技となる。
「チルル、はかいこうせん!」
『了解だ!』
『よしオイラが援護する!』
特性でタイプが妖になったはかいこうせんとそれに合わせてブリタがドラゴンダイブがジャックに襲いかかり、このままではどちらの攻撃が当たると推測される。となれば俺が出す指示は一つ。
「ジャックまもる」
『断る!』
ジャックが命令に逆らってブリタの攻撃を避け、チルルのはかいこうせんをかえんほうしゃで打ち消した。「おい指示くらい聞けよ」と口に出そうとしたがあることに気がつく。
チルルとブリタの猛攻はあったがマンダーの攻撃がない。それはつまり俺がまもるを指示することを見越してタイミングをずらしたということだ。まもるにはタイムラグがあり、一度使うと隙が出来上がりその間致命的なダメージを負う。
『流石ですねジャックさん。ですがその首貰いますよ!』
切れ味抜群のつばめがえしがジャックに襲いかかる。回避率9割を超えるブリタですら避けることが不可能なその技を出されジャックの取った行動、それはまもるだった。
まもるを行ったことによりマンダーの攻撃が防がれ、弾かれる。
「ソンナ程度デ私倒セる訳ナイヨ!」
そしてまもるから解放されたジャックがマンダーを掴み、パイルドライバーを編み出した。
いやいや、ちょっと待て。パイルドライバーなんてものはポケモンの技にないぞ。あれはプロレス技であってポケモンの技として認められてない。よしんば認められたとしても闘でマンダーとは相性が悪い。
それにも関わらずマンダーが戦闘不能となり目を回す。あの知将たるマンダーが一番最初に沈むなんて初めてじゃないのか?
『うぉぉぉぉっ! マンダーぁぁぁぁっ!』
ブリタが涙を流し、暴走。げきりんを出し、ジャックを襲う。それに合わせてルーちゃんがチルルに指示を出そうにもチルルがはかいこうせんの反動を受けているために技を出せない。
『だから分かりやすいんだよ』
ジャックがブリタの顔面にれいとうパンチを炸裂させようとするがブリタは本能で皮一枚で横に避けた。
『何っ!?』
『マンダーの仇じゃぁぁっ!』
『むぅんっ!』
その瞬間ジャックの身体の気がブリタの攻撃する一点に集中するのを感じ取り、ブリタのげきりんを防いだ。
『オイラのげきりんが防がれた……!? 嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁぁっ!』
『うるさい』
ブリタが混乱したところにれいとうパンチの一撃。回避率9割と言えども混乱してしまえば回避率も下がるし、何よりもブリタに避ける気がなかった。
「サア、後一匹アルヨ」
「チルル、マジカルシャイン!」
『無駄だ』
「ジャック、れいとうパンチ」
チルルのマジカルシャインを難なく避けたジャックがチルルに詰め寄り、れいとうパンチを一撃喰らわせた。通常であればメガチルタリスは竜・妖である為にタイプ不一致のれいとうパンチ程度なら耐える。
しかしそれはジャックやギラギラのような化けモンなら違う。マンダー以下通常のポケモンの常識は通用しない。
『ぐあっ……!』
チルルがジャックのれいとうパンチを喰らい氷付けになり戦闘不能に陥る。
「チルル!」
「勝負ありだ」
コンテスト式のポケモンバトルと言えどもKOはあり倒れたらそれまでだ。
「シック君素敵ーっ!」
「くたばりやがれ! クソシック!」
俺の宣言と共に鳴り響くのは俺のファンの歓声とルーちゃんのファンによるブーイングだ。
少し止めさせるか。チルルにげんきのかたまりを渡し、回復させるとマンダー、ブリタと次々に復活させる。
「これにて今日のゲリラコンテストライブを終わりたいと思います。もしまたゲリラライブを開催することになったら私のホームページやSNSでお知らせします!」
「それではお気をつけてお帰りください!」
ゲリラライブが終わりそうアナウンスすると観客達が帰り、二人きりになる。
「やっぱりシック君強いね」
「そりゃ当然だ。元がつくとはいえシンオウ地方のチャンプに輝いた上に今も成長している真っ最中だ。KOで負けたら恥以外の何者でもない」
「それもそうだね。コンテスト式なら勝てると思ったんだけどそんなに甘くなかったね」
「そんなものだ。ところでルーちゃん」
「何?」
「ジャックがマンダーに繰り出したパイルドライバーはコンテストの技として使えそうか?」
「元々魅せる格闘技で有名なプロレス技だし、改良すればいけるんじゃないかな?」
「そうか……それじゃ、ルーちゃん行こうか」
「さあ負けた腹いせに一杯食べるよーっ!」
とても負けたようには見えない笑顔でルーちゃんがそう叫び、拳を上げる。やはり寿司が好きなのか?
『だから違うと思うぞ』
後書きらしい後書き
毎回思うんだけとジャックの回の話は長くなる上に投稿が遅くなりますね。その理由はバトルツリーのダブルバトルで50連勝の立役者がジャラランガで、思い入れがあるだけに長くなってしまいます。ヌメルゴン? あいつはヌメラの時のポケリフレが可愛いから……
それでは恒例の。
感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。また高評価やお気に入り登録、感想を送ったりすると作者のモチベーションが上がります。
番外編で出す話はどんなものがいい?
-
ライバル達とのポケモンバトル
-
ルチアとの砂糖大噴火シーン
-
他ヒロインルート
-
主人公のその後の日常
-
その他