SIX HUNDRED~俺の600族が最強過ぎなんだが~   作:ディア

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第5話 ネタの宝庫ガブリアス、ブリタ

今、最も勢いのある地方のチャンピオンといえばシンオウ地方のチャンピオン、シロナさんが有名どころだ。いくらレジェンドと呼ばれるレッドさんの紹介状があっても彼は過去の人物。リーグ管轄外の人物と言われてしまえばそれまでだ。

 

しかしシロナさんは違う。若い上に美女で今をときめくヒーローだ。それまで他の地方でも女性地方チャンピオンはいくらかいたものの、僅か一度だけのチーズチャンピオンが多く、その一度目の防衛に成功したとしても二度目で負けてしまう為に低レベルだと言われていた。

しかしシロナさんは違う。幾度も防衛し、チャンピオンとしての貫禄を見せている。そしてシンオウ地方チャンピオン防衛最高記録まで後少しだ。世間はそんな彼女をヒーローにしない理由がない。

 

その現在リーグを賑わせる彼女を一般人の前で倒したらどうだ? 俺をヒールと見なすが、それ以上に俺がポケモンリーグ公式戦に出れないことによってリーグはシックと共謀したとかそんな風に叩かれ、リーグは悪の親玉となる。

ある者(シロナファン)は【シロナに公式戦でリベンジさせろ】と。ある者(シロナアンチ)は【無冠の帝王シックに挑戦権を与えろ】と騒ぐだろう。どちらにしてもリーグが俺を認めざるを得ない状況にさせる。それが俺のやるべきことだ。……もっとも後者の無冠の帝王云々は過大評価かもしれないが。

 

「シロナさん、この度はポケモンバトルの勝負をさせて頂きありがとうございます」

頭を下げ、シロナさんに感謝の態度を示す。今回の試合は俺がダイゴさんやゲンジさんを通してシロナさんに非公式戦の試合を申し込んだということになっている。

「いいわよ。だって貴方、非公式とはいえバトルレジェンド(レッドくん)ホウエンチャンプ(ダイゴさん)に勝ったんでしょ? しかも一方的に打ち負かしたんだから興味が湧かない訳がないわ」

「そう言って頂けると助かります。ところでこの試合、今後の参考にしたいので動画にしても宜しいでしょうか?」

「私にもその動画、共有してくれたらいいわよ」

「ありがとうございます」

そして取り出したポケモンは特性鮫肌、性格ようきのガブリアス。廃人トレーナー曰く「高速物理アタッカーガブの理想体」らしい。

『やっふぅ、マネージャーさん、ようやくオイラの歌手デビューかい?』

俺のことをマネージャーと呼んでくるガブリアスのブリタ。性格がようき過ぎて歌手を希望すると公言している歌大好きポケモンだ。俺のことをマネージャーと呼んでいるのは彼のバトルや歌の舞台を選んでいるからだ。

「バトルだバトル」

『ちぇっ! バトルか。でもバトルでもいいぜ。あのパツキンねーちゃんが相手かい?』

パツキンねーちゃん……金髪のお姉さん、シロナさんのことか。

「そうだ。あいさつしろ」

『よろしくお願いしまーす!』

歌手を希望しているというだけあって、礼儀正しく頭を下げる。

「へえ、躾が出来ているじゃない。でも躾だけじゃポケモンバトルは勝てないわよ?」

 

 

 

シロナさんが最初に出してきたポケモンはミカルゲ。このミカルゲという種族はブリタの天敵とまでは言わずとも相性は悪い。霊・悪なミカルゲは弱点こそ(フェアリー)の一つだけだが、竜の弱点である妖の技を覚える訳でもなければ、氷の技を覚えるという訳でもない。

ミカルゲが相手にやけどを負わせるおにびを覚えるから相性は悪いと言える。ありとあらゆるポケモンがやけどを負うと時間が経過するごとに体力が減るだけじゃなく、物理攻撃──正確には攻撃──の威力が半分になるというものだ。しかも体力を徐々に減らしても、いたみわけを覚えている為下手な火力でいけばこちらは体力を減らされるのに向こうは回復させられてしまい手詰まりになる。みがわりとの組み合わせで更に長期戦に持ち込むことも可能だし、みちづれで巻き込むことも可能だ。とにかく色々な型のミカルゲがいてその動きは予測不可能。

 

「ブリタ、じしん!」

『了解だぁっ!』

ブリタのじしんが炸裂し、ミカルゲが大ダメージを負う……これは急所いったか?

「ミカルゲ反撃よ! シャドークロー!」

それでも残るか。ブリタもマンダーには及ばずともイリアよりもレベルは高い。そんなブリタのじしんが急所当たって耐えきるなんてレベルが高く、しかも耐久型と考えていいな。……しかしいたみわけを覚えていないのか? いたみわけを覚えていたら厄介だったんだが。

「ブリタ、シャドークローを打ち負かすようにドラゴンクロー」

『ブリケンサンバァァァッ!』

ブリタがシャドークローを打ち消し、ミカルゲもろともドラゴンクローで攻撃する。俺は今、サラッととんでもない指示を出したがそれを実行するのがブリタの強みだ。

『やったぜ、マネージャー。オイラの力見たかい?』

くるりと振り返り、俺にそう尋ねる姿はテストで100点を取ってきた子供のようだった。

「よくやったブリタ、後でポケマメだ。次も倒したらガラマメ、全員倒したらにじマメもやる」

『ギラギラの兄貴専用と言われたにじマメがオイラに……? しゃぁっ! その約束忘れないでくれよマネージャー!』

ブリタのモチベーションが上がった理由はにじマメがこのパーティの中ではギラギラ専用のポケマメだからだ。

ギラギラ以外のポケモンが俺の許可なしに手を付けようものなら伝説ポケモンの暴走すらも生ぬるく感じてしまうくらいに暴れる。というか実際ディアルガとパルキアの二匹がかりでも止められなかった。唯一口出し出来る俺も、にじマメを切らせば機嫌が悪くなってしまうので俺が許可を出すことは滅多になく、にじマメはギラギラだけに許された特権なんだよ。

その特権をブリタが一時的とはいえ、得られると聞いて、手持ちの他のポケモンが大暴れするがギラギラがそれを許さず止めた。

 

 

 

「やるわね。そのガブリアス」

「そりゃブリタはバトルも歌もいけるポケモンですから」

「でも同じガブリアス使いとして負けるわけにはいかないわよ?」

シロナさんが取り出したのはブリタと同じ種族のガブリアス。ブリタにも言えることだがこのガブリアスという種族はカイリューやボーマンダクラスの強さを秘めているだけでなく、ありとあらゆる立ち回りが出来る。

「ガブリアス、ドラゴンダイブ!」

ブリタにそれはあかん。ブリタはマンダーとは違って無意識にそれを避けることが出来る。つまりタイムラグがほとんどない。その分、ブリタに攻撃の指示を出さなければならないという欠点もある。

「ブリタ、かわせ」

ブリタがガブリアスのドラゴンダイブを皮一枚で避け、次の動作に入る。

「ガブリアス、もう一度ドラゴンダイブ!」

「ブリタ、その前にドラゴンクローだ」

『オゥレィッ!』

ブリタの掛け声と共にドラゴンクローがガブリアスに炸裂し、倒れる。

「は、速い……! それに強い……!」

「俺のブリタは同レベルのガブリアスの中でも最速だから速くて強いのは当たり前ですよ」

 

 

 

「それなら、ミロカロス出番よ!」

ミロカロスか……厄介だな。ガブリアスがエースということを考慮するとミロカロスのレベルはそれ未満と考えられるがミロカロスは耐久が高い上に特殊攻撃が得意なポケモン。しかも竜の苦手なれいとうビームを覚える。ブリタは種族としてはガブリアス、つまり竜・地だからそのダメージは四倍。通常だったら勝てる訳がない。しかし取り替えようにも逆に不利になるのは明らかな上に氷が弱点でない二匹、ダンは便りにならないし、ギラギラは動く度ににじマメが必要になる。

「ブリタいけるな?」

『任せろぃっ!』

「よし、ブリタじしんだ!」

『えいやっさ!』

ブリタが躍りながらじしんを起こし、ミロカロスにダメージを与えるが対して効いているようではない……やっぱり硬いな。

「ミロカロス、れいとうビーム!」

ミロカロスの白銀に輝くれいとうビームがブリタを襲おうとするが、ブリタはそれを避けた。

『オイラはマネージャーの持ちポケモン1のかわし屋だぜ? ダークライのダークホール三回連続で回避したオイラの前じゃこんなれいとうビーム当たらないよっ』

そういえばそんなことあったな。こいつはダークライのダークホールを三回連続で避け、とことんおちょくりまくっていたな。

「ミロカロス、れいとうビームを続けなさい!」

「ロァーっ!」

「ブリタ、隙を見たらじしんで倒せ」

『それじゃいってみようか。Shall we dance?』

れいとうビームをすぐさまかわしブリタはじしんを引き起こしてミロカロスがダメージを負い、その場で倒れた。

『しゃっ、三タテだ! 後半分!』

ブリタが三タテしたことによる歓喜の雄叫びを上げる。

 

 

「シロナさん、次のポケモンを」

「……あはっ!」

「シロナさん?」

「ここまで絶望的な状況、いつ以来かしら?」

シロナさんは笑みを浮かべ、モンスターボールからポケモンを取り出す。そいつはシンオウのポケモンルカリオだった。それを見て俺は気づいた。絶望的な状況、つまりブリタに決定打を与えられるポケモンはシロナさんの手持ちにはいない。そんな状況にも関わらず、笑っていられる。流石現役チャンピオンというだけあって心が強いな。俺やヒガナだったら勝ち筋のないポケモンバトルは避けるように降参する。それがポケモンの為であり、次のポケモンバトルに生かす。レッドさんは試練的な感じだから例外。

「ルカリオ、インファイト!」

「じしんだ!」

ブリタのじしんが炸裂し、ルカリオが一撃で倒れる。無理もない。ルカリオは格・鋼の複合タイプで鋼は地を弱点としている。タイプ一致でかつ弱点をつけられていたら一撃で落ちるだろうに。地を無効にする飛が含まれたり、ふうせんを持たせたりしていたら話は別だが。

 

 

「あと二匹でせめてそのガブリアスを仕留めてあげるわ!」

シロナさんが出してきたポケモンはシビルドン。厄介なことにこのシビルドンは弱点がない。地は鋼や毒の他に雷に唯一弱点をつけるタイプだ。しかしそれを無効にするのがふゆう持ち。雷タイプでふゆうを持っているのはクワガノンの他にシビルドン系統しかいない。クワガノンは虫タイプであり弱点はあるのにシビルドンは雷のみなので実質弱点はない。

「そんな大口叩いて負けたら大恥かくだけですよ? ブリタ、ドラゴンクロー」

その為じしん以外でダメージを与えられるドラゴンクローを指示した。

「シビルドン、げきりんよ」

……流石だ。シビルドンがそれに耐えるのもあるが、俺のヤジを受けてなおシロナさんはマンダー並みに冷静に判断し竜タイプの技げきりんを指示する。当たればブリタには効果抜群でかなりのダメージを負う。

『でもオイラ、かわし屋ですからぁぁっ! 残念!』

もうお前、芸能界いけよ。そう思わせるくらいに見事な避け方だった。

「ブリタ、もう一度ドラゴンクロー!」

『シビルドン、竜の爪斬り!』

ブリタのドラゴンクローが炸裂してシビルドンが倒れる。光の粉唯一つもっているだけでここまで回避してシロナさんを追い詰めるなんてとんでもない奴だよ。

 

 

 

「これが最後よ。トゲキッス!」

ここで飛・妖のトゲキッスだと? ブリタの攻撃二つが無効化されてしまう……いやこれならワンチャンありだな。ブリタと同レベルのトゲキッスが最速でもブリタにはその速さは敵わない。

「ブリタ、ストーンエッジ!」

「トゲキッス、マジカルシャイン」

俺とシロナさんの指示が互いに通るものの、トゲキッスがブリタよりも早く動き、技を早く発動させたのもトゲキッスだ。通常であれば最速のガブリアスがトゲキッスよりも遅くなることはあり得ない。しかしある道具を持たせるとそれは覆る。

一つはせんせいのつめだが、効果を発動するのがランダムで余りそれは期待出来ない。となればもう一つのアイテムを持たせているのだろう。

「スカーフ持ちか」

トゲキッスが早くなった理由はこだわりスカーフが原因だ。そう、こだわりスカーフを持たせたポケモンが素早く行動出来る代わりに最初に出した一つの技に固執するという癖のあるアイテムだ。まさかシロナさんがそんなアイテムを使うほどブリタに勝ちたいと思うとは予想してなかった。

『マジカルシャイン、マジ痛いマジで速い。だけどオイラはギリ無事、武士の情けだトゲキッス!』

しかしブリタの耐久力を舐めたらダメだ。ガブリアスは氷でなければある程度は耐える。ブリタも然り。耐えないとしたら余程レベル差が生じているのだろう。

「キュ……」

『にじマメゲッツ!』

ストーンエッジが炸裂し、トゲキッスが目を回し倒れるとブリタが決めポーズのしぐさをやり、俺の方へ振り向く。

『さあマネージャーさん、にじマメを!』

「ほらよ」

『あざっす!』

そしてブリタがにじマメを食べ始め、カメラを回収する前にシロナさんに挨拶した。

 

 

 

「シロナさんありがとうございました」

「完敗ね……貴方のガブリアスのブリタ、かなり育てあげられているわね。一体どうやったらそうなるのかしら?」

「そうですね……参考程度にしかなりませんが、リズムですかね。ブリタは歌や踊りが好きだからとにかくそれに合わせて動くように覚えさせました。その結果必要最小限の動きで回避することが出来るようになりましたよ」

ブリタの方を見ると『ニジマメウマー』と満足げに齧っているのが見え、余程にじマメが食いたかったのだと思わせるな。ちなみに俺個人はにじマメは好きではなく、にじマメの何が良いのかよくわからない。

「リズムね……今度試してみるわ」

「そうして下さい。ところでシロナさん、この動画のデータをそちらにお送りしましょうか?」

「よろしくお願いするわ」

そしてシロナさんに動画のデータを送った翌日、シロナさんが素人に惨敗したということを理由に地方チャンピオンを返上するというニュースが流れることになり、原因を作った俺は外国へ逃げることになった。




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