悪魔の中にも人間に危害を及ぼす者もいる。それに至っては堕天使も同じことだが今回は悪魔ということでこの町を自身の領土としているグレモリー眷属が処理することとなっている。時間は夜、日が沈んだ頃にそれは行われることとなる。悪魔だけに主な活動時間が夜になのは必然であり、いくら年頃の高校生といえど家族のいる一誠は言って聞かせるのも一苦労だ。
しかし、なぜかリアスの鶴の一声で両親は納得。「リアスちゃんの言うことなら」と二つ返事で許可をだしたことにまた何かやったんだなと聖一は踏んだがそれを口にだすことでもないので心の中にしまっておくことにする。
さて、今回は逸れ悪魔の駆除。主をもたない悪魔が己の力にのまれ暴走し人や他種族を襲うようになった悪魔の哀れな姿のことを言うが同族を駆除、という漢字にしてしまえばたった二文字で済ませるような表現を一誠はあまり快くは思ってはいなかった。それは部長であるリアスも同じようで彼女曰く「いくら同族と言えどやって許されることではない。手におえないなら、せめて罪を重ねる前に消してあげるのが手向けだ」とのこと。それを聞いて一誠は内心ホッと胸をなでおろして視線をあげる。先に見えるのは古びた教会。悪魔にとって教会という施設は避けたいものだがこう捨てびれていればそれも関係ない、むしろ逸れ悪魔にとっては闇が充満して恰好の隠れ家となることの方が多いと説明を受けた。
逃げないよう朱乃が結界を張り外と中を遮断する。これで狩りの準備は整った。相手は一誠と同じ下級悪魔らしいのだが力をつけていればいくら下級と言えど上級を殺すまでに至る者までいるというから緊張感を限界までに引き上げる。なのに隣の親友は余裕の表情でよく見れば緊張しているのは自分だけとなんだか解せない。納得がいかない。
教会内部へと入る。扉は既に腐って壊れているため開ける必要もなく冷たく湿った空気を中へと常に運んでいる。ぶっちゃけ気持ち悪いと思いつつなんだか落ち着いてしまうのは悪魔の性分なのか。
「おやおや。今日は客人が多いわね・・・・」
艶やかな声が響いて現れたのは・・・・・なんと裸の女性。一見するとただの変態痴女にしか見えないが聖一は彼女から溢れ出てくる殺気や瘴気を敏感に感じ取り構える。
が、しかし。
「おお~!あのおっぱいは推定G…以上はあるぞォォォォ!!」
馬鹿なのだ、この男は。いくら低級悪魔なり立てと言ってもこれほどまでダダ漏れなのに感じ取れないとはいったいどうなっているのかと軽く頭を抱えるリアスと聖一はため息をつく。あらあらうふふと笑う朱乃はさておきまずは切り込み隊長である木場裕斗が腰の剣を抜いて駆け抜ける。そのスピードは常人の物ではなく悪魔と言われてもそう簡単に納得できるものではない。敵に切り付けダメージを与えていく裕斗を見ながらリアスが一人一人の駒の意味と能力を説明していく中、敵の姿がどんどん異形のものとなっていく。こうなってしまってはもう自我があるかどうかも怪しい。小猫が自慢の怪力でクパぁ、と開かれたもう一つの顎の骨をへし折って出てくる。おまけと言わんばかりに投げ飛ばした後続いて出てくるのはリアスのクイーンである朱乃。聖一に向かって笑みを一つむけた後その表情のまま彼女が天に向かって人差し指を向けると対象の頭上から雷が走り直撃する。それも、ダメージになるかならないかくらいのものを何度も何度も。その顔はとても楽しそうでまさに女王の名がふさわしい。・・・・・あまりよくない意味で。朱乃だけは怒らせないようにしようと心に固く誓うのと同時に一誠はふと視界に入った影に敵意を感じて左腕の神器を展開させてリアスの死角へと回り込んだソレを殴る。彼の拳を受けて勢いも加わっていたこともあり吹っ飛んだのは先ほどまで朱乃にいたぶられていた悪魔だった。いつのまにと朱乃の方を見るとそこにはまれで脱皮したかのように化け物の部分が黒焦げで残されていた。
「こいつ、もうこれほどの力を・・・・!」
「・・・・ありがとう。でも覚えておいて?力をつけている逸れ悪魔の力は強力、その源は・・・・――――」
「清潔な魂。穢れのない、純粋であればあるほどそれを喰らった時に獲るものは強力。だけど、それだけ食した者を狂わせる魅惑なものなんだ。彼女は、もうたくさんの人の魂を喰らってる。これが主をもたず、自分の欲望に負けてしまった悪魔のなれの果てだよ」
リアスの言葉をいつもとは違う雰囲気の聖一が締めくくった。
「・・・・聖一。眠らせてあげなさい」
「・・・・はい。部長」
聖一が構える。ベルトが現れ、腕を前に出して変身の一声でベルトのスイッチを押しこむ。光と波紋が身体を包み、現れたのは人ならざる力を宿した幼馴染の姿。その光景を見た一誠はしばしその神々しさと神秘的な雰囲気に見惚れてる。
これが・・・・アギト。無限に進化し続ける神をも超える力。
「聖一君・・・」
先ほどとは違う声色と表情で朱乃が聖一の背を見つめている。まるで、悲しむような、愁いを帯びた表情はなんだかとても魅力的に思えてしまったのは些か不謹慎であるかもしれない。朱乃から聖一に視線を戻し、リアスの説明を受けながら彼の戦闘を見る。
「部室でも説明したとおり、悪魔にとってアギトは天敵とも言っていいわ。でも、それは力の使い方次第。聖一の場合、それは殲滅ではなく・・・・浄化」
繰り出される爪による攻撃を右へ左へと身体を軽く捻ったり身体をかがめたりして躱す。撃ちこんだ腕を弾き時にはカウンターも入れながらどんどん相手を置き込んでいく聖一――――アギト。戦い慣れた動きでキレのあるパンチとキックを叩き込み、教会の外へと追い出す。それを追って聖一も表へとでるとアギトに触れたことにより弱まっている逸れ悪魔の姿が。
「こ・・・・ろ・・・・じで・・・・・」
『・・・・・』
涙を流しながらの訴え。瀕死の状態になってようやく取り戻した自我。それが最後の力を振り絞って言うことを聞かない身体に必死に抑えながら聖一請う。
自分を殺してくれと。
それに無言で答える聖一。額のホーンが展開され、姿勢を低く構える。足元にアギトのマスクを模様にしたような紋章が展開され両足に収束されていく。やがて再び自我のなくなった逸れ悪魔が牙をむいて襲い掛かってくるが、その姿は先ほど見たものとは180°違う。その光景をみて一度視線をリアスはと向ける。
もし、自分がこうなっていたら。もし、自分がこの人の元を離れ逸れた時。その時もこの人は――――
こんな顔で、憐れんでくれるのだろうか・・・・?
聖一が跳び、足を突き出してキックの体勢で撃ちこむ。もろに直撃を喰らった悪魔は一度も傷つけることもできずに転がる。
着地と同時にホーンが収納され吹き飛んだ悪魔に駆け寄りそっと抱き起す。すでにアギトの力の浸食により身体が光に帰りつつあるのを腕の中で見ながら弱弱しくあげられた腕を握る。
「・・・・ありがとう・・・・私のお願い、聞いてくれて・・・・」
『・・・・僕は・・・・』
「・・・・あなたの手。とっても温かいのね・・・・こんな優しい子が戦ってるなんてね・・・・」
『・・・・・』
何も言えず、見つめたまま微動だにしない。それを見て優しく笑う悪魔。
「もう、男の子がそんな顔しないの。台無しよ?」
『・・・・でも、僕は・・・・っ』
「・・・・あなたがアギトでよかったわ。最期にこんな風に逝かせてくれるんだもの。本当にありがとう・・・・」
天へと消えていく躰。見上げる夜空に微笑みを浮かべ彼女は歓喜の涙を流すと、
「ご主人様・・・・私は、世界一幸福でしたよ・・・・」
そう呟いて、消えて逝った。残った聖一は立ち上がり変身を解いて元の人間の姿に戻る。そこへすぐさま朱乃が駆け寄り、そっと手を握って微笑みを浮かべ「お疲れさま」と一言。それに聖一は微笑みで返すものの、その瞳は潤み赤く腫れていたのを暗がりの中よく見えるようになった目で一誠は見て取れた。
「覚えておいてイッセー。逸れ悪魔の中にはみずからすすんでああなった者ばかりではないの。望まぬ別れと理不尽な運命に振り回されてその結果こうなってしまった者もいるの。それを少しでもマトモなもので終わらせてあげるのが私達の役目の一つでもある。イッセー、あなたも同じ悪魔なんだから、今日のことをよく覚えておいてね」
そう言って微笑む主人に一誠は努めて明るい顔で「はい」と答える。
見上げた月は、どこまでも澄んでいた。
小猫と木場が空気だった今回。アニメで言うとあの逸れ悪魔との戦闘シーンですな。それをアレンジしてみましたがいかがでしょうか?
あの悪魔も望んでああなったわけではないと信じたいですな
実は言うとあの逸れ悪魔案外好きだったり(笑)
さて、そろそろシスターのターンかな。