ハイスクールD×Ω   作:tubaki7

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episode2

 

夕日も傾き、誰もが寝静まる頃。駒王学園の旧校舎の一室に4つの気配がある。それがよく知る人物たちのものであると自然と認識して扉を数回ノックしてから開ける。失礼しますと一声あげてから入室すると昼間すれ違った少年から笑みを向けられこちらも返す。

 

 

「こんばんわ聖一君」

 

「こんばんわ裕斗君。今日はクッキー焼いてみたんだけど」

 

 

かばんの中から一人分に分けた袋を取り出して裕斗に一つ手渡す。ありがとうとお礼を受けると笑みで返し、その向こう、裕斗の隣でまるで餌をまつ子猫のように目を輝かせて待っている少女の視線に気づいて苦笑いを浮かべて塔城小猫にも一つ手渡す。封を開けてその小さな口で少しずつ食べていく様はまさにマスコット的キャラにふさわしい。そうこうしている内に今度は奥の部屋からメールの差出人である姫島朱乃が姿を現す。

 

 

「あらあら、今日はクッキーですのね」

 

「はい。先輩もどうぞ」

 

「ありがとう。いつもごめんなさいね」

 

「いえ。みんなに食べて喜んでもらえるなら」

 

 

端から見れば近所の主婦の会話にしか見えない光景、そしてそんな光景に割って入るように奥からもう一人が姿を現した。このオカルト研究部の部長であり、彼らの“主”でもあるリアス・グレモリーがひょっこりと朱乃の後ろから顔を出す。クンクンと鼻を動かす仕草は見た目や雰囲気からは違ったかわいらしい印象を受ける。

 

 

「部長もどうぞ」

 

「ありがとう。ん~、甘いいい香りね・・・・」

 

 

袋を開けて一口。これまた人物像とはそぐわない違った少女のような一面をみせる辺り普通となんら変わらないという印象を聖一に与える。

 

 しかし、話が変わればそれも一変する。人数分用意された紅茶とお菓子を目の前にして並びながらリアスは口を開く。

 

 

「今日集まって貰ったのはほかでもないわ。最近、この街に頻発して堕天使たちが集結しているのよ」

 

「私の調べた限りでは、おそらく狙いは・・・・」

 

「一誠の、セイクリッドギア。そうですね?」

 

 

聖一の言葉にリアスが頷く。飛び交う用語を脳内の引き出しから覚えている限りの知識を出して口にする。自分もつい最近この世界に足を踏みいれたばかりだが、それなりに現状を把握しているつもりだ。だからこそ、自分たちの“敵に値するかもしれない陣営”が何を狙っていて、何をしようとしているのかを理解する。狙いは兵藤一誠の内に眠りし力、目的はおそらくその覚醒の阻止。それがわかっているから聖一はそれを口にしてリアスの言葉を待つ。

 

 

「堕天使が何をしようと放っておくつもりだったけど・・・・ここはグレモリー家の縄張りであり、聖一の幼馴染の命が狙われているとなれば話は別。おそらく近いうちに何かしらの手は打ってくるでしょうね」

 

「・・・・一誠、明日デートするみたいなんです。初めてできた彼女と一緒に、でも――――」

 

「きみの直感はよく当たる。特に堕天使や悪魔と言った存在には敏感だ。それが悪意を持っていれば持っているほどね。その女の子が怪しいかもしれない…そういいたいんだろ?」

 

 

裕斗の言葉に聖一は頷く。

 

 

「疑いたくはないけど、手を握った時に感じたんです。こう、歪んだ何かを」

 

「その直感、あながち間違いじゃないかも」

 

 

クッキーを食べ終えた小猫がポケットから一枚の写真を取り出す。そこには一誠と仲良く下校する天野夕麻の姿が映っている。一見仲睦まじい初々しいカップルのようにも見えるが感じた悪寒から今はその光景が偽りのものにしか見えなくなっている。聖一の顔が少し陰るのを見てから小猫は続けた。

 

 

「この女子生徒、どこのクラスにもいない・・・・一年はもちろん、二年にも、三年にさえ」

 

「ってことは、この子が・・・・」

 

「おそらく」

 

 

当たってほしくなかったと聖一は拳を握る。短いとはいえ、彼の彼女であるなら自分にとっては友人みたいなもの。あの時の表情に嘘偽りがなかったとは言い難いが、それでもあの目は・・・・とても、悲しいものを感じた。敵であってほしくない、そう願わずにはいられなかった。

 

 

「もう少し監視を強めましょう。聖一」

 

「はい」

 

「念のため、こちらでもフォローはしておくわ。もしなにかあれば・・・・」

 

「はい。僕が戦います」

 

 

たとえ、それが親友の心を傷つけることになっても。

 

 

「あなたの力・・・・アギトの力は神にもっとも近い。それが敵になるとなれば大きな抑止力にもなるわ。相手がよほどのバカでない限り、戦うなんてことにはならないわよ」

 

 

リアスの言葉に聖一は握っていた拳を解いて表情を明るくさせる。そう、戦わなくても“アギトが存在する”と言うだけで大きなアドバンテージになるのだ、いくら堕天使でも神と同等の存在を敵に立ち回るような愚かなことはしない・・・・筈。変身して脅すだけでいい、それで済むなら安いものだと心の中で納得させる。

 

 

「ともあれ、明日それがどうか決まるわけですから、今日はこれくらいにしましょう。では聖一君、お願いしますね?」

 

「はい、朱乃先輩」

 

 

これで解散、とリアスが一声言うとそれぞれ部屋から出て行く。残ったリアスと朱乃は聖一が去った後のを確認すると互いにため息を漏らした。

 

 

「難儀なものね、ああいうのって」

 

「まあ仕方ないですよ。あの子の力と存在は、私達とはちょっと違って複雑ですから。ここに――――いえ、一緒にいるだけでもかなりの問題にはなりますから」

 

 

そうね、と呟いてまたため息。大きな拾い物をしたと当初は少しばかり喜んでいたものだが、今となってはその重大さに少し疲れてきている。自分もまだまだだなと思いながら、リアスは服を脱いでいく。

 

 

「シャワー、先に使うわね」

 

「はい。では、私はちょっと」

 

「聖一?朱乃もずいぶんと入れ込むわね」

 

「・・・・ええ、私も色々ありますから」

 

 

そう言って奥へと消えていく朱乃を見送り、リアスもシャワースペースへと入って行った。

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