イチグンからニグン落ち   作:らっちょ

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???
「遂に私の出番ですねっ!ンッ~、モォモォンガ様ッ!!」

モモンガ
「おいこら止めろッ!出て来んなっ!?」


……という訳で彼の出番は先送りにされました。
 
 




第10話 禁断の箱を今、開く時が来た

 

 

 ちょっとしたトラブルこそあったものの、その後も検証実験を含めたモンスター虐殺は続いた。

 

 まず最初にアインズさんから聞いたのが、【狂戦士】(バーサーカー)という職業についてだった。

 

 【狂戦士】(バーサーカー)は生粋の前衛職であり、ユグドラシルでも超希少な職業であったらしい。

 

 物理攻撃や素早さに特化したステイタスに加え、魔物を討伐することによりボーナスが入る継戦能力に優れた職業。

 

 デメリットとしては、状態異常や精神異常、各種属性魔法に対する耐性が低くなってしまう事だが、それも装備で何とか出来る範囲なので問題ないとのこと。

 

 

「……何よりこの世界では、【狂戦士】(バーサーカー)常時発動技能(パッシブスキル)が、とんでもない仕様になりましたからね」

 

 

 そういってブルリと武者震いするアインズさん。

 

 この職業の持つ職業スキルに〈狂戦士の魂〉(バーサーカー・ソウル)というものがあるのだが、このスキルの効果が『様々な種類の敵を討伐することで、それに応じたステイタス補正が入る』というものであった。

 

 ユグドラシル時代は大したステイタス補正効果もなく。ログアウトする度に効果がリセットされる為、完全にオマケ扱いのスキルだったのだが、この世界にはそもそもログアウトの概念が存在しないのだ。

 

 つまり効果が永続的に続く為、色んな種類の敵を倒せば倒す程に、俺のステイタスは向上していくというぶっ壊れ性能になったのだ。

 

 

「さぁ、次は死の騎士(デス・ナイト)を倒して防御力を底上げしましょう!」

 

「……おっふ」

 

 

 故にアインズさんは張り切って、自らのスキル・魔法・アイテムを用いて色んな種類の魔物を召喚する。

 

 俺に倒させることで、ステイタスの底上げを狙っているのだ。

 

 ズラリと闘技場に頭を垂れる魔物達には圧巻であるが、これらの魔物を全て俺が殺さなければならないことを考えると心が痛い。

 

 

「――すまんな」

 

 

 僅かばかりの贖罪を込めながら、召喚されたばかりの死の騎士(デス・ナイト)の頭にエスカリボルグを振り下ろす。

 

 せめて苦しまぬようにと、向上した腕力で思い切り振り下ろしたその一撃は、死の騎士(デス・ナイト)の堅牢な防御を突破。

 

 頭部が消失した死の騎士(デス・ナイト)は、黒い煙となって霧散する。防御に優れた魔物は、その殴打による一撃で即死したのだ。

 

 

「「……あれっ?」」

 

 

 此処で俺とアインズさんは疑問の声を上げた。

 

 

 死の騎士(デス・ナイト)は防御に特化した魔物である。

 数多くの防御力を向上させるパッシブスキルを保有しているし、どのような攻撃でも一度だけ耐える壁役としての能力も持っている。

 

 故に武装して強化されているとは言え、Lv15程度の俺の攻撃など余力を持って耐えれるはずなのだ。

 

 だからこそ俺は、同じ疑問を抱いているであろうアインズさんに確認する。

 

 

「……これ、どう思いますアインズさん?」

 

「……もしかしたら【狂戦士】(バーサーカー)のスキルやフレイバーテキストに、そのような効果が発動するものがあったのかもしれませんね。

 

――私が覚えていた限りでは、そんなものはなかったはずですが」

 

 

 700種類以上の魔法の名称や効果を、全て丸暗記しているアインズさんがそう言うなら、それ以外の可能性も考えた方が良いだろう。

 

 

「……例えば、俺がプレイヤーじゃないからとか」

 

「……それは一体どういう意味ですか?」

 

 

 アインズさんが首を捻りながら尋ねて来るので、俺は自らの仮説を端的に説明した。

 

 俺はあくまでニグンの肉体に憑依転生した一般人。ユグドラシルのプレイヤーではないのだ。

 

 だからこそユグドラシルのルールに縛られずに行動が出来る。

 

 もし死の騎士(デス・ナイト)の保有していたスキルが、プレイヤーに対してのみ効果を発揮するものであったとしたら?

 

 死の騎士(デス・ナイト)が攻撃に耐え切れず一撃で即死した理由にも、何となく説明がつくのではないだろうか。

 

 

「成程、原住民とプレイヤーとの違いですか。

――それは早急に調べなければならない案件ですね」

 

「……あ゛っ」

 

 

 アインズさんの瞳がギランと輝く。

 俺は自らの失言に気が付いて、思わず声を漏らしてしまった。

 

 今まで完全に忘れていたが、この人は重度の蒐集癖があり。自分には使えないと判っていても、数多くの塵アイテムを、コレクションとして保有していた人物である。

 

 そしてそんな彼の癖は、情報収集にも遺憾なく現れており、未知の情報を入手したら、まず病的なまでに検証をするのだ。

 

 そして今回の実験に協力出来るのは、原住民の肉体を持ち、ナザリックと協力関係にある俺だけである。

 

 

「イチグンさん、少し検証実験に協力して貰えますか?」

 

 

 そういってにこやかな表情で、『生命維持の指輪』(リング・オブ・サステナンス)を手渡して来るアインズさん。

 

 その笑顔はこれまで見た中でも、飛び抜けて邪悪に見えてしまった。

 

 

「あっ、ハイ」

 

 

 彼から指輪を受け取り、二つ返事で頷く俺。

 

 結局、其処から不眠不休で三日間の間。検証実験に付き合う破目になった。

 

 

 

 

 

 ・・・・・・

 

 

 

 

 

 三日間の検証実験を経て、プレイヤーと原住民の様々な違いが判って来た。

 

 

 ユグドラシルでは上下関係なく、自分と敵のレベル差が15以上開いていると、経験値が1しか入らない仕様となっていた。

 

 それはゲームの仕様上の問題であり、パワーレベリングなどによる容易なレベル上げを阻止する為のシステムでもある。

 

 しかし、俺はLv15以上の差がある魔物を倒しても、問題なく経験値を入手出来。格上の相手を倒せば倒す程に、莫大な経験値を入手することが出来た。

 

 つまりユグドラシルの制限を無視して、魔物を倒した時に入手出来る経験値を獲得出来るということである。

 

 

 更に本来であれば特殊な条件を満たさないと取得出来ない【狂戦士】(バーサーカー)の上位職も、普通にレベルアップで取得出来てしまった。

 

 小説でもティアやティナの【忍者】(にんじゃ)等、本来ならそのレベルで取得出来ないはずの上位職を取得している原住民が居た。

 

 だからこそ俺も、ユグドラシルの取得条件に縛られず、【狂戦士】(バーサーカー)の上位職を取得出来たと予想出来た。

 

 これはかなり嬉しい誤算である。何せ本来なら必要となる過程を踏まずして、強い職業を取得出来たのだから。

 

 

 しかし、メリットばかりでなく当然デメリットもある。

 

 高レベルの魔物からも経験値を取得出来る代わりに、レベルアップまでの経験値も莫大に必要となるのだ。

 

 様々な事象を元に推察した結果。俺のレベルアップに必要となる経験値は、プレイヤーと比較して()5()0()()ほど。

 

 ニートの恩恵があることも踏まえた上で考えるなら、レベルアップにはプレイヤーの()1()0()0()()の経験値が必要となるのだ。

 

 そして俺はLv55になった地点で成長が止まり、其処からどんな魔物を倒しても、一切レベルアップしなくなった。

 

 恐らく原住民には個人ごとに成長値があり。レベルの上限やそれに至るまでに必要な経験値がバラバラなのだろう。

 

 それらの個人による成長の差異を、この世界の者達は才能と称しているのだ。

 

 

 原住民の中でも才豊かなニグンでコレなのだ。

 ごく普通の才しか持たぬ者達は、お察しといった感じだ。

 

 だからこそプレイヤーは、原住民と比較して圧倒的に強いのである。

 

 

 更に言うなら、新規の職業を取得するのも容易ではない。

 

 何度も鈍器を使用して魔物を討伐したにも関わらず、俺はそれらに関連する職業を獲得するには至らなかった。

 

 魔物討伐以外の要因もあるのではないかと、武器の扱いに長けたコキュートスに指南して貰い、素振りや実践訓練も行ってみたが取得出来る兆しは見られない。

 

 様々な武器をとっかえひっかえ使ってみても結果は変わらず。

 

 コキュートスは申し訳なさそうに落ち込んでいたが、どちらかというとコレは、俺に問題があるのではないかと予想している。

 

 

 三日間の訓練で身に着けた、付け焼刃の未熟な技術。その程度で武器の扱いを覚えたなど烏滸(おこ)がましいにも程がある。

 

 恐らくではあるが、完全に武器の扱いを体得出来た時に、初めて職業レベルとして反映されるのではないだろうか?

 

 俺が【狂戦士】(バーサーカー)の上位職を簡単に取得出来たのは、派生元となる下位職を既に取得していたからだと考えられる。

 

 つまり職業の取得度合いも、個人の才能や練度に比例するという訳である。

 

 

(……尤も完全に訓練が無駄になった訳じゃないけどな)

 

 

 コキュートスは武人として設定されている為か、武術全般に関する知識に明るく、その技量もナザリック随一だ。

 

 教え方も丁寧で判り易く、実践訓練では絶妙な手加減で此方を指導してくれる。

 

 そのおかげで実戦経験も積めたし、幾つか武技を取得することも出来た。レベルが上がったことにより、各種能力も随分向上したしな。

 

 

 因みに俺の現在のステイタスは、こんな感じである。

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

名前:イチグン

 

種族:人間

 

職業レベル

 

【狂戦士】(バーサーカー)  …Lv10

【凶騎士】(ベルセルク)  …Lv10

【闘神魔王】(バルバトス) …Lv10

【――――】 …Lv25

 

 総合計   …Lv55

     

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 Lv55ではあるものの、その実力は戦闘メイドプレアデスにやや劣る。

 

 何故なら職業レベルを取得していないからだ。

 

 

 ユグドラシルでは職業・種族レベルを取得せずに、レベルを上げることなど不可能なのだが。原住民の肉体を持つ俺は、急激なパワーレベリングにより職業レベルを保有しない状態でレベルアップした。

 

 その浮いたレベル分はどうなるかというと、ステイタスが僅かに向上するぐらいで、大した恩恵は得られない。

 

 故に俺の実際のステイタスは、Lv30相当しかなく。スキルの恩恵などを踏まえても、Lv40後半程度の戦闘能力しか持っていないのだ。

 

 もしプレアデスと戦っても、レベルの一番低いシズに、肉弾戦で勝てるぐらいだろうとのこと。

 

 

(……それでも十分すぎるんだけどなぁ)

 

 

 確かにツアーや番外席次などの、この世界に存在している人外級の強者には勝てないだろうが、ガゼフやクレマンティーヌなどの英雄級の実力者達には、余力を持って勝つことが出来るのだ。

 

 その上で武技も覚えることが出来たし、短期間で手に入れたにしては十分すぎる力ではないだろうか。

 

 

「……う~ん、でもなぁ。何か色々と勿体ないんですよねぇ」

 

 

 そういって渋い反応を見せるアインズさん。

 彼はこの状態でも不十分であると感じているらしい。

 

 理由は何となく判る。

 余剰分のLv25が勿体ないと感じているのだろう。

 

 もしニグンが元々取得出来ていた職業レベルを再取得すれば、俺は大幅にパワーアップ出来るだろうし、そもそも今の職業構成ではニグンの異能が活かせないのだ。

 

 ニグンの異能は『召喚した眷属を強化する』というもの。召喚魔法を使えない今の俺には、全く以て不要な異能である。

 

 

「一応、アイテムを使って召喚しても効果があるようなので、そういった魔道具を使うことも出来るのですが――」

 

「アイテムは消耗品ですし、下手に盗まれでもしたら面倒ですからね」

 

「そういうことです」

 

 

 スクロールなども含めたユグドラシル産のアイテムは、現在は補填が出来ないので希少品である。

 

 だからこそ自前の魔法やスキルで眷属を召喚したいのだが、中々それは難しいだろう。

 

 

「……いや、待てよ。アレを使えば行けるのか?」

 

 

 そう思っていたのだが、アインズさんはそれを解決する手段にアテがあるのか、ハッと顔を上げて目を赤く光らせる。

 

 

「……でも、そうなるとアレと顔を合わせることになるんだよなぁ」

 

 

 しかし、何かしらの問題でもあるのか、今度は唸りながら頭を抱えてしゃがみ込み。ブツブツ独り言を呟きながら悩み始めた。

 

 数十秒程の葛藤の末に、アインズさんは何かを決断したのか、覚悟を決めた男の表情となり、スクッと立ち上がる。

 

 

「……嗚呼。でも、行くしかないか」

 

 

 そういってズルリと異空間に手を突っ込み、ゴソゴソと何かを漁ったかと思えば、その中から金の土台に紅い宝石の嵌め込まれた指輪を取り出した。

 

 その宝石の内部には、このギルドの紋章が刻み込まれている。

 

 

「イチグンさん、コレを装備して下さい」

 

「――えっ!?それ、俺なんかに渡して良いんですか!?」

 

 

 このナザリックにおいて最も重要なマジックアイテムであり、決して部外者などに持たせてはいけない指輪。

 

 『ギルドの指輪』(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)

 

 転移阻害が発動するナザリック大地下墳墓で、唯一その影響を受けずに転移が可能となる指輪である。

 

 部屋から部屋への転移は勿論の事、外から一気にナザリックの内部へと侵入することも可能。

 

 もし悪意あるものの手に渡れば、ナザリックは絶大な被害を受けるだろう。

 

 

 そんな貴重なものを何の前触れなくポンと渡されてしまえば、慌ててしまうのも仕方がないだろう。

 

 

「ハハハッ、大丈夫ですよ。

これでも俺は、この指輪を託せるぐらいにはイチグンさんの事を信用してるんですよ?」

 

「……アインズさん」

 

 

 えっ、何その殺し文句。

 

 めっちゃくちゃ嬉しくて、思わずキュンとしてしまったじゃないか。

 

 人から信用されて、これほどまでに感動するとは思いもしなかった。

 

 俺は歓喜の感情のまま、イソイソと受け取った指輪を指に嵌める。

 

 左手の薬指に指輪を嵌められた指輪を見て、アインズさんは警戒しながらゆっくりと一歩後退る。

 

 そういう意味じゃないから安心して欲しい。

 俺は指輪を左手の中指に嵌め直した。

 

 

「そもそも、ソレがないと今から行く場所には入れませんしね」

 

「今から行く場所とは?」

 

 

 そんな俺の質問に、アインズさんは苦虫を噛み潰したような低い声でボソリと呟いた。

 

 

「――忌まわしき禁断の箱を開きます」

 

「……あ゛っ~、OK把握」

 

 

 彼の言葉で誰に会うつもりなのかが判った俺は、そのままアインズさんの手を握って、第10階層にある宝物殿へと転移するのであった。

 

 

 

 




某ファラ王
「速攻魔法発動〈狂戦士の魂〉(バーサーカー・ソウル)!慈悲を全て捨て効果発動!貴様の残機尽きるまで即死攻撃(ダイレクトアタック)だッ!」

イチグン
「ぐぁああああ゛っ!?」

アインズ
「もう止めてッ!?彼の残機はとっくにゼロよっ!!」
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