当然リリィ視点。
これはクリスマスにトナカイさんと海に行ったあとのお話――
「トナカイさん、今度は夏に海へ連れて行ってくださいね。ジャックとナーサリーも一緒に」
「もちろんだよ、リリィ。あと、そろそろカルデアに着くから準備してね」
そう言うと、マスターはソリを降下させて行く。
カルデアに着くとマシュさんと本来の私が出迎えてくれた。挨拶が済むとマシュさんが指示を出す。
「早速ですが、先輩は医務室でバイタルのチェックを。ジャックさんとナーサリーさんはお部屋で休憩を取ってください。リリィさんはジャンヌさんのお部屋へ」
どうやら、マスターとジャック、ナーサリーとは今日はここでお別れのようだ。
「さぁ、行きましょうか。リリィ」
本来の私はそう言うと、手を差し出してくれた。私はその手を取り着いて行く。
……歩くにつれて頭がぼーっとして意識が薄れていく。
「あらあら、疲れてしまったのですね。今はゆっくり休んでください」
柔らかな感触に包まれている。寝心地がいいのでずっとこのままで居たいが、声がする。
「いつまで寝かせてるのよ? そろそろ起こしなさいよ」
「まあまあ、この子も頑張ったんですから、少しくらい寝ててもいいじゃないですか」
成長した私と本来の私の声だ。目を開ける。
「あっ、目が覚めましたか? リリィ」
「はい、本来の私。おはようございます」
「アンタ、いつまで聖女様に膝枕されてるのよ。仮にも私なら聖女様に甘えないの」
膝枕の感触が名残惜しいが、とりあえず体を起こす。
「本来の私、ここまで運んでくれたんですね。ありがとうございました。あと成長した私、カルデアに再召喚されていたんですね」
「部屋に戻って来たら、サンタの格好をした私のリリィが居るの。驚いたわ」
「まぁ、それはオルタの自業自得なんですけどね。覚えていないようでしたので説明はしました。それよりリリィも起きたことですし、本題に入りましょうか」
本題とはなんだろうと考える私。その様子を見ながら、本来の私は話を続けた。
「リリィ、あなたはもう立派な一騎の英霊です。自分のことは自分で決めなければなりません」
「そうですね、本来の私。実に論理的です」
「では早速決めてもらいましょう。貴女の部屋を……」
本来の私の話が終わる。私は相部屋の相手を決めなければならないらしい。本来の私と成長した私の部屋かジャックとナーサリーの部屋、どちらにするのかを。
そもそもカルデアはサーヴァントが大勢で暮らすことを想定されていなかったが、マスターの人柄のおかげで力を貸してくれる英霊が何人も出てきた。そこでマスターとマシュさんが部屋を上手く振り分けていたが、今回は本来の私が2人に頼んで私自身に選ぶ権利を与えてもらったらしい。
「もちろん、私達ジャンヌを選んでくれたら歓迎します。しかし、友達と過ごすことで得られるモノも多いと思います」
「私は歓迎しないわよ」
気配りができる本来の私と違って、成長した私のなんと意地悪なことか。私は答えを出す。
「決めました、この部屋にします。確かに友達と一緒に過ごすことも大切です。でも、私にはやらなければならないことがあるんです」
「それはなんですか?」
「成長した私の矯正です!」
「はぁー!?」
成長した私の嫌そうな顔を見ながら私は語る。
「本来の私は清楚しとやか可憐、正に私の理想像です。それに比べて成長した私は駄目です、全然駄目です。その投げやりな態度からは将来性が全く感じられません。私の未来の姿に相応しくないです。この部屋で私が成長した私を矯正することで本来の私に近づいてもらいます」
「アンタ、いい加減にしないと燃やすわよ!」
「まあまあ、どんな理由にせよ私達の妹が私達を選んでくれたんです。歓迎しましょうよ、オルタ」
「ふんっ、もう好きにしなさい。私は知りませんから」
「これからよろしくお願いしますね、リリィ」
こうして私、ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィのカルデアでの生活が始まった。