ハイスクールD×Ω   作:tubaki7

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この回は番外編とのリンク、概要に触れています




episode12

 

古い文献には嘘と真実が織り交ぜられているものだ。童話や神話物語、天使や堕天使の所有聖書に至ってはもうどれが本当かなんて誰も知らない。それは今は不在の神でさえ知る由もないことである為、自分なんかが知れるはずもない――――現魔王、サーゼクスは読んでいた文献を閉じる。

 

人間の世界とは逸脱した世界、所謂悪魔の世界ではかなり・・・・・知らない悪魔はいないほど有名な人物であるサーゼクスはグレモリー家の者でありリアス・グレモリーの兄である。政治、世界の安定の為とか色々ある魔王の仕事も数多くあるが、この案件ばかりはあまり関わりたくないと心底思うが立場上そうも言ってられない。

 

 それに、妹が少なからず関わっているとなればなおさらのこと。

 

ここは自らの書斎であり、歴代の魔王から継承した文献やら過去の資料やらが混在している。種類ごとに綺麗に仕分けされているそれらはみればどこになにがあるかははっきりとわかる為次の足取りと手の動き、視線での検索に迷いはなくすぐに目当てのものを見つける。手に取った本の表紙を見て眉を寄せ、開く。

 

 

 ――――神という者は実に不可解でたまらない。時に愛を、時に残酷を持って下々の者たちに試練を与え自身の後継者となるものを選抜する。

 

ここに、一つの一族がある。その一族は代々血の強いものには大きな力が宿るとされ、過去に何人もの“巫女”を立てていることからこの一族は“力ある者”が排出されることがわかる。

 

次に、ここに一つの家族がある。父、母、そして子供の三人家族であり、この家族もまた神によりその運命を歪められた者たちである。

 

二つの一族は良好だった。しかしそれ故に悲劇は起きてしまう。

 

それは惨劇というべきか、悲劇と言うべきか。どちらにしても目も当てられない出来事であったことには間違いない。少年は力を持ち、少女もまたその力と資格を持っている為その悲劇は尚続いていることに心を痛めずにはいられない。こんなことをした神ははたして“愛”というものをもちあわせているのだろうか?否、それは間違いであるか。持ち合わせていても彼の者にはそれを与える権利を選べない。常にそれは気まぐれであり神でさえその行く末を知ることもできないのだから。

 

だが、力の強い者に惹かれるというのはやはり事実でありその後に続く一族の者にもそれは見られてしまう。

 

力を持ってしまった者。持ちながらにして、それを歪めた者。望む望まぬに関わらずその出来事は長い歴史の上で起こるべくして起こってしまったと言った方がいいかもしれない。でなければ、私は神を殺すことも厭わない。さすがにこれはやりすぎだと思う。

 

 

仲睦まじい少年と少女。しかしそれは大きなうねりに飲み込まれ、やがて二人の関係を変えていく。誰が、一体なんの目的があってそうなることを望んだか。誰の仕業なのかは今となってはもう解き明かすことも不要だがそれを見て、実際に現場へと出向いたサーゼクスはその光景を脳裏から呼び起こす。忘れてはならない、忌まわしき出来事。“アギト”という存在が引き起こした一人の少年と少女の始まりと終わりの事件。全ての元凶である神は、未だ不在。全てを背負わせ、姿を消した奴こそ“悪魔”いうべきではないのだろうか。

 

 緑色の躰に付着した赤い液体。命の色ともいうべきその色は緑の躰に付着しその姿をさらに異端のものとする。降りしきる雨にすらぬぐえぬその液体は全身に付着し赤い複眼から流れるその様はまるで涙のよう。貫いた腕から伸びた爪は黒髪の少女の腹部から引き抜かれ、ドサリと地面に倒れ伏す。倒れた少女の前には一人の女性のかつての魂の器があり、その後ろには幾重にも散らばった屍の姿がある。そこに立っているのは、赤毛の少女とまだ若かりし頃の自分。年齢的に、というものではない。内面的にという意味でだ。止めようと思えばできたはず、回避できたはずの惨劇をこうなるまで見ていることしかできなかった愚かで無力な自分にサーゼクスは苛立ちを隠そうとはしない。この時の少年は成長し、今でもその運命と戦っている。――――人ならざる者として。

 

笑顔でいることの辛さと喜びを誰よりも知っている彼に、いったい誰が並んで行けるだろうと思考し一人の少年の名が浮かび上がる。以前から妹から聞かされていた名を。

 

 兵藤一誠。もしかしたら、彼になら止められるかもしれない。そんな淡い期待を抱きながらサーゼクスは本を閉じて背後の気配に呼びかける。

 

 

「グレイフィア」

 

「はい」

 

「近々津上聖一君に会いに行く」

 

「それは・・・・どういう意味で?」

 

「もちろん、現魔王として」

 

「・・・・・ならば私が御留する理由はありませんね。どうぞ、いってらっしゃいませ」

 

「ああ」

 

 

自身のメイドの配慮に感謝し、再び視線を本へと戻す。3年前、起きてしまった事件。そして今でも続くその因縁とこれから起こりうることへの身の振り方と意を再確認しながらサーゼクスは文献の最後を開く。

 

 

――――私はこの光景を忘れることはないだろう。この美しく、残酷なワルツの中にある悲しみと歓喜の声をここに記し、彼の者を不完全神器(ギルス)、堕ちた審判者(ロード)と名付けることとする。これは恐らく過去類に見ない大事件となるかもしれない。天使にとっても、堕天使にとっても、悪魔にとっても、人間にとっても。

 

 

“神の祝福”。皮肉にも、これはそう呼ばざるをえないかもしれない――――

 

 

「・・・・持ったことが幸せなのか、不幸なのか。力というものはどこまで行っても悲しいものだな」

 

 

そう締めくくり、サーゼクスは本を棚へと戻した。





以上、これが番外編にて執筆予定の出来事です。だいぶネタバレになっていますが詳細は描いていないのでご勘弁を。

例により、ハイスクールD×D本家様との相違い点補足↓

・朱乃の過去の出来事改変(アギトという存在がある為)

・3年前にギルスが存在した事と、ロードとの衝突があったこと(これについては番外編にて詳細執筆。ちなみにアギトで始まりのロードといったらあの方です)

・登場人物達の出逢い描写(朱乃とリアスの出逢いなど)

・登場人物の増加、減加(ストーリーの都合により登場しない、あるいは登場するキャラクターあり。登場キャラクターについては他作品のキャラクターを採用する可能性もあります)

・サーゼクスと“神の祝福”との関わり(リアスと朱乃の出逢い改変による影響)

・ハイスクールD×DNew本家様のストーリーに干渉(木場の事です。もしかしたら他も関わるかも)




以上が、今回のお話での内容になります。お話の中では出てこない事柄や描くとごちゃごちゃになりそう等の判断をこちらでしたもののみをここに補足として足していきます。この回は閑話という形になりますのでストーリー展開には関節的にかかわっていくとともに聖一や一誠等メインキャラの行動理由やセリフにも関わってくるのでこの話を書きました。続話を期待されていた読者の方々には大変申し訳ありません。

毎回お気に入りの数や閲覧、感想等が増える度にビクビクしながらも感無量で描いているtubaki7でございます。これからもハイスクールD×Ωに最後までお付き合いくださるようお願い申し上げます。

尚、今作のお話はVSフェニックスからオリジナル展開までの期間とし、以降は第二期として扱いキッチリ分けたい為このハイスクールD×Ωでは描きませんのでご了承ください。

また、第二期の製作はいたします。番外編が先となってしまいますが気長に待っていただけると嬉しいです。

では、これにて後書きとこの回の補足とちょっとしたご挨拶を示させていただきます。次回からは本筋に戻りますのでお楽しみに!
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