SIX HUNDRED~俺の600族が最強過ぎなんだが~ 作:ディア
『お久しぶりですね、シック。今回は観光客として来たわけではなさそうですね』
「永住民になる為の手続きをしに来た訳でもないぞ」
永住民になったらそれこそ島キングを断る理由が薄くなる。俺の他にポニ島の島キング候補がマトモなら押し付けてやるんだが、唯一俺の他に候補に上がっている先代島キングの孫は若すぎて話にならない。
『ではバトルツリーという施設で戦いに来たのですか?』
「いや俺の出生を辿りに来た」
『どうやらその時が来てしまいましたか』
「ああ。俺が不自然に思ったのはレヒレ、島キングになるように俺に言ってきたことだ。島巡りを終えたとはいえアローラ地方から出た人間に対して島キングになれというのはいくら何でも異常だ」
『それの何処が不自然なのですか?』
「島キングになるには人々から認められる必要があり、島を出た裏切り者は原則認められない。それにも関わらず認められる絶対的な要素が俺にあるからこそ、俺を島キングにしようとしたんじゃないのか?」
『半分当たりですね』
「あ?」
『貴方の能力は人外のそれですが生物学上は人間です』
「それが何か?」
『貴方の両親、というよりも私が話すのはそれよりもはるか遠い先祖です。かつてこのアローラ地方は今でいう島キングに相当する朝の王、昼の王、夕の王、夜の王と呼ばれる四人の兄弟がこの地方を治め、私達カプ一族を敬っていました』
「レヒレ、今も敬られているのに何故過去形なんだ?」
『昼の王はある事件を境にカプ一族を敬わなくなりました。その事件は貴方達人間が
「UB……」
『UBはいずれも強力なポケモン達で、数が多いこともあり、カプ一族が手も足も出なくなるほどの戦力を持っていました。しかし昼の王と夜の王が二頭のUBを従えたことにより状況が変わってきました』
「それがソルガレオとルナアーラか」
『はい。ソルガレオとルナアーラの二頭を従えた王達はカプ一族達と共に他のUBを撃退し平穏を戻しました』
「それまでの話ならいい話じゃないか」
『しかし昼の王はその時点で無力だったカプ一族に失望していたのか、カプ一族の代わりにソルガレオとルナアーラを神として崇めるようになりました』
「まあ無理もない話だ」
『それに対して他の王はこれまで通り我々カプ一族を神として敬い、昼の王と他の王との対立が深まりました』
「おいおい、それじゃイッシュ地方の伝説とほぼ同じじゃないか」
ソルガレオ達の存在そのものは知っていたが、その話は初耳だ。
『イッシュ地方の伝説はどうかは知りませんが、王達の対立によりソルガレオとルナアーラも対立し、ソルガレオは昼の王に、ルナアーラは三人の王とカプ一族を味方につけて、互いに戦い、そして引き分けました』
「引き分けた?」
『どちらかと言うと共通の敵が現れて停戦したと言うべきですね。その現れた共通の敵は黒いポリゴンを形を変えたような敵でした。ソルガレオとルナアーラの二頭のうち一体を取り込んだことによって光輝く竜へと変化したそうです』
「光輝く竜……まさかこいつのことか?」
紙を取り出し、図書館で見たかがやき様を描いてそれを見せるとレヒレが目を見開く。
『……間違いありません! カプ一族の伝承に伝わる竜の特徴とほぼ同じです!』
「こいつは俺のルーツを辿る際に図書館で調べたら出てきたポケモン。ソルガレオやルナアーラを取り込むとカプ一族やソルガレオやルナアーラの片割れと共に戦える程の力を持っていたが、その力を制し切れずに暴走した。その為二人の王が協力してそのポケモンを封じた……って所か?」
『そうです。それ以降、昼の王はソルガレオとルナアーラの二頭の信仰こそ捨てませんでしたがカプ一族を再び敬うようになったのです』
「しかし他の王はソルガレオとルナアーラに対して信仰しなかったんじゃないのか?」
『確かに彼ら自身は二頭に対して信仰しませんでしたが、二頭とカプ一族に対して信仰するように呼び掛けました。今のアローラ地方の信仰の対象になったのは彼自身の力と言っても過言ではありませんよ』
「なるほどな。だがその王達が俺と何の関係があるんだ?」
『シック、貴方に関係するのは昼の王の方です』
「昼の王?」
『そう、昼の王はソルガレオとルナアーラのみを信仰させようとしたせいで数多くの犠牲者を出してしまったことを気にかけて、このアローラ地方では死に等しい島流しを自ら受け、消息を断ちました。数多くのカプ一族をはじめとした皆が死んだと思い込んでいました……貴方がここに来るまでは』
「俺か?」
『今の貴方と同じく昼の王は他の王と違い、ポケモンの技を扱える数少ない人間でした。そして貴方も同様に扱える。これだけでも昼の王の子孫と自称することが出来ます』
「それは仕方ないことだ。俺の故郷にもポケモンの技が扱える奴はいた」
そうでなければ闘タイプのポケモン達と殴り合えるかよ。
『その故郷の人間は昼の王の子孫です。その中でもシック、貴方は最も血が濃く受け継がれており、蘇らせた王達に貴方の姿を見せたところ、間違いなく昼の王の直系の子孫だと断言していました』
そういえばレヒレは故人を条件付きとはいえ蘇らせることが出来るポケモンだったな。それ故に人前では滅多に姿を現さないが、俺には真っ先に会いに来る。その理由が昼の王の直系の子孫という理由だから恐れ入ったよ。
「なるほどな……しかし解せんな」
『何がですか?』
「俺が周囲から太陽の王子と呼ばれる所以だ。俺が昼の王の子孫なのはわかったが、太陽がつく理由がない」
結局それなんだよな。俺が知りたいのは太陽の部分なんだ。王子云々はどうでもいい。
『昼の王が王子だった頃、彼は太陽の王子と呼ばれていました。おそらく貴方をそう呼んだ人間は昼の王のことを文献か何かで知り、昼の王の再来という意味でそう呼んだのでしょう』
「そういうことか……ようやく、謎が解けた」
しかしその文献を読んだ奴はどこにいるんだ?
少なくともそいつはアローラ地方の人間ではない。アローラ地方の住民は他の地方に行きたがらない保守的な人間が多く、アローラから外に出てもそれを話すようなことはしない。そんなことをすれば田舎丸出しだしな。
などと考えていると後ろから人の気配を感じ取った俺は後ろを振り向き、ボールを構える。
「やはり似ておる。あの兄者に」
誉められていることはニュアンスでわかるがポケモンの言葉でもない言語を話されてもわかるかよ。
「……と、この言語では通じぬか。流石、兄者の子孫だ。そういう気配を探る能力も長けているな」
アセロラと同じ髪色をした老人が現れ、俺をそう評価する。
『……まさか貴方は夜の王ですか?』
「如何にも。夜の王ザクロである」
真面目に働いている時のクチナシさんと同じくらいの威圧感を醸し出す一方でアセロラ以上に
『私が呼び寄せた訳でもない貴方が何故ここに?』
「兄者の子孫がどのような者か確認しにきただけだ」
『……いや、理由よりもどうやってここに来たのですか?』
「生前儂は霊使いだったからな。一時的に蘇るくらいは容易いものだ。ポケモン達の力を借りたお陰で霊タイプのポケモンだけでなくカプ・レヒレの言葉も理解出来るようになれたのは誤算だったが」
いや容易くねえよ。容易く出来たら全員が霊使いになる。昼の王も超人だがこの夜の王も超人だ。
「さて兄者の子孫よ。世界一のポケモントレーナーとなって戦友達と再び合間見えることを望んでいることは知っている」
「何故そのことを?」
「お主に取り憑いている背後霊から事情を聞かせて貰った」
「すまんな、シック。でもこれもお前の為なんだ」
後ろを振り返り、みやぶるを使うと何か見えるが、先ほどのザクロ老と同じ言語で喋っている為かニュアンスで謝っているのがわかる程度でしかない。
「兄者はソルガレオを従え、我らと対等に戦ってみせた」
我ら、ね。島キングに相当する奴ら三人をまとめて相手にして引き分けた昼の王がいかれた強さを持っていたことがわかる。
「しかし旅立った兄者が名を上げることが出来なかった以上、世界には兄者以上のトレーナーがおり、少なくとも兄者を超えなければ世界一にはなれぬ」
いや旅立ったって……島流しじゃなかったのかよ。などと突っ込んでも話の腰を折るだけだ。俺と同じかそれ以上の身体能力を持つ昼の王は島流し=旅立ちなんだろうな。
「兄者と対等に戦った我らに勝って世界一のポケモントレーナーになれる可能性があることを証明せよ」
そしてザクロ老の手元に現れたボールからポケモンが出でる。そのポケモンは月と夜をモチーフにしたようなポケモンであり、霊・超の伝説のポケモン、ルナアーラだ。
「マンダー、いけ」
『伝説狩りは私の管轄ではないのですが、最近戦っていませんし良いでしょう』
そういえばそうだな。マンダーは頭脳派であり、伝説などの力任せに戦うポケモンを相手にすることはほとんどない。マンダーにとって力任せに戦う伝説ポケモンは絶好のカモでしかなく、相手にする価値すらないからだ。
しかしこのザクロ老は島キングに相当する立場の人間だったんだ。つまり四天王クラスであることは明白であり、それも歴代最強と言われた昼の王と互角に戦ったことを踏まえると地方チャンプと同格と言われてもおかしな話ではない。
そのチャンプと同格の奴が伝説ポケモンを使うとなれば、イリアやダン、リック、ゴルメじゃ避けるのが遅すぎて分が悪い。ギラギラやジャックは火力がありすぎて一撃で終わっていたなんてことはしょっちゅうあり、話にならない。
そうなるとブリタとマンダーだけだが、後者を選択した理由はただ一つ。マンダーが一番技を進化させる可能性が高いからだ。
「マンダー、成長したお前の本気見せてみろ」
『無論ですよ』
マンダーがメガボーマンダにメガシンカし、りゅうのまいをする。そしてそれと同時にりゅうのまいから発生した風がマンダーの吐き出した炎で覆われ、りゅうのまいが炎竜の舞に進化した。……うん、自分でも何言っているのかわからねえし、センスもねえな。
『そんな炎の竜巻程度で怖がるとでも思ったのか? あいにくだが私は特殊攻撃が得意だ。火傷狙いなら近距離バカのソルガレオにすることだな』
「ルナアーラ、シャドーボールだ」
『いくぞ、下郎!』
そしてルナアーラのシャドーボールがマンダーがいるであろう炎に目掛け放つが、そこにマンダーはいない。
『ほっほっほっ。私を下郎呼ばわりとはやはり伝説ポケモンなだけあって傲慢ですね。だから私の動きを見抜けない』
「マンダー、だいもんじだ」
マンダーの口から吐き出された炎はだいもんじとは名ばかりの十文字の炎。しかも炎タイプが折々出す青い炎をレーザー状にして吐き出すとルナアーラに直撃し、よろめく。
『くっ……下郎の癖に、中々やるじゃないか』
『まだ言いますか。貴女がタフネスなのは認めますが後一撃で貴女を仕留められる自信がこちらにはありますよ』
その根拠は一体どこから来るんだ? などとこの時は考えていた。マンダーから後に聞かされることだがルナアーラはマルチスケイルの上位互換の特性により受けるダメージが半減されていただけにしか過ぎず、ダメージを受けた後は半減されることはない。それ故の根拠だそうだ。
「マンダー、止めを刺せ。やり方は任せる」
根拠がわからずともマンダーがそう言うのなら後一撃で止めを刺せると確信した。というか俺はいつでもマンダーに任せてもいいくらいには信頼している。
それをしないのはマンダーに任せきりだと他の奴らが言うことを効かなくなるからだ。特にダンやゴルメに悪影響を及ぼす。
『それでは過去の遺物には消えて貰いましょうか』
そしてマンダーのレーザー状のだいもんじがルナアーラに炸裂し、ルナアーラの姿が消えていく。
『おのれ……この私がソルガレオでもなく、あの訳のわからぬ生物でもない、ボーマンダに負けるとは……これが地方を超えた世界の実力だというのか』
『井の中のニョロモ、大海のホエルオー知らず。地方の伝説よりも強いポケモンはいくらでもいますよ。付け加えるなら私よりも強いポケモンもいます』
『何を……!? 』
ルナアーラの姿が完全に消え、ザクロ老が笑みを浮かべて両腕を上げた。
「こうもあっさりとルナアーラを倒すとは……兄者とてもう少し手こずるというのに大したものだ」
「降参か?」
「うむ。兄者はソルガレオとの絆で我らのルナアーラと対抗したがお主は違う。鍛え上げたボーマンダで倒してみせただけでなく、采配も任せる程にボーマンダとの信頼もある。その点ではポケモンを信用しきれなかった兄者を既に超えている。後は経験を積むだけで世界一のポケモントレーナーになるだろう。無力な儂から言えることはそれだけだ」
地方から出なかったから説得力に欠けるが、この夜の王も島キング以上の実力者だ。パワーアップしたマンダーだったから相手が悪かっただけで、地方チャンプ位の実力はあった様に感じられた。
「さらばだ。我ら兄弟はお主のことを見守っているぞ」
夜の王ザクロ老が消え、天へと還っていった。
『シック、私は貴方を応援していますが、同時に貴方を島キングに迎えたいと思っているのも事実です。それ故に提案があります』
「……言ってみろ」
『もし貴方が3年経過してもWPAの世界チャンプになれなかったらすっぱりと諦め、島キングになることを提案します』
「下らん、だがその提案に乗ろう」
『……提案した私が言うのもなんですが、本当によろしいのですか?』
「無論だ。レヒレ、良いことを教えてやる。世界チャンプになる人間はなろうとしてなるんじゃなく自然と世界チャンプになる。そういう運命の下に生まれているんだ。3年経ってもなれなかったら俺はそこまでの器だったってことだ」
『器ですか……』
「そうだ。無論努力と言ったものでその器は広げられるが限界はある。世界チャンプになるかどうかはもう既に決まっている」
ポケモンを鍛えるブリーダーとしての能力、ポケモンの能力に合わせた戦略、そして運。それらの総合力が世界一になれば世界チャンプになれる。ただそれだけのことだ。
『3年後、貴方が島キングにならないように祈っていますよ』
レヒレに背を向け手を降って別れを告げたその日、俺は
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