シェイクスピアが百合おじさんになってしまった。
思い返して見ると、寝込みをジャンヌに襲われ続けている。
ジャンヌは私とリリィを妹として見ている。そして、妹達に対する愛情がハグという形で現れてしまうらしい。リリィは喜んでいるが、もちろん私は抵抗している。しかし、寝ている間は無防備で起きると抱き枕にされている。正直、もう慣れてしまっているのだが……
「慣れては駄目だと思うのよね。そもそもやられっぱなしというのが、アベンジャーとしてどうかと思うのよ」
「別にいいじゃないですか。私としては、本来の私の包容力を見習ってほしいぐらいですけど。こんなことを言うために私を食堂まで呼び出したんですか?」
リリィは相変わらずジャンヌよりの意見しか言わない。本当に私のリリィなのだろうかと思う。
「アンタ、いつも聖女様にぴったりくっついてるから弱点ぐらい知ってるんじゃないの? 少しは協力しなさいよ」
「拒否します。もう私は部屋に戻りますね。あと、プリンご馳走様でした」
プリン分ぐらい協力してくれてもいいでしょうに。どうやら不毛だったようだ。私もそろそろ部屋に戻ろう。
「話は聞かせてもらいましたぞ! ぜひ吾輩に貴女の復讐劇を執筆させていただきたい!」
シェイクスピアめ、私とリリィの会話を盗み聞きしていたらしい。とても胡散臭いが、なぜかジャンヌに対して有効な気がする。
「まぁ、話だけは聞いてあげましょう」
それから数日が経った。リリィはちびっ子達の部屋でお泊りをしている。私は食堂で時間を潰し、ジャンヌが寝た頃合いを見て部屋に戻る。
シェイクスピアの言葉を思い出す。
「寝ている間に嫌なことをされても、された相手は寝ているのだから何も感じない。それは仕掛けた者の自己満足に過ぎないのです。逆に、寝ている間に相手が喜ぶことをする。自分が寝ている間に嬉しいことがあったと知れば、相手は起きた時にとても悔しいと感じるでしょう!」
確かにその通りだと思う。だから、私はジャンヌが喜びそうなことをする。
「まず抱き枕になってもらいましょうか。いつも私を抱き枕にしてるんですから当然です」
そして、起きた時に自分が抱き枕にされていたと知ったらどんな悔しい顔をするのか、楽しませてもらいましょう。
「ふふっ、呑気に眠ってるわね。アンタは今かわいい妹のオルタちゃんに抱き枕にされているのよ」
ジャンヌをぎゅっと抱きしめる。悔しいことに、すごく抱き心地が良い。加えて、寝顔がすごくかわいい。当然だ、私と同じ顔なのだから。
「次は名前を呼んであげましょうか」
以前から聖女ではなくジャンヌと呼んで欲しいと言われていたが、恥ずかしくて本人には言えない。だが、眠っている今なら言える。
「ジャンヌ……お姉ちゃん……」
流石にサービスし過ぎた。恥ずかしくて顔が真っ赤になる。
急にジャンヌが抱きつき返してきた。目を覚ましたのか、と冷やっとしたが寝ぼけているようだ。
「オルタ……大好き……です……」
そう寝言を残し、そのまま動かなくなる。困った、脱出できない。
結局、そのまま朝を迎えてしまった。
「オルタ、おはようございます。近いですね」
「ようやく目を覚ましたわね、聖女様。アンタが寝ている間に、なにがあったか教えてあげましょう」
いよいよ、仕上げだ。寝ている間に私から抱きついたこと、ジャンヌと呼んだことを教えて悔しい思いをさせる。
「どうしました、オルタ? なにがあったんですか?」
言えない、言えるわけないじゃない。恥ずかし過ぎる。
慌てて部屋を出る。私の行き先は決まっている。この結末を予測していた者、どう転んでも面白いと予想していた者、シェイクスピアを許しては置けない。
「吼え立てよ、我が憤怒」
その日、私はカルデアが記録している宝具威力の最大値を更新したのだった。