SIX HUNDRED~俺の600族が最強過ぎなんだが~   作:ディア

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更新が滞りました。今回は前回よりも長いので許して下さい


第25話 水と妖精竜と600族

 ホウエン地方、ルネシティ。

 

 ダイビングやそらをとぶなどの特殊な手段でしかいけないその街に俺はルーちゃんと一緒に来ていた。

 

「おじさん!」

 

 ルチアがおじさんと呼ぶその男はルネシティのジムリーダー、ミクリさんだ。ミクリさんはコンテストでも名を挙げているがポケモンバトルの強さは有名でホウエン地方ではダイゴさんに次ぐ実力者だ。

 

「ルチア、元気にしていたか?」

 

「うん、元気も元気。おじさんは?」

 

「勿論元気だ。ところでルチア、その男はなんだ?」

 

「ボーイフレンドのシック君だよ」

 

「どうもご紹介にお預かりましたシックです。ミクリさん」

 

「ぼ……」

 

「ぼ?」

 

「ボーイフレンドだとぉぉぉっ!?」

 

 ルネシティが揺れるほど絶叫し、ミクリさんが俺をゴミを見る目で見つめる。

 

 

 

 

 

「許さん、おじさんは許しませんよ! そんなクソみたいな男と付き合うなんて絶対に許しません!」

 

「おじさん、ひどい! シック君が何をしたって言うの!?」

 

「こいつはだいばくはつを顔一つ変えることなく使うような奴だ。そんな奴をボーイフレンドにすることなんておじさんが許しません!」

 

 そういえばダンがだいばくはつを使った試合は公式試合だから見ているのか。

 

「シック君の作戦だよ。そうでしょ?」

 

「まあそう言われればそうだ」

 

「ほう、なら何故ボーマンダを出さなかった? ホウエン地方チャンプを破ったボーマンダならそんなことをしなくても勝てただろう」

 

「ボーマンダを出さなかったのはガブリアスと同じく氷を弱点としている為そもそもパーティの中に入れなかったんですよ」

 

 竜に氷は相性が悪い。それこそ炎や水等の氷を半減するタイプを複合していない限り負ける。相手がブリタ対策に氷タイプの技を持っているのは明らかでそれ故にマンダーは出せなかった。

 

 

 

「それでは残りの一匹はなんだと言うんだ?」

 

「バンギラス。ジャラランガを除いた私のポケモンが総掛かりで戦っても勝てないポケモンを切り札にしていたんですよ」

 

「なら何故そのバンギラスを出さなかった?」

 

「バンギラスを出す時は非常事態か、バンギラスの気が向いたときくらいです。そうでもしないとポケモン図鑑に記述されている通り、地図を書き直す事態になりますからね」

 

「……地図を書き直す?」

 

「ええ。ポケモン図鑑のほとんどが誇張されていますのはご存知でしょう。しかし世の中には本当にそれを実現してしまうポケモンがいます。私のバンギラスもその類いです」

 

 

 

 俺のポケモンの中で図鑑通りに再現しているのはギラギラの他にダンだ。メタグロスはスパコン並みの演算能力があると言われているがそれは正しく、理数系に関してはタマムシ大学の准教授でもあるマンダーを軽々と凌ぎ、本人がその気になれば全ての攻撃を予測することも可能であり、だいばくはつさえしなければギラギラやジャックと同じく化けモン──世界クラスのポケモンになっていただろう。

 

 

 

「それに私がだいばくはつを指示した理由はメタグロスがだいばくはつをしないとストレスを抱えるんですよ。マルマインと同じくね」

 

 何を言っているんだと言わんばかりにミクリとルーちゃんが俺を見つめる。

 

「あのメタグロスは特殊な環境で生きてきたポケモンなんですよ。育ての親の生きざまに憧れてだいばくはつをするようになったんです。それ以降だいばくはつをしないとストレスが溜まる性格になってしまったんです」

 

「……まさかマルマインの他にそんなポケモンがいるとは」

 

 ミクリさんが頷いて、納得する。

 

 

 

 

 

「だが、これとそれと話しは別だ! こんな男と付き合うなんて姉さんが許しても私が許さん!」

 

「おじさんどうして!? 顔も性格も良いし歌や料理、ポケモンバトルも出来る超優良物件だよ」

 

「だからこそだ。こういう男は大体浮気する」

 

「うっ……」

 

「いずれ捨てられるのは目に見えている。だから付き合うのはよしなさい」

 

 

 

 何故かミクリさんの中では俺とルーちゃんが夫婦になることを前提にしているが、俺とルーちゃんの関係は友人だ。それ以上の関係ではない。

 

 それに浮気する=片方を捨てるという発想自体が古い。世の中には一夫多妻(ハーレム)という言葉があり、一人の男が多人数の女を愛することも可能だ。仮に俺とルーちゃんが夫婦で、俺が浮気したとしてもルーちゃんを愛していれば捨てたことにはならない。

 

 ただしその場合ルーちゃんが許すかどうかはまた別の話だから、浮気をするならそれなりの覚悟が必要だ。

 

 

 

 

 

 しかし俺はハーレムは認めても逆ハーレムは認めない。これは俺が逆ハーレムに嫌悪感を抱くからという理由ではない。むしろ全員がハッピーならそれでもいいくらいだ。しかし逆ハーレムは男の数が多いほど不幸になり易く、俺が逆ハーレムを認めないのはそこにある。

 

 

 

 男が一人だけも女が複数人いれば女の数だけ子供も同時に作れるが、男が複数人いても女が一人だけなら一回の出産に対してどんなに多くても十人を超えて出産に成功することはない。また双子以上の出産は母体に負担がかかりすぎ、死ぬ可能性も上昇する。

 

 

 

 それだけじゃなく、一卵性、二卵性問わず双子になる確率は1/70で二卵性のみだとそれよりも確率が低いのは明らかだ。逆ハーレムで男三人の血を引いた子供を同時に作ろうとするなら人工受精するしかない。

 

 

 

 しかし医者はバカではなくむしろ天才の集まりで本人以上に体にどれだけ負担がかかるかも理解している。それ故に人工受精は原則一人の子供を作らせることしか許していない。

 

 

 

 そう言った背景から俺は逆ハーレムを反対しているだけであり、それほど逆ハーレムには嫌悪感はない。

 

 

 

 

 

「シック君が捨てるなんてあり得ないよ!」

 

「どうしても付き合うと言うなら私の屍を越えていけ」

 

 ミクリさんがミロカロスをボールから取り出し、戦闘体勢を取る。

 

「おじさん……」

 

 ルーちゃんが切ない目でチルルを取り出した。

 

「いくぞ、ルチア!」

 

 ミクリさんとルーちゃんのポケモンバトル。どちらもコンテスト優勝者であり、ポケモントレーナーでもあるこの二人の対決に水を差せる者は誰もいない。

 

 

 

 ただ一人俺を除いては。

 

 

 

 

 

「随分と卑怯な真似をしてくれるじゃねえか」

 

 声を被せるとミクリさんが俺を睨み付ける。

 

「何だと?」

 

「シンオウ地方チャンプに敵わないからといってか弱い女の子を虐めるのがジムリーダーなのか?」

 

 自分のことは棚に上げておいてほざく俺だが、ミクリさんのやっていることは俺と同等以下だ。

 

「虐めるだと? ルチアはトレーナーとしても優秀だ。バッチも8個集めている」

 

「俺が言いたいのはそう言うことじゃない。これはルーちゃんだけの問題じゃなく、俺の問題でもあるんだ。俺を黙らせなきゃ口出し出来る権利はねえってことだよ」

 

「つまり私と戦えと?」

 

「ただ戦ってもつまらねえ。俺はバンギラスやジャラランガ以外の一匹のみ、ルーちゃんはチルルのみで相手をしてやる。そっちは六匹(フルパーティ)でもいいぜ」

 

「ちょっとシック君!」

 

「俺がいるんだ。心配いらねえさ」

 

 俺がそう言って黙らせるとルーちゃんが顔を隠すように頷くとミクリさんの血管が切れる音がその場に響き、ミロカロスがボールに収納される。

 

「良いだろう……そこまでいうなら覚悟しておくことだな」

 

 地を這うようなドスの効いた低音ボイスがルーちゃんの顔を青ざめさせる。

 

「望み通りフルパーティで相手してやる!」

 

 そしてミクリさんはポケモンを三体同時に出してきた。

 

 

 

 

 

 トリプルバトルかよ。こっちは二体しかいないのにえげつないことをしやがる。いくら俺が煽ったとはいえやり過ぎじゃないか? などという感想は置いておこう。

 

 

 

 ミクリさんは水タイプをエキスパートタイプとしており、出してきたポケモンは三体ともに、ニョロトノ、マリルリ、ルンパッパは水タイプだ。

 

 それにニョロトノの特性で雨が降り始めたこととルンパッパを入れていることから雨パと呼ばれる雨を活用したパーティ編成だと推測される。

 

 

 

 

 

 それに対して俺が出したポケモン、それはイリアだった。

 

 

 

『久しぶりのバトルーっ!』

 

 雄叫びを上げ、次の瞬間には顎をしゃくり、左手を前に伸ばして指を真っ直ぐに伸ばして掌を上に向け、4本の指を2回連続で起こしてミクリさんを挑発する。

 

 

 

「やはりお前のようなポケモントレーナーにルチアと付き合う権利はないっ! マリルリれいとうパンチ、ニョロトノとルンパッパはれいとうビームだ」

 

 ミクリさんの指示が一斉にポケモン達に伝わり、一斉にイリアに攻撃する。

 

「イリア、左上方向に避けてマリルリにかみなりパンチ」

 

『了解!』

 

 イリアが俺の指示通りに従うとれいとうビームとれいとうパンチを皮一枚で避けマリルリにかみなりパンチが炸裂し、マリルリを一撃で仕留めた。

 

 

 

『ざっとこんなもんね! 次はあんた達の番よ!』

 

「チルル、いくよ!」

 

『おうっ!』

 

 イリアがチルルとルーちゃんに呼び掛けるとそれに応え、ルーちゃんがチルルをメガシンカさせて指示を出す。

 

「ニョロトノにめざめるパワー!」

 

『喰らえおらぁっ!』

 

 チルルの電気を纏っためざめるパワーがニョロトノに炸裂し、その場に倒れた。……弱すぎじゃないか? 

 

 

 

 

 

「……ギャラドス、ミロカロス出番だ」

 

 

 

 ギャラドスとミロカロスをボールから取り出す。ミロカロスが出てくることは予想していたがギャラドスは予想外だ。

 

 

 

 ギャラドスはコイキングを進化させたポケモンで、ギャラドスに進化させるまでが大変だが進化させた後は頼もしいの一言に尽きる。

 

 しかしギャラドスのタイプは水・飛で雷をよく通すポケモンでもあり、イリアのかみなりパンチやチルルのめざめるパワーと相性が悪い。それなら雷を無効化する水・地のナマズン等を出した方が良い。

 

 

 

「イリア、ギャラドスにかみなり──」

 

「戻れ、ギャラドス! いけっ、ラグラージ」

 

 俺がかみなりパンチを指示する前にミクリさんがギャラドスを即座に戻してラグラージを出す。

 

「しまった……!」

 

 ここまであからさまだと水・地のポケモンであるラグラージを出すとは予想外だった。だがそれを嘲笑うかの如く、ミクリさんが笑みを浮かべた。

 

『ぬぁぁぁっ! 気合いでミロカロスに当ててやるっ!』

 

 カイリュー特有の小さな羽を使い、イリアが進路方向を無理やりねじ曲げようとしてたが曲がり切れない。当たり前だ。

 

『ちょいさーっ!』

 

 その為ラグラージを蹴り飛ばして進路を無理やり変えてミロカロスに攻撃するという手段に出る。

 

『成敗っ!』

 

『ギャァァァッ!!』

 

 蹴り飛ばされたラグラージはほぼ無傷であるものの、かみなりパンチが急所に直撃したミロカロスが倒れる。

 

 

 

「は、反則だ!」

 

 

 

 確かに防御に特化したミロカロスをギャラドスのいかくによって弱体化したカイリューのかみなりパンチで仕留めるには最低でも三発入れなければならない。ところがイリアはそれをたった一撃で成し遂げた。反則と言いたくなるのもわからないでもない。

 

 

 

 だがなそれはポケモンバトルに熟練している俺だからこそわかることであってルーちゃんはわかっていない。イリアが途中で軌道変更したことが反則だと言っているようなものだ。

 

 

 

「反則もクソもポケモンが勝手に判断したことだ。文句を言われる筋合いはない」

 

 それにコンテストマスターがそれくらいのことで目くじらを立てるなよ。器小さいと思われるぞ。

 

「チルル、ルンパッパにつばめがえし!」

 

 その隙をついてルーちゃんがルンパッパにつばめがえしをしてダメージを与えるがルンパッパを沈めることは出来なかった。

 

 

 

 

 

「出て来いギャラドス! りゅうのまいだ!」

 

 その攻撃が終わった途端、ギャラドスが君臨し、りゅうのまいを発動させる。

 

「させねえ。イリア、ギャラドスにかみなりパンチ!」

 

『今度こそくたばれ!』

 

 ギャラドスがりゅうのまいをするのと同時にイリアがかみなりパンチを直撃させるも威力が足りず、仕留めきるまでには至らなかった。

 

「チルル、ギャラドスにめざめるパワー!」

 

 しかしギャラドスのいかくの影響を受けるのは物理攻撃だけでめざめるパワーは特殊攻撃だ。その影響を受けない。故にギャラドスが戦闘不能になるのは当然のことだった。

 

「時は来た! ラグラージ、真の力を見せろ!」

 

 パワー型のラグラージが姿を変え、より重厚に、より堅固になったメガラグラージとなった

 

「ラグラージ、カイリューにれいとうパンチだ」

 

『かぁっ!』

 

 特性すいすいの力を得たメガラグラージがイリアに一瞬で詰め寄り、イリアの腹にれいとうパンチを直撃させる。

 

『冷たっ!』

 

 イリアは軽く言うが、実際には大ダメージなのは明らかだ。カイリューの特性、マルチスケイルがなければ戦闘不能になっていた。

 

 

 

 それ故にミクリさんの次の指示が手に取るようにわかる。

 

「ルンパッパ、カイリューにれいとうパンチだ!」

 

「イリア、左に避けろ!」

 

 それは余っていたルンパッパにれいとうパンチを指示することだ。それを見透していたかのようにすぐさま指示を出し、避けさせる。

 

『あらっ!?』

 

『残念でした』

 

 ルンパッパの顔が驚愕に染まり、避けたイリアがルンパッパをチルルの元へ蹴り飛ばす。

 

「ルーちゃん、後は頼んだぜ」

 

「了解! チルル、ルンパッパにつばめがえし!」

 

 それを察してルーちゃんがつばめがえしを指示してルンパッパを仕留めた。

 

 

 

 

 

「ここまでは予想通り……だが! ここから先は絶対に通さん!」

 

 ここまで追い込まれることを想定していたのか? だがどうやったところで詰んでいる。

 

「お前はもう詰んでいる」

 

「戯れ言を! ラグラージ、カイリューにれいとうパンチだ!」

 

 予想通り、メガラグラージがイリアに襲いかかり冷気を纏った拳が迫る。

 

「イリア、まもる」

 

『はいはい』

 

 イリアがまもるを出すとラグラージの拳は阻まれてしまう。その好機を逃すルーちゃんじゃない。

 

「チルル、はかいこうせん」

 

『これが俺達の力だ、ミクリ!』

 

 メガチルタリスのはかいこうせんが直撃するがそれでは決定打にはならず、耐えきってしまう。しかしそれすらも予想通りだ。

 

「ラグラージ、カイリューにもう一度れいとうパンチだ! 今度はまもるが使えない以上確実に当たる!」

 

「果たしてどうかな?」

 

「何っ!?」

 

 イリアがそれを避けると、ミクリさんの顔が先ほどのルンパッパのように驚愕に染まる。

 

 マンダーやブリタに劣るものの、イリアもポケモンの技を見切る能力があり、三度も同じ技を出されて軌道を見切れないポケモンじゃない。

 

 

 

「イリア、げきりんだ」

 

『この勝負絶対に負けられないのよぉぉぉっ!』

 

 そしてイリアのげきりんが直撃しメガラグラージが地にひれ伏し、戦闘不能となる。

 

 

 

 

 

「……仕方ない。二人の交際を認める」

 

「よし」

 

「そうと決まれば、早速姉さんに報告しなくてはな! 婚約者が決まったと!」

 

 は? 婚約者ってなんだ、婚約者って!? 

 

「おい、ちょっと待──」

 

 それを止める間もなく、ミクリさんが別のポケモンでそらをとぶで姿を消してしまった。

 

「なあルーちゃん、俺とルーちゃんは友達だよな?」

 

「私達の関係はガールフレンドとボーイフレンドだよ」

 

 だから友達だよな? 一体どうしてこうなった。ミクリさんは何故婚約者なんてぶっ飛んだ発想をするのか、ホウエン地方から出てもその答えは出なかった。




解説
ミクリの本気のポケモンはミロカロスとギャラドス、ラグラージの三体だけで、それ以外の三匹は本気ではありませんでした。シック達が勝てたのはそれが主な要因です。

それでは恒例の。

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  • ライバル達とのポケモンバトル
  • ルチアとの砂糖大噴火シーン
  • 他ヒロインルート
  • 主人公のその後の日常
  • その他

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