新米審神者の生存戦略   作:職員M

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第3話

直近歴史概略

 

西暦2204年、日本国

技術革新により次元観測を可能とする。同時期、戦国時代某合戦において歴史上存在し得ない家、部隊を確認。作戦レベルにおいて史実とは異なる合戦結果を複数確認。

 

同時期、観測結果を基に政府と識者によって分析を開始。中国地方における某博物館内に収容される一部の資料において以前とは異なる記載を発見。

 

被観測部隊が時代を問わず出現、合戦場のみでの存在から、本国と同等以上の次元観測能力、次元干渉能力を有していると判定。

 

正体不明の部隊が軒並み合戦に参加していることから当部隊を「時間遡行軍」と呼称。背後に本国と同様に部隊を指揮する存在を認知。「歴史修正主義者」と同じく呼称。

 

 

 

西暦2205年、日本国

認識当初、文化財への限定的影響と思われた時間遡行軍の同時多発的発生、数量増加により歴史改変部分が大幅に増加。政府、緊急対策本部を水面下で設置。歴史修正主義者並びに時間遡行軍の存在は準機密指定から国家機密指定へと改訂。同時期、観測から干渉への技術的発達により現世界から観測地域への派遣が可能になる。

 

次元転移による直接殲滅を第一優先とした『四月方面作戦』を策定、即時実施。■■■名を派遣するも部隊全滅。

 

緊急対策本部直属ユーティリティ技術局、次元転移において歴史への影響が最小限となる刀剣を顕現する技術を開発。実質的に派遣先地域で使用可能な武器となる。有用性を見込まれ数万に及ぶ実験を実施するも、当局人員による実際の顕現は確認されず一時廃案。

 

代替案の停滞から現時点における刀剣所有者を国内より招集し、廃案していた同実験を実施したところ、数例の成功を確認。被験者は全員即時『対歴史修正主義者軍(のちに審神者へと改訂)』への緊急雇用が開始される。また、刀剣は須らく人型の男性の姿をしていたことから『刀剣男士』と命名。実験成功者の共通点を分析したところ、一般人以上の霊力を確認。これにより刀剣所有非所有に関わらず全国民への霊力値把握に努め、AIへのデータ提供開始。

 

国内より■■名〜■■■名の審神者を収集、直接雇用。刀剣男士を主軸とした歴史修正主義者殲滅の作戦を開始。

 

 

ーー歴史改変などという事案が漏れるわけにはいかない。何としても国内で解決せねば大問題だーー(政府関係者手記より)

 

以上

 

 

 

 

『警報! 函館方面にて敵勢力確認できた模様!』

 

 緊急連絡を寄こしてきたのは当然の事ながら政府支給端末。見てみると、警報の文字の横でこんのすけが慌てた様子を見せている。

 

「どうした?」

『主様! 今すぐ函館へ向かいましょう!』

「……緊急なのは分かるが今から飛行機を手配するとなると……」

 

 現地集合は出張の基本。そのくらいは心得ているつもりだが、如何せん急な出張でも待ち時間はあったというものだ。

 

『このままで結構です! 最初は慣れないと思うので、是非人気の少ない所へ!』

 

 何を言っているのか分からないが、とにかく言う通りにするべく近場のトイレへと急行。個室に入ってから再びこんのすけに訊ねる。

 

「ここから函館へは飛べないが……」

『この端末を使います! メニュー画面から出陣を選んで、現在確認できる地域を選択してください!』

「こうか?」

 

 基本的な操作はただの端末と同じ。函館と書かれた場所を押した瞬間、身体が大きく揺れた。頭を揺さぶられるような感覚。思わず目を瞑り我慢する。長くは続かなかったが、お世辞にも快適とは言い難い。こんのすけに文句を言ってやろうと目を開けた瞬間、思わず口をあんぐりと開けた。

 

「ようこそ主様! ここが今の最前線です」

 

 目の前には広大な土地と画面で見たこんのすけ。そしてーー

 

「直接対面するのは初めてだね、主」

 

 歌仙兼定。自分が相棒として選んだ刀が、画面と同じ姿をして立っていた。身長は自分より僅かに低いくらいだろうか。

 

「あ、あぁ……」

「まだ受け入れられていないようだね。大丈夫。みんな最初はそうだから」

 

 安心させる為なのか、笑いかける兼定に私は何も返せなかった。会社のトイレは、現代日本はどこへ消えたのか。

 

「次元転移は無事完了です。これから敵軍の殲滅に出掛けましょう!」

「待て。今現在私と兼定しかいないのではないか?」

「仰る通りですが?」

 

 当然の危惧に対し、こんのすけもまた当然と言ったように首を傾げてくる。今可愛さは一切求めていない。

 

「この状況で殲滅戦を選択ということは、敵は単体で来るという確信が無ければ不可能だが」

「……そこを何とかするのが審神者のお仕事です!」

 

 目を逸らすな。

 

「……敵規模は?」

 

 溜息をつき、半ば諦めながらこんのすけに尋ねるも、

 

「索敵を開始して下さい」

「索敵だと?」

「それは僕がやります。主は敵が発見され次第僕に指示を下さい」

 

 こんのすけへの質問に直ぐ様応える兼定。こいつは存外有能かもしれない。有能な部下は貴重だ。人が知りたいことを先取りし、その最適解を出せる人的資源がどれだけ得難いことか。

 

「分かった。実際に動くのは君だ。私の期待に応えてくれたまえ」

「御意に」

 

 短い返答だけで早速進軍を開始。函館ということもあり、季節は冬ではないにしろどこかひんやりとしている。小高い丘に立ったとき、兼定は少し身を屈める。

 

「敵の気配が近いです。警戒してください」

「頼む」

 

 同じく身を屈め、兼定の索敵を待つこと数十秒。

 

「今です。敵は少数で無目的に進行中。先制をかけますので主は指示を」

「多勢に無勢だがやるしかないな! 行くぞ兼定!」

 

 私の声を契機に奇襲を仕掛ける。出掛けに一体を屠ると、続けざまにもう一体を襲撃する兼定。その姿は舞い散る花の如き美しさを生んでいた。

 

「……!!」

 

 ようやく事態に気付いた敵が兼定に襲いかかるも、時既に遅し。直ぐ様体勢を立て直した兼定の一振りに斃れることになった。

 

「兼定! あと一体、後ろにいるぞ!」

 

 身を乗り出しながら叫ぶと、身を屈めて脚を掛けて倒した兼定は、大きく振り被って最後の一体にとどめを刺した。

 時間遡行軍とやらは刺された際に出血することも無く、戦闘不能状態になるや否や霧散していった。どうやら人間ではないらしい。戦時国際法が摘要されないのもむべなるかな。

 

「敵を全員殲滅致しました」

「素晴らしい反応速度と正確性だった。兼定、普段から訓練はしているのか?」

「無論。常に鍛錬は怠りません」

「結構。この調子であれば私の背中を任せるに値するだろうな」

「有難きお言葉です」

 

 何はともあれ、初陣は無事に済んだ。次元転移とやらもあるから移動にもそれほど時間がかからない。戻り方を教えてほしいところだが。

 さて、より多くの成果を挙げるとしよう。これも給料の内だ。成果は多ければ多いほど良い。インセンティブの幅があるのならばだが。

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