本日深夜、オバロ三期第四話放送!
今回はルプー失望回!
ルプーの涙目が動画で見れるので愉悦です。
そしてパンドラ回が2万字越えた……
なので二分割してネタも削除してスマートにします。
――彼が良いキャラ過ぎて、ついつい書いてしまったんや。
という訳でまずは導入話から
第10階層にある宝物殿は、ナザリック大地下墳墓の財貨が保管されている最重要施設である。
その特性上、他の階層とは完全に隔離されており、
つまりナザリックにおいて、限られた者しか入ることを許されない聖域なのである。
ユグドラシル産の貴重なアイテムのほぼ全てが此処に収められており、整頓好きなギルドメンバーによって区分けして管理されていた。
武器系、防具系、スタッフ系、装身具系、その他アイテム系、製作物系データクリスタル等。
その種類は多岐に渡り、この世界では一つ売るだけで七代先まで遊んで暮らせるようなマジックアイテムがゴロゴロ転がっている。
天まで届かんと言わんばかりに無造作に積み上げられたユグドラシル金貨は、ナザリックの栄光の証でもあり、富の象徴ともいえるだろう。
(……でも、同時にこのユグドラシル金貨が、ナザリックの生命線でもあるんだよなぁ)
そんな目も眩むような金銀財宝を見ても、アインズの反応は実にドライだった。
寧ろ有限な消耗品や資金源に、先行きの見えない不安を覚えたぐらいである。
何故なら此処はユグドラシルではない。
ユグドラシル産のアイテムを再入手することは不可能に近いし、ユグドラシル金貨だって手に入れる手段は限られている。
そしてナザリックがギルド拠点である以上、莫大な維持費が発生する。その他にもNPCが死亡した際の復活費用など想定外の出費も在り得るのだ。
それを支払うことが出来なくなった地点で、このギルド拠点は消失する。
それはアインズ・ウール・ゴウンの崩壊を意味しているのだ。
だからこそ財貨や資源は無駄に消費出来ない。
今後どうやって資産を増やしていくかは、ナザリック運営における重要課題である。
(……一応、下位スクロールの量産手段はあるけど。流石にあの方法は無いよなぁ)
イチグンから聞いた原作知識で、アインズは下位スクロールの素材を量産する方法に心当りがあった。
しかし、その方法と言うのが余りにも非人道的なのである。
現地の人間の生皮を生きたまま剥ぎ取り、素材として加工した後で回復魔法を掛け、再び生皮を剥ぐというもの。
その他にも異種族間の強制交配による繁殖実験や、回復魔法や蘇生魔法の効果検証等々――邪道というべき研究が日夜行われていた。
本来ならば、デミウルゴスがそれらを全て管理し、原作ファンに『デミウルゴス牧場』などと呼ばれ、ナザリックの残酷な舞台裏として語られていた。
未だに人間の感性を色濃く残しているアインズが、実行するのを戸惑うのも仕方のないことだろう。
(……正直、人間に対する愛着は小動物に向ける程度しか湧かないけど。イチグンさんには絶対に嫌われたくないしなぁ)
アンデッドになったことで、鈴木悟の精神は肉体に引っ張られて、思考や感性なども異形種のソレに近づいている。
それでもアインズが未だに人間性を保っている最大の理由は、自分という等身大の存在を受け入れてくれる理解者が居るからである。
もしイチグンのような、自分を理解してくれる存在が居なければ、鈴木悟は配下達の望むままに、
だからこそ鈴木悟は、イチグンに感謝していた――人間としての自分を見失わず、本音で向き合ってくれているから。
だからこそモモンガは、イチグンを信頼していた――自分の弱さを受け入れた上で、自分という存在を認めてくれているから。
だからこそアインズは、イチグンと親友になりたかった――同じく孤独を経験したギルド長として、共感にも似た仲間意識が芽生えていたのだ。
(出来るなら、彼をナザリックの新たなギルメンとして勧誘したい)
その一環としてギルメンの証とも言える指輪を渡し、アインズ・ウール・ゴウンに勧誘する為の布石とした。
だが実際に彼を勧誘するのは、まだ時期尚早であるとアインズは考えている。
彼を受け入れる下地が出来ていないこともそうだが。彼自身が未だに自らの創り上げたギルドに対して、並々ならぬ愛着を抱いているという部分も大きい。
アインズもその気持ちは痛いほどに良く判るし、そんな状態で他のギルドから勧誘されたとしても、色好い返事など貰えないことは重々に承知している。
(焦らなくていい。ゆっくりと交流を深めていけばいいさ)
その為にもイチグンが強くなることは重要だ。
単純な強さは誰にでも判る評価基準となりえるし、彼が威厳を示すことで、ナザリックの配下達も人間を侮らなくなる。
そしてイチグンが強くなれば、共に冒険を楽しむことが出来る。
嘗ての仲間達とユグドラシルを探検した時のように、輝かしい思い出を積み上げることが出来るのだ。
「アハハッ、恥ずかしい話ですけど。俺、いま年甲斐もなくワクワクしてますよ。
今から外の世界を冒険するのが楽しみですねイチグンさん」
そういって喜色を隠せずに共感を求めるアインズ。――だがイチグンから相槌は返ってこない。
「……イチグンさん?」
返事がないことを不思議に思ったアインズは、グルリと後ろを振り向くが、イチグンの姿が其処にはない。
「――えっ?」
恐怖を感じたアインズはオロオロと視線を彷徨わせると、イチグンが床でうつ伏せに寝転がっているのを発見した。
何をやっているのだろうかとアインズは近づくが、そこで違和感に気が付いてしまった。
ピクリとも身体が動いていない。
肌の色も蒼褪めている。
その瞳は虚ろで光沢が無く、まるで魚市場に並んだ魚のようである。
――返事がない。ただの屍のようだ。
「イチグンさぁああああん!?!?」
アインズの慟哭が宝物殿に鳴り響いた。
・・・・・・
「……本当にすみませんイチグンさん。
完全にブラッド・オブ・ヨルムンガルドの事忘れてました」
「……アハハハッ、俺も転移した瞬間に思い出したからお互い様ですね」
宝物殿に入ってすぐの空間は、無色無臭の猛毒により空気が汚染されている。毒に耐性を持つ者でも三歩と持たずに絶命してしまうような凶悪なものだ。
アインズはアンデッドの種族特性で毒無効がある為、一切影響が無かったが。低レベル且つ毒物に対して全く耐性の無かったイチグンは、転移した瞬間に即死だった。
テンパったアインズは、イチグンをすぐさま蘇生させたもの。肝心の毒への対策を怠った為、再びイチグンは死に絶えた。
『何故、蘇らないのだっ!』と怒り交じりに、
何度目かの死に際に、イチグンが『…ど…く』と呟いたことで、アインズも漸く原因に気が付き、毒無効の指輪を装着させた上で蘇生。
新品の蘇生の短杖は、役目を果たし砕け散った。
ユグドラシル産の稀少なアイテムは温存しなければと、決意した矢先からこの体たらく。
おまけに何度もイチグンを殺してしまうという失態もやらかした。アインズが落ち込むのも致し方のないことだろう。
「まぁ、死んで復活するのには慣れましたから。そんなに気負う事ないですよアインズさん」
「……そういって貰えると幸いですが、もう少し命を大事にして下さいね?」
「……それを
寧ろ命を奪う死神のような立場なのに。
そういってイチグンはアインズを揶揄う。
その気さくなブラックジョークに助けられたアインズは、気を持ち直して宝物殿の奥に広がる黒い空間をジッと眺める。
(……確か此処にもトラップがあるんだよなぁ)
自分の本拠地であるからといって、慢心するのは良くなかった。
此処はユグドラシルとは違う現実世界なのだから、ちょっとした油断が、死に繋がってしまうのだ。
侵入者を入れる予定のない宝物殿とて、万が一に備えた防衛設備や罠は張り巡らされている。
この扉を超えた先には神器級の装備で武装したゴーレムが待ち受けており、
そもそも難解なパスワードを解かなければ先には進めないのだ。
此処で慎重に対応することで名誉挽回し、汚名を返上してみせる。
――そう意気込むアインズであったが、イチグンの反応は非常に冷めていた。
「此処ですね。ではイチグンさ――」
「ほいっ」
何か言う前にイチグンは指輪を外しており、アインズに手渡した。
「……」
アインズは無言でそれを受け取り、アイテムボックスに収納する。
「えっと、扉のパスワードは確か――」
「『かくて汝、全世界の栄光を我がものとし、暗きものは全て汝より離れ去るだろう』ですね」
スラスラと紡がれたイチグンの言葉に反応し、暗闇が晴れて仄暗い光に照らされた通路が現れる。
アインズは口を開いたまま固まった。
本来果たすべき自分の役割を、全てイチグンに奪われてしまったからだ。
「じゃあ、行きましょうか。アインズさん」
「アッ、ハイ。ソウデスネ」
スタスタと先頭を歩き始めるイチグンの背中を追う形で、アインズも仄暗い廊下を歩み始める。
左右の壁面が硝子張りになっている通路には、ナザリックの保有するマジックアイテムの中でも、とりわけ稀少価値の高いものが美術品のように展示されている。
そんな美術品の中でも一際異彩を放っているのが、歪な形状の武装した41体のゴーレム
「……アハハッ、こうして改めて見ると酷い出来ですねぇ」
造形物とは銘打っているものの、その出来栄えは子供が造った泥人形のようだ。
手足の大きさはバラバラであり、辛うじてその人形が鳥や羊のような造形をしていることが判る。
そして奥にある一体だけは何も装備しておらず、物悲しい印象を与える。
イチグンには骸骨に似たその泥人形が、アインズの後ろ姿とダブついて見えた。
「……本当は此処に私の装備も飾る予定でした」
「……知ってますよ。小説読みましたから」
寂しそうに語るアインズに、イチグンも淡々と言葉を返す。
この場所に付けられた名は
ユグドラシルを引退した仲間達を想い、アインズが追加で造り上げた過去の思い出に浸る場所である。
1人、また1人と去っていく仲間達の背中を見送りながら、アインズはこの泥人形を造った。
売り払っても良いと仲間達から渡された装備を、未練がましくゴーレムに飾った。
アインズにとって仲間達の思い出こそが、何よりも輝かしい宝物であったからだ。
そして仲間達の帰るべき場所を、少しでも遺しておきたかったのだ。
「――でも結局は自分の為なんです。俺の居場所は
そういって自分の
「――我儘の何が駄目なんですか?」
「……えっ?」
「……我儘でも別にいいじゃないですか。アインズさんのそんな我儘で、今のナザリックがあるんですから。
貴方は此処に居る全ての配下を守り抜いた、誇り高きギルド長なんですよ?」
アインズが最後までユグドラシルをプレイしなければ、ギルド拠点を維持できず。此処に存在しているNPC達は意志が宿る前に消滅していたかもしれない。
アインズがこの世界でも支配者として振る舞っているからこそ、配下達は存在意義を見失わずにいられる。
アインズが今まで築き上げたその全てが、ナザリック大地下墳墓の今を造り上げているのだから。
「――――ッ」
イチグンのそんな言葉に、アインズは胸が詰まる想いだった。
無駄だと思っていた自分の努力が、全て報われた気がした。
その真っ直ぐな言葉が、空虚だった自分の心を暖かく満たしてくれた。
泣けない我が身を、これほどまでに煩わしいと感じたことはなかった。
渦巻く感情を上手く言葉に出来なかったアインズは、飾らぬ言葉で短く告げる。
「――ありがとうございます」
その言葉にイチグンはニッと満面の笑みを浮かべながら、サムズアップで返す。
そんなイチグンの反応が少し滑稽で、思わずクスリとアインズも笑った。
ひとしきりイチグンと笑い合ったアインズは、わざとらしくコホンと咳払いしながら、しんみりとした空気を打ち払って口を開いた。
「――イチグンさん。実は私から提案があるんですが聞いて貰えますか?」
「おっ、何々?」
アインズは胸に渦巻く熱に絆されるまま、我儘な自分の願望を口にすることにした。
「もし宜しければ、イチグンさんもこのギルドに加n――
「おぉ!?これはこれは我が偉大なる創造主。ン~!モォモォンガ様ではありませんかぁ!!」」
――口にしようとしたのだが、唐突に横から聞こえて来た大声に遮られてしまう。
抑揚のついた芝居がかった大袈裟な口調。
独特の台詞回しなのに、聞き取りやすい舞台役者のような張りのある声。
アインズは錆びついたブリキ人形のように、ギギギッと首を動かして其方を振り向くと。最も対面したくなかった存在が其処に佇んでいた。
カーキー色をベースとした上下セットの軍服。
ヒョロリと細長く伸びた四本の指。
その真っ白な顔に目鼻はなく、真っ黒な孔が三つ空いているだけだ。
彼こそがこの宝物殿の守護者であり、モモンガが自ら創り上げた被造物である
「私の管理する宝物殿に、お越しくださって感謝の極みっ!本日は一体どのようなご用件でしょうか!至高の御方の頂に立ち、我が創造主であられる偉大なる御方!
ンッ~モォモォンガァ様ッ!!」
何故か持っていたモップをクルクルと回し、水の入ったバケツを空中に放り投げてモップの柄の先端でキャッチするという無意味な神業を披露する。
当然バケツの中に入った水は、一滴たりとも零れてはいない。
それはまるでサーカスの大舞台で芸を披露する一流の道化師のようであった。
「――――」
そんなパンドラの姿を見たアインズは絶句した。
余りの痛々しさに感情が欠落し、精神安定化すら発動しなかった。
隣に居たイチグンは、そんなパンドラの姿を見て『うへぁ』と変な声を漏らしながらも、申し訳なさそうにアインズに聞き返す。
「……ごめんアインズさん。聞き取れなかったからもう一回言って?」
「……」
その言葉に、アインズは口を噤んだ。
言えない。言えるはずがない。
このような空気の中でギルドに勧誘しようとするなど論外である。
暖まった雰囲気に、冷や水をぶちまけてくれた
指先をスッとパンドラに向けると、膨大な魔力が其処に集約した。
「《魔法無詠唱化/サイレントマジック》
《魔法抵抗突破化/ペネトレートマジック》
《魔法誘導化/ホーミングマジック》
《魔法最強化/マキシマイズマジック》
《魔法位階上昇化/ブーステッドマジック》
《魔法三重化/トリプレットマジック》
――《魔法の矢/マジック・アロー》×3」
「……え゛っ?」
唖然とするパンドラに向けて放たれる魔法の矢。計30本にも及ぶ光の矢がパンドラに襲い掛かる。
第1位階に属するとはいえ、アインズの手によって最大限まで強化された攻撃魔法である。素のステイタスが然程高くないパンドラが喰らえば、当然痛いでは済まされないだろう。
しかし、パンドラは一切の防御や回避行動を取らない。自らの言動の何かが、主を不快にさせたのだと刹那の間に察知したからだ。
故に彼がとったのは敬礼。
甘んじて主の怒りを受け入れようとする彼の最大限の忠誠心であった。
「
――ぐぅほぉぁああああ゛っ!?」
魔法の矢をその身体で受けたパンドラは宙を舞った。
グルグルと回転しながら壁に勢い良く叩きつけられたパンドラは、そのまま壊れたマリオネットのように壁に寄りかかったまま動かなくなる。
その平坦な埴輪顔は、心なしか満足気に微笑んでいるようであった。
「……えぇ~」
そんな主従のやりとりを見たイチグンは、控え目に言ってドン引きするのであった。
~本編オチした没ネタ集~
イチグン
「パンドラズ・アクターってアインズさんが創造したんですよね?」
アインズ
「はい、忌まわしい黒歴史ですよ。一生宝物殿に仕舞っておきたいぐらいです」
パンドラ
「酷いっ!?」
イチグン
「……まぁ、それは置いといて。
『パンドラズ・アクター』って名前もアインズさんが考えたんですか?
ネーミングセンスが壊滅的なアインズさんが考えた割には良い名前だなぁと思って」
アインズ
「酷いっ!?……まぁ、実際私が考えた訳じゃありませんし。ウルベルトさんが名付け親ですから。私が良い感じの名前を思いついたのに、それを全否定されました」
イチグン
「嗚呼、納得。デミウルゴスの名前とかも神話から取って来たり、設定とか名前の意味にまで拘りそうだもんなぁ」
パンドラ
「因みに、我が創造主はどういった名前を私に授けようとしたのですか?」
アインズ
「変体君」
イチグン・パンドラ
「「……え゛っ?」」
アインズ
「ほら、
イチグン
「……パンドラはウルベルトさんに生涯感謝を捧げた方が良いぞ」
パンドラ
「……ええ、危うく背負い切れぬ
アインズ
「何でさっ!?」