ヤクザやギャング、警視総監の跡取りの少年少女をどう思うだろうか。将来が約束されている、というのは聞こえがいい。だが、裏を返せば自分の望む未来とは違う世界で生活しなければならない。それはあまりにも酷なものだ。
「あぁ……めんどくせぇ」
俺はごく普通の一般人だ。スポーツは得意でもなく不得意でもない。勉強は程々に出来るし、ルックスだって良くもないが悪くもない。ついでに料理も出来る。中学の時に両親に叩き込まれたスキルと、過去のトラウマのせいでだが。ただ、人と少し違う点を挙げるとすればだ。
「ちょっとツラ貸せやテメェ」
「アニキの服汚した落とし前はつけてもらうぜ!」
ものすごく変な奴らに絡まれやすい。今回はガタイのいい男とその後につく小柄な男の二人組。どうしてなのか俺は裏の世界に潜む住人によく絡まれる。見た目のせいなのだろうか。いやわかんないけどさ。
「……俺これから学校なので、邪魔です。さっさと倒れろ……っ!」
ガタイのいい男を投げ技で倒す。背負投とかなら体格差は気にしなくていいから楽だし、当たりどころでは色んなものをもっていくレベルに強い。とりあえず小柄な男はビビって逃げたし、俺は早く学校に向かわないと。
「……死ぬかと思った……」
時間もギリギリの為急いで走ったら、一度目の予鈴で学校にたどり着いた。これはセーフなのだろうかとうんうん悩みながらも職員室に向けて歩いていく。
「失礼します。一応転校生の桐条夜雲です。一年C組の担任の方はいらっしゃいますか」
「あぁ、私だ私。」
失礼の無いように丁寧に話していたら思ったより雑な答えが返ってきた。怖い先生ならどうしようと考えた俺の緊張を返して欲しい。だが、今まで男性の教師だったから女性の教師が担任になるのは少し嬉しい。
「今日から君の担任になる日原教子だ。これからよろしく」
「えっと、改めて桐条夜雲です。これからお世話になります」
ここからはざっくりとしたこの学校の説明なので割愛するとしよう。
「さて、これからHRだ。君には挨拶してもらうから考えておいてね」
この言い方は断ってもやらせる気だ……。仕方ないとはいえ憂鬱になるな。うわ……もう教室目の前だし。
「HR始める前に、今日は転校生の紹介をするぞー。さぁ、入って」
「……どうも」
教子女史に呼ばれて教室に入ると、何故か全身静かになる。そんなに変だっただろうか。
『……え、なにあの人カッコイイ』
『おいお前ら、また敵が増えたぞ。しかも勝てる気しねぇぞ』
「……なぁ、アイツって」
「多分楽の読みで合ってると思うよ」
「なんで……夜雲君が?」
「あら、良かったじゃない小咲」
……どっかで聞いたことのある声な気がするが、まぁ気のせいだろ。とりあえず自己紹介しないとな
「今日をもってみなさんのクラスメイトになります。桐条夜雲です。不慣れなことが多いですが、これからよろしくお願いします」
きゃぁーーーー!
……すっげぇ黄色い声と嫉妬の目線。このクラスに飽きることはまず無いだろうなぁ……
「やっぱり夜雲(君)だ(ね)!」
「なんでお前らが……!?」
「感動の再開のところ悪いけどHR中だから静かにね」
「あっ、すいません」
そんなこんなで最初が肝心の挨拶は無事に終わりましたとさ。とても賑やかなクラスで、毎日楽しそうだ。
「あ、そうだ。俺の席って」
「あ、すまんすまん。忘れてた。そうだな……小野寺の隣が空いてるからそこでいいな」
教子女史がそう言うとガタンと机に何かが当たった音が聞こえた。うーん、オノデラさんはそんなに嫌だったのだろうか。だとしたら申し訳ないが少しだけ我慢してくれ
「それじゃ、後はよろしくね~」
俺はその空いてる席に歩いていく。途中途中声をかけられたがいつもの笑顔で対応するとそれ以降声をかけなくなった。何故だろうか。
「さて、これからよろしく。オノデラさ……って小野寺さん?」
「うっ、うん。そうだよ。これかよろしくね、桐条君」
何と言うことか。俺の隣の席は小野寺小咲さんではないか。彼女は濃いめの茶髪で左側の髪が長いという少し特殊な髪型をした少女で、中学の時はとても人気が高かった。どうやら今も人気が高いようで、男子の怨嗟の声が聞こえてくる。
「……おかえり、桐条君」
「おう……ただ「久しぶりだな、夜雲」」
おい誰だせっかくの再開の場面を潰したのは!と声のした方を見る。すると、よく知っている人物だった。
「お、楽か。久しぶりに会ったな」
「ホントだよ。一体今まで何してたんだ?」
「はは……まぁ色々と。それよりも、楽は小野寺と……オーケーなんでもない」
楽にすごい目で見られてる。あぁ、その顔を見るとまだなのね。……というよりお前には知られたくなかったみたいな顔してる。
「よっ、久しぶりだなー夜雲」
「……誰?」
「はっはっはー、そんな冗談を…………え、マジ?」
「嘘だよ、久しぶりだな集。まさか集もこの学校だったとはな」
楽に集に小野寺さん。ってことは……宮本さんもいるのかな?
「……私はここよ。久しぶりね桐条君」
「なぁ、頼むから人の心読むのやめてくれないか?」
宮本さんは愛想笑いをしてくれただけで終わってしまった。それは肯定と受け取っていいのですかね……?
「ねぇ、楽?この人は?」
うわ、なんだこのスタイルいい外国人。ブロンドっていうのか?金髪っていうのか?俺にはよくわからないがこのクラスは美少女が多いな。
「おう、千棘。コイツは桐条夜雲だ。昔の友達で、中学の最初の方で転校したんだ。夜雲、コイツは桐崎千棘。俺の……彼女だ」
ほう……きりさき、桐崎……ん?最近どっかで聞いたっけな……あ、思い出した。
「なぁ、楽。桐崎さんってもしかして……ビーハイブのお嬢さんか?」
「あ、あぁ……その通りだ。しかしよく分かったな。知ってたのか?」
「……少し前に桐崎さんの親父さんと関わっててな。何だったら一条さんとも関わりあるが……聞くか?」
「いや……いい。それだけでお前が只者じゃなくなったことは察した」
ん?桐崎さんがいるってことは……
「探しましたよお嬢!」
「……あ、やっぱいたのか」
「楽様!お会いしとうございましたわ!夜雲様もお久しぶりですわ!」
鶫さんに橘さん……やっぱいたのね。まぁ、楽と桐崎さんが居るんだからそれはそうか。
「まぁ、改めてこれから宜しくな」
「うん!(おう!・はい!)」
これから始まる物語は裏で組織潰しと言われた男の子が二人の女性に好意を寄せられる話。だがまぁ、その過程にある苦労はここで語らねばなるまい。
さて、これからまたSS書いていくので、別作品もぜひお読みください。できれば暖かいコメントをいただけるとモチベーションに繋がるのでお願いします……