今日の授業、亜人との共存の歴史を聞いていると昔の事が頭に浮かぶ
自分が奴隷商人に連れ去られ、エルフと4年暮らし、その頃に仲良かった少女の事を思い返す...
「あら?何かしら?なの沢山の人だかり...」
「さぁ?なんでしょうか...」
肘をついてエルフと出会った日の事を思い返しながら窓を見る
沢山の人だかりと同じ色の服をきた集団が目に入る
どうやら軍隊のようだ
その先には、馬車から降りてくる老人を迎える赤いローブを着た若い男が居た
「お待ちしておりました」
「いえいえ、こちらこそわざわざ馬車を出していただいて誠に感謝しておりますぞ」
「それぐらい当然の事ですよ」
赤いローブの若い男は、老人を連れて歩き出す
周りからは喝采が溢れる
このローブの男はどうやらこの国の国王のようだ
通りで騒がしい訳だ
国王は老人と一緒にこの学園都市内にある「第2王宮」に入っていった
「は〜い、じゃあ31日から2日に大魔法戦闘大会がありますので、頑張ってくださいね〜」
そう言うと素早く教室を出て、いきなり「国王様〜♡」とか言いながら走り去って行った
この教室から自分以外にも認識させてしまう程有名なのか...
リリィは大魔法戦闘大会のプリントと荷物を持って教室を後にする
参加条件はどうやら2人ペアになる事らしい...ローラたちやエリザたちはもう決まっているのだろう...
自分のパートナーをどうするか...リリィは考えた
「はぁ〜...やっぱり休みっていいよね〜」
2日前は何故か王様が居たりして騒がしかったが、今日は休日だ。騒ぎも落ち着き、パートナー作りの事をすっかり忘れてゆっくりと寛げる
ベッドの上でゴロゴロと寝転がる
入学当初は最悪なスタートをきってどうなる事だろうかと思ったが、ネーミングセンスのない学園長がくれた「封印魔具 : マジックコントローラー」と言うリングを両腕に付けたおかげで魔力が抑えられトラブルもなく、女として振る舞っているから男だとバレてもいない...はず...
自分のグリモワール...「幻精」は特殊なグリモワールらしい、主に精霊魔法と言う特殊な魔法を唱える事ができ、幻の名が付くグリモワールの所有者はそういないらしい
確か...この国には、僕の「幻精」と対立グリモワールの「幻魔」を持つ者と同種のグリモワール「幻禁」を持つ者が居るとか何とか
まぁ会う事はないだろうな〜
リリィはそう思うとまたゴロゴロとベッドの上で転がった
緊張した学校生活にもこの女子寮生活にも慣れ、ぐっと羽を伸ばした
「(そう言えば、入学式当日に見たあの服屋寄ってみたいんだった)」
気になるお店が商店街にある事を思い出したリリィは、着替えるとドアに鍵をかけて外出した
外は賑やかで、故郷の街とは比べ物にならない程だった
貴族、商人、平民、亜人、魔人、種族や位の高さなど関係なく全ての国民が平等に買い物や商売を楽しんでいる
流石、国一の学園都市と言うわけだ
早速、気になる服屋に向かう
「はぁぁぁぁぁ〜〜///これはいい///」
左斜め下にピンク色のハートが小さく付いた女性用の白いTシャツ、柄が違うニーソ、そして黒い短パンに興奮した
可愛い子には目がないローラと違うが、リリィは可愛い服には目がないのだ
かわいい服を見つけるとすぐに買い、それを続けていくうちに、いつの間にか10着をゆうに超えていた
高額な会計を終えると満足感でいっぱいになったような顔をしながら寮に帰る
帰りに人気のない道を通ると、自分と同じくらいの背を持つ緑色をした髪を持ち、小さく尖った耳の少女が柄の悪い男たちに絡まれていた
亜人だろうか?
「なぁ?グリモワールを貸してくれんか?少しだけでいいから」
「ダメ!来ないで!」
「なぁ。めんどくせぇし取り上げようぜ!禁術使いのグリモワールを取り上げようぜ」
「た、助けて〜!」
グリモワールは魂その物...それを奪われる事は奪った物に縛られる同然だ
今の現状に迷う事はなかった
「風魔法:ソニックブラスト!」
「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
グリモワールから放たれた魔法は少女に絡む男たちだけを綺麗に吹き飛ばした
「こっち!」
リリィは男たちが倒れている間に少女の手を掴み人混みの方に走っていった
リリィは繋いだ手を離さずに急いで女子寮の自分の部屋に連れ込んだ
「はぁはぁ...ここなら安全だ」
窓から外を確認するとさっきの男たちが走って探しているのが見える
今出るのは危険と判断したリリィは少女をしばらくの間、ここに居させることにした
「助けていただき...あ、ありがとうございます!」
「いやいや、当然の事をしただけだよ」
少女は涙ながらにお礼を言う
相当嫌な思いをしていたのだろう...
そう思うと自分の過去が頭の中を横切る
ギュルルルルル...
お腹のなる音が少女から聞こえた
長い時間逃げ続けていたから何も食べていなかったようだ
恥ずかしがる少女を見て、リリィはニッコリ笑う
「ちょっとまってて、何か作るから」
「いえ、そんなお気遣いなく...」
「いいからいいから」
キッチンに立ち、冷蔵庫から玉ねぎやベーコンなどを取り出し、切り始めた
炒める音と香ばしい香りに少女はヨダレを垂らす
お皿に盛った炒飯が少女の前に置かれた
「た、食べてもいいんですか?」
「もちろん!さぁさぁ暑いうちにどうぞ」
「いただきま〜す!」
あまりの美味しさに夢中になって食べる
そしてあっという間に完食していた
少女は食器を流し台で流す
「私、ネロ・エンジェルって言うのよろしくね」
「僕はリリィよろしく」
「え?」
リリィの名前を聞いた途端、ネロは驚いた
ネロが何で驚いたのか首を傾げる
「どうしたの?」
「え?あ、何でもない」
どうやら考え事をしていたようだ...でも一体どんな事なのだろう
「何で追いかけられてたの?」
リリィが追われていた事の理由を聞くと、ネロは沈黙して一つだけ約束をする
「絶対に誰にも言わないでね」
「う、うん」
約束を交わすとネロは唾を飲み、口を開いた
「私、禁忌の魔女なの...だから多分「幻魔」の2年生から狙われていると思う...」
「なんで?」
「なんでって...多分パートナーにして大会に勝つためにだと思うよ」
「組めばいいじゃん?」
「嫌!あんな残酷主義者は嫌!」
ネロがここまで嫌うという事はかなりの性格破綻者なんだろう
だがしかし、このままではずっと狙われ続けてキリがない
リリィは策を考えているとネロは魔法紙と昨日貰ったプリントを包に入れるとその間魔法でどこかに飛ばした
「なにしてるの?」
「手紙送ってるの」
ニコニコするネロを少し不思議に思う
どんな手紙の内容を誰に送ったのか...
その答えはすぐにわかった
「あ、帰ってきた」
「帰ってきた?」
「うん手紙が」
送った先からふわりと風に仰がれるように手紙が来た
内容を確認してみようと手紙を開いた時、その内容にリリィは困惑した
内容はこうだ
『 俺様の礼儀正しいお誘いを無視して別のやつと組んだだと〜?笑わせるな!絶対に大会で殺してやるから首を洗って待っておけ!』
相当キレているようだ
一体何をどうしたらこんなに怒るのか...どんな内容の手紙を渡したのか、リリィは聞いてみた
「確か〜...『 私はお前みたいな変態とは組まないよバーカ 』て書いて照明のプリントのコピーと一緒に送ったぞ」
「えぇ...どうするんだよ〜」
「大丈夫よ!私たちなら勝てるわ!」
え?私たち?
耳を疑うが、確かにそう聞こえた
リリィはパートナーのもう1人は誰なのか、恐る恐る聞いてみる
「誰って....決まってるじゃない!リリィ!貴方よ!」
「....え?..」
聞き間違えではなかった...
勝手に決められ、そしてこんな事に巻き込まれる...
リリィは休日と言う厄日と災難で呆然とした
第2王宮
「...で急な訪問どのようなご要件です?エルフの国、国王陛下」
この老人は実はこのアレイスト王国と共存共栄を結んだ同盟国、エルフ共同連盟と言う国の国王だ
国王が老人に要件を聞くと老人はすんなり口を開いた
「対した用事ではありませんよ...ただ、私の孫娘の成長を見ようとここまで来たわけですぞ..」
「左様ですか...では明後日の大魔法戦闘大会をご覧になるといいでしょう。彼女の事です、大会優勝も成し遂げるかもしれません」
そう言うと国王は老人に地図を渡す
その地図には会場へ道が記されていた
老人はその地図を手にすると座っていた椅子から立ち上がり、出口へと向かう
「おっと、ひとつ聞き忘れておりました」
「?なんでしょう」
老人は振り向き、1枚の小さな写真を国王に見せた
その写真には、幼く白い髪の小さな少女のような子供が写っていた
「この子は...!」