気持ちはすでに明日だったが、まだ下校と言うイベントが残っていやがった。
制服に着替えて教室のカリキュラムの書類に目を通して各々帰り始める。
「まさかテスト一つにまで除籍がかかるとは……これが最高峰。」
デクと一緒に帰っていると、正門から出た所でなぜか一緒に帰っている飯田が唸る様に言った。
「常に高みを目指せ、中途半端は許さんって事だろ。大したことねーよ。」
「いやあるだろう?」
「雄英にまで来てるやつらに、向上心が足りないやつがいるわけねーだろ。
その気持ちを持ち続けてりゃ、除籍なんざねえって事だ。」
「なるほど、だから大したことないと。」
飯田だけじゃなく、デクまでなんかコクコクと頷いていた。
峰田は危なかったが、これからだ。俺達はまだ入学初日、ガンガンでっかくなっていくんだ。ヒーロー目指して!
「おーい! みんな駅までー?」
麗日が正門から追いかけてきた。
「たしか、爆豪かっちゃんさんと、飯田天哉君と、緑谷デク君、だよね?」
「うん。あ、でもかっちゃんの本名は勝己で、ボクは出久って言うんだ。デクって言うのはあだ名で。」
「あだ名? あまりいい意味じゃなさそうだが……」
飯田が怪訝そうな表情をする。
「ううん。最高のあだ名だよ。実はね、僕は半年ほど前まで個性が発現してない、無個性だったんだ。」
「え!?」
「まさか!?」
あ、デク! テメエそんなこと言っていいのか?
ここにいる奴で無個性を差別するようなやつはいないとは言え、こんな年で個性が出るって不自然だろ?
「4歳の頃ね、無個性だって診断されて落ち込んでた時にかっちゃんがね……
個性がある人よりももっと努力したら、無個性の僕だってヒーローに成れる。
ヒーローに成るまでは、頑張れって感じのデクだって。そうつけてくれたんだ。」
「そんなことが……」
「なんかわかる! 頑張れって感じ、私も好きだな!」
「ありがとう。それから、ずっとかっちゃんと一緒にトレーニングして、雄英にまでこれたんだ。かっちゃんにデクって呼ばれるたびに頑張れって応援されてるって元気が出てね。」
やめろ! おれを恥ずか死させるつもりか!
「君にそんな優しい一面があったとは……すまない! 君の事を誤解していたようだ!」
やめろ飯田。今は顔が真っ赤だからそっちを向けねえ。あ、バカ! お茶子、回り込むな!
顔を見られないように、俺は走り出した。
「そんな昔の事話してんじゃねーよ!」
「あ! まってよ、かっちゃーん!」
わかってる。これは完全に逃げだ……
翌日、本来の初授業だ。午前中は一般教養。数学や英語なんかの必修科目の座学をするわけだが……プレゼント・マイクがあのファンキーな恰好のまま普通の英語の授業するとか、滅茶苦茶シュールだった。
ヒーローの正装としてコスチュームで仕事するのは正しいとは思う。いつ緊急事態になるか分かったもんじゃないからな、この個性社会。
昼は食堂に向かう。食堂はかなりの混雑具合だ。中学までは弁当を母ちゃんと一緒に作っていたんだが、ここ雄英ではクックヒーロー・ランチラッシュの料理が食える。個性使って作ってるみたいだから、さすがに完コピは不可能でも、できる範囲で味を盗めたらと思う。
女の子の手料理っていいよな。そして、メシマズより料理上手の方がいいに決まってるだろ? そのうちまたインコさんと話してデクに弁当作ってやるか。
午後に入って、お待ちかねのヒーローとしての実技の授業だ。ヒーロー基礎学、担当はオールマイトだ!
「わぁたぁしぃがぁ! 普通にドアから来た!!」
声と共にドアがバッと開いてオールマイトが現れた。その姿はいつものテレビで見る姿とは違い、下は青で上は赤に白いラインが入ったタイツ、黄色のグローブとブーツにベルト。
クラスメイトがさっそく「オールマイトだ!」「画風が違う!」とか「シルバーエイジのコスチュームだ!」と盛り上がっている。
俺だってファンだから興奮しないわけがない。でも、骨と皮になった八木としての姿を実際に見ているだけに、ちょっとだけ複雑な気分だ。俺達に、次の世代に未来を託すために残された時間を使ってくれてる。それに応えないわけにいかねえ!
「早速だが今日の授業はコレ!!―――戦闘訓練だ!!!」
「戦闘!」
オールマイトがBATTLEと書かれたカードを掲げて宣言した。戦闘の部分に反応してしまうのはもはや、解呪不可能なかっちゃんの呪いなのだ。
「そしてそいつに伴ってぇ、こちら!」
オールマイトが壁を指さすと壁がせり出してきて、コスチュームの入ったロッカーが現れた。
「入学前に送ってもらった『個性届け』と『要望』に沿ってあつらえた、コスチューム!!」
クラスメイトのテンションがうなぎ登りだ。とどまるところを知らねえのか! もっと落ち着け、これから授業だろっと思って後ろを見たら……デクも大興奮してやがった。テメー、オールマイトの真実知ってんだから、もっと真剣にだなぁ。頭痛がして思わず頭を抱えてしまった。しょうがないか、初めてのオールマイトの授業だし……俺だってワクワクしないわけじゃねえし。そのうち落ち着きも出てくるだろう。
「着替えたら、順次グラウンドβに集まるんだ!」
『はーい!!』
自分の番号が振られたロッカーからコスチュームが入ったケースを取り出し、女子更衣室へ向かう。
雄英の合格通知に被服控除の申請ってのがあった。コスチュームを自作から外注まで対応してくれる申請書だ。
俺は原作とは違うTSかっちゃん。よってコスチュームも違う。
ある程度の機能要望とイメージで提出していたが、確認するのは今日が初めてだ。
まず、原作では手榴弾型のデカイ籠手がついていたが、原作かっちゃんよりもパワーが足りねえから、あれで暴れまわるのは辛い。なので、手榴弾型よりも細身のダイナマイト型だ。
機能的には原作に近く、手から出した爆液を溜めて正面にも後ろにも噴射できるようになっている。全力爆破からの手の保護と、ナックルガードを出してからのエルボーロケットの2つが主な機能だ。
爆破で直接攻撃すると、威力が高過ぎるのだ。エルボーロケットで殴った方が、普通に殴るよりも威力が出て、爆発を直接当てるよりも手加減ができる。相手を殺さず捕まえなければならないヒーローとしての装備だ。
次に足先から膝まで守る脚甲。足からも爆破が出せると言う原作乖離な能力を得られたので、それを活かさない手はない。普段は靴底として機能して足を保護、爆発時は開く弁のついた構造。
さらに籠手と同じく余剰分を溜めて、飯田のマフラーのようにふくらはぎの噴射口から出して回し蹴り時のブースターにもなる。パイルバンカー膝蹴りにも対応していて、外側は硬く尖り、内側は衝撃吸収素材の膝当てが仕込まれているので、膝が割れる心配は皆無だ。
最後に、爆破の閃光や轟音から目や耳を守る耳当てとバイザーが一体化した通信装置。あとは耐熱耐火防刃のインナーやズボンに特攻服。背中に文字はない。要望書には爆殺天女って書いてたのに……字面でだめだったか。でもこれで気合いが3割増し、出力は15%増しだ。
あとこのインナー、どういう技術が使われているのか全く分からないんだが、形が出てるのにサラシで抑えてる時よりも胸が安定してる。ちょっとジャンプしても全然胸が痛くならない。なにこれすごい。柔らかい素材なのに外側から胸が支えられてるようだ。
八百万の紹介してくれるスポブラもこれぐらいすごいのかな? 行く約束をした今度の日曜がちょっと楽しみだ。
「なんかすごいね? それ。特攻服?」
「ああ、気合いが入るだろ? 根性論みたいだが、気合いが入ると個性の出力が違うんだぜ。」
「そうなんですの?」
耳郎と話してると、八百万も加わって来た。って原作で知ってたけど、すげえなそのコスチューム。防御力なさすぎだろ、これでも布面積が増えたってんだから痴女すぎる。もしかして本来八百万が希望してたのってビキニアーマーなんじゃないか?
「個性の制御は個々人の精神力だからな。あながちバカにできねえんだよ。」
『へえー。』
話を変える為に矛先を替えさせよう。お茶子、君に決めた!
「俺のよりも丸顔のパツパツスーツの方がすげえだろ。無重力の個性からか、SFの宇宙服みてーじゃねーか。13号に通じるものがある。」
「うん! ウチ、13号大好き! おまかせにしてすごいのになっちゃったってちょっと後悔してたけど、そう言われてこのコスチューム好きになれそう!」
「よかったな、丸顔。」
「もう! 丸顔じゃないよ! 麗日お茶子だよ!」
「お、おう。わかった、お茶子。」
両手ブンブン振って言われてしまった。なんかヒロインっぽい動きしやがるな。
いいやつなんだよな。これで俺のデクを持って行こうとしないなら文句なしなんだが。わからんけど。
原作でヒロインっぽい立ち位置だったが、途中までしか知らねえし、それっぽいイベントもなかったんだよ。
むしろオールマイトがヒロインって言われてたぐらいだ。
お茶子、ヒロイン力不足。脅威度低下、問題なし。よし。
あ、また俺のデクって考えてた。いかんな、もうガキ大将のお気に入りのデクじゃねえってのに。
そしてグラウンドβに生徒が集まる。
「恰好から入るってのも大切なことだぜ、少年少女!
自覚するのだ! 今日から自分は……ヒーローなんだと!!」
オールマイトが告げるそれは、浮かれていた気分を吹き飛ばし「ああ、確かに俺達はヒーローになるんだ」と自覚させるに足る力があった。
ニヤリと笑ったオールマイトが授業の開始を告げた。
「いいじゃないかみんな、カッコイイぜ!
さあ、始めようか有精卵共!」
男子生徒のコスチュームはまだ見ていなかったなと、改めて観察する。まずは……緑の小さなオールマイト? 原作よりも筋肉ついてるから、余計にそんな感じだな。
突き出した2本のアンテナ。マイトスマイルを意識したチンガード。体にぴったりと張り付いたジャンプスーツ。そしてスーツを押し上げる鍛えられた筋肉。気合入ってるな!
「デク、それオールマイト意識し過ぎじゃねえか?」
「ええ!? で、でも……」
「まぁ、かっこいいからいいか。気合い入るよな。」
「うんっ!」
次に目に付いたのは……切島? それはただの半裸だ。まぁ、あいつの個性はコスチュームよりも固くなるし、コスチュームの方がヤワじゃ、裸族になるのもしかたなしだよな。漢らしいやつだ。
飯田もかなり目立つ。マンガだとロボットみてーとかその程度の感覚でしかないが、ヒロイックな白い全身アーマーはかなりの特撮ヒーロー感を放っている。ヒーローが現実にいる世界だ、日本的なヒーローでいいんじゃないか? オールマイトは日本で活動してるのに、完全にアメコミ、マーベル系だもんなぁ……
他に目立ってるのは……砂藤、完全に覆面レスラー。口田も似たような感じだ。見た目の印象が完全に、気は優しくて力持ちだな。
瀬呂、こいつも指定なしで頼んだタイプか? 個性に合わせすぎなデザインが、お茶子のスーツと同じ感じがするな。デザイナー同じじゃねえかな?
そして生で見るヒーローコスチュームの峰田は、かなり面白い。一人だけギャグマンガの世界の住人みたいだ。うん、峰田らしさが120%表現されているな。
おいクマ吉、八百万と俺の胸を視線が往復してるぞ。授業に集中しろや。でねーとなんか、デクの目がうさみちゃんみてーになりそうな気がしてくるだろ。
SFと中世騎士の鎧が混ざったような青山なんか、峰田とはまた違う意味で別の漫画だ。なんだろう、宇宙騎士かな? ベルト以外の所も開いてボル〇ッカ撃てないかな?
「さぁ、戦闘訓練のお時間だ。」
「先生、ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのですか?」
飯田が質問するとオールマイトは指を2本立て
「いいや、もう2歩先に踏み込む。ヴィラン退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪ヴィラン出現率は高いんだ。
真の賢しいヴィランは闇に潜む。君らにはこれからヴィラン組とヒーロー組に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう。」
基礎訓練も無しにいきなり実践訓練を行う事に梅雨ちゃんが戸惑いを見せ、その基礎を知るためだとオールマイトが返す。
「ただし、今度はぶっこわせばOKなロボが相手ではないのがミソだ。」
次々と質問が上がり、オールマイトがカンペを取り出して説明を始めた。
ヴィランがアジトのどこかに核兵器を隠し、それをヒーローが処理しようとする。
ヒーローは時間内にヴィランを捕まえるか、核兵器を回収すれば勝ち。
ヴィランは時間まで核を守るか、ヒーローを捕まえれば勝ち。
そして組み分けはクジ。
「適当なのですか!?」
「プロは他事務所のヒーローと急造チームアップする事も多いし、そういう事じゃないかな?」
「そうか。先を見据えた計らい、失礼いたしました!」
デクの予想に納得し、飯田が頭を下げる。飯田は本当に真面目だな。
クジでの組み分けは、ランダムなはずなのに、原作と同じだった。
なんだこれ? 俺の口調と同じく、こっちも原作の呪い的なものがあるのか?
チームA、お茶子・デク
チームB、障子・轟
チームC、八百万・峰田
チームD、俺・飯田
チームE、芦戸・青山
チームF、口田・砂藤
チームG、上鳴・耳郎
チームH、常闇・梅雨ちゃん
チームI、尾白・葉隠
チームJ、切島・瀬呂
「最初の対戦相手はぁ、こいつらだ!
Aコンビがヒーロー! Dコンビがヴィランだ!
他の者はモニタールームに向かってくれ。」
デクと目が合う。
「久々の手合わせだな。全力でこいよ、勝たせてもらうぜ?」
「ボクだって負けられない。今日は勝たせてもらうよ、かっちゃん!」
主人公顔で宣言しやがった。手強い戦いになりそうだ。
せっかくBLタグをつけたので、TSかっちゃんにはもっとデクを意識してもらうようになりました。
今までは子供っぽい独占欲と言うか、所有欲みたいな物の方が強い感じを意識していたのですが、これからヒロイン力をさらに高めていきたいです。
次のバトル表現難しい……なかなかそれっぽいバトルにならない。
書いては、ん? なんか違う……書き直しては、ん? これは無理がある。書き直しってなる。
フルカウルデクとTSかっちゃん。原作とはバトルスタイルが違います。
説得力を持たせて、ちゃんとバトルさせるって難しいです。
次回はちょっと遅くなりそうです。