誤爆してしまい、すみませんでした。
「は?」
タイムリープをしたのは理解できる。先程までの景色が全く別のものに変わり、目の前の光景も見に覚えがあるからだ。
だが、このタイミングでタイムリープをした理由がわからない。
タイムリープ
未だにコントロールできず、詳細もわかっていない力だが、今までの経験からなんとなく発動条件は予想していた。
一つ、身近な人の死をその目でみること
二つ、戻った時間で正しい選択をすれば、その死を回避できること
一つ目を推察した理由としては、1日に何人もの人が世界中でなくなっているので、こうでなければ永久に戻り続けることになってしまうためである。事実、ハリーが塔から落ちたとき、落ちきるまで時間が戻らなかったため、大きくは外れていないと思われる。
二つ目に関しては、完全に経験である。今まで戻って時間でちゃんと行動していれば死を回避できたので、戻った時間にも意味があると考えていた。
だが、今回は全くの謎だ。
今僕の目の前には跪いた双子がおり、まさに忍びの地図を僕に託そうとしている。
もしかして、ブラックみたいな悪人の死でも見てさえいればタイムリープしてしまうのか。でも、手にナイフ刺してはいたけど、死ぬような傷には見えなかったし。毒でも塗っていたのか。それとも、スキャバーズみたいに、人じゃなくても僕が大事にしているものであればタイムリープが起きるのか。それとも僕が見ていないだけで、別の親しい誰かが死んだのか?
それはありうるな。僕のいないところでハリーが死んじゃったのかもしれない。今までハリーとチャーリーの死でしかタイムリープできてないことを考えたら、実はその2人の死で自動発動するとか。
それとも、実は僕が死ぬ何分か前にタイムリープが起きるとか。今までのときを思い出しても、僕が死ぬかもしれないと言っていえなくはない状況だしな。あ、でも1年のときにハリーが飛び降りた時は、僕は別に死の危険にはなかったよなぁ
よし、わかった。一旦そっちは置いておこう。
次はなんでこの時間に戻ったか、だ。
この時間に意味があるとしたら、十中八九忍びの地図だろうな。実はブラックは僕から忍びの地図を盗んでいて、それであの時ハグリットの小屋に潜入していたとか?いや、それだとしたら、そもそも地図をどうやって盗んだんだって話だよな。
協力者がいたとか?
でも、そもそも忍びの地図自体知ってる人はいないだろう。僕達が使っているのを見ていた人がいたとしても、ただの羊皮紙状態から地図に戻せないだろうし。でも、それはたとえブラックが盗んだとしてもそうだよな。
双子が不審な顔をしてこちらをみてる。これ以上時間をかけてられないな。
僕はとりあえず流れのまま忍びの地図を受け取り、部屋を後にした。
この時間に戻ってきたってことは、今までのタイムリープの法則的には忍びの地図がキーアイテムになるに違いない。
忍びの地図を僕から盗んだのがブラックだとして、それが原因で今回の事件が起きたのだとしたら、忍びの地図を隠せばいいだけの話だ。
これ以上考えていても話が進まないので、とりあえずそう仮定した。
……いや、むしろブラックに渡してしまうのはどうだろうか。
前回と同じように進められれば、ブラックがハグリッドの家を襲撃する日に待ち伏せできるし。ああ、でもそうするとスキャバーズが捕まるのか。
でも流石に、死にかけの愛するねずみと親友を狙っている殺人鬼の逮捕どちらをとるかと言われたら、後者だよなぁ。かなり苦しい選択になることは間違いないけど。
というか、ブラックはスキャバーズに何か用事があるって言ってたけど、あの老いぼれねずみなんかに何の用があるんだ。何かの実験にでも使うのか、それとも食べるためか。ブラックは見るからに痩せていたし、十分にありえるな。
正直、今後も地図は使いたいな。誰かに渡すんだったら、僕が隠していても変わらない気がする。ブラックに取られなければいいだけのはなしなんだから。むしろ僕以外の人に渡して、そいつが雑な扱いをしてるうちにブラックに盗まれる方が危険だ。そう考えたら、僕が管理するべきだよな。
ああ、どうしよう。
どっちの道が最善か。
地図を渡すか、隠すか……。
結局僕は地図を隠すことにした。
とはいっても、地図がなくなる日はわかっていたので、その日までは普通に使っていた。地図の盗難を経験したのは自分の体感時間ではかなり前のことだったので、思い出すのにはそこそこ時間がかかったが。その日以降は、ハリーたちにもブラックに盗まれたらまずいから隠したと伝えており、一度も使用していない。
もう1つ、前回の反省を踏まえ変えた行動がある。スキャバーズを守ることだ。
ただでさえ弱っており、その上シリウス・ブラックにも狙われているのかもしれない。これ以上ストレスを与えないように、ハーマイオニーにも何度もお願いしてクルックシャンクスを隔離するように言ってるのだが、彼女はそれを聞こうともしなかった。それを巡って喧嘩したりもした。
クルックシャンクスはスキャバーズだけを狙いすぎだ。
もはやクルックシャンクスがシリウス・ブラックの手先なのではないかと思えてくる。
あの猫やシリウス・ブラックの脅威から守るため、僕はねずみ用のかごを買い、それにスキャバーズを入れ、部屋で管理していた。
スキャバーズの元気は前回と同じく減っていったが、それでもクルックシャンクスが直接的に手出しはできなくなったので、結果的に平穏に過ごしていた。
今までにないくらい地味な改変に、僕は不安を隠しきれなかった。
だが、ある日事件が起こった。
スキャバーズが何者かに盗まれたのだ。
朝起きたときに、いつもスキャバーズの籠を置いている位置に何もなかったのだ。それに焦った僕はベッドから跳ね起き、談話室の方に駆けていった。
するとそこには、その籠だけが落ちていたのだ。僕はしまったと思い、膝から崩れ落ちた。
今日は、前回の世界で、地図を盗まれた日だ。何か事件が起こりうることはわかっていたのに。地図を隠したことで油断していた。
だが、これで確信した。やっぱりシリウス・ブラックに違いない。あいつはスキャバーズを狙ってるんだ。前回はスキャバーズを探すために地図を奪って、今回はそこにいたから直接攫ったんだ。僕は泣きそうになりながら、ゆっくりと空の籠に手を伸ばしたところでその異変に気がついた。
かごが壊れている。当たり前といえば当たり前だがその壊れ方に違和感を覚えた。 壊れていると言うよりは内側から食い破られたようだったのだ。
そうか!スキャバーズが逃げ出したんだ。籠を内側から食い破って、ブラックの手から逃れたんだ!
それから寮中探したが、スキャバーズを見つけることはできなかった。僕は、ただただ無事を祈った。
期末試験も終わり、談話室でハーマイオニーと話していたときのことだった。
ちなみにハリーは占い学のテスト中である。直に戻ってくるだろう。
一匹のフクロウが僕達のもとへ来て手紙をぽとりと落とした。
そのフクロウは近くの帽子掛けに止まり、こちらをじっと見つめてきた。首元をなでてやるとホーと満足そうに鳴き、外へと羽ばたいていった。
手紙を見ようと、ハーマイオニーの方を振り返ると、彼女は今にも泣きそうな顔で手紙を見つめていた。手紙を持つ手は震えていた。
僕もゴクリとつばを飲み込み手紙を覗くと衝撃的なことが書いてあった。
「バックビークが、死刑……?しかも今日?」
「そんな!あんまりだ!バックビークもハグリッドもなにも悪いことをしていないじゃないか!」
僕は怒りのあまり、両手を広げ抗議をした。ハーマイオニーに言っても仕方がないことはわかっているが、体が自然とそうしてしまっていた。
「ルシウス・マルフォイだわ。彼が裁判官たちに圧力をかけ続けていたのよ」
僕は言葉もなかった。愕然とし、手をだらりと下げた。裁判の判例も結構調べたし、ハグリッドのために裁判中に読むカンペも用意した。それになにより、マルフォイの馬鹿のせいであんなきれいな生き物が死刑になることに、憤りや呆れを超えて悲しみを感じていた。
手紙に二人して言葉を失っていると、ハリーが戻ってきた。何か別のことを言いかけていたが、バックビークのことを聞くとハリーも言葉を失っていた。
ハグリッドを一人にしておけないと思い、僕ら三人は透明マントをかぶり、ハグリッドの小屋へと向かった。
小屋まで行くとハグリッドが招き入れてくれた。
来ては行けないとは言っていたが、やはり精神も参っており、不安を感じているのだろう。僕はそっと背中をさすった。ハーマイオニーはハグリットを落ち着かせるために、小屋にあった紅茶を入れた。
ハグリッドの話を聞いていると、やはり控訴でもルシウス・マルフォイは邪魔をしてきたらしい。そのことを話すハグリッドの声は、今までで一番小さく、今にも消えてしまいそうなものだった。
そんな時、ハグリッドの小屋で、籠に入ってるねずみを見つけた。近寄ってよく見るとそれはスキャバーズだった。前足の小指がないし、間違いないだろう。
「スキャバーズ!」
僕は何も考えずに明るい声で名前を呼んだ。やっぱり無事だったのかと嬉しくなったからだ。僕はスキャバーズを籠からだし、手にとった。
「ああ、ロン。そいつぁやっぱりお前のねずみか。自分のペットは大事に扱わないといかんぞ。そいつだって生きてるんだからな」
ハグリッドは低い声のままそう言った。僕はいまの状況を思い出し、少しテンションを抑えた。ぼくは死んでいたかもしれない自分のペットを見つけたが、ハグリッドは愛するペットがこれから処刑されるんだ。あんまり諸手を挙げて喜ぶと、ハグリッドに申し訳がない。
みんなでハグリッドを慰めていると、玄関の戸が叩かれた。
しまった、もう処刑人たちが来てしまった。
ハグリッドは裏口から逃してくれようとしたが、その前に扉は開かれてしまった。
「なんだハグリッド、ちゃんといるじゃないか。不安になるから、返事くらいくれよ」
魔法大臣のファッジを先頭に幾人かが入ってきた。その中にはダンブルドアもいた。
幸い逃げるために透明マントはかぶっていたので見つかりはしなかったが、今から小屋の外に出ることは難しいだろう。このまま成り行きを見守るしか無い。
そう思ったところで、ポケットの中が激しく動き出した。
スキャバーズだ。
押さえつけようにも、激しく動くとファッジたちに見つかってしまう。
数秒も立たないうちに、スキャバーズはポケットから脱走し、小屋の外に逃げ出してしまった。なんとかスキャバーズを見失わないようにしようと、窓の外を見ていたが、暴れ柳の方にまっすぐ進み、すぐに見えなくなってしまった。
ファッジたちもこちらをチラリと見たが、音の正体がねずみだとわかると再び話に戻っていった。
バックビークは処刑されてしまった。
僕達は、処刑のためにファッジたちが小屋を出たときに一緒に外に出て処刑を見守っていた。斧が振り下ろされ、バックビークの首と体が離れる瞬間を、僕は勇気をだして直視した。
スキャバーズでもタイムリープが起きたんだ。バックビークの死でも戻れるのかもしれない。もう一回一年もやり直すのは苦だし、テストもまたやりたくないけれど、バックビークの裁判で役に立てなかった無力感から、そうした行動をとった。
だが、目の前のバックビークの首は離れたまま。ハグリッドは雄叫びのような声で泣いている。
ハーマイオニーは小さく悲鳴をあげていたが、幸か不幸か、斧の音とハグリットの雄叫びのような鳴き声によってかき消されたため気づかれずにすんだ。
僕は自分の無力感とやりどころのない苛立ちに奥歯を噛み締めた。僕はバックビークのことは好きだったし、大事にしていた。なのに、戻ることはできないのか。僕のこの思いはスキャバーズに対するもの以下なのか。僕は苛立ちを拳にのせ、そのまま自分の太ももを思いっきり殴った。
体の痛みは、全く気にならなかった。
その帰り道。
ホグワーツとハグリッドの小屋のちょうど中間あたりでスキャバーズのことを思い出し探しに行こうとしたら、2人もついてきてくれた。何かをしていないと、気が動転しそうだと2人は口を揃えて言った。僕も同じ気持ちだった。
僕達はとりあえず暴れ柳の方にむかうことにした。
遠くからではわからなかったが、近づくと、クルックシャンクスが暴れ柳の下で待ち構えていた。僕達の方を一瞥すると、木の幹に足を乗せた。
すると、暴れ柳はみるみるおとなしくなり、クルックシャンクスは木の根の隙間を潜っていった。
「ねえ、今のクルックシャンクスだよな。ついてこいって言ってるみたいじゃないか?」
ハリーはそう疑問を漏らした。自分の眼を疑っているのか、メガネを外し、ローブでレンズを磨いてかけ直した。
「ええ、私にもそう見えたわ。ついていってみる?もしかしたらスキャバーズがいるのかも。あれだけ狙ってたんだし、追いかけていったのかもね」
ハーマイオニーの言葉に一理あると思い、僕もハリーも付いていくことにした。
スキャバーズがいるいないは別としても、あの行動は明らかに意味ありげなものだった。個人的にはあいつは好きでは無いが、闇雲に探し回るよりはいいと思った。それにこの先に何が続いているかは知っていた。
「忍びの地図を見た感じ、この先は多分叫びの屋敷だけど、みんな大丈夫?」
隠す前に見た地図の情報を言うと、2人は緊張した面持ちでうなずいた。
暴れ柳の根の隙間を通り抜けた先は予想通り、叫びの屋敷だった。
見える範囲にクルックシャンクスはいないが、ここに来るまでの道が狭い一本道だったことを考えたら、入れ違ったということは考えられない。この屋敷のどこかにいるのだろう。
上の方から物音がする。クルックシャンクスかもしれない。そう思い、近くの階段を登っていったが、やがてそうではないことに気がついた。
男の声だ。二人いる。激しい言い争いそしている。
嫌な予感がした。この声を聞いたことがある気がしたのだ。
僕はハリーとハーマイオニーの顔を見る。2人とも眉間にシワを寄せ、目をキョロキョロとさせている。僕たちはハーマイオニーの指示で透明マントをかぶり、忍び足で上階に向かうことにした。
そして、とうとう男が口論している部屋の前まできた。
裏切りがどうとか、ヴォルデモートがどうとか言っているのが聞こえる。
確実に闇の陣営であろう。
だがそこで決定的な言葉が聞こえた。
「許してくれ、シリウス!友達だったろう!」
その言葉が聞こえた途端、透明マントがひらりと舞い地に落ちた。ハリーがマントから飛び出し、部屋に押し入ったのだ。
「シリウス・ブラック!!!」
ハリーはそういうと手に持っていた杖を投げ捨て、ブラックに殴りかかった。突然の出来事に、ブラックは対処できない。ハリーはそのまま馬乗りになり、5、6発殴ったあたりで一旦拳を止めた。
「なぜ両親を裏切った!」
ブラックのしかめた顔は怒りでも我慢でもなく、悲しみの表情のように見えた。ブラックはハリーの問いかけに黙っていたブラックだったがやがて静かに口を開いた。
「私は裏切っていない。私は最後までジェームズの味方だった。君はまだすべてを知らないんだ」
その答えにハリーは激昂する。喉から血が出るのではないかと疑いたくなるほどの声をあげていた。
「僕は知ってる!お前は秘密の守人だった!お前は両親をヴォルデモートに売った後ピーター・ペティグリューを殺したんだ!」
「違う!裏切ったのはピーターだ!私は守人にならなかったんだ!」
必死に弁解するブラックをハリーは殴りつけた。その状況に僕とハーマイオニーは、ただみることしかできなかった。
「僕は先生たちや大臣が話しているのを聞いた!それにお前を守人にしたのはダンブルドアだ!もし守人がペティグリューだというなら、そもそもお前が捕まってる事自体おかしいんだ!」
そこまで言うと、クルックシャンクスがブラックの上に飛び乗った。まるでブラックをかばうように。
その行動がハリーの怒りを更に刺激することになる。
僕も流石に見ていられなくなり、止めようかどうしようかをハーマイオニーと相談しようと顔をそちらに向けたところで、視界にあるものを捉える。
先程までブラックと口論していた男が、ハリーの落とした杖を拾い、そして僕達にそれを向けた。
「エクスペリアームス!」
僕とハーマイオニーの杖は吹き飛び、男の手に収まった。いきなりのことに呆然としていると、今度はハリーの方に杖を向けた。
「ハリー、ごめんよ……。私にはもう『名前を言ってはいけないあの人』のそばにしか居場所がないんだ……。でも、なんの土産もなしに戻っては殺されてしまう……。しかたないんだ」
男はそう言い、呪文を唱えた。緑の閃光がまっすぐハリーの方に進む。
「!ハリー、危ない!」
ブラックは咄嗟にハリーを横に押しのけた。だがその閃光はそのままブラックとクルックシャンクスを包み込んだ。
眼の前に花火が上がっていた。
正史との相違点
・ロンが地図をもらう
・ロンがクルックシャンクスに手荒な真似をしていない
・ロンが裁判の資料集めに結構協力している
・魔法大臣らが来る前にハグリッド宅を抜け出せない
・バックビーク死亡
・ルーピンとスネイプが叫びの屋敷に来ない