いつもとても助かっております。
次話は本日19時に投稿します。
僕は必要の部屋にいた。周りには見知った顔が大勢。
アバーフォース・ダンブルドアのところから学校に侵入した直後くらいかな。
僕は先程の世界で例のあの人に居場所がバレた理由を考えた。
秘密の部屋をあけた直後にハリーが苦しみだしたことが多分関係あるだろうな。もしかしたら蛇語がまずかったのか? ハリーのパーセルマウスは例のあの人の魂に由来するものだ。それを使ったことで、ハリーの中にあるあの人の魂が反応して、こちらから心を開けてしまったのかも。
十分ありえるな。でも、てことはハリーに蛇語を話させちゃいけないってことになる。そうなると、バジリスクの牙を取り出せない。どうすれば……。
いや、僕が話せばいいんだ。2年生のときに、すでに正史でなくなった世界で僕は一度だけ扉を開けたことがあった。頑張ればいけるだろう。ハリーはちょっと前までパーセルタングで寝言を言ってたりもしたし、ついさっき開けるために必要な言葉を言っているのも聞いていた。
確か、この後はスネイプの指示で、全校生徒が大広間に集まるんだったな。でも、前回見た限りスネイプにもハリーにも何も被害はなかったし、きっと大丈夫だろう。
僕は全校生徒が移動している隙に1人抜け出して、3階の女子トイレへと向かおうとした。だが、そこで腕を誰かに掴まれたのだ。
「ロン! こんなときにどこに行こうっていうの?!」
ハーマイオニーだ。僕はどうすべきか迷った。連れて行くべきか行かないべきか。もしハリーが蛇語を話したことで例のあの人が気づいたのではなく、秘密の部屋を開けたことで気がついたのだとしたら、ハーマイオニーを連れて行くのは非常にまずい。ハーマイオニーは来るべきではない。
「ちょっとトイレに行こうと思ったんだよ。戦いが始まったら、のんきにトイレなんて行けないだろう?」
僕はなるべくなんてことないように言った。だが、ハーマイオニーの目の光は未だに僕に突き刺さっている。
「嘘ね。だとしたら、なんですぐに答えなかったの? それにあなたが危険なことをしようとしているなんて、顔を見ればすぐにわかるわ。7年も一緒にいた私を舐めないでくれる?」
ハーマイオニーは声に怒気を含ませ言った。周りの生徒達は続々と大広間に向かっていってる。時間がない。戦いが始まってしまったら、秘密の部屋まで行くのも困難になる。前回だって、3人いたからなんとかなったものなのに。くそ、なんて言えばいいんだ。
頭の中で、アイデアが浮かびは消えを繰り返していた。僕の口は何かを紡ごうと動いてはいるが、声は出ていなかった。場の静寂を先に打ち破ったのはハーマイオニーだった。
「あなた、まさか1人で死喰い人に特攻するつもりじゃないでしょうね? 戦いが始まったら守りの呪文が城を覆うだろうから、自由に外に出るには今しかない。どうなの?」
守りの呪文? そういえば、前回の世界でも城の周りに貼られていたな。例のあの人に破壊されたけど。
あれ? 呪文といえば、ホグワーツの中に、姿現しってできないはずだよな? どうして、例のあの人は僕たちの前に姿現しできたんだ?
もしかして、ホグワーツを覆う守りの呪文が破壊された時に、今まで城にかけられていた姿現し禁止の呪文も破られたのか? だとしたら、まだ例のあの人は城内に姿現しはできない! ……多分。
当初の想定より少しだけ安全性が確保されたので、僕はハーマイオニーに話す決心をした。迷っている時間がもったいなかったのだ。
「バジリスクの牙をとりに行こうと思ったんだ。レイブンクローの髪飾りを見つけたとしても、破壊できなきゃ意味がない。それに、あの蛇もだ。いざというチャンスのときに破壊できる手段がないのはまずい」
ハーマイオニーは僕の腕から手を話し、顎に手を当て考え出した。
「確かに……それもそうね。だったらハリーを連れてこなきゃ。蛇語じゃないと秘密の部屋は開けられないし」
「ハリーはスネイプらと対峙しないといけなんだ。みんなの前で、英雄が戻ってきたことを見せつける必要がある。それに、秘密の部屋の入り口なんて、ぼくらが魔法で壊せばいいだろ。ハーマイオニー、急いでいくよ!」
僕はそう行って秘密の部屋に向かって駆けていった。
ハリーはやはり連れて行けない。ハリーを連れて行けば、彼が蛇語を話さないと不自然だ。だが、ハリーが蛇語を話すとあの人に心に侵入されてしまい、僕たちが秘密の部屋に入り、バジリスクの牙を取ろうとしていたことがバレてしまう。まだ分霊箱が残ってる以上、なるべく破壊の手段を悟られたくはない。
ハーマイオニーが少し遅れて後ろについて来ているのを耳で感じながら、そんなことを考えていた。
そうこうしていると、件の女子トイレに到着した。2年の時に何度も足を踏み入れていただけあって、この女子トイレに入ることになんら抵抗はなかった。
トイレの方の入口は魔法で破壊できたが、地下の鉄の入口はやはり魔法ではびくともしなかったので、僕が頑張ってパーセルタングを話した。今回は5回くらいで成功したので、成長が垣間見れた。
こうしてバジリスクの牙を手に入れ、ハッフルパフのカップを破壊した僕達は、再びハリーの元へを戻っていった。
戦いも大詰めに入ってきた。
カップと髪飾りを破壊して、残る分霊箱は蛇とハリーだけだ。
髪飾りを破壊する際にクラッブが死んだ。悪霊の火の呪いで自分を焼いたのだ。もしタイムリープしていれば、できれば死なずにすむようにさせてやりたかったが、僕はあいつが焼かれる瞬間を見ることができなかったので、それは叶わなかった。
お互い嫌い合ってたとはいえ、長い付き合いだった奴が死んだのは結構堪えた。僕は自分自身に、自分を殺そうとしたやつを助ける義理はない、と何度も言い聞かせた。
頭を振り意識を切り替えて移動を開始しようとしたところで、僕たちは、死喰い人と戦っていたパーシーとフレッドと合流した。
あのパーシーが敵となった魔法大臣にジョークを言い、魔法をかけたその時だった。
視界の端に緑色の光を感じた。そちらを振り向こうとした瞬間、空気が爆発し、あたりの物を全て吹き飛ばした。僕は空中に身を放り出された。一緒にいた仲間たちもきっと僕と同じ状況だろうが、確認する余裕なんてなかった。
地面に身体をうちつけた。痛みを無視してなんとか立ち上がった時、僕はパーシーの声を聞いた。
「フレッド! フレッド! だめだ!」
パーシーは今にも泣きそうな声で叫びながら、地面に倒れているフレッドをゆすり続けていた。
呼吸が荒くなる。心臓が速くなる。
僕はゆっくりと、そちらに近づいた。フレッドからは一瞬たりとも目をそらさなかった。
近くまで来たところで、僕は身体が崩れ落ちた。フレッドの顔から生気を感じなかった。笑顔が顔に張り付いていた。
僕は全てを理解した。
フレッドは、死んだ。
爆発の前に視界に移った緑の光。あれは死の呪文だ。フレッドに当たったんだ。
僕があの時、フレッドを見ていれば!
もっと早く、振り返っていれば!
そう思うと、悔しくて悔しくて、涙が止まらなかった。僕のこの力は何のためにあるんだ。家族を救えないで、なにがタイムリープだ。
魂が削れてもいい。
もう魔法界で暮らせなくてもいい。
だから、今回だけ、フレッドだけは、生き返らせて……。
僕の願いは、どこにも届かなかった。
パーシーの悲痛の叫びだけが、あたりにこだました。
その後、パーシーをフレッドからなんとか引き剥がし、その場を立ち去った。アラゴグの子供たちであるアクロマンチュラの群れや死喰い人たちが押し寄せるあそこに留まるのは危険だったからだ。
「あなたはヴォルデモートの居場所をみつけなきといけないわ。だって、大蛇はあの人が連れているんですもの。そうでしょう? さあ、やるのよ、ハリー。あの人の頭の中を見るのよ!」
僕がフレッドを殺した犯人である死喰い人のルックウッドを追うのを止めた後、ハーマイオニーがハリーにそういった。
ハリーが例のあの人の心に、自分から踏み込んで行った。戦いを終わらせるため。これ以上犠牲を出さないため。あいつと蛇の居場所を探るために。
「あいつは叫びの屋敷にいる。蛇も一緒で、周囲を何かの魔法で守られている。あいつはたったいま、ルシウス・マルフォイにスネイプを迎えにいかせた」
ハリーは頭を抑えながらそういった。自分の意思で、あの人の心に入ることに成功したのだ。
僕は、ついに来たかと思った。例のあの人が、スネイプから杖の忠誠心を奪うつもりだ。もしそうだとしたら、僕一人で行くべきだ。スネイプが殺されずに済んだ場合、ハリーとハーマイオニーはスネイプに攻撃するかもしれない。
「よし、それなら君はいっちゃダメだ。行ったらあいつの思うつぼだ。あいつはそれを期待してる。君はここにいて、ハーマイオニーを守ってくれ。僕が行って捕まえて──」
「君たちはここにいてくれ。僕がマントに隠れていく。終わったらすぐに戻って──」
「だめ、私がマントを着ていく方が、ずっと合理的で──」
「問題外だ」
「ポッター!」
僕たちの水掛け論は、突如乱入してきた死喰い人によって中断された。そして、死喰い人の攻撃を躱わながら、移動しているうちに、叫びの屋敷の入り口である暴れ柳の方まで来てしまった。
仕方がないので、僕達は三人で、叫びの屋敷に向かった。
あの人はスネイプを手にかけてしまった。ナギニに攻撃させ、瀕死に追いやったのだ。その光景を直視し続けるのは本当に苦痛だったが、スネイプを死なせないためには仕方がなかった。
やがて、あの人がナギニと共に去ると、僕達はスネイプのもとへと向かった。
スネイプは涙に記憶を混ぜてハリーに渡した。
「僕を見て」
スネイプがそう言うと静かに命を落とした。
スネイプがそれを僕に言ったのか、ハリーに言ったのかはわからないが、僕はダンブルドアとの約束を守るため、そしてスネイプを救うため、彼の死を見届けた。
時間の戻る感覚が、身体を支配しているのがわかった。
目を開けた時の驚きを、僕は一生忘れないだろう。
「久しぶりじゃの、ロン。そして、ご苦労じゃった。君はかつて無い勇気を見せてくれた。わしは君を誇りに思う」
ダンブルドアが優しく言った。
正史との相違点
・なし
※フレッドの死は爆発によるものではなく、死の呪文によるものではないか、という考察を活動報告にあげておきます。
流石にこのシーンで時が戻らなかったことは、きちんと自分の意見を述べるべきだとおもったので。
今後の物語には関係ないので、読まなくても何も問題ありません。