けいおん!―封鎖された学園都市で―   作:Dr.JD

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どうも皆さんおはこんばんにちわ。
作者であります。

けいおん!2話目、投稿します。
今回もかなり地の文が多めです。

夏合宿1日目は前後編に分けたいと思います。
それなりの長文になるため、分けさせて頂きました。

それではどうぞ。



第1話 夏合宿!-1日目(前編)

[夏合宿!-1日目(前編)]

2012年、7月15日、7;50;52

高校2年生 桜ヶ丘高校 軽音部所属

平沢 唯(ひらさわゆい)

日本国 桜ヶ丘駅前

 

私の名前は平沢唯。

今年で16になる高校2年生です。

私は今、駅に向かって全力疾走しています。

今日もお日様の陽で照っていました。

まだ朝であるにも関わらず、気温は素手に30℃を超えています。

だから自然と体のあちこちから汗がブワッ、と掻いてしまうのです。

しかしここで立ち止まって拭いてる余裕はありません。

 

なぜなら私はみんなと約束した集合時刻に遅れそうになっているからです。

午前8時に5番ホームに集合。

そう言われていたのです。

私としては昨夜はあまりにもウキウキしすぎて、眠りに付けなかったのが原因であります。

いつも通りに憂に起こして貰ったのですが、起きるのに時間を消費し続けてしまったために、満足に朝食を食べてる余裕もなくなったので、今は食パン1枚だけでしのいでいます。

背中に背負っているリュックにはお菓子が大量に入ってますが、それは車内でみんなと食べたかったので、今は我慢します。

切符を買って改札口を出て、大急ぎで5番ホームへと続く階段を駆け上ります。

普段から全く運動をしていないため、段数が少ない階段でも私はすぐに体力ゲージが0になってしまいます。

だけどここで遅れる訳にはいきません。

今回合宿としていく駅へ向かうためには、本数の少ないその列車を使わなければなりません。

時間も午前8時のを逃したら、今度は午前10まで待たなければいけません。

だからここで私が遅れたせいで大幅に予定が変わってはならいないのです。

一心不乱に走り続け、ようやく階段の最上段を上り終えたので、今度は階段を下ります。

5番と表記された看板を潜り、一気に下りて行きます。

途中で転びそうになるも、どうにか踏ん張って地面へと着地します。

そして、待ちわびた友達の姿を視認した私は、大声で思いっきり叫びました。

 

平沢 唯

「おーい、みんなー!!」

 

そろそろ体力の限界が訪れたので、ここで歩かせてもらいました。

幸いにも、まだ列車はホームへ来ていなかったので、まだ来てないと判断できました。

そのホームで私と友達以外に誰も客がいないのを確認します。

 

田井中 律

「おせぇぞ唯!何度も電話したのに無視しやがって!」

秋山 澪

「何で毎回集合する度にギリギリのタイミングで来るんだ!頼むからもうちょっと早めに来てくれ!!」

中野 梓

「まだ列車は来てないんで大丈夫ですよ。唯先輩」

琴吹 紬

「唯ちゃん走って来たの?すごい汗よ。待ってて、すぐに拭いてあげるから」

 

それぞれのメンバーから一言ずつコメントを貰って、私はあずにゃんが座ってる隣りの席へと腰を落ち着けせました。

 

平沢 唯

「ご、ごめんよみんな~。私ってば、昨日の夜は楽しみすぎて夜は寝つけなかったんだよ~」

田井中 律

「あたしもそれ同じ気持ちだった!今年はどんな所へ遊びに行こうか考えてたら、普通に真夜中だったりしてさ」

秋山 澪

「おい、まずは練習からだろ?去年の二の舞は踏まないでくれよ」

中野 梓

「疲れた時の練習は力が入らないので、私も出来れば練習を先にしたいです」

田井中 律

「うーん。見事に半々で分かれたな、こりゃ。それじゃムギ!」

 

りっちゃんは日陰が刺さっているベンチに腰を下ろして団扇を仰いでいるムギちゃんにビシッと指を突きつけました。

 

琴吹 紬

「ん~?な~に?」

 

間延びした返事が可愛いと感じたのは、恐らく私だけではないはずです。

 

田井中 律

「ムギはどっちがいい?別荘に着いたら即練習か、それとも夏の風物詩を堪能するか!」

 

テレビの司会者が番組を盛り上げようとする様なノリで、りっちゃんは再びビシッと言い放ちました。

私の予想では、ムギちゃんはこの2度目の合宿を楽しみたいに違いありません!

だから先に遊びたい、と言う選択肢を取るはずです。

………?

あれ?この話、昨日したばかりだよね?

 

琴吹 紬

「うーん、そうね。私は思い出をたくさん作りたいから、着いたらみんなと町を探検しに行きたいわ!」

 

ムギちゃんはパァッと明るく微笑みました。

これで3対2。

よって私とりっちゃん、そしてムギちゃんの大勝利を収めました!

それにしても、と思う。

確か昨日の話じゃ、海水浴に行きたいってムギちゃんが最初に言ってたような?

 

秋山 澪

「町の散策か。それはそれでいいかもしれない。一度行ってみたかった町だから、楽しそうだな!あれも見れるし、写真を撮りたいし」

中野 梓

「澪先輩、あれってなんですか?何か気になるものでも?」

 

私もそれは気になりました。

当の澪ちゃんはと言うと、早くもカメラを操作して設定を始めました。

でも昨日の澪ちゃんは練習してからじゃないと、夜は疲れるからダメだと言っていた気がする。

………なんだか私と皆の記憶が変わっているというか。

 

秋山 澪

「それは向こうに着いてからのお楽しみだ!見たらきっと皆びっくりするぞ!」

中野 梓

「………?」

 

私とあずにゃんは頭からたくさんの?マークが飛び出してきました。

 

琴吹 紬

「澪ちゃん。澪ちゃんが言ってるあれって、これかしら?」

 

するとムギちゃんがベンチから立ち上がって、太陽が照ってる空に向かって顔を上げました。

 

秋山 澪

「そうだよ、ムギ。やっぱり別荘を持ってるだけあって、町には詳しいのか?」

琴吹 紬

「お父様の系列の会社が、いくつもその町にあるから、ちょっと知ってるだけ。私も実を言うと別荘が出来てから初めて行くから、あれを見たことはないの」

 

私やりっちゃん、あずにゃんも気になって空を見上げます。

だけど空には、巨大な雲や青空、小さい点しかない飛行機ぐらいしかありませんでした。

 

田井中 律

「なんだよー、特に何もないじゃんかー」

 

答えが見つかるかもしれないだけに、期待していたりっちゃんがぶーぶーと文句を言ってきます。

確かにこれでは私も納得が出来ません。

 

秋山 澪

「言ったろ?向こうに行くまでのお楽しみだってさ。きっと驚くぞ?」

 

澪ちゃんのあまり見かけない表情が、そこにはありました。

心から興奮して楽しみにしてる気持ちが、こちらにまで伝わってきます。

………記憶に違和感を感じていたけど、そんなものはどうでも良いくらい私もすごくワクワクしてきました!

 

田井中 律

「どうしたんだよ、唯?そんな嬉しそうな顔してさ?」

平沢 唯

「だってさ、ムギちゃんと澪ちゃんがあんなに楽しそうな顔してたらさ、私も楽しくなってきちゃったからさ!」

琴吹 紬

「唯ちゃん………」

 

高ぶる気持ちを抑えられません。

まだかまだかと、列車のホームへ入ってくる方向をまじまじと見つめていました。

 

中野 梓

「私も楽しみです!お二方がそれ程までに見てみたいのなら、私も興味があります!」

田井中 律

「なぁムギ、澪。ヒントだけでも言ってくれないか?予測してみたい!」

秋山 澪

「ダメだ。まぁ多分列車から見れると思うから、その時までの楽しみにするんだな」

田井中 律

「ちぇー、澪のケチ」

琴吹 紬

「じゃあちょっとだけヒントを言うなら、そうね。初めて見る人なら言葉を失います!」

秋山 澪

「あっ!それはいいヒントかも」

田井中 律

「なに?初めて見る奴なら言葉を失う?」

中野 梓

「でもそれって、この場にいる全員に当てはまるんじゃ?」

琴吹 紬

「そう!だから見るのが楽しみなの!さてさて、それが何なのか分かるかな~?」

 

珍しくムギちゃんがイタズラをする子供のような表情になっていました。

うーむ、ますます謎は深まるばかりのようです。

ピリリリリリリリッ。

ホーム全体を包み込むようなベルが鳴り響きました。

これはどこかの番線に列車が近づいている合図です。

 

アナウンス

『まもなく、阿尾嵯町行の列車が参ります。黄色い線の内側まで、下がってお待ち下さい』

 

待ちに待った合宿行の列車がようやく到着しようとしていました。

やがて長い車両がホームへ侵入してきて、私たちの前にゆっくりと止まりました。

 

田井中 律

「よっしゃー!皆の衆、あたしに続けー!」

琴吹 紬

「おおー!」

平沢 唯

「おー!!」

 

荷物の入ったバッグを抱えて、先頭に立つりっちゃん隊長の後を付いて行きました。

テンションが上がりすぎて、手に持った荷物の重さなんて、全然気になりません!

 

秋山 澪

「ちょっ、お前ら!もうちょっと静かにしろ!目立つだろ!」

中野 梓

「意外と大丈夫かもしれませんよ。この番線、あまり使われてないのか、乗客が私達しかいませんので」

 

2人もハイテンションな私たちに渋々乗っかる形で、列車に乗り込みました。

あずにゃんの言葉通り、乗り込んだ私たちの他には誰もお客さんは乗ってませんでした。

と言う事は………。

 

平沢 唯

「私たちの貸切状態だー!」

 

さらにテンションが上がって、私は近くの座席へ思わずダイブしてしまいました。

全身から感じるふわふわした感触が、自然と眠気へと誘いました。

 

秋山 澪

「唯、行儀悪いぞ。いくら他のお客さんがいないからって、座席に飛び込むなよ」

田井中 律

「でもあたしら以外誰もいないんだし、別によくね?あたしこっちの席なー」

琴吹 紬

「せっかくだし、去年みたいにみんな同じ席に座りましょうよ。例のあれも見たいし」

中野 梓

「私も賛成です!ほら、唯先輩は私の隣りに座って下さい!」

 

半分脳がすでに睡魔へと浸かっていた私の手を引いて、無理やりあずにゃんが私を起こしにかかります。

そのタイミングで、電車がゆっくりと動き始めました。

立ち上がろうとしていたので、私はよろけてあずにゃんを座席へと倒してしまいました。

 

中野 梓

「にゃ!?ちょっ、唯先輩どいてください!」

 

下敷きになってしまったあずにゃんの顔との距離はほどんどありません。

だから自然と、私の顔が赤くなるのを感じました。

あずにゃんも同じ気持ちか、顔を真っ赤にして、私がさっさとどくとあずにゃんはプイッと横を向いてしまいました。

こんなあずにゃんも、すごく可愛かったです。

 

田井中 律

「う、うおう………」

 

そんな吐息が聞こえたのでそちらの方へ向くと、唖然として見つめてるりっちゃんと、顔を同じくらい赤くしていた澪ちゃんと、鼻血を必死に抑えて出血を試みてるムギちゃんの姿がありました。

幸運にも、他に乗客がいなかったので妙な勘違いを抱かさせずに済みそうです。

 

平沢 唯

「うーん!やっぱりあずにゃんはものすごく抱き心地がいいよ!」

田井中 律

「ひゅーひゅー!お暑いねー、お二人さん!」

 

りっちゃんのからかった声で、私は自然と体が熱くなってるのを感じます。

しろもどする私は、少し落ち着かせてから席へ座りました。

そして列車は走り続けましたが、みんなの反応はまだしばらくは鈍いままでした。

 

 

2012年、7月15日、9;23;47

高校2年生 桜ヶ丘高校 軽音部所属

平沢 唯(ひらさわゆい)

日本国 『阿尾嵯町行き』列車内 4番車両

 

列車に揺れること1時間あまりが過ぎました。

ガタンゴトンと、ちょっとしたリズムが刻まれた揺れを全身で味わいながらそれぞれ過ごしていました。

りっちゃんと澪ちゃんは町の観光用のパンフレットを眺めながら、どこに行きたいー?などと相談しながら楽しそうに話していました。

ムギちゃんはその様子をウットリと見つめながら時折、窓の景色を楽しんでます。

一番合宿を張り切っていたあずにゃんはと言うと、先程まで私たちと混ざってはしゃいでいましたが、疲れてしまったのか、反対側の座席に座って寝息を立てて眠っていました。

他にお客さんも乗っていないので、構わず席を占領しちゃいました。

その姿はまさしく、ちっちゃくて可愛い天使のようでした。

 

田井中 律

「唯ー?さっきから梓の顔見てどうしたんだ?」

 

私の様子を伺っていたりっちゃんが、パンフレットから特に顔を上げずに尋ねてきました。

 

琴吹 紬

「りっちゃん、唯ちゃんはお楽しみタイムを過ごしてたんだから、邪魔しちゃだめよ」

 

うふふと私の代わりにムギちゃんが代弁してくれました。

ムギちゃんって時々何が言いたいのか分からない時があります。

でもその点を含んでも、私はムギちゃんのことも好きです!

ああでも、この好きって言うのは友達として好き、と言う意味です!

 

秋山 澪

「唯、何をさっきからウロチョロしてるんだ?」

 

澪ちゃんに言われて、私は知らぬうちに自分があたふたしていたようです。

 

平沢 唯

「ううん、なんでもないよ。あずにゃんがあまりにも可愛かったから、ただ見つめちゃってただけだよ~」

田井中 律

「唯ってほんとに梓のこと気に入ってんだな。唯一の後輩ってこともあるんだろうけどさ」

平沢 唯

「なに言ってるのさりっちゃん!あんなに小さくて可愛い女の子は他にはいないよ!」

田井中 律

「おっ!窓の外見てみろよ!」

平沢 唯

「ちょっ、りっちゃんスルーするなんてひどいよ!」

 

たまーに澪ちゃんやムギちゃんの話題をスルーしたりしてますが、いざやられると少々落ち込んでしまいます。

今度からちゃんと話に耳を傾けるようにしましょう。

 

平沢 唯

「どしたのりっちゃん?」

田井中 律

「ほら、あれ!!」

 

窓の外を指して、はしゃいでいるりっちゃんを見て、私も興味が湧いてきました。

 

琴吹 紬

「え?なになに?」

秋山 澪

「どうしたんだ?そんなにはしゃいで?」

田井中 律

「ムギ、澪!窓の外を見てみろよ!ほら梓も」

中野 梓

「は、はぁ。どうしたんですか?」

 

全員で窓の外を眺めてみます。

窓から入ってくる強風にも負けず、窓の外に顔を出しました。

するとそこには――――

 

秋山 澪

「お、おおぉ!」

琴吹 紬

「うわぁ!すごい景色ね!」

中野 梓

「先輩!私、合宿来てよかったです!」

 

皆が絶賛するのも無理はありません。

なぜなら、私達が見ているのは、町を一目で見れたからです。

巨大な町は、すっぽりと枠の中へ入っていて、まるでおもちゃのような世界でした。

そしてその海の向こう。

そこにはなんと、天まで伸びる”線”がそびえ立っているのです。

そう、あれは多分だけど”宇宙エレベーター”と呼ばれてる施設だろうと思います。

海の上に建てられた海上ステーションから、一直線に伸びています。

――――テレビで頻繁に話題として取り上げられていましたが、難しい話しばかりだったので、私はあまり気になりませんでした。

だけどいざ自分の目の前まで見えてくると、壮観です。

手を伸ばせば、すぐにでも触れそうなほど、巨大なモニュメントとして花を咲かせていたのです。

澪ちゃんは、これを見せるために、わざと言わなかったのです。

私達を驚かせるために。

 

アナウンス

『次は終点、阿尾嵯町、阿尾嵯町になります。手荷物のお忘れ物が多発しておりますので、乗客の皆様、ご注意下さいませ~』

 

車内に設置されているスピーカーから、終点の知らせが入ってきます。

それを聞いた私達は、窓から離れて、それぞれが支度を始めました。

 

平沢 唯

「わぁ、もう着いたんだ!」

田井中 律

「よし!お前ら、準備を済ませろ!桜ヶ丘軽音楽部の初陣だーーー!!」

琴吹 紬

「おぉぉーーーー!!」

中野 梓

「おおー!」

秋山 澪

「だから少しは静かにしろ………ってまぁ、いいか。楽しみなのは私も同じだからな。ただし、忘れ物はするなよ?特に唯はな」

平沢 唯

「ちょ、澪ちゃん酷いよー!」

 

あははははは!!っと、一斉にどっと笑いが溢れ出た。

そして最後に私も笑い出してしまいました。

だけど、出る準備する手は止めません。

だって、すぐそこに楽しみが私達を待っているから!!

 

電車を降りて広いホームに立つと、人で溢れかえっていました。

振り返っても真正面からでも見渡す限りの人。

私達が乗ってきた電車にはそれ程までに人は居なかったと思うんですが、どうやらそれぞれ違う土地から来た人達で、大変賑わっているようでした。

周りの空気に押されてか、自然と脈拍が高まった気がしました。

 

秋山 澪

「唯、こっちだぞ?離れるなよ?」

琴吹 紬

「よし、全員居るわね?これから私の別荘に向かうわ。送り迎えは齋藤がしてくれるけど、それ以降は私達だけで食事や洗濯などをすることになるわ」

田井中 律

「オッケー!そこからがあたしの力を見せつける時なんだな!昼食と夕飯は任せとけ!」

中野 梓

「律先輩って料理できるんですか?」

田井中 律

「あったぼーよ!両親が共働きの上、弟がいるからメシを作る機会が多いんだよ。だから料理なら任せろ!」

琴吹 紬

「それは楽しみね。これから齋藤が待ってる出口まで案内するから、はぐれず着いてきてね?」

平沢 唯

「は~い!」

 

今度はムギちゃんを先頭にして、ホームを後にします。

うーん、それにしても、このワクワクが止まらないのは、私だけではないはずです。

私が見たことがないようなモノが数多く、私の目の前に広がっているからです。

床一面を自動で掃除する、円柱のようなロボットが数体ほど、列をなしています。

他には立体映像が飛び出して、いかにもそこに存在しているような、えと、フォログラム?が出ていたり。

あちらこちらに珍しいモノがあるせいで、目移りしてしまいます。

カメラをカシャカシャ操作しているのは、りっちゃんです。

 

田井中 律

「おー、すげぇな唯。あたしが見たことないもんばっかりあるぜ。おお、あれすげぇ!人型ロボットだ!映画でしか見たことねぇからすげぇ!」

 

私の傍ではしゃぎ立てるりっちゃんは、いつにも増して子供みたいに興奮してるみたいです。

あ、別に悪口で言ってるんじゃないからね?

 

そんなこんなでホームを出て、エスカレーターを使って登ると、またも広い場所に出ました。

巨大なガラスの向こうには飛行機が飛び立とうとしているのが見えます。

ここもホームと変わらず、多くの人々で賑わっているようでした。

………出口に向かうと、全身の皮膚からブワッと汗が噴き出てきました。

同時に熱気も伝わってきて、一瞬だけど目眩がしちゃった。

 

秋山 澪

「うっ、やっぱり外は日が強いな………」

中野 梓

「そ、そうですねっ………ああ、これなら日焼け止め塗っておけばよかった………」

田井中 律

「ぶへー!あちいぃぃ!ムギ、迎えはどこなんだ!?このままじゃ溶けちまう!」

琴吹 紬

「すぐそこよ~。えーっと………あ、あれよ!」

 

人混みの中を指さした方向に、私達は振り向きました。

そこには案の定と言いますか、立派な黒光りしたリムジンが待っていました。

後部座席付近に立っていた、老齢な執事服を着た人がドアを開けると、微笑みました。

 

執事

「お待ちしておりました紬お嬢様、お友達の皆様。琴吹家で執事をしております、齋藤と申します。屋敷まで案内致します」

琴吹 紬

「お願いね、齋藤。さぁ皆、リムジンに乗って?これで移動するから」

 

ムギちゃんもまた、眩しく微笑みました。

この暑さのせいなのか、その笑みはとても頼もしく感じられました………。

 

車に揺られながら、どれくらい走っただろうか?

クーラーの風に当たりながら、外の景色を眺めていると、キレイな景色を眺められました。

目の前には広大な海が広がっていて、太陽の光と合わさって、とてもキラキラしています。

いくつかの船が港から出入りしている光景も、初めて見るのでとても新鮮な感じがします。

ちなみに他のメンバーは、同じように外の風景を見ていたり、お喋りなどで楽しんでいます。

そんなこんなで、ムギちゃんの別荘、もといお屋敷に到着しました。

相変わらず大きな建物で、私達は見上げる形となってます。

いつ見ても大きな建物なので、言葉も出ませんでした。

 

齋藤

「それでは皆様、ごゆっくりとお過ごし下さいませ。それでは私はこれで」

琴吹 紬

「ありがとう齋藤」

 

執事である齋藤さんは一礼すると、リムジンに乗って走り去ってしまった。

残された私達は、またもムギちゃんの一声で元に戻りました。

大きな扉を開いて、中へ入ると、再び言葉を失いました。

天井からは巨大なシャンデリア。

床一面には見るからにフカフカそうな絨毯。

そしてそれらの装飾に相応しい家具類が並べられていた。

うう、上手く表現できない………。

 

中野 梓

「きょ、今日からここが、合宿として使う場所………」

秋山 澪

「そっか。梓は去年いなかったから、ムギの別荘が広いのは知らなかったんだな」

中野 梓

「それもありますけど、すごく、その、場違いなような気がしてしまって」

田井中 律

「ふっふーん、そこは大丈夫よ梓ちゃんー。去年なんてお構いなしに別荘の中を探検したりー、料理食べちゃったりしてるから」

秋山 澪

「お前は少しは遠慮しろ」

田井中 律

「へぶんっ」

 

りっちゃんの言葉に、澪ちゃんはチョップでツッコミを入れます。

うん、そう言えば私も去年は遠慮なしにバーベキューを食べちゃったっけ?

懐かしいなぁ。

ここで横に居る澪ちゃんが、腕時計で時刻を確認しています。

 

秋山 澪

「もうそろそろお昼だな。どうする?先にお昼を済ませてから、その、遊びに行くか?」

田井中 律

「さんせーい、あたしはもう腹ペコペコだ。ちゃっちゃと昼にして、遊びに行こうぜー」

中野 梓

「そうですね。ムギ先輩、食材はあるんですか?」

琴吹 紬

「いいえ、今回は私達だけで全てを賄うと言っているから、食材は全くないはずよ。だからこれから買い出しね」

田井中 律

「えぇぇぇ!?それじゃ、この炎天下の中を歩かなくちゃいけないのか!?おいおい勘弁してくれ………」

 

りっちゃんは窓の外を見て、炎天下が続く世界を見て、途方に暮れていました。

確かにこの暑い中を出て行かなくちゃいけないのは、ハッキリ言って嫌だ。

でもお腹が空いているのも事実で………。

 

田井中 律

「うぐっ、しょうがない。ならここで班分けをしよう。ジャンケンに勝った人が、ここの台所で昼食の支度をすること。負けた人が外で買い出しに行ってくるぞ」

秋山 澪

「待った。ならムギはここで残った方がいいだろう。私達はこの別荘のどこに台所があるかが分からないからな」

琴吹 紬

「それなら大丈夫よ。皆にこの別荘の見取り図を渡しておくから、それを見て探してみて?それに、皆が暑い中を出るかも知れないのに、私だけが別荘に残ってるなんて出来ないわ」

中野 梓

「うーん、本当なら先輩方を行かせない方が良いんでしょうけど、この辺の地理に詳しくないしな………」

 

などと話がどんどん進んでいく。

さて、私は何を出そうかな………。

 

田井中 律

「なら行くぞ。最初はグー、ジャンケン………ほい!」

 

………ポンッ!

―――――――――――――――――――――――

―――――――――――――

――――――

 

平沢 唯

「………………暑い」

琴吹 紬

「あはは………唯ちゃん、大丈夫?」

 

一緒に隣を歩いているムギちゃんから、タオルを渡されました。

はい、皆さんのお察しの通りだと思います。

ジャンケンに負けました!

澪ちゃんとりっちゃん、あずにゃんは別荘で留守番をしています。

だから絶賛、熱中症に向かって一直線であります!

対策として麦わら帽子と水分補給は小まめに行ってますので、悪しからず!

………あれ?悪しからずの使い方って、これで合ってるっけ?

 

平沢 唯

「ありがとう、ムギちゃん!うわぁ、ふっかふかで気持ちいいー!」

琴吹 紬

「ふふ、良かった」

平沢 唯

「ところで、食材を買いに行くって言ってたけど、ここから遠いの?」

琴吹 紬

「いいえ。でも車で5分くらいだって齋藤が言ってたから、そう遠くはないはずよ」

 

車で5分………えと、徒歩になると約15分くらいだっけ?

 

琴吹 紬

「それにしても、楽しみだわ!夏休みの合宿だなんて、聞いただけでワクワクしない?」

平沢 唯

「うん!あのね、なんだかこの合宿は色んな事が起きそうな予感がするんだ!」

琴吹 紬

「色んな事?」

平沢 唯

「あのねあのね!色んな人と出会って、色んなイベントが起きて、それで大切な人がたくさん出来そうな気がするんだ!」

琴吹 紬

「まぁ!楽しい思い出がたくさん作れそうね!ならさっさと食材を買って、昼食を済ませてから観光に行きましょう!」

平沢 唯

「うん!!」

琴吹 紬

「ほら、あれがマーケットよ。もう少しだから頑張ろう!」

 

話している間に、どうやら食材を買える場所に辿り着いたようです。

ムギちゃんと思い出を作る話をしていたら、暑さなんてほとんど感じられずに着いたから、ムギちゃんには感謝しかありません。

そして、マーケットの入り口にいざ突入。

 

平沢 唯

「ふいぃぃ~。やっぱり文明の利器は素晴らしい………」

琴吹 紬

「ほっ、無事に着けて良かったわ。実を言うと、このマーケットに来る道順が不安だったの」

平沢 唯

「そうなの?でも大丈夫だよムギちゃん!もしも迷ったら、じゃじゃん!携帯の地図機能を使えば!」

琴吹 紬

「ふふ、それは頼もしいわ。でも、使い方は分かる?携帯、最近になって買い換えたばかりなんでしょ?」

平沢 唯

「ごめんなさいムギ先生!全く分かりません!」

琴吹 紬

「ふふふ………さて、ちゃっちゃと買い物を済ませちゃいましょう。梓ちゃん達が待ってるはずよ」

平沢 唯

「うん!」

 

ムギちゃんの後を追おうと、足を踏み出した時でした。

だけど私の足は、そこで止まりました。

そして、私はその場で振り返りました。

そこには商品棚が置かれていて、数人の客しかいません。

気のせいだと思いますが、誰かに見られていた気がしたのです。

ライブをやる時の視線とはまた違うのですが、特に気にせずにムギちゃんの後を追いました――――

 

買い物を済ませて、暑い中を歩き回ってようやく別荘に到着しました。

ムギちゃんが扉を開けて、そのまま台所へ行くと、エプロン姿の3人が手紙のようなものを読んでいました。

 

平沢 唯

「ただいまー!みんなー、戻ったよー!」

琴吹 紬

「ただいま。どうしたの皆?」

田井中 律

「あ、おかえりん。いやー、それがな」

秋山 澪

「ごめんムギ。実は玄関前にこんな手紙が届いてたんだ。あっ、私は見るつもりなんてなかったぞ!ただ、その、成り行きでこうなっちゃって………」

琴吹 紬

「手紙?読んでも良い?」

田井中 律

「もともとムギ宛ての手紙だったから、遠慮なんていらないよ」

 

ムギちゃんは微笑みながら、その手紙を音読しました。

おそらく私にも聞こえるようにするためでしょう。

こう言った細かい気遣いが出来るムギちゃんは、やっぱり大人だぁ、と感じました。

聞いた内容をまとめると、こんな感じだったと思います。

 

平沢 唯

「へぇ、明日この教会でオープンセレモニーがあるから、演奏をしてほしいって内容の手紙だったんだね」

琴吹 紬

「この教会の事は前から知ってるわ。オルソラ教会、確か数年前から建設中だったのが、今月になって完成したらしいわ」

田井中 律

「でもでも、なんでその教会から招待状なんて来るんだ?ムギの知り合いがいるの?」

琴吹 紬

「私のお父様が建設するに当たって資金を一部提供したの。だからそのお礼として招待してくれたんじゃないかしら?」

秋山 澪

「でも、これ、演奏して欲しいって依頼じゃっ」

琴吹 紬

「何でも、演奏予定者が怪我をしちゃったらしくて、代役を探してたみたいね」

平沢 唯

「でも、なんで私達がバンドをやってるのを知ってたんだろ?もしかして、ムギちゃんのお父さんが教会の人に話したのかな?」

琴吹 紬

「うーん、もしかしたらそうかも。お父様はよく家族のことを知人に話してるのを見かけたことがあるから」

中野 梓

「………なら先輩方、やることは決まりましたね」

 

ここまで黙っていたあずにゃんが、ゆっくりと口を開けました。

同じようにゆっくりと頭を上げると、その両目はキリっとしていて、カッコいいと思いました。

 

秋山 澪

「なんだよ、やる事って?」

中野 梓

「明日のオープンセレモニーに向けての特訓です!ここでのんびりと海水浴してる場合じゃないです!さぁさぁ!先輩方は急いで楽器の準備をして下さい!」

田井中 律

「うわっ、ちょっと押すなって!そもそも、まだ昼食まだだから先に食わせろ!」

秋山 澪

「なっ、なんで私まで!」

琴吹 紬

「ふふふ、ならお昼ご飯を食べて、早く練習しましょう?ね?」

 

みんなの姿を見て、私はみんな楽しそうにも見えました。

私も自然と笑みを零して、みんなの空気と混じり合います。

いつもなら練習と聞いて、お茶を濁してしまうけど、今は不思議とそんな気持ちは薄れていました。

そして、私の内にあるウキウキした気持ちが抑えきれませんでした。

 

平沢 唯

「よーし!ならまずは腹ごしらえからだよ!それから明日に向けて練習だー!!」

 





皆さんの中での名作って、どんな作品ですか?
私は一昔前だと、

・ゴーストハント
・ココロコネクト
・涼宮ハルヒの憂鬱
・ルパン三世

とかとか、色々ありますね!
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