オリジナル設定マシマシの第12話となります。
ルプーの失態を許したアインズさんのように寛容な精神で閲覧して下さい。
※そして致命的な設定ミスにより、第1話の前半部分を急遽改稿しております。
宝物殿の奥にある宝物殿管理責任者室。
其処で俺達三人は改めて顔合わせをしていた。
「――アインズ様よりご紹介に与りました。私、宝物殿の領域守護者であるパンドラズ・アクターと申します。今後ともよろしくお願い致します。
ンッ~、イチグン様ッ!」
そういってギュルンと軽やかにその場で回転しながら、
まるで舞台のフィナーレを締め括るような一礼を見て、俺は思わず『……おぉ』と声を漏らしながらパチパチと拍手。
耐え切れなくなったのか、アインズさんは『……あぁ』と嘆きの悲鳴を漏らしながら発光した。
俺からすればユニークな自己紹介に見えるが、彼からすれば心を抉られるような事故紹介なのだろう。
パンドラズ・アクター。
この宝物殿を管理する領域守護者であり、
その能力は、ナザリックにおいても比肩するものは居ないのではないかというぐらいに優秀である。
何故なら彼は
しかも、デミウルゴスに匹敵する頭脳の持ち主であり。宝物殿のアイテムを管理しているという設定上、配下達が知識に乏しいマジックアイテムなどに関する見識もある。
諜報活動・組織運営・資金管理・護衛戦闘etc……彼一人いれば、全て事足りるのではないかと思わせるぐらいに万能且つ有能な配下なのだ。
おまけに創造主であるアインズさんには、絶対的な忠誠を誓っており。アインズが望むのであれば、他の至高の41人と争うことも辞さないという覚悟すら持っている。
彼がもっと表舞台で活躍していたなら、ナザリックの世界征服は格段に早まっていただろう。
だが小説でのパンドラは基本裏方に徹しており、アインズさんに活躍の場面をあまり与えては貰えなかった。
それは彼の能力が劣っていたからではなく、彼の言動がアインズさんの心を掻き乱したからだ。
想像してみて欲しい。
嘗て自分の妄想した
それはナイフで古傷を抉る様な精神ダメージをアインズさんに与えただろう。
しかも彼は
だからこそアインズさんは、自らの黒歴史が世間に広まることを恐れ、彼を表舞台に極力出さないようにしたのだ。
「……ところで御二方は、何故この宝物殿に足を運んだのでしょうか?」
パンドラがクネッと謎のポーズを取りながらここに来た要件を尋ねて来る。
アインズさんはそんな彼から意図的に視線を逸らしつつ、端的に要求を述べた。
「……
そんなアインズさんの言葉を聞いて、パンドラはプルプルと身を震わせながら語り出す。
「オォォォ……ワールドォアイテムッ!
世界を変えるぅ!強大な力ぁ!
至高の御方々の偉大さの証ぃ~♪
ナザリックの深淵に眠る秘宝の数々が
――遂に力を振るう時が来たと」
腕を振り上げながら、クルッとターン。
左手で帽子の鍔を抑えながら、意味ありげに振り返り。僅かに影を宿しながらニヤリと笑う。
今の台詞に、一体どれだけの特殊タグが使われたのだろうか。彼の桁違いのキャラの濃さを垣間見た気がした。
「ハハハッ、ホントに凄いな。……色んな意味で」
「――――カフッ」
思わず漏れた俺の本音に。化学反応を起こしたアインズさんは、吐血するように咽ながらチカチカと点滅する。
今日はいつもよりも数段輝いて見えるぜアインズさん。主に精神安定化的な意味でな。
「大丈夫ですかアインズさん?」
「……エエ、大丈夫。大丈夫ですとも。
……用事が済めば、パンドラは生涯宝物殿に封印しておくつもりですから」
「……いやいや、流石にそれは可哀想でしょ?」
何気に酷いことをボソリと呟くアインズさん。
どうやら度重なる精神攻撃により、彼の思考はダークサイドに堕ちつつあるらしい。
そんな創造主の言葉を聞いて、物凄く悲しそうに顔に空いた三つの黒孔を歪めるパンドラ。
しかし、それでも彼の忠誠心は微塵も揺らがないのか、ビシっと胸に手を当てながら堂々と口上を述べた。
「嗚呼……例えこの場所に数千年閉じ込められようとも。幾億の刃でこの身を貫かれようとも。御身がそう在れと望むのであれば、喜んで我が身を捧げ、死地に飛び込みましょう!
――
「だから
アインズさんが目を赤く光らせながら吠えた。
頭を掻き毟るように手で抑え込み、膝から床に崩れ落ちたまま動かなくなる。
敬礼していたパンドラも、その迫力にタジタジ。一体何が起こったんだと言わんばかりに困惑している様子。
(……まぁ、そりゃそうなるわな)
パンドラからすれば、アインズさん自身にそう在れと
心なしかションボリしているパンドラに、確認の意味を含めて問いかけてみる。
「ちょっと確認したいことがあるんだけどいいかな?」
「はい、何でしょうかイチグン様?」
「パンドラってアインズさんに生み出された存在なんだよな。
――生み出されて何年ぐらい生きたんだ?
――久しぶりにアインズさんに会ったみたいな反応だったけど。どのぐらいの期間、彼と顔を合わせていなかったんだ?」
前々から凄く気になっていたのが、NPCとプレイヤーの時間認識におけるズレである。
NPCには
アウラは設定でそうなっているからか、76年生きた記憶があり。コキュートスはニブルヘイムが出身地となっている為、ナザリックの外の世界で暮らした知識も保有していた。
他のNPCに関しても、まるで遥か昔の出来事のようにナザリック大侵攻について語っていた。
だがその時期も各NPC毎に数年~数百年単位で齟齬が発生しており、ちょっとした討論にまで発展していた。
つまり各々の設定や種族に応じて、記憶や経験が都合良く補完されているのだ。
アインズさんの感覚では、パンドラを産み出したのは数年前かもしれない。だが、パンドラの記憶や経験では数年前の出来事ではないかもしれないのだ。
――そして彼から返って来た答えは、俺の想像を絶するものであった。
「至高なる御身に生み出されてから、
「はっ?……え゛っ……マジかっ!?」
アインズさんはパンドラを5年ぐらい前に創造したと言っており、半年以上も顔を合わせてなかったと言っていたから――実際に彼が体感している時間はユグドラシルでの経過時間の約100倍という計算になる。
500年もの間、彼は宝物殿に引き籠っており。
100年近くもの間、誰とも会わずに一人孤独に過ごしたのだ。
それでありながら、アインズさんを一切恨むことなく忠誠を誓っており。再び孤独を過ごせと言われても受け入れ。彼の為に命を投げ出しても構わないと言い切ったのだ。
「……何だよソレ。余りにも不憫すぎるだろ」
「おやおや、何故泣いておられるのですかなイチグン様?」
心底不思議そうに首を傾げるパンドラを見て、更に涙が止まらなくなってしまう。
その報われぬことのない忠誠心に、涙を流さずには居られない。
コレは何としても、彼をこの
そう思った俺は、彼の言動を改めるべく説得を試みた。
「――パンドラ。君がアインズさんにこう在れと望まれた姿を、忠実に実行しようとしているのは良く判った」
「お褒めに与り感謝光栄の極みっ!
嗚呼…この心身全てに至るまで。
与えられたその配役を、見事に演ぇんじきって魅せますともっ!」
「でも、それが駄目だ」
「何とッ!?」
ガビーンと大袈裟に仰け反るパンドラに、アインズさんがソレを望んでないことを淡々と告げる。
嘗て孤独を癒す為に造られたその配役は、大きく様変わりしたナザリック大地下墳墓には相応しくないと断言した。
ならばそれに応じた相応しい役を演じるのもまた、役者としての務めではないだろうかと。
「……成程。確かに与えられた役を演じるだけでは、役者としても配下としても三流ですね。いや、しかし――」
パンドラは何かと葛藤するように頭を押さえ、ブツブツと独り言を呟きながら唸り始める。
大方、アインズさんから与えられた役割を、本当に放棄しても良いのだろうかと悩んでいるのだろう。
――あと一押し足りないといったところか。
「――パンドラズ・アクター。
君は孤独にも負けず腐らず、この宝物殿を長年管理し守り抜いて来た。
……そんな君だからこそ俺は、アインズさんの傍で仕えて欲しいんだ」
「……イチグン様」
出会い頭にパンドラが持っていた清掃用具。
曇りの一つもない磨き抜かれた壁面や、埃すら落ちていない霊廟を見て悟った。
パンドラは創造されてから今に至るまでの長い歳月の間。毎日欠かすことなく宝物殿の内部を磨き上げて来たのだ。
「そんなパンドラには、是非とも報われて欲しい。君の居場所は
「……」
そういうとパンドラは無言のままスッと胸に手を当て、ペコリと一礼する。
その動きは先ほどまでのような派手さこそないものの、実に洗練されたものであった。
――その後、現実逃避しながら床に座っていじけていた骸骨を引っ張り上げ。此処に来た目的を果たすように発破を掛ける。
アインズさんはパンドラがまた何かやらかすのではないかと、ヒヤヒヤしながら目的を説明していたようだが。そんな彼の心配に反して、パンドラは一流の執事のような所作で命令を承り、宝物殿の奥へと引っ込む。
幾ら注意しても直らなかったパンドラの痛々しい言動が、ピタリと収まったのだ。
そんな変化に愕然とした彼は、恐る恐ると言った感じで俺に尋ねる。
「……一体どうやってパンドラを説き伏せたんですか?」
「ンッ~、企業秘密!」
「……えぇ~、勿体ぶらずに教えて下さいよぉ」
釈然としないアインズさんの追求を躱しながらその場で待っていると、パンドラが宝物殿の奥から現れ、恭しく持っていたアイテムを掲げて跪く。
「此方がアインズ様の希望された
「うむ、ご苦労。パンドラ」
受け取ったアイテムを装着するアインズさん。
あの白と黒の対称的なデザインの篭手は
『強欲と無欲』だろうが、もう一つの豪華な装飾が施された本は一体何だろうか?
そんな俺の反応に気が付いたアインズさんは、悪戯な笑みを浮かべながら話し掛けて来る。
「どうやら『強欲と無欲』については知っているようですが、
「……まぁ、俺もこのギルドが保有している世界秘宝の全てを知ってる訳じゃないですからね」
「フフフッ、そうですかそうですか」
先ほどの意趣返しなのか、やたら勿体ぶるアインズさんに少しだけイラッとしながらも続く言葉を待つ。
骸骨魔王は天高くその本を掲げながら、バッと漆黒のローブを大袈裟に靡かせて告げる。
「この絶大なる力を秘めし魔本こそが、あらゆる可能性を目覚めさせる唯一無二の奇跡の経典!
「おぉおおおおっ!!」
そういってドドンッ!という効果音が付きそうなほど自慢げに語るアインズさんに、追従するような歓声を上げるパンドラ。
俺はそんな痛々しい二人組を、冷ややかな視線で眺めながら思った。
(……結局は似た者親子じゃねぇか)
何だかんだでNPCは、創造主の性格を多大に受け継いでいるのだなぁと実感する出来事であった。
・・・・・・
ユグドラシルのゲームにおいて、運営が認めた全200種類あるぶっ壊れ性能のチートアイテムである。
数が少ないだけに、凄まじい稀少価値を持っており。ランキングに乗るような大手ギルドでも保有していないところがあるぐらいだ。
そんな世界秘宝を11個も保有していたアインズ・ウール・ゴウンの異常性が良く判るだろう。
例えば、今アインズさんが装備している白と黒の対称的なデザインの篭手。『強欲と無欲』は余剰分の経験値を無限に蓄積出来る世界秘宝である。
更に蓄積した経験値は、経験値を消費するスキルや魔法に代用することが可能。
強力な超位魔法をノーリスクで発動出来たり、経験値を消費して召喚出来る強力な召喚モンスターをレベルダウンなしで使役出来るのだ。
「そしてこの
本に記載されたリストにある種族・職業を一つ選択。
現在取得している種族・職業Lvから一つ選択して削除し、その削除したLv分だけ過去のビルドを取り直すことが出来るというものである。
言葉にすると一件大したことがないように思えるかもしれないが。実際のところ、その性能は凶悪の一言に尽きる。
何故なら使用した本人ではなく、『対象者を選んで発動』することが可能なアイテムだからだ。
つまり、相手のビルド構成を勝手に書き換えることが可能。
異形種を人間種にして、その種族恩恵を無くしてしまったり、
一度その効果が発動すれば、相手はまともに戦うことの出来ない雑魚になる。しかもそれは一時的なものではなく、永続的に効果を発揮するのだから洒落にならない。
その上、
条件さえ満たすことが出来れば、何度でも再使用可能。その猛威を存分に振るうことになるだろう。
そんな話をアインズさんから聞いた俺は、何処か悟ったような笑みを浮かべながら呟いた。
「……ユグドラシルの運営狂ってんな」
「……やっぱり、そういう反応になりますよね」
普通のオンラインゲームならば、あり得ぬようなアイテム仕様。
だからこその
尤も制限がまるでない訳ではない。
派生するタイプの職業は元となる下位職しか取得出来ず、最上位職を再取得するには再び下位職から取り直さなければならない。
削除する時は逆に、派生する大本となった下位職などは削除できず。最上位職のLvから削除されることになる。
効果範囲から相手が出てしまえば、アイテムは使用出来ないし。一度に選択出来る職業は1つまでなので、全てのビルド構成をリセットするような真似は不可能。
同じ世界秘宝を持つ相手には防がれてしまうし、更に一度使用すると三ヶ月は再使用不可となるので、連続で使用することは、実質的には不可能なのだ。
そんな説明を聞いた俺は、アインズさんの言葉に何処か違和感を覚えて尋ねてしまう。
「……あれっ?
「……流石に鋭いですねイチグンさん。
正しくその通りです。アインズ・ウール・ゴウンでは、それを用いて敵対ギルドを壊滅まで追い込んだ過去もあります」
今は奪われてしまい存在しないが、嘗てアインズ・ウール・ゴウンが所有していた
その効果は『あらゆるアイテムの再使用待機時間を3分間に短縮し、その効果を無力化されない』というものであった。
つまり世界秘宝を所持している相手にも、
コレを考案したぷにっと萌えによる。異形種狩りギルドへの奇襲攻撃は悲惨の一言であった。
敵の主力メンバーを軒並み無力化し、二度と戦線に復帰出来なくしてしまったのだから。
「尤もその脅威を知られてからは、上位ギルドが徒党を組んで襲ってくるようになり、
「……そりゃぁ、そうでしょうとも」
そんなことされれば誰だって警戒するわ。
そんなことを考えながらも、此処へ自分を連れて来た理由の判った俺は口を開く。
「つまり、元々ニグンが覚えていた職業を、その世界秘宝を使って再取得することが狙いですか?」
「その通りです。ただレベルを余らせるぐらいなら、何かしら職業を取得した方が強くなれますからね」
更に付け加えるならば、世界秘宝がゲーム通りの効果を発揮するかの検証実験でもある。
アインズさんの予想では、職業レベルの割り振られていないレベルを消費することで。元々ニグンが所持していた職業を1つ再取得出来るだろうとのこと。
確かにこのアイテムを用いれば、召喚系の職業を再取得出来るし、ニグンの異能も有効活用出来るだろう。
――アインズさんは、経典を右手に携え、俺に問いかけて来る。
「……では行きますよ、イチグンさん」
「ばっちこい」
彼が本の表紙をなぞる様に撫でる。
すると神々しい光を放ちながら本が浮かび上がり、パラパラとページが勝手に捲れていく。
その捲られたページの一部が1枚、また1枚と本から切り離され、切り離されたページは、俺達の目の前にズラリと並ぶ。
「ふむ、
どうやらニグンは、想像以上に優秀な職業を保有していたらしい。
思わぬ収穫にほくそ笑むアインズさんであったが、何やら少しばかり雲行きが怪しくなってきた。
目の前に浮かぶ経典が、まるでオーバーフローを起こしたかのように、バチバチと放電しながら妙な動きを見せているのだ。
「……あれっ?こんな演出あったか?」
「……何かヤバそうな雰囲気じゃないですか?」
明らかに暴走している雰囲気にたじろぐ俺。
次の瞬間、凄まじい勢いで何かが此方に飛んで来た。
「んがっ!?」
「イ、イチグンさん!?」
バチンと勢い良く顔に張り付いたのは、本から切り離されたページである。
そこにはデカデカとした日本語で、
職業
――喧嘩売ってんのか、この本は?
そして尚も暴走し続ける経典。
先程までは一箇所に留まってフワフワと浮いていたのに、今度は翼のように本の表紙を羽ばたかせながら、宝物殿の中を狂ったように飛び回り始めたのだ。
そんな光景をポカンと呆けながら眺めていると。次の瞬間、本から射出されたページがアインズさんを襲う。
しかし、その紙切れがアインズさんに触れることはなかった。隣に居たパンドラがアクロバティックな動きでキャッチしたからだ。
「……どうやら、少しばかり可笑しな結果が出ているようですね」
事も無げにそういった彼は、埴輪のような顔を僅かに歪めながら紙切れを一瞥し、そのままスッとアインズさんに差し出した。
それを受け取ったアインズさんは、その眼孔を赤く光らせて、何処か動揺した様子で呟く。
「――あり得ん。一体何だコレは?」
「えっ……ど、どうしました?何かヤバい感じですか?」
二人の反応に不安を覚えて思わず尋ねると、アインズさんは無言のまま、持っていたページの切れ端を此方に渡して来る。
渡されたページの切れ端には日本語で、
種族
「……はい?」
何故ニグンが、種族レベルを取得することが可能なのだろうか?
彼は生粋の人間であり、吸血鬼だった過去など持たないはずだ。
「……それだけじゃありませんよイチグンさん。
そもそも
本来ならば下位種族である
つまり本来取得する為に必要な段階を踏んでいない。最初から上位職を取得出来るという矛盾が発生しているのだ。
そんな考察の中でも、経典の暴走は更に続く。
規則的に俺達の周囲を飛び回っていた経典がピタリと空中で急制止。捲られていたページもパタンと閉じられる。
一体何が起こるのだとその様子を見守っていると、本は見えない何かを攻撃するように虚空に向かって突進し始めたのだ。
「「……え゛っ?」」
ガギンッ!ガギンッ!と硬質な何かにぶつかる様な衝突音。
何かに弾き返されながらも、経典は只管虚空に体当たりをし続ける。
そして変化が訪れた。
何も存在しないはずの空間に、硝子が罅割れたかのような亀裂が走ったのだ。
本の突進と共にその亀裂は大きくなり、バキッ、ベキャッという嫌な音を立てながら歪んでいく。
崩壊寸前の相手にトドメを刺そうとしたのか、経典はギュオオオンと高速回転しながら、青白い稲妻を纏い始めた。
「ッ!?お二人共、私の後ろに御隠れ下さいっ!!」
パンドラがそんな言葉と共に、ピンク色の肉棒に姿を変え、その触腕で俺達を護るように覆い隠した。
――次の瞬間、激しい閃光と衝撃が宝物殿内に走る。
ガシャアアアンという何かが崩壊する音と共に、言葉では言い表せない感覚が自分の中に充満していった。
(……変わった?)
何故かは判らないが、本能でそう察した。
何が変わったかすら判らないのに、何かが致命的に変化したことだけは理解出来てしまったのだ。
亀裂の無くなった空間にフワフワと漂う経典。
パラパラと静かに本のページが捲られ、黄金に輝くページが本から切り離されて、スッと俺の目の前に現れる。
「――嗚呼。そういう事か」
其処に記載された職業を見て、俺は全てを理解した。いや、理解せざる終えない状況を突きつけられたと言った方が正しいか。
アインズさんは未だにこの状況が判らずに、オロオロしている。
そして黄金のページに書かれた未知の情報に、目を白黒させながら絶叫した。
「……なんだこの職業は?召喚系の魔法詠唱者か?
――
Lv100のNPCをノーリスクで召喚出来るだとっ!?」
ユグドラシルには存在しない職業。
下段の詳細情報欄に記載されているのは、ユグドラシルのゲームではあり得ないような、出鱈目な性能の数々。
だが俺にはどれも見覚えのあるものばかりだ。
否、忘れることなど出来るはずがない。
『職業
何故ならこの職業は、嘗て俺がプレイしていた
※この話を契機に、オリジナル設定マシマシとなり、長々と設定を語る場面も出て来ますが、生暖かい目で見守っていただけると幸いです。
因みにニグンさんのステイタスはこんな感じを想定してます。
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名前:ニグン・グリッド・ルーイン
種族:人間
職業レベル
【――――】 …Lv1
総合計 …Lv25
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職業レベル無しの部分はつい最近任務でレベルアップした為、空白になっていた。
そしてイチグンがレベルダウンした際に下位の蘇生魔法を使ったことで、職業レベルから先に消失してしまい、職業レベルなしの状態でLv1になった。
※上位の蘇生魔法で復活させた場合は、先に職業未習得となっているレベルから消えていく。
其処にイチグンの自堕落な隠居生活で
信仰系の魔法職以外の
※★のついてる職業は派生して獲得した職業の為、