「ん〜...」
光が指す白く大きなベッドから体を起こし、手を広げてあくびをする。
窓の隙間から小鳥の囀りが聞こえる。
「リリィちゃ〜ん、ご飯よ〜」
「は〜い」
「ん〜...」
返事をすると、リリィは大きなベッドから降りる
横で寝ていた一つ下の妹のユリィの頭を撫で、茶色のクローゼットから制服を取り出した。
寝間着から制服に着替えると、螺旋状の階段を荷物を持って降りる
「おはよう、お母さん」
「リリィちゃんおはよう」
お母さんと挨拶を交わすと、リビングにあるテーブルに座り、置いてある朝食を口にした
「ああ〜...この朝食が終わったら、リリィちゃんとしばらくお別れだなんて...」
3年間、魔法学園の寮にお世話になる事に決めていた
その事を悔やんでいるのだろうか
お母さんは「リリィちゃん成分補充」と言って食事中のチアの小さな背中を抱きしめ、リリィはその母の行動にため息をついた
「もう行くの?」
「うん、魔道車来ちゃうし」
最小限の荷物を手に取り、家を出る。
「行ってらっしゃ〜い」と手を振るお母さんに手を振り返し、魔道車に乗り込んだ
あとあと、妹にも別れを言った方が良かっただろうかと思ったが気にせずに先を急いだ
たくさんの建物を通り過ぎると、見た事のない景色が見えてくる
広々とした空、流れる綺麗な川、空を飛ぶ小鳥...
綺麗な景色に心ゆったりと寛いだ
ようやくブラコンの妹と親バカの母からの解放に羽を伸ばす
国立イリアス魔法学園までの道のりはまだまだ長い、その間迷惑のかからないように寛いだ
国立イリアス魔法学園、国が有する最高の学園である
この国の王もこの学園を卒業していると噂されるほど有名な学校である
魔道車を降りるリリィは、荷物を持ち学園の中に入っていった
学園の中は、街のようになっていた
「おお〜!!」
リリィは目を輝かせながら街の商店街を歩き続ける
客を呼ぶ人の声、美味しそうな匂いがする屋台や綺麗な服が売ってある服屋など、周りには色々なお店が立ち並んでいる
商店会を進んで行くとそれは極めて大きい建物が見えてきた
魔術を専門とした魔法学校、国立イリアス魔法学園の本校だ
校門には、沢山の人が学校内に入っているのが見える
リリィは楽しげに鼻歌を歌いながらスキップして、散り行く桜の花と共に本校に入っていった
校内に入ると「新入生はこちらです」の看板があり、その看板通りにリリィは進んだ。
緊張する生徒やかっこつける生徒など個性的な生徒が大勢いる。
「あ〜、この子の肌ぷにぷにで気持ちいいわ〜」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
自分より15cmほど高い黄緑色の髪をした少女がリリィを抱きしめる。
ぷにっと胸が顔にあたり、赤く顔を染める。
「こら、ローラ!小さい子が好きだからって抱きしめないの!」
金髪の少女がローラからリリィを引き剥がす。
リリィは息切れと照れ顔を赤く染め、クラクラしてまともに立てなかった。
「ごめんね〜、ローラったら可愛い子見つけるといつもこうで...」
「いやだった...小さい子の匂いを嗅ぐとなんだか興奮しちゃって...ぐへへ」
「このアホ」
「ギャン☆」
リリィの匂いを嗅ぎ興奮するローラを頭から殴った。
あほらしい声を上げるローラは、頭を抑え痛がった。
「あたしはシャロン、シャロン・スフィア...であの黄緑色がローラ・プリズムよ。よろしく」
「あの黄緑って酷くない?」
「うるさい変態」
2人の会話を聞いていくとなんだか和ましい気分になる。
リリィはシャロンに自分の名を名乗り握手して「よろしく」と言った
3人で「新入生はこちら」の看板の矢印に従い、先を急ぐ。
どうやらリリィたちが最後のようだ
走って先を急ぐと大きな広場が見えてきた。
中には水晶越しに座る先生と水晶の前に並ぶ新入生たちが居た
どうやらステータス適正テストのようだ
ステータス適正テストとは、自分がどのような身体能力、魔力量、そしてグリモワールの属性を持っているのかを調べるテストである
リリィたちはそれぞれシャロン、ローラ、リリィの順に並んだ
「リリィってどの学科に入るの?」
シャロンが学科の事を聞いてきた
自分は昔から決めていた職業がある、争いもなく自然なままに生きれる職業...
それは精霊農業師だ
精霊農業師とは、自分の魔力量に似合った精霊と契約して作物を育てると言うシンプルな職業の事である
「僕は精霊農業化に入ろうと思うんだ」
「へ〜。あたしとローラは対魔獣科なんだ」
「対魔獣科?」
対魔獣科とは、国を守る魔法騎士や冒険者に慣れる学科である。新入生から実戦経験を積む事でも立派な魔法騎士を目指すと言うシンプルなものだ。
「へ〜そんなものがあるんだ〜」
「ふふ〜ん」
ドヤっと自慢する自慢するローラにシャロンは呆れた
「シャロンさんどうぞ」
「は〜い」
シャロンの順番がきた
残り3人だけだからなのか新入生全員が注目する
このテストでは、100あればいい方だと言う
耐久:75
筋力:85
瞬発力:127
魔力:288
グリモワール:風
「シャロンさん、君に風魔法戦士を与えよう」
魔法戦士とは、この学校の生徒ランクであり、ステータスが上がればランクが上がる仕組みである
ランクが上がると風は強風、水は巨水などのランクに上がる
生徒達がザワザワと騒ぎ始めた
どうやら新入生トップのステータスだったようだ
グリモワールの種類も風と言うシンプルなものだが、とても強い属性らしい
さすがシャロンとリリィはおもった
「ローラさん、どうぞ〜」
「リリィちゃん行ってくるね」
「むがむがむが...」
「早く行け!」
「ブー、ケチね〜」
テストが終わったシャロンがローラを引き剥がし、水晶の前に座らせた
そして、テストが始まった
耐久:300
筋力:250
瞬発力:75〜280
魔力:120
グリモワール:闇
「ローラさん、君に漆黒の魔法戦士を与えよう」
生徒達から一斉に喝采が上がる
本当は黒の魔法だが、1個飛ばして漆黒になったからだ
「さすがね!ローラ!」
「シャロンもすぐに追いついてね」
「分かってるって!」
シャロンが友人のローラを妬まずに普通に接している事を見ているとほっとしてほっこりした
その会話を見ていると自分が呼ばれた
「最後はどんな奴かな〜」
「楽しみね〜」
生徒の視線がリリィに向けられる
プレッシャーと緊張に少し固まりつつ、リリィは水晶の方へと向かった
椅子に座るとテストが始まる。平均以下の成績を願いつつ、テストが始まった
耐久:65
筋力:15
瞬発力:70
「なんだ、平均以下じゃねぇか」
「期待してそんだったわ〜」
周りの生徒から散々な言い分くらった
少しは心が傷ついたが、これで精霊農業科に行けることは確定したとなると心が嬉しかった
「こ、これはなんだ!読み取り間違えじゃないのか!」
「いいえ、水晶は故障などしていません!」
先生たちが驚きのあまり同様しきっていた
自分のステータスが書かれた紙を見てみると、リリィは全身が石化するように固まった
魔力:300000
グリモワール:幻精
「リリィくん...き、君に幻精の魔女の資格をやろう...」
「魔女!?」
ええええええええええええええ!
生徒一同が驚きのあまり、広場中に響き渡る程の声を上げる
「すごいじゃない!リリィ!...リリィ?」
「あ...あぁ...」
「リリィちゃんがショックで失神してる!」
この魔力量では下級精霊が契約してくれない...
安心と安全の約束された将来がガラスのように砕けた悲しさ
リリィはそのショックで失神した
ぷにぷにとした触感が手に当たる
その感覚はマシュマロのように柔らかかった
目を開くと自分の手を胸に押し当てるローラの姿が目に映った
「あ...ああ..」
「あら〜♪積極的なんだから♪」
恥ずかしさのあまり言葉が出ない...
顔を赤く染め上げるリリィをローラは抱き上げ、そのまま自分の胸に押し込んだ
抜け出そうとするがどうやっても抜け出すことができない..
「むがむが...む..が..」
「ちょっと!ローラ!何してるの!」
顔を青くしたリリィを可愛がりながら抱きしめるローラから、シャロンはリリィよって引き剥がしたが、リリィは白目を向いていた
ーっっっp
「また失神してるじゃない!」
「え?誰がやったの!?」
「お前の胸じゃぁぁぁ!」
「痛い!シャロちゃん叩かないで!」
リリィを背負い悔し涙を流すシャロンは、ローラの大きな胸を思いっきり叩く
ローラは痛がり、自分の胸を撫でた
「いきなりなにするのさ〜」
「ふん!当然の報いをあげたまでよ!」
そっぽ向き、リリィを部屋まで連れて行こうとする
ローラは「まってよ〜」と言って走ってシャロンを追いかけた
「んん〜...あれ?いつの間に寝ていたんだろう...?」
さっきいたはずの病室とは異なる部屋、見たことの無いこと部屋には自分の家具が置いてあった
隣の部屋からはうっすらと声が聞こえ、少し広い部屋には二段ベッドが2つある
どうやらお母さんが手続きしてくれた寮の部屋のようだ
「ここが新しい自分の部屋か〜」
タンス、クローゼット、キッチンの位置、包丁の切れ味、シャワールームとトイレの位置、全て完璧である
食材も冷蔵庫に色々入っており、自分の私物も包みに包まれて置いてあった
包みをあけ、荷物を整理していると「きゃぁぁぁ!」と言う悲鳴が左隣から響いた
なんだろうか?と気になったが、流石に突然入るのは失礼だと思い、行くことをやめた
コンコン
「はーい、今出まーす」
ドアのノックを聞きつけ、ドアを開ける
ドアの前には焦げ臭い匂いがする物体が乗っているフライパンを持ったシャロンが立っていた
「助けてリリィ〜卵焼き作ったらこんなになった〜」
「え...えぇ〜...」
リリィの手を引き、隣の部屋に連れていく。
ドアを開けただけで鼻を押さえる程の酷い刺激的な匂いが漂ってきた
キッチンの鍋には紫色に変色した液体とドロドロになった物体が浮かんでいる
リリィは1度部屋のシャロンとローラを含む生徒たちを自分の部屋に入れた
「え〜と...何あれ」
リリィはあのよく分からない物体と液体の事を聞くと1人の偉そうな女子生徒が口を開いた
「何って料理ですわ」
彼女はエリザ・シャーロット、シャーロット家の長女である
シャーロット家は貴族でもかなり高い位置に属する高位貴族であり、そこのお嬢様と言うわけだ
性格は傲慢で常に他人を下に見ている...堂々としたお嬢様と事だ
「あれは料理ではありません」
「何よ!下民のくせに!」
何よりこの性格だ、出来たら関わりたくはない
リリィはそう思った
「そうですよ、あれは料理ではないですよお姉様」
もう1人の女子生徒はシャーロット家の次女であり、エリザの双子の妹、エリカだ
温厚な性格で周りを気にし、困っている人がいればすぐに助ける
まるで聖女のような性格の持ち主だが...
「あれは汚物です!」
「グハッ!」
思った事を躊躇なく言う性格なので一体何を仕出かすのか分からない
心に深い傷を負ったエリザを支えるローラ、シャロンはそんなローラを見て、思い出したかのように口を開いた
「確か、ローラは料理出来たわよね?」
「うん、出来るよ〜」
「じゃああんたが作ればよかったじゃない!」
「ええ〜、だって〜...フライパン強く握りすぎて鉄変形しちゃうもん」
あはははと笑うローラを顔を青くして見る
刻々と時間がすぎていく中、リリィが包みから何かを取り出した
「もう仕方ないな〜」
「何それ」
「マフラー...でしょうか」
リリィがため息をつきながら取り出したのは、妹特製のマフラー
リリィは料理などの作業の時は毎回このマフラーを首に巻くことで集中力を高めているのだ
リリィはマフラーを首に巻き、包丁を握りしめた
野菜、肉と切っては煮込み、卵を割ってかき混ぜ、フライパンで焼く
その手際の良さにはシャロンたちも驚いた
数十分後、完成したキノコのクリーム煮とオムライスを椅子の4つある机に置き、作った自分の分はキッチンに置いた
「はい、暖かいうちに食べてね〜」
「美味しそう〜」
「いっただきま〜す」
「あ、ちょっと!早いですわよ!」
「お姉様が遅いだけだよ〜」
スプーンを持ち、オムライスを食べる
トロっとした半熟の卵が口に広がる
クリーム煮もまろやかな風味を交わし出し、いい味を出していた
「美味しい〜」
「本当に美味しいですね〜」
「リリィが料理できたなんて意外だわ」
「ま、まぁまぁね、褒めて遣わすわ」
シャロンたちからは好評だったが、エリザからは不評だったようだ
エリザからもし作れと言われても作らないようにしよう..リリィはそう思った
リリィは食事中にふと思った事をシャロンに聞いた
「どうして隣の部屋に居たの?」
「そりゃ...女子寮だし隣室でもおかしくないでしょ?」
「え?女子寮?」
素早く食べ終えて食器を流し台で流すとクローゼットの中にある小さな小包を手に取った
中身は手紙だ
その手紙を広げて中身を見るとこう書かれていた
『 愛しの可愛い子リリィちゃんへ
あなたの妹
ユリィちゃんの要望と男子に狙われないために女子寮に入れさせていただきました☆
まぁ体の一部以外全部小さな女の子のようなものだからバレないと思うけど、頑張ってね☆
愛しの母より
PS:1ヶ月後にユリィちゃんも来るから
愛するユリィより』
「あの親バカとブラコンがぁぁぁ!」
リリィは手紙の内容に頭を抱えながら叫んだ