【本編完結】時をかけるロンウィーズリー   作:おこめ大統領

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1万字を超えてしまいました。
ご了承ください。



映画にはない描写
〇フェリックスフェリシス(幸運薬)の用途

映画では、ハリーはスラグホーンから記憶をもらうためにフェリックスフェリシスを全部飲みますが、小説ではちょっと残してます。そして、自分とダンブルドアが分霊箱を取りに行くときに、DAのみんなに飲んでもらってました。
おかげで死喰い人がホグワーツを攻めてきた際にDAのメンツは誰も攻撃を喰らいませんでした。

〇ビルの負傷
謎のプリンス最後のホグワーツ戦で、ロンの兄ビルは人狼に攻撃され、半狼人間となりました。


18. 厭悪は仁心に

 目を覚ました僕はしばらくベッドで寝転んでゆっくりしていた。部屋のみんなはまだ夢の中だ。僕も二度寝をしたかったが、嫌に目が冴えていたので、それは叶わなかった。

 ため息をひとつ吐いてベッドからでた。今日は何曜日だったっけなと考えながら、とりあえず着替えを先にしてしまう。

 

 そうこうしていたら他のみんなも起きてきた。話の内容はもっぱら授業についてだ。去年の成績と将来の目標に応じてとりたい授業を選べる学年なので、今年からは今まで以上にみんなバラバラなのだ。

 

 まぁ授業も始まって数ヶ月経つし、そろそろ各授業の不満とかも溜まってくるだろうしなぁなんて思いながらみんなを話を聞き流していた。

 

 目は冴えてるんだが、頭が冴えない。ずっと寝ぼけてる感じがする。

 大広間で朝食を食べおわった後、ハリーに連れられてマグゴナガルとの面談にやってきた。僕なんかしたっけなぁなんて思いながら部屋に入ると、マグゴナガルが待ち構えていた。

 

「ウィーズリーの希望科目を拝見いたしましたが、魔法生物飼育学はとらないのですね。ハグリッドと仲がいいので、てっきり選択するかと思っていました。それに魔法薬学も。今年のスラグホーン先生はあなたの成績でも授業をとれますよ」

 

 ……ん?あれ?あれあれあれ?

 

 ちょっと待てよ。今もしかして僕は授業選択の面談を受けてるのか?

 おかしいおかしい。それはもうやったじゃないか。中間面談か?いやいや、口ぶりからして絶対違う。

 

 え、タイムリープしてるの?いつの間に?

 今9月頭だとしたら、結構飛んでるぞ。だってさっきまで、えっと、あれ、最後なにしてたっけな?

 ちょっと待って、なにもわかんないぞ。一体いつどうやってタイムリープが起きたんだ?!

 

「それでいいですね?」

 

「はい、お願いします」

 

 なにも聞いてなかったけど、思わず了承してしまった。そのあとマグゴナガル先生から受け取った時間割は記憶にあるものと同じだったので問題はない。問題はないのだが。

 わかんないことだらけだったが、とりあえず面談が終わったので部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 全然思い出せない。最後なにしてたんだ。

 

 ハリーが今面談中なので、その時間を利用して可能な限り思い出そうとしていた。

 だが、その成果は芳しくなかった。

 

 クリスマスパーティの話はしてた気がするんだよなー。クリスマスパーティも行った気はする。うっすら記憶がある。ということは、そこで誰か死んだのか?

 いやまさか。学校の中だぜ。さすがにないだろう。

 

 そんな調子だった。僕は考え方を変え、とりあえず最初の方にあったことを思い出そうとした。

 

 たしか、ハリーがダンブルドアからお願いされてたな。スラグホーンと仲良くなるようにって。でもハリーはスラグホーンと一定以上仲良くなれないって言ってた。僕は結局他のスラグクラブの人たちと扱いは変わらないって。

 

 僕も結構気に入られてたけど、それはプリンスの教科書のおかげだしな。ハーマイオニーがスラグクラブに呼ばれたことからもわかるけど、基本優秀な子が好きなんだよな。それがハリーの足を引っ張ってた。ハリーは魔法薬の成績は普通くらいだ。

 

 あ、ならハリーがプリンスの教科書を手に入れればいいんじゃないか?僕は別にスラグホーンに気に入られなくていいし。

 

 とりあえず、そうしとこうか。

 後のことは夜思い出そう。

 

 

 

 

 

 タイムリープしてから3ヶ月くらいが経過した。

 あれからなんとなく思い出してきたことがある。僕は確かタイムリープする直前に医務室にいた気がする。それで外に出た時に誰かが戦ってたんだ。

 

 すごい曖昧なことに加え、思い出してからも結構日が経ってしまったので、もう元の記憶なのか想像なのか夢なのか、判断ができなかった。

 

 とりあえず1つわかることは、スラグクラブに招待されないことは意外と心にダメージあるってことだ。

 

 別にあんなクラブ参加しなくてもいいと思ってたけど、仲良い友人2人に加え妹もいるんだ。怒ってるとかではないが、少し嫌な気分になる。

 ハーマイオニーも僕を誘ってくれてもいいのに。この前のちょっとした喧嘩のことなら僕は怒ってないさ。

 

 

 

 

 

ロミルダ、君はなんて美しいんだ。

君の美しさを考えてみだけで、僕は幸せになれるよ。

なんで今まで気がつかなかったんだろう。

ハリーが僕の手を引いてる。ロミルダに会わせてくれるんだって。

最初にあったらなんて声をかけよう。きっと僕の語彙力じゃ彼女の美しさを語りつくせないや。

え、なに、ハリー、これ飲ませてくれるの?

 

ありがとう、いただくよ

 

 

 

 

 

 目を覚ますと、頭上に独特の形をしたランプがオレンジ色に輝いているのが見えた。鼻には、薬や消毒液の匂い。体を包む温かい布団。僕は、ゆっくりと体を起こした。節々が少し痛むが、体には特に異常はなさそうだ。

 

 周りをみて把握したが、どうやら医務室のようだ。それに気がついた僕は少し焦った。医務室になんでいるのかを思い出せなかったので、また知らぬ間にタイムリープしたのかと思ったからだ。

 

 過去に医務室にいた記憶を手繰り寄せたが、一番最近で魔法省での戦いの後だ。そこまで戻っていたら少しめんどくさいな。

 

 とりあえず、日にちを確認しようと思いベッドから出ようとしたところで、自分の脚に何かが乗っていることに気がついた。ハーマイオニーだ。

 ベッド脇の椅子に座り、僕の足の上に突っ伏して寝ていた。看病をしてくれていたんだろうか。

 

 僕が動いたことに気がついたからか、ハーマイオニーはすぐに目を覚ました。

 

「ロン!良かった、無事だったのね!」

 

 ハーマイオニーは僕にハグしながらそういった。急なその行為に僕はドギマギしたが、すぐに離れてしまった。ちょっと残念に思ったが、同時に記憶にないその行為から、まだタイムリープはしていないということに気がついた。

 

「えーっと、何があったんだっけ?」

 

 僕はハーマイオニーに最近少し冷たく当たっていたということもあり、慎重にそう聞いた。

 

「あなた、毒をもられたのよ!スラグホーンの部屋で飲んだ蜂蜜酒の中に入ってたの!ハリーがベゾワール石の効果を思い出さなかったら、死んじゃってたかもしれないくらい危ない状態だったの」

 

「スラグホーンの部屋で?あー、なんか行ったような気もするな…。何してたんだっけ?」

 

 腕を組み目を瞑り、僕は必死で思い出そうとした。そういえば、一人でなんか食べたような気がするな。

 

「あなた、ロミルダがハリーに宛てた惚れ薬を食べちゃってたのよ。それでおかしくなっちゃって、ハリーがそれをどうにかするためにスラグホーンの部屋に連れて行ったそうよ」

 

 それを言われてから、色々と思い出した。

 そうだ、小腹がすいたからハリーのベッドの上においてあったチョコを食べちゃったんだ。そして、なんだか頭がボーッとしてきて、ハリーに連れられるままにスラグホーンの部屋に行ったんだった。

 

 前回の世界でも多分同じことがあったんだろう。

 その時の記憶が曖昧なのは、今回より昏睡状態が長かったからかな。ハリーがプリンスの教科書を持ってない世界だったから、魔法薬の知識や授業の集中の仕方は今回よりも無いだろうし。

 

 ああ、思い出してきたぞ。

 

 そうだ、前回の世界で、僕は医務室に入院していた。でも、物音で目が覚めて医務室の外に出たら、死喰い人が先生たちと戦ってたんだ。でも向こうは大勢いて戦力が足りなかった。

 そこでだれかが殺されたんだ。僕はそれを見て戻ってきた。誰が殺されたかは覚えてない。そもそもこれがほんとにあったことなのか、いつか見た夢を勘違いしているのか、僕にはわからない。

 

 でも、あれがもし現実のものだったとしたら、僕が今起きた以上、近い内にそれが起こるかもしれない。いや、もしかしたら今日かも。

 そう考えると居ても立ってもいられなくなった。

 

「ハーマイオニー、ダンブルドアって学校にいるよね?」

 

 ハーマイオニーは予想外の質問に少し面食らったようだったが、すぐに答えてくれた。

 

「え、ええ。いると思うわ。昨日マクゴナガル先生がダンブルドア先生と話したっていうのを、マダム・ポンフリーから聞いたから、少なくとも、昨日まではいたわ」

 

「僕、ダンブルドアに話したいことがあるんだ。行かなきゃ…」

 

 僕はベッドからでて校長室に行こうとした。ハーマイオニーがそれを阻止しようと声をあげようとしたが、その前にマダム・ポンフリーから思いっきり静止され、校長室に行くことは叶わなかった。

 ハーマイオニーという監視の目もあるので、僕は仕方なく手紙を書いた。

 

 ホグワーツが死喰い人に襲われる。そのことで話したいと。

 

 手紙はハーマイオニーに頼んで梟にだしてもらった。ダンブルドアに手紙が届くかはわからないが、ひとまずこれで大丈夫だろう。後は返事を待つだけだ。

 その日の夜に枕元に手紙が置いてあったのに気がついた。そこにはシンプルなことが書いてあった。

 

『襲撃については心配するでない。君が退院したら話がしたい』

 

 

 

 

 

 2週間ほどして、僕は退院できた。

 僕は溜まっていた宿題を尻目に校長室に向かった。校長室前で「タフィーエクレア」と唱え中に入ると、不死鳥のフォークスが激しく啼いた。最近見ないなと思っていたが、今日はいるみたいだ。それにしても、こんなに嫌そうに啼くとはこいつはほんとに僕が嫌いだな。安心しろ、僕も嫌いだぞ。

 

「待っておった。君からの手紙は実に僥倖じゃった。わしもちょうど話したいことがあったのでな」

 

 ダンブルドアの笑みは、どこか弱々しく見えた。ふと彼の手に目をやると、黒く干からびていた。

 

「先生、その手は一体…」

 

「自分の死を覚悟したら、かえって誘惑に勝てんくなっての。なに、君の気にすることではない。()()()はハリーの担当じゃ。さて、では詳しく話を聞こうかの。一体何があったのじゃ」

 

 ダンブルドアは僕に話を急かした。手については触れてほしくなかったのだろう。それにハリーの担当と言うことは、夜な夜な開催されているハリーとの個人授業に関係するものなのだろう。

 

「はい、実は僕はすでにタイムリープしていました。でも、タイムリープ直前のことを思い出せなかったんです。それを今回の入院をきっかけに思い出せたので、そのお話をしようかと」

 

 僕は一度言葉を止めて、頭の中で情報を整理した。

 

「今日以降のいつか、死喰い人の軍勢がホグワーツに攻め込んできます。僕はそれに出くわし、タイムリープしました。でも、それがいつなのか、どんな状況下だったのかがわからないんです。僕は前の世界でも昏睡していたのですが、おそらく今回よりずっと長いこと眠っていました。そして起きた直後に襲撃に見舞われたので……」

 

 僕は話しながら申し訳なく思ってしまった。手紙を書いてまで話の機会を作ったのに、肝心の詳細は何もわからないのだ。だが、そんな限られた情報からもダンブルドアは推理した。

 

「君が学校で目覚めたということは、今年のうちというのは決まりじゃろう。夏休みを挟むのであれば、聖マンゴの方に移送されているはずじゃからの。もし、今年の出来事なのだとすれば、まだ大丈夫じゃ。いつ起きるのかは大体予想ができる。そして、わしはおそらくその日に死ぬじゃろう」

 

「じゃあその襲撃が、あなたの死ななければならない理由ってやつに関係してるってことですか?」

 

「そうじゃ。わしには時間がない。わしが今日君を呼んだ理由はそれじゃ。今後のことについて話をしたい。つまりヴォルデモートを滅ぼす計画のことじゃ」

 

 その名前には未だに慣れず、ダンブルドアが言うたびにハッとしていた。ダンブルドアはそれに構わずに続けた。

 

「ハリーは来年からおそらく旅を始めるだろう。ヴォルデモートを倒す旅じゃ。セブルスが死喰い人の情報を極力君に流す。1つ目のお願いじゃが、その情報を用いて君はハリーの旅の手助けをしてほしいのじゃ。ハリーはセブルスを憎んでおる。彼からの情報を素直には受け取らないだろう。だから君がやるんじゃ」

 

 ロンはその提案に疑問を覚えた。ハリーは確かにスネイプが嫌いだろうけど、彼がスパイとして流してくれた情報なら流石に多少は信じるのではないか。それに……。

 

「先生、お言葉ですが、僕もスネイプ先生はあまり信用できません。多分、ハリーがスネイプを信用していないのと同じくらいには」

 

「当然知っておる。だから今日は君に彼を信用してもらいたいのじゃがそのイベントはまた後ほどにしよう。そして、2つ目のお願いじゃが、これを話すためには、まずわしの企みの全容を伝えねばなるまい。少し長く、そして複雑な話になるが良いかの?」

 

 僕はコクリとうなずくと、ダンブルドアはよろしいと言って話始めた。

 

「わしは今年死ぬ。これは以前から言っておったの。だが、それは自然死ではない。この右腕の呪いでもない。わしはセブルス・スネイプに殺されるのじゃ。そうすることで、わしの腹心であるセブルスは死喰い人の中でかなり高い地位と信用を得ることが出来、更にドラコ・マルフォイを救うことができる。ドラコにはわしを殺す命令が出されておる。これをしくじってしまえば彼はたちまち殺されてしもうたじゃろう。ここまではわしとセブルスとで既に打ち合わせている。そしてここから先のことは、君にしか話さない」

 

 ダンブルドアは一度僕の眼をキッと見据えた。

 

「ヴォルデモートはいずれわしの杖を狙うじゃろう。わしの持つ杖はニワトコの杖と言い、魔法界で最強と言われるものなのじゃ。わしは自分の墓にこれを隠し、やつにわざと取らせる。じゃがそれだけではこの杖をやつはものにはできん。杖の忠誠心を得てないからの。

 忠誠心は杖を強引に奪ったり、武装解除をしたり、そして殺したりすることで移るものじゃ。無論、それはヴォルデモートも知っておる。そこで2つ目のお願いじゃ。もしセブルスがヴォルデモートに殺されるようなことがあったら、彼を救ってほしいのじゃ。ヴォルデモートからしたら、わしの杖の忠誠心はセブルスにあるように思うじゃろう」

 

「それなら最初から杖を渡さなきゃいいじゃないですか。なんなら壊せばいい。それか味方の誰かに託すとか」

 

 ダンブルドアの回りくどいやり方を、僕は理解できなかった。それにそんな強い武器を敵に渡す理由もだ。

 

「そうしたいのは山々じゃが、この杖がヴォルデモートに渡ることが重要なのじゃ。ヴォルデモートが忠誠心を得ることができないこの杖をじゃ。

 わしはセブルスに殺される前に他の誰かに、多分ドラコになるじゃろうが、わしを武装解除させる。そして杖の忠誠心をそやつに移すのじゃ。その状態でセブルスにわしを殺させる。ドラコがわしを武装解除した話なんぞ、死喰い人たちがわざわざあやつにするとも思えん。だから、ヴォルデモートは杖の忠誠心があたかもセブルスにあるように勘違いするじゃろう。

 わしの狙いはそれなのじゃ。あやつはセブルスの杖を奪うことでニワトコの杖の忠誠心も得たと誤認する。ヴォルデモートは意外と用心深い。ここまできて初めてあやつはハリーを殺そうとするじゃろう。ハリーの血には母の守りがある。ヴォルデモートは復活の際にその血を使用したため、やつは自分が生きてる限りハリーを殺せん。じゃが、やつほどの魔力があれば、それすらも強引に破壊できるかもしれない。じゃからあやつには、自分の力を十全に発揮できない杖を持たす必要があるのじゃ。そうすることで、ハリーが死なずにすむ道を作り出すことができる」

 

「つまり、例のあの人に間違った杖をもたせることで弱体化をさせるってことですね。でも、なんであの人が杖を狙うって分かるんですか?」

 

「あやつはハリーと自分の中にある繋がりを杖のせいにすると思うたからじゃ。ハリーの杖とヴォルデモートの杖は同じ不死鳥の尾羽根から作られておるからの。ハリーの話によると、墓場で彼らの杖は繋がったようじゃ。あやつならそう考えるじゃろう。故にあやつはハリーを倒すためにいずれ自分の杖を捨て、自分にふさわしい杖を探すじゃろう。それこそがニワトコの杖、というわけじゃ」

 

 ダンブルドアの話が難しくてパンクしそうになってきたが、今の話で一つだけ、気になるところがあった。

 

「先生は、ハリーとあの人のつながりがなんなのか、もうわかってるんですね?」

 

 そう、ハリーと例のあの人との関係だ。杖のつながりではないと断言しているようだったが、今までの材料からだったらそう考えてもおかしくはない。可能性の一つになりうる。だがダンブルドアはそれは違うと確信していた。つまり、彼はわかっているはずだ。2人の繋がりの真の理由を。

 

 ダンブルドアは一度黙った。何かまずいことを聞いたか。いや、でもここは明らかにしておくべきことだ。僕は目でダンブルドアに早く話すように訴えた。

 

「ああ、あくまで仮説だが、わしは予想がついておる。おそらく、ハリーはヴォルデモートが予期せず作り出した分霊箱じゃ。分霊箱とは、自分の魂を切り裂きそれを保管しておくものじゃが、ハリーの母親を殺害した際に、ヴォルデモートの魂の一部が、ハリーの中に残ってしまったんじゃ。だから、ハリーは蛇語を話せ、あやつの考えていることが分かるのじゃ。じゃからハリーは、一度死なねばならない。ここでお願いがある、ロン。君は……」

 

「死ななければならない、だって?!ふざけないでください!それに、ハリーの中にあの人の魂があるだなんて!ハリーはグリフィンドールです!それに、友達を助けるために命をかけれるやつです!そんなハリーに例のあの人の魂が入っているなんて思えません」

 

 僕は思わずダンブルドアの言葉を遮って言い返した。例のあの人を倒すためには、ハリーは死ななくてはならないだって?馬鹿げてる。僕はまたこの人に利用されようとしてるのか。

 

「ロン、そのとおりじゃ。今君が言ったことこそが重要なのじゃ。ハリーはヴォルデモートとは違う。彼らは生まれや育ちは似ているが、まるで反対の性質を持ち合わせておる。そしてハリーは、生まれながらにしてヴォルデモートの魂に打ち勝ち続けておる。でなければ、蛇語を話せる程度の影響しか出ないわけがないのじゃ。それらはひとえに、彼が心のそこから真のグリフィンドール生にふさわしいだけの勇気と人々の愛を受けているからなのじゃ」

 

 ダンブルドアは、自分の言葉が僕に伝わっているかを確認するようだった。僕が特に言い返さなかったので、彼は話を続けた。

 

「そしてロン、もう一度話を戻そう。君に3つ目のお願いじゃ。もし、ハリーがヴォルデモートに死の呪文を向けられたときには、決して時を戻してはいかん。ヴォルデモートは血の守りと不完全な杖ゆえにハリーを殺すことができん。じゃが、ハリーの中のもう一つの魂は別じゃ。ハリーが自らの命を落とさずにヴォルデモートの魂を壊すには、ヴォルデモートが直々にハリーを殺さねばならないんじゃ」

 

 ダンブルドアの狙いがようやくわかった。

 

 ハリーを殺さずにヴォルデモートを殺す方法をようやく見つけることが出来た。でも、これを僕に知らせないでやってしまうと、僕はタイムリープしてハリーの死を回避するだろう。だが、それをする限りあの人を倒すことはできない。

 

 ダンブルドアは、自分が殺されるのも、僕とスネイプに協力関係を結ばせようとするのも、全てハリーを守るためだったのか。

 

 しかし、本当にそれだけか?

 

「それならば、それをハリーに直接言えばいいじゃないですか」

 

 この疑問はもっともだと思う。最初からハリーに言った方が早いだろう。「君には例のあの人の魂があるから一回死んで欲しい。生き返れるから大丈夫だよ」って。

 

「ハリーには、死を克服してほしいのじゃ。わしが最後までなしえなかったことじゃ」

 

「死を、克服?」

 

 僕が質問すると、何かに気がついたダンブルドアは自分の椅子にまで戻って座り直した。

 

「すまないが、次の客が来てしもうた。セブルスじゃ。先程君に言ったことを覚えておるか?セブルスが信用に足る人物だという証拠を見せよう。そこでじっとしておれ。声を出すでないぞ」

 

 ダンブルドアは僕に呪文をかけた。すると、みるみる僕の存在感がなくなっていくような気がした。

 

 そして、セブルス・スネイプが不機嫌な顔で校長室に入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは、死ぬべきときに死ぬことができるようにと、今まで彼を生かしてきたのですか?」

 

「そう驚くでない、セブルス。いままで、それこそ何人の男や女が死ぬのを見てきたのじゃ?」

 

「最近は私が救えなかったものだけです。あなたは私を利用した」

 

「はて?」

 

「あなたのために、私は密偵になり、嘘をつき、あなたのために、死ぬほど危険な立場に身を置いた。すべてが、リリー・ポッターの息子の安全を守るためのはずだった。いまあなたは、その息子を、屠殺されるべき豚のように育ててきたのだと言う――」

 

「なんとセブルス、感動的なことを。結局あの子に情が移ったというのか?」

 

「彼に?……エクスペクト・パトローナム!」

 

「……これほどの年月が、経ってもか?」

 

「永遠に」

 

 

 

 

 

 

 僕はダンブルドアとスネイプのやり取りを見ながら、静かに涙していた。スネイプの今まで見たことのない姿、想像だにしなかったセリフ、そして、あの守護霊。

 

 彼はずっと、愛した人の息子を守ろうとしていたんだ。

 

 自分でも泣いているのに気がついたのは、スネイプが部屋を出ていってからだった。涙を拭ったところで、ダンブルドアが杖を振るった。すると、みるみると存在感を取り戻していくような感じがした。

 

「ロン、これがセブルスの真実じゃ。彼は誰よりも愛に生き、愛のために戦ってきたのじゃ。この姿を見ずに君がセブルスを信用することは難しかったじゃろう。無論わしも同じじゃ。彼が死喰い人だったときに見せてくれたこの姿がいかに衝撃じゃったか。今思い出しても、そう思わざるを得ない」

 

 ダンブルドアの眼は潤んでいた。声は少しだけ震えていた。あの姿を引き出すために、わざと挑発的なことを言った自分を責めているのだろうか。僕にはそう思えた。

 

「あの守護霊は、ハリーのお母さんのものですか?」

 

「そうじゃ。守護霊は愛の象徴じゃ。そのものの心に応じて姿を変える。そして、闇の魔法使いは一般的に守護霊の呪文を使うことができん。闇に落ちることで魂が変質してしまうからじゃ。じゃがセブルスは作り出せる。彼の心は正義にあるのじゃ」

 

「僕、知りませんでした。スネイプ先生はずっとハリーを憎んでるんだって思ってた。ハリーも同じことを思ってる」

 

「セブルスは、リリーやハリーへの愛を知られまいとしていた。それにジェームズ・ポッターの方は真に憎んでいた。誰だって君と同じように思うじゃろう。そして、ロン。このことは誰にも言ってはならん。勿論ハリーにもじゃ。みながこのことを知る時は、セブルスが自分で伝えるときだけじゃ。よいな」

 

「わかりました。約束します」

 

 ダンブルドアはにこりと微笑んだ。

 

「よろしい。それでは今日はこのあたりにしようかの」

 

 僕は2週間ぶりに自室にもどった。何年も使っていたそのベッドは、自分にとって何よりの贅沢で、居心地が良かった。

 

 

 

 

 

 学校は終わった。例のごとく、今は帰りの列車だ。

 

 ダンブルドアは死んだ。スネイプ先生が殺したそうだ。

 

 ハリーと共に分霊箱を取りに行った日に、マルフォイが死喰い人を学校に招き入れ、そのどさくさに紛れてのことだった。僕達DAは事前にハリーからの指令もあり、フェリックス・フェリシスを飲み、ドラコとスネイプを監視していたが、まんまと出し抜かれてしまった。

 

 ハリーはスネイプとマルフォイが共謀してダンブルドアを殺そうとしていると勘違いをしていたので、スネイプまで監視していたのだった。僕は彼が味方であると知っていたので、マルフォイの監視の方を担当していた。

 

 僕はダンブルドアとの約束を果たすため、その死の場面に行こうと校長室に向かったがそこには居なかった。その後どうやら北塔にいると聞いて全速力でそこに向かったが、逃げるドラコとスネイプにすれ違ったときに全てを察した。

 

 間に合わなかった。約束を果たせなかった。

 

 逃げる彼らに続き、ハリーも鬼の形相でスネイプらを追っていた。スネイプはそれからどんな気持ちで逃げているのだろうかと考えていたが、呪文が飛んできたところで、今が戦闘中だと思い出し、気を引き締めた。

 

 ダンブルドアは僕が襲撃の未来を見たことから、不死鳥の騎士団からの援軍も配備させ、先生達に学校を巡回させたことで、被害は最小限ですんだが、ビルが狼男に襲われてしまった。完全な狼男にはならないとのことだろうが、どんな症状が出るのかはまだわからない。

 

 いろいろ思い返してみると、おそらく全体としてはダンブルドアの思惑通りに進んでいるのだろうということがわかった。一体何をどこまで考えたら、あんなことを予想できるのだろうか。僕は少し戦慄した。

 

 僕は来年学校には行かない。

 ハリーとハーマイオニーと共に分霊箱を探すたびに出る。

 

 長い旅になることは間違いない。が、ハリーはダンブルドアの個人授業を受けていたし、きっと何か聞いているのだろう。あてのない旅にはなるまい。

 

 

 

『ハリーの旅の手助けをしてほしいのじゃ』

 

 

 

 ダンブルドアの言葉を思い出した。

 

 

 

「言われなくても、僕はハリーを助けるさ」

 

 

 

 










正史との相違点
・なし

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