【本編完結】時をかけるロンウィーズリー   作:おこめ大統領

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今話に出てくる、映画にない描写

〇グリフィンドール対レイブンクローのクィディッチ戦

客席にいたドラコ達が試合中のハリーを驚かす為にディメンターの恰好をした。
ハリーはそれを本物と勘違いをし、練習していた守護霊の術を使い撃破。ドラコ達は逆に守護霊にビビり散らす。
その後、ドラコ達はマクゴナガルにこっぴどく怒られる。これにはグリフィンドールの面々もにっこり。


ロン・ウィーズリーとアズカバンの囚人
8. 夜間の外出にご注意を


 珍しく双子の兄に呼び出された。

 ほんとに珍しい。

 いつもは呼んでないにも関わらず勝手にきて悪さを一通り働き、そして脱兎の如く消え失せるあの双子が人を呼ぶというのは、不信を通り越してもはや不気味である。

 

 指定された時間に指定された教室に入ると、教室内に小さな花火が何本も打ち上がった。

 一瞬光りに目が眩むも、改めて教室に目を向けると、中心に双子が礼お辞儀をしているのが見えた。

 やがて体を起こすと双子は一人ずつ話しだした。

 

「今日は不肖俺たちの呼び出しに答えていただき誠にありがとうございます」

 

「次の王の期待に答えられるよう、精一杯進行を務めさせていただきます」

 

 僕は、最初こそ双子たちの珍しくおとなしい態度に面食らったが、どうせ何かあるのだろうとすぐさま切り替え、双子たちに近づいていく。

 

「それで、今日はどうしたの?わざわざ呼び出したりして。ちなみに花火の感想を求めてるのだとしたら、僕は結構良かったとおもうよ。うるさくない割に綺麗だし」

 

「花火!そんな小さなもののために、あなたを呼び出すわけがないじゃないですか!」

 

「そのとおり!なんと言っても今日は戴冠式なのだから!」

 

 双子が仰々しくそういった。

 僕は戴冠式という言葉と2人の態度から、おそらく何かをもらえるのだろうと言うことを察した。双子がこういうテンションになる時は決まって人を喜ばせようとするときだということを長い付き合いから知っていたし。

 しかも、ほんとにちゃんとした良いものをもらえる気がする。僕は一瞬頬が緩んでしまったが、楽しみにしていると思われるのもなんか癪なので、頑張って平静を装った。

 

 その後におこなわれた、長い割に中身のない式典のパフォーマンスが終わると、双子は僕に古い羊皮紙を渡した。

 僕はなにかあるんじゃないかと、恐る恐る受け取ったが、それは見た目通りのただの汚い羊皮紙だった。僕はわかりやすく肩を落として2人に聞いた。

 

「何、まさかこの汚い紙っぺらを渡すためだけに僕を呼んだのか?」

 

「汚い紙っぺらだって?!この"地図"の力を見ても、まだそんなことが言えるかな?」

 

 ジョージは呆れたように言った。話を聞くと、これは忍びの地図というものらしい。

 曰く、2人の成功の秘訣であり、いたずらをする者にとって最も価値の高いものとのこと。

 

 訝しみながら説明を聞いていたが、本当にすごいものだと感激した。これさえあれば学校を迷うことはないし、誰にも見つからず探検することもできる。

 僕はこんな素晴らしいものをもらえることに対する嬉しさで口角が上がりっぱなしだったが、ふと疑問に思って聞いた。

 

「こんないいもの、どうして僕にくれるんだい?」

 

「俺達は暗記してるし、それに十分使った。ならばそれを次世代に託すのが俺たちの使命というものさ」

 

「そう。俺たちは、去年車でハリーを迎えに行くというバカみたいな提案をしたり、暴れ柳に突っ込んだりしたロンを見て、これを託すならお前しかいないと考えたのさ」

 

 なるほど。特に企みもないようだ。

 

 2人が善意で行っていることを確かめると、僕は感謝の意を示し、地図を受け取って部屋を後にした。

 

 それからしばらく、僕とハリーは夜中に散歩に出るようになった。

 ハリーの透明マントと僕の忍びの地図。

 この2つを使えば、誰にも見つかることはない。

 

 ハリーもホグズミード村に来れるし、シリウス・ブラックに見つかることもない。最高の学校生活を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 グリフィンドール対レイブンクローのクィディッチの試合後。

 僕達グリフィンドール生は寮の中でパーティーをしていた。中心にはクィディッチ選手達がいて、傍から見たらまるで優勝を祝しているようである。

 だが、まだ大会は終了していない。

 

 今日のパーティーは「クィディッチ中に吸魂鬼のマネをしてハリーを脅かそうとしていたマルフォイたちを、ハリーが守護霊をだして逆に懲らしめた祝い」のパーティーである。

 あのときのマルフォイの慌てふためいた顔は最高だった。カメラを持っていなかったことが悔やまれる。コリンがたまたまその瞬間を収めていないか、後で聞いてみよう。

 

 コリンを探そうとあたりを見渡すと一人パーティーに参加していないハーマイオニーを見つけた。

 

「ハ、ハーマイオニー、よかったら君も参加しなよ。勉強の息抜きになるかも」

 

 僕はハーマイオニーに近づき、緊張しながらそう言った。

 多少ぎこちない風になっていたのは、ちょっと前まで喧嘩していたからだ。

 

 その原因はスキャバーズがハーマイオニーの猫であるクルックシャンクスに食べられたことである。猫がねずみを追うことは仕方のないことだが、具合の悪かったスキャバースが食べられたのは流石に可愛そうで、それで1週間以上は喧嘩をしていた。

 

「気遣いありがとう。でも私、まだこれを読み終わってないの。今日中に終わらせないといけないから……」

 

 ハーマイオニーは読んでいた馬鹿みたいに厚い本を閉じ、部屋に戻ってしまった。その時の疲れきったハーマイオニーの顔は、さっきまで馬鹿みたいに騒いでいた僕の心にチクリと刺さった。

 結局その日はパーティーに戻る気分でもなくなり、そのままベッドに戻った。

 

翌朝、僕はいつもよりも1時間以上早く起床した。といっても、布団にはくるまったままだが。部屋のみんな、特にネビルの寝息がよく聞こえる。昨日のパーティは僕が抜けた時点でも結構盛り上がっていたし、きっと夜遅くまで続いたんだろう。

 

 誰かもう起きていないかなと考えながら忍びの地図を机の上から取ろうとした。談話室に誰かいないか確認するためだ。だが、その手は空を切るばかりで、不審に思った僕は体を起こして、ベッド脇の自分の机に目を向けた。

 

「あれ、地図がない……」

 

 

 

 

 

 

 4月になった。

 

 クィディッチの優勝決定戦を来月に控え、グリフィンドール生は日に日に熱気を増していった。

 

 忍びの地図がなくなった時は、もしかしたらシリウス・ブラックに盗まれたのではないかと慌てふためいたが、その後彼に関しての続報がないため、僕は部屋の誰かが間違って捨ててしまったのだろうと判断した。

 一応部屋の人達に確認はしたが、口を揃えて知らないと言ってた。だが、他に可能性がないので、きっとネビルだろうと勝手に想像していた。それに地図はちゃんと古い羊皮紙状態にしていたので、シリウス・ブラックが盗むわけがないのだ。

 

 そんなある日の夜。

 

 僕は一人でハグリッドの元へと向かっていた。

 バックビークの処刑も近づき、グリフィンドール生とは対称的に日に日にやつれていったハグリッドを僕達三人ができる限り毎日訪問し慰めようと計画したのだが、他2人は練習なり勉強なりで忙しいので、必然僕だけがよく行くようになっていた。

 

 ハグリッドの小屋まであと20mというとこで、小屋の窓が割れ中から人が飛び出してきた。いや、飛び出したというより、まるで投げ飛ばされたかのようだった。

 だが、その人はハグリッドではない。普通の成人くらいのサイズの男だ。やけにみすぼらしい服装をしている。

 受け身をとれず、地面で少しうめいていたその男を僕は知っていた。ハグリットの小屋の灯りに照らされるその顔を、僕はこの一年何度も注意書きで見た。

 

「シリウス・ブラック!」

 

 僕はおもわずそう叫んだ。叫んだあとで、なんでわざわざ叫んでしまったんだと後悔した。ブラックはこちらに気づき慌てて体勢を立て直す。

 

 シリウス・ブラックと目があった。獰猛な獣のような鋭い眼は僕をビビり上がらせるには十分だった。だがその時、僕は彼が何かを持っていることに初めて気がついた。暗がりに、ハグリッドの小屋の灯りを反射するナイフ、そして。

 

「スキャバース!なんでお前が持っているんだ!!」

 

「はぁはぁ、ウィーズリー家の子だな。君には申し訳ないが、私はこの醜いねずみに用があるのでね。少し借りていくよ」

 

 ブラックは息を少し切らしながら言った。体中に細かいキズがいっぱいできているようだ。中でハグリットとだいぶ争ったんだろう。

 

「ブラック!」

 

 小屋からハグリットの大声と花瓶が飛び出してきた。ブラックにあたるかと思われたそれを、彼は左手で庇った。庇ったと言うよりは、左手に持っていたスキャバースにぶつけたという表現の方が正しいように感じた。

スキャバーズはキーと悲鳴のような鳴き声をあげた後、ぐったりして動かなくなった。

 

「スキャバーズに何するんだ!関係ないだろ!」

 

「関係ないのは君の方だ!」

 

 ブラックは痩せている割に力強い声で意味のわからないことを叫ぶ。関係ないのは君の方だとはどういう意味だ。やはり、アズカバンに収容されるやつは頭がオカシイのか。それとも収容されるとおかしくなるのか。

 彼は逃げようと立ち上がろうとしたところで、ようやくハグリットが小屋から姿を現した。

 

「ロン!何やっとるんだ!早く逃げろ!!」

 

 ハグリットが小屋から出てきてブラックに向かって駆けていく。すると、スキャバーズも急に暴れだした。

 良かった、まだ生きてたとスキャバーズの生存に安心したところで、ブラックは舌打ちし、逃げるのをやめた。

 

 体格的にハグリッドから逃げられないと感じたのだろうか。ハグリッドは人の2倍以上身長がある。つまり足もその分長いのだ。普通の男、それも10年以上投獄されていた男がハグリッドから逃げ切るのは難しいだろう。

 

僕も牽制しようと杖を取り出したときだった。

 

 シリウス・ブラックが右手のナイフで左手ごとスキャバーズを貫いたのだ。

 

 

 

 








正史との相違点
・ロンが地図をもらう。
・ロンとハーマイオニーの喧嘩の時期が前倒しになっている
・ロンとハーマイオニーの喧嘩が控えめ
・ロンがシリウスブラックに寝込みを襲われていない
・シリウスがハグリッドと対面している



▲あんまり関係ない裏設定

ロンは肉体自体が過去に戻っているわけではないため、焦りの原因と言われるノルアドレナリンやその他興奮物質がでていないため、タイムリープ直後は若干冷静になる。

ただし、タイムリープした後も心が焦り続けたら普通に肉体も焦ります。

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