4000文字を目安にすると結構いけますね。
原作の設定を改変するのも適当にやっているから、ポンポンアイデアが浮かびますし・・・・。
さ・・・用務員さん書こうっと・・・。
『人生ってのは、平凡なようでいて劇的な出会いなんてのもある。もっとも、本当に何にもない人生ってのもあるがね。』
イタリカの酒場の壁に落書きされた文句
室内に居るにもかかわらず。陽の光と同じような証明の下で、何の材質で出来ているか分からないテーブルを挟んで、砂と土の色をした斑服を着た学者の様な雰囲気の男と相対するバルド。
「バルドさん・・・今回の聞き取り調査は、これで終了です。しかし、捕虜になってから一か月程でコチラの言語を理解しはじめるとは・・・正直、驚きを禁じ得ませんな?」
「俺だって驚いているよ?帝国公用語と似ても似つかない言語なのに、何故か耳に残っていてな。気のせいか聞き覚えもある様な気がしているよ?ゴトウダ少佐。」
「我々としては非常に助かりますね。コチラの世界に攻め込んで来られた方々は・・何と言いますか・・気位の高い方が多勢を占めておりまして。協力を拒む方が多いのです。」
「そうなのかい?いやはや・・・ジンドー的に扱うってのはメンドイ事もあるんだねぇ?俺達みたいに奴隷にして、拒否した瞬間に罰を与えて『協力的な態度』に変えちまえばいいじゃねぇの?」
「とんでもない!確かに暴力で押さえつけるのは簡単ですが、我々が欲しいのは協力者であって奴隷ではアリマセン。それに・・失礼ですが、奴隷身分の時は相手に対して真剣に向き合っていましたか?暴力で得た利益など、相互の信用に基づいた取引に比べれば、得られるものなど微々たるものです」
バルドの真意を探る様な視線を投げかけて、同意を求める後藤田。
「確かにな・・・ゴトウダ少佐の言い分の方がシックリくるな。」
「そうでしょう?それでですね・・提案があるのですが。」
「えらい改まった口振りだねぇ?コッチは捕虜の身分さ。何にでも話を聞くぜ?正直、待遇は最高なんだが。働かないで飯を食う立場ってのが・・・なぁ?要するに『暇』なんだよ」
「それを聞いて安心しました。私が今から話す事は、お互いにとっても利益のあるモノだと確信していますよ。」
落ち着いた黒い瞳が、こちらの内情を見透かしたように光る。
「あんた等の言う所のギブあんドテイクってやつかい?」
「ええ!その通りです!話が早くて助かります。」
「そうかい?で、どんな提案何だい?」
ひととうりの遣り取りを二週間も続けていれば、次に何を言い出すのか予測が出来る物だが。今回のゴトウダ少佐の提案は、バルドの想像を軽く超えていた。
「どうでしょう?アナタを含めた奴隷身分で捕虜になった皆さん。ウチで働きませんか?」
まったく冗談の似合わない、生真面目な雰囲気の男から飛び出た内容は。バルドをして驚嘆に値するモノだった。
やれやれ・・・奴隷仲間に以前聞いた、安酒場に書かれた落書きの一節が頭に浮かぶぜ・・。どうやら、俺達の人生は『劇的な』方向に舵を切ったらしい・・
ゴトウダの提案を頭の中でこねくり回しながら、優しい明るさの照明を見上げる。調子の変わらない照明と、劇的に変化するであろうこれからの『人生』設計を考えるバルドだった。
人工的な明かりの下。様々な種族が入り乱れて、教壇に立つ三十代前半に見えるヒト種の男に注目していた。
「・・・・・で、ゴトウダから受けた提案は説明した通りだ。全部に応えられる訳じゃないが、横に居るサイトウが細かいところは話してくれるそうだ。俺も、全ての会話の意味を理解している訳では無いから、通訳にグラハム殿を挟む。なんか質問あるか?」
教壇に立つ男が、低音の良く響く声で皆に語りかけていた。
「ガイウス・・?質問か?」
「いや・・・そんな上等なもんじゃねぇよバルド。捕虜になったってのに、あまりの待遇の良さに面喰っちまってな・・しかも、今度は敵側である俺達を雇うっていうんだろ?良い思いさせてもらっている所悪いんだが・・その・・なんか裏があるんじゃねぇかって・・?」
先程の説明でも納得していないのか。六肢族のガイウスが、四本ある腕の右側上部腕を挙げて疑問を投げかける。
確かに、ガイウスが思う所には同意できる部分が多々ある。コノ世界での常識なら、捕虜や奴隷に賃金などは払わない。使い潰して仕舞か、見どころのある奴はそこそこの待遇で飼い殺しのどっちかしかない。疑問に思うのも当然だった。
「そちらの事でしたら、私が説明致します。バルドさんを経由してでは 、真意が伝わらないでしょうから。いえ…決してバルドさんに落ち度がある訳では無いのです。私達自身が正直なところを伝えないと、勘繰られてもしょうがないですからね。」
先程まで、通訳である帝国貴族のグラハムを介して意思を示さなかったサイトウが。滑らかな帝国公用語で、ガイウスに答えていた。
「我々はコチラの世界に攻め込んで来た帝国に『借り』を返さなければなりません。帝国が、我々の領土に侵攻して作り出した損害。それらに対する補償を求めているのです。ガイウスさん、此処までは宜しいですね?」
サイトウの言い分に曖昧な首肯で応ずるガイウス。
「言い分は分かる。要するに損害に対する、それ相応の補償を帝国のアホ共に突き付けるんだろ?俺達に対する攻撃や、この駐屯地に存在する様々な兵器や武器。それらを操るあんた等が居れば、俺達は必要ないんじゃないかって事なんだよ?」
「ええ、謙遜するまでも無く簡単に帝国を壊滅させる事が出来るでしょう。しかし、その後はどうです?敵対組織を壊滅させた後、その組織が把握していた縄張りを廻って他の対立組織ともめ事が起こるのは必定でしょう。勿論、こちらの実力を見て表立ってチョッカイを掛けてくることは無いでしょうが、新たな組織を創り出さなければなりません。そして、我々にはそのような事を試みる気はないのです。」
「何故だい?損失を補てんしなきゃ、被害を受けた連中に渡す金がねぇじゃないか?」
「それはですね。我々は皆様方が考えるよりも遥かに豊かなんです。我々ですら解明できていないヘンテコな原理で、戦力差を考えもせずに攻め込んで来る莫迦を相手に、真面目にヤル気が起きないからですね」
事実だった。二度に渡る世界的な大戦を乗り越え、度々起こる局地的な紛争を収め。世界政府の様なモノを、度重なる血みどろの内戦を起こしながら造り上げた地球世界。
戦争によって加速された様々な研究成果や、湯水のごとく投資された莫大な金銭。其の行為の結果として開発された技術によって創られた軌道エレベーターが、人類を宇宙に押し上げる時代となっていたのだ。
正直、得体の知れない体系で造られた『異世界』に構っている余裕など無かった。たった15mしかない門を通じて侵攻し、疫病や病害虫を気にしながら開発を進め、利益を上げようと名乗りを挙げる者が極少数しかいなかったのだ。(そんな事に投資するなら、無限に広がるフロンティアである宇宙に乗り出した方が遥かにマシだからだ。勿論、『門』を構成する様々な事象は研究され『異界科学』として確立されつつあったが。他にも、怪異達の遺伝情報なども厳重に管理された施設で研究されていた。)
「・・・まぁ、あんたらの装備を見れば納得がいくが・・・」
「皆さんが見ている装備は一線級のモノもあれば、退役寸前の骨董品もあります。でも、それらを運用する人員は。私も含めて犯罪者や精神疾患者といった社会的不適合者の中から才能を持つものに訓練を施した者達です。皆さんと境遇は似てますよね。人員の有効利用といった所ですか?」
「でもよ・・豊かなんだったらこっちの事など無視すればいいんじゃねぇの?」
「ええ、そうする事で。またよからぬ事を企むアホが出てくることも考えられたので、根治治療を施さなければならないのです。あとは、亡くなった者達の遺族の心の問題とかもあって。それらを鎮めるためにも・・」
「お礼参りが必要って訳かい?」
「否定はしません。現地事情に詳しく、帝国に何かしら『借り』のある方々に『お願い』している訳でして」
サイトウ大尉の言葉には『裏』と言うものが無かった。当たり前だった。宇宙に進出し、アステロイドベルトに浮かぶ小惑星を開発する事によって、空前の発達を見る現状に於いては。銀座に突如出現したテロ集団に対する本格的な戦闘・・しかも、いつ消滅するか分からない『門』を通じての侵攻など冗談に等しかった。
だからこそ、サイトウやゴトウダを初めとする『異界事態対処集団』の構成人員は、『勿体なくない』人物や、『異世界』に対して熱烈な興味を抱いた志願者たちを選抜して訓練された者達だった。
であるから、構成された人的資源を有効に活用するために、現地人を雇用・訓練して『数』を補わなければならなかった。
お礼参りが必要になった『銀座異界集団殺戮事件』。『門』の制限された幅によって、武装したテロ集団の展開には時間が掛かった。人々が持つ様々な情報機器と、街中の至る所に設置された管制通報システムによって事態は即座に把握され。先頭集団が無差別な殺戮を行う頃には、重武装の治安部隊が展開を完了しており、被害を極僅かに抑えることが出来た。もっとも、当局の意見を意図的に無視してテロ集団に接触を試みた『報道員』26名と、物見気分で現地に留まった危機意識の低い23名が犠牲になっていたが。
まぁ・・・いつの時代も他人の命なら失っても気にならない。鉄砲玉は数が多い方が良いし。躾が行き届いた『野犬』は使い勝手が良い。面倒事が増えそうなら反応兵器を放り込み『抹消』してしまえばいいことだった。
度重なる同族同士の大規模な殺戮戦争を行ってきた世界政府には簡単に感じられるモノだったし、その行為を躊躇う気などさらさらなかったのである。
サイトウの説明に納得したのか肩を竦めるガイウス。
「納得したか?皆も、大体分かってくれた様だな。其れでは具体的な『雇用』についての説明を、グラハム殿が行う。一応、帝国貴族の子爵だから言葉に気を付ける様に」
バルドの紹介で身分を明かされたグラハムが、苦笑交じりに教壇に立つ。
「ああ、そんなに殺気を膨らませないでくださいね?私は子爵と言っても商人上がりですから。金で買った身分です。帝国の存続よりお金の方に興味がありまして・・。それでは、これからの皆さんの雇用についてお話します。雇用に興味の無い方は、旅用の装備と路銀を渡しますのでご自由になさってください。事実上『戦死』になっているから、帝国も追手を差し向けることは無いでしょう。ただ、アルヌスでの従軍経験を話して帝国に混乱を呼びかねない事をすれば・・・どうなるか想像できると思いますよ」
サイトウと同じ服を着た金髪碧眼の男が、 商人らしい穏やかで人懐っこい笑みを見せながら。事実上に拒否のできない提案を、にこやかに告げるのだった・・・・。