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プロローグが終わり、第1章のナザリック大地下墳墓編がスタートとなります。
第5話 深読みする従者達
ナザリック地下大墳墓。
ユグドラシルにおいて難攻不落を誇ったアインズ・ウール・ゴウンのギルド拠点である。
1500人ものプレイヤーが侵攻した際も、誰一人として最深部まで辿り着けなかったという話は、ユグドラシルにおいて伝説となっている。
転移後の世界におけるこのギルド拠点の立ち位置は、圧倒的な保有戦力を誇る魔の巣窟である。
階層守護者を含めたLv100の猛者達が何人も存在する上に、雑用係として存在している非戦闘要員のモブモンスター1体ですら、国家を揺るがす危険な化け物扱いなのだから。
正に世界を支配する魔王の拠点に相応しい、城塞国家と言えるだろう。
だが真に着目すべきなのは、このギルドの住人がほぼ異形種のみで構成されている点である。
純粋な人間は俺の知識だと片手で数える程しかおらず。残りのナザリックに居る人間達は、スクロールの材料、もしくは食人異形種のオヤツである。
人間という視点から見るなら、此処は悪夢の監獄であり。死んだ方がマシだと思う程に、凄惨な目に遭うこと請け合いだ。
小説でも此処に送られる人間達は『ナザリック送り』と称され、哀れな被害者として語られていたぐらいである。
――しかし、何事にも例外はある。
「何だこの肉はっ!?
犯罪的だっ!犯罪的に旨すぎるッ!」
思わずざわざわしながら、目の前に置かれた巨大なステーキに齧り付く。
牛肉とも豚肉とも違う濃厚な肉の旨みに、ジュワリと溢れ出る大量の肉汁。
そして何よりもこの肉の柔らかさよ。
ステーキナイフが抵抗なくスッと入り、食べた肉は口で解けるようにほぐれ、喉の奥へと消えていき。胃袋に入ったその瞬間から、血肉となるように全身に活力が湧き上がる。
ワイングラスに入った透明な冷たい酒は、火照った身体を癒すように浸透し、爽やかな後味を醸し出す。飲むと頭がスッキリと冴え渡り、精神が研ぎ澄まされるようだ。
まさに天上のメニュー。
このステーキとワインは、本来ならば俺如きが口に出来るようなものではないのだろう。
「お気に召したようで何よりです。
此方は『
ワインは肉料理に相性の良い『バッカスの美酒』をご用意させて頂きました」
「名前からして何だか凄そうっ!?」
えっ、俺ドラゴンの肉食ってたの?
プラチナ・ドラゴンって、
――ツアーがナザリックの食卓に並ぶ日も近いな。
食事を運んできてくれたメイドのシクスス曰く、『至高の御方のみしか食せない、料理長珠玉の一品』らしい。
ロイヤルスイートの一室を宛がってくれたり、世話係として可愛い金髪巨乳メイドを付けてくれたり、果てはこの王族ですら味わえぬであろう豪華な料理の数々。
俺への優遇っぷりが良く判る。
本当にアインズさんには幾ら感謝してもし足りないな。
「……本当に良かったよぉうぉぅぉ!」
思わずステーキを食べながら大粒の涙を流す。
憑依転生開幕からのニグンオチ。
弁明の余地もないままに即死して、拘束拷問の絶体絶命な状況。
更につい先程アインズさんの私室にて、
アレほどの死線を潜り抜けたからこそ、今の待遇があると思えば感動も一入である。
「えっ!?な、涙を流される程に不味かったでしょうか!?」
「……いや、余りの旨さに感涙が。
料理長には『最高の料理を有難う』と伝えて貰えないかな?」
「は、はいっ。勿論でございますッ!」
そういってホッと胸を撫でおろすシクスス。
どうやら俺の言動が、彼女に要らぬ誤解を与えてしまったようである。
どうにもナザリックの面子はアインズさんも含め、ちょっとした勘違いが大惨事を招いている気がする。
ここら辺で少しばかりその認識を変えておかないと、『人間風情が生意気な』と、ナザリックの配下達に不評を買いかねんな。
俺はステーキとワインを食べ終えると、口元をナプキンで軽く拭ってシクススに話し掛けた。
「あと私は単なる客人ですから、敬語も必要ないですし、もっとフランクな態度で構いませんよ?」
「い、いえいえっ!そんな恐れ多い!アインズ様からも『至高の御方と同じように
私のような一般メイド如きが、気軽に話しかけても良いような存在ではないのです。」
「……えっ?」
「ご命令とあれば、何なりと私に御申しつけ下さい。私に出来る事でしたら何でも対応致しますし、その心構えはナザリックのメイドとして出来ておりますので」
そういってスッと静かに頭を下げるシクスス。
彼女のいう
エプロンドレスの前掛けをギュッと両手で握り締め、頬を赤く染めるその姿が、何とも意味深で色っぽい。
「……おっふ」
うおーい、アインズさんや。
好待遇は嬉しいけど、コレは流石にやり過ぎだろJK。
……いや、きっと本人もそんなつもりで命じたつもりは更々なく、メイド達が勝手に命令を過大解釈しているだけなんだろうなぁ。
俺は気まずさからポーションによって生えた金髪を、利き手でガリガリと掻き分けながら言った。
「あー、じゃあ早速お願いしてもいいかな?」
「は、はいっ!」
ピンと背筋を伸ばして静聴するシクススに対し、此方も人差し指をピンと伸ばしながら告げる。
「友好的になれるように敬語は無しで頼む。
あとナザリックの第9階層にはいろんな娯楽施設があるんだろ?もしよければ案内して貰えると嬉しいんだけど」
「……えっ?」
行き成り素で喋り始めた俺に対し、ポカンとした表情を浮かべながら呆けるシクスス。
そんなに変なことは言っていないだろ。
堅苦しく距離を置かれるなんて、ハブられるみたいで何か嫌だし。色んな施設があるなら、当然見回ってみたい。
ナザリック大地下墳墓は、他のギルド拠点と違って遊び要素が満載で、防衛には意味のない付帯施設が沢山あるのだ。
大浴場や食堂、美容院、衣服屋、雑貨屋、ネイルサロン、バー等々。広大な敷地にアトラクション施設顔負けの設備が整っている。
小説やアニメでは覗くことが出来なかった舞台裏を覗けるのだから、ファンとして全力で楽しむしかないだろう。
ついでに金髪美人メイドとの一晩も楽しめば(ゲス顔)だと?
アインズさんに《心臓掌握/グラスプ・ハート》されたいならどうぞご勝手に(白目)
ぶっちゃけ俺の価値など情報しかない。
アインズさんがその気になったら幾らでも無理矢理引き出せるし、その日の内にでも俺はお払い箱となるだろう。
故に俺は馬鹿な勘違いなどしない。
下手に反感を買うような真似をするよりも、分を弁えナザリックの面々と友好的な関係を築くべきなのだ。
そんな此方の気持ちを知ってか知らずか、シクススは花の咲くような満面の笑みを浮かべながら答えた。
「はいっ、私で良ければ喜んで」
「ああ、頼むよ」
どうやらその第一歩は上手く踏み出せたようである。
シクススに案内されるままに、俺はナザリックのリゾート施設を存分に堪能するのであった。
「――故に彼はナザリックで客人として手厚く持て成すことになった。異論のある者は居ないな?」
第10階層の王座の間にて、堂々と発言するアインズに対し、NPC達は最敬礼を以て異論なしと答える。
(……ふぅ、何とか彼を受け入れて貰えそうで良かった)
そんなNPC達の反応にアインズは安堵する。
自らが即興でつくった捏造設定も中々捨てたものではないなと自画自賛した。
アインズはニグンに憑依した一ノ瀬 軍馬を、大規模転移に巻き込まれた被害者であり、現実世界での知人であると説明した。
元々はユグドラシルとは違う法則の世界で生きた、莫大な力を持つ吸血鬼であったが。崩壊する世界と転移による時空の歪みに巻き込まれ、魂のみが肉体から引き剥がされて脆弱な原住民に憑依した。
唯一残った未来に起こり得る出来事を確認出来る力により、自分の置かれている状況を把握することが出来た彼は、ナザリックに情報を提供することを対価に保護を願い出た。
アインズはそれを承諾し、彼の力を有効活用する為に好待遇で迎え入れるといった内容だ。
その嘘塗れの設定に、軍馬は思うところが無い訳ではなかったが。今後の活動を考えると、その設定の方が都合が良いので目を瞑ることにした。
「おおっ、流石アインズ様の知人ですね。
それは未来の情報を自在に読み解く能力と解釈して宜しいでしょうか?」
そして案の定、階層守護者のデミウルゴスが軍馬の力を過大解釈する。
予めこういった展開を予想していた彼は、詰まることなく語りだした。
「いえ、私の能力は其処まで便利なものではありません。起こり得た可能性を示唆し、正史とは違う外史を造り出すという能力です」
「と言いますと?」
「小説のようなものですよ。
アインズさんを主役とした本来紡がれるはずの物語を、私という部外者が介入することで、全く別の物語に書き換える程度のものです」
「成程、私の知る未来視とは随分毛色が違うようですね」
「それにアインズさんを対象に能力を行使した為、私の中に残った魂の残滓は、全て使い果たされてしまいました。……しかも物語の途中で力が切れた為、私に判らぬことも間々あります」
「能力の再行使は出来ないということでしょうか?」
「その通りです。流石はナザリックの頭脳と名高いデミウルゴスさんだ」
「ッ!?」
真相は異なるが事実である。
彼という異物が介入した為、これから起こり得る未来は不確定になった。
故に先の事に関してもまるで予想ができない。
ただ自分の齎す情報で、少しだけ有利に物事を進めることが出来るだけだよ――そう軍馬は暗に語ったのだ。
しかし、デミウルゴスはそうは思わない。
彼の力こそが今のナザリックにおいて、最も必要不可欠な能力だからだ。
(……つまり対象者の未来の観測者になれる。
いやはや、流石はアインズ様のお知り合いですね。人の身に堕ちて尚、規格外の力を保有している御方だ)
彼はデミウルゴスが名乗らずとも名前を知っていた。それだけではなく自分の性格や能力までも当てて見せた。
恐らくアインズを通して未来を垣間見ていたからこそ、自分達の情報を事前に掌握していたのだろうと察する。
デミウルゴスは彼の能力が未来視であると聞いた時、精々数分先の情報が朧げに見える程度だと考えていた。
(しかし、コレはそんな生易しいものではない)
能力を行使した対象の生涯に渡る見聞を先取り出来るのだ。
その情報の齎す利は計り知れず、それを齎す人物は重宝されて然るべきである。
しかも恐ろしいことに、彼は至高の御方の頂点に立つアインズに能力を行使したと言った。
数多の情報隠蔽と妨害対策を施した魔神に。力の殆どを失い人間にまで堕とされて尚、未来を垣間見ることが出来た。
それがどれほど凄まじいことなのかを、デミウルゴスは容易に想像出来た。
そして先ほどの釘を刺すような名指しの誉め言葉――私は人の身に堕ちて尚、有用な人材であるという自分への暗黙のアピールだろう。
デミウルゴスはそう勝手に解釈し、交渉人としての彼の頭の回転の速さや機転にも舌を巻いた。
(……全盛期ならば守護者達全員の未来を、一瞥で看破することなど容易かったでしょうね)
もしそんな力を持つ相手が、ナザリックに牙を剥いたらという警戒もあるが。その力をナザリックの為に惜しみなく使ってくれるという彼の提案は、この未開の地に置かれ右も左も判らぬ状況では酷く有難い。
(……成程、だからこその囲い込みですか。
先を見通すそのご慧眼、心底尊敬致しますアインズ様)
敵対すれば確かに恐ろしいが、味方ならばこれほど頼もしい存在は無いだろう。
失った吸血鬼としての莫大な戦闘能力は、逆にナザリックに依存しなければならない状況が生まれ、大きな借りをつくり易い。
恐らく双方がそれを理解しているからこその共闘。敵対する可能性は限りなくゼロに等しいだろう。
(故にナザリックの素晴らしさを知らしめ、どっぷりと依存させろ。そして何れは新たなる至高の御方としてこの地に迎え入れる――そうおっしゃりたいのですねアインズ様)
1を知り、10の深読みをし。
100の誤解を実行に移す悪魔。
デミウルゴスの勘違い。今、此処に極めり。
勝手に動き始めた彼の忠誠心は止まらない。
緊急会議の後に、デミウルゴスは即座に行動を起こす。
夜伽や身の回りの世話係に、専属メイドとしてシクススを派遣させたり。料理長に肝心な部分をはぐらかしながら説明し、最高級の食事を毎日三食用意させるなど。
異様なまでのフットワークの軽さで、万全の受け入れ態勢を整えていくのであった。
シクススまじヒロイン(アニメ活躍おめでとう)
流石、デミウルゴス(安心と信頼の読深力だ)
……小説ってある程度のプロットは出来ていても、それに肉付けしていく作業が大変ですねぇ。
何とか週二回ぐらいは更新したいです。
少なくともオバロ三期の放送される火曜日は絶対に更新する!