刀使ノ巫女 刻みし一閃のバエルの燈火   作:とあるBael厨毒者

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前書き

どうも、とあるBael厨毒者です。

いやー突然ですけどバエルってカッコイイですよね。
それに合わさってマッキーも大好き。

バエルは蘇った!とか最終決戦の純粋な力のみが成立させる真実の世界を!とか見ろ!純粋な力だけが輝きを放つ舞台に、奴らは圧倒されている!とかもうほんと楽しそうで好き。

正直言ってガンダムシリーズで一番好きなキャラは断然マクギリスですね(断言)
あと、オルガとミカと石動も外せない。

所変わって刀使ノ巫女も個人的には好きな作品です。
ちまたでは色々言われてるけど……でも、思うんですよ。
刀使ノ巫女は話を詰め込みすぎただけでダイヤの原石みたいなアニメなんじゃないかと。

今回はオルフェンズ(マッキー)と刀使ノ巫女を合わせてみました。

(っ ・ω・ )っ <では、どうぞ



燕結芽回想編 私のおにいちゃん

 

 

 

私、燕結芽には10歳年上の義理の兄が居る。

 

燕家は海外との交友関係を幾らか持っていてその兄はイギリスのファリド家というイギリスの名家からの養子として私の家にやって来てきた。

 

私がまだ、生まれたばかりの時の事だ。

 

その兄の名前はマクギリス・ファリド。

私が良く慣れ親しんだ呼び名は燕マクギリスだ。

 

お兄ちゃんは私が物心つく前にはもう側にいたため私は何ら違和感なくマクギリスを普通にお兄ちゃんと呼んで慕っていたし、何処に行くにもお兄ちゃんの後をくっついて歩いていた。

正直、今思ってもかなりのブラコンだったと思う。

 

「はい結芽、チョコレート。お母さんとお父さんには内緒だぞ?」

 

「わーい!お兄ちゃんありがと!結芽、お兄ちゃんの事、だーいすき!」

 

こんな会話だって毎日の様にしていた。

 

私にとってお兄ちゃんの存在は自慢であり憧れの対象だった。

 

そのお兄ちゃんは私の物心が付く少し前、私が4歳の時、お兄ちゃんは伍箇伝の綾小路武芸学舎が運営し今はもうある事件のせいでお取り潰しで無くなった綾小路総合武芸学舎に入学して通っていた。

 

綾小路総合武芸学舎というのは綾小路武芸学舎が刀使や刀使の関係者に様々な先進技術を取り入れる為に作った所謂分校の様な存在で分校と入っても生徒の数は本家と変わらない数の生徒が通っていた。

 

そこでお兄ちゃんは中等部二年にして生徒会長を務め、以後は卒業まで生徒会長をした。

成績ではスポーツも武芸も勉強も総合武芸学舎内では全てにおいて主席だったらしい。

 

それだけでもすごいのに、お兄ちゃんは他の生徒とは明らかに違うすごい事をしていた。

今になって良く分かるが、生徒会長として総合武芸学舎の改革なんていう難しい事をやったのだ。

お兄ちゃんは学校の風紀委員会を解体してギャラルホルンってゲームにでも出てきそうな名前の新しい組織を作った。

最初はギャラルホルンは単なる風紀委員会の役割だけをしていたらしいが、そのギャラルホルンはどんどん大きくなって、お兄ちゃんが中等部3年になる時には部活や総合武芸学舎の学科を超えた統一の組織となり、それどころか外部の大学や企業等と協力しながら女子しかなれない刀使を男も少しでも戦力になれる様にする為の今までにない画期的な研究までもする組織にした。

 

お兄ちゃんはほかにも個人的に投資なんかにも手を出していて世間一般の中学生や高校生からすれば、考えられないくらいのお金も稼いだ。

 

私は5、6歳の時にはもとからお兄ちゃんに対して思っていた好きという感情の他に憧れを抱くようになった。

当時の私からすれば、お兄ちゃんはカッコイイし頭も良くて強くてとにかく凄かった。

 

でも、母と父は兄の事を良くは思っていなかった様でお兄ちゃんが幾らすごい事をしても褒めたりはしなかった。

それどころかこれは最近知った事だが、お兄ちゃんが投資で手に入れたお金を養育費とかいって取っていたらしかった。

 

そんな時、私が7歳にして御刀に触れて認められて、しかも私に備わった剣術の才能が認められると母や父、周囲の人々は私にちやほやし始めた。

 

私は御刀にまで認められ実力もお兄ちゃんに近づけた気がして凄く嬉しかった。

しかも、お兄ちゃんは私を褒めてくれたし、時間がある時は稽古場まできて私の応援までしてくれた。

 

とても嬉しかった。

 

憧れのお兄ちゃんが自分を褒めてくれる。

ただそれだけだったが私は凄く嬉しかった。

 

でも、私はダメだった。

 

7歳の時、才能を認められて伍箇伝の綾小路武芸学舎への入学が決まり入学式を終えたばかりのことだった。

私はある病気を発病した。

 

私は病気で倒れ入学後すぐに学校にも行けなくなった。

大きな病院に入院し毎日の様に点滴を受けベットで寝ている毎日。

 

医者はその病気を今の医学では治せないと言った。

そして余命は残り少ないとも言った。

 

私の病気は不治の病だった。

 

私の症状は日々に悪化してついにはベットから起き上がれなくなった。

 

最初はちやほやしていた私の周りの人々は私が助からない事を知ると一人、また一人と離れていった。

それは母と父も……。

 

ただ一人、私の側に居てくれたのはお兄ちゃんだけだった。

 

「……お兄ちゃんはどうして結芽のお見舞いに来てくれるの?」

 

「たった一人の大切な妹だから……という理由ではダメかな?」

 

「お母さんもお父さんも来てくれないのに……」

 

「こんな事を口に出すのは恥ずかしいが、俺にとって結芽は大切な存在さ。だから、お兄ちゃんは結芽の側にいるよ」

 

お兄ちゃんは18歳でもうすぐ学校が卒業で忙しいにも関わらず、よくお見舞いに来てくれた。

他に誰も来てくれない状況で、死の影に怯え、かなり憔悴した私にはお兄ちゃんのお見舞いはとても嬉しく心強かった。

まさにお兄ちゃんの存在は私にとっての希望の光だったのだ。

 

でも……でも、その、お兄ちゃんも結局は母や父と同じだった。

 

お兄ちゃんは結芽の側にいるよと私に言ってくれたお兄ちゃんは結局は私を見捨てたのだ。

 

お兄ちゃんはある日を境に病室に来る事はなくなった。

 

私は看護婦や先生に毎日の様に聞いた「お兄ちゃんは?」と。

 

でも看護婦も先生もただ困った顔をするばかりだった。

 

寂しかった。

 

寂しくて寂しくて寂しくて……。

 

なんで、誰も結芽の側に居てくれないの?

こんなに辛いのに。

 

こんなにも苦しいのに……。

 

でも、幾ら私がそう思っても誰も私の病室には来てくれない。

来るのは看護婦や担当の先生達だけだ。

 

私は絶望感に包まれた。

日に日に悪化する自身の体調に恐怖し死の影にただひとり怯えた。

 

このまま誰にも見てもらえずに死んでしまうのか。

そう考えると嫌で嫌で仕方なかった。

 

そんな私だったが、そんな私を救ってくれたのは折神家当主、警視庁刀剣類管理局の局長、折神紫だった。

 

折神紫は病室で私に対して

 

「選ぶが良い。このまま朽ち果て誰の記憶からも消え失せるか。刹那でも光り輝きその煌きをお前を見捨てた者達に焼き付けるか」

 

そう言った。

 

紫様は私に荒魂の元となる御刀の原料の珠鋼を作り出す際に不純物として出来るノロを私に見せて、それを私の体に投与すれば私は再び刀使として戦える様になると言った。。

ノロを自分の体に入れるなんて刀使としては最低だ。でも、私はそれでも良いと思った。

 

誰かに見てもらいたかったのだ。

 

私が居たという事を誰かに知らしめたかった。

 

もっともっとすごい私を皆に焼き付けたかった。

 

私は忘れられたくなかった。

 

だから、私はノロを受け入れ再び刀使として戦えるようになった。

 

再び刀使として戦えるようになった私は折神紫の親衛隊に入る事になり折神家親衛隊の第四席となった。

第四席とは言うが実力は絶対に私が親衛隊では一番だと思っている。

 

この時が私が9歳の時の事である。

 

そして、親衛隊に入ってすぐ、私はお兄ちゃんと再会したのだ。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

親衛隊に入って3ヶ月ほどして私は紫様が警視庁刀剣類管理局の局長として刀剣類管理局の重要な下部組織の幹部と会って会談する際の紫様の警備を命じられた。

 

そこは刀剣類管理局の本部の会議室で正直言って警備というよりは付き添いに近かった。

 

紫様がソファに座り、その後ろで私と折神家親衛隊第一席の獅童真希が立って、とにかく、つまらないお役所話が終わるまで待つのがその日の仕事だった。

 

そして、会談の時間になった。

 

テーブルの上には紅茶が紫様と来客用に2つ用意され時間になると、会議室の扉が開き、折神家親衛隊第二席の此花寿々花が会議室に入って紫様に来客をお連れしたと伝える。

 

そしていよいよ、来客が会議室にお見えになった。

 

その来客は非常に奇妙な集団だった。

 

最初に入ってきたのは恐らく来客の付き添い者で所謂、私達、折神家親衛隊と同じような役職の者だった。

 

その者達は計2名。

青、金、白という派手な色のまるで何かのコスプレかの様な制服を着て頭には顔半分が隠れる白い中世ヨーロッパの甲冑の様なヘルメットをしていた。

その2人はどうやら刀使の様であり御刀を所持していた。

 

その二人は私達とソファを挟んで向かい合う形でソファの後ろに立ち、その後から再び二人の人物が歩いてやってきた。

その二人の性別は男で御刀は持ってはおらず明らかに刀使ではなく、先に入ってきた二人の刀使よりも同色は使っていても金が多くより派手な制服を来ていた。だが、ヘルメットはつけていない。

 

私は変わった服装だとは思いつつも特に興味は無かったから顔までは見ずにあとは、自分の御刀についているキーホルダーを握ったりしながら暇を潰した。

 

「本日は遠いところよく参られた。どうぞおかけてください。確か直接お会いするのは前回のパーティーでお会いした時以来でしたか」

 

紫様が来客に挨拶をしてソファに座るように言う。

つまらない時間が始まった。

私はそう思った。

 

しかし、私は来客の男が発した言葉に目を見開いた。

 

「ええ、そうですね。前回のパーティー以来です。刀剣類管理局局長、折神紫様」

 

今の声は……。

 

私はどこか聞いた事のある声だと思った。

私はゆっくりと顔を上げる。

そして私の目には、染めていない地毛の金髪の髪、翠色の綺麗な瞳が映る。

 

まるで時がゆっくりになったように感じた。

 

間違いなかった。

 

「いえいえ、こちらこそ。ギャラルホルン局長、マクギリス・ファリド様」

 

私の目の前でギャラルホルン局長と呼ばれたマクギリス・ファリド……私のお兄ちゃんは作り笑みを浮かべて紫様と握手をしていた。

 

そしてもう一つ、私は見逃さなかった。

お兄ちゃんは……約2年ぶりに会う私に対して、一回だけチラリと見たがそれ以上は全く見むきもしなかったのだ。

 

私など全く興味も無いかのように……。

 

お前なんて最初から居なかったと言わんばかりに……。

 

それから会談は2時間ほど続き会談が終わるとお兄ちゃんは、そのまま会議室を後にして行った。

私はつい、お兄ちゃんを追って廊下に飛び出した。

 

「お、おい!結芽!」

 

獅童が私を止めようとするが時既に遅しだった。

 

「お兄ちゃん!」

 

廊下に出た私はお兄ちゃんを呼び止めた。

一瞬だけお兄ちゃんはそれで振り返ったが、それだけだった。

お兄ちゃんはそのまま興味も無さそうに歩いて取り巻きの人たちと共に行ってしまった。

その際にお兄ちゃんと同じような制服を着ている黒髪の男がお兄ちゃんに向かって

 

「よろしいのですか?」

 

と聞いていたがお兄ちゃんは、そのまま片手を軽くあげて

 

「よい」

 

とだけ言っただけだった。

 

この時、私の中にかすかに残っていたお兄ちゃんに対する感情は完全に瓦解した。

 

お兄ちゃんなら、もしかしたら他のヤツラとは違って私の事をちゃんと覚えているかもしれない。

もしかしたら、お兄ちゃんは何か理由があって、病院に来なくなったのかもしれない。

もしかしたら、もしかしたら、もしかしたら……。

 

そう思ったのだ……。

 

でも、実際は違った。

 

「お兄ちゃんも結局そうだったんだね……」

 

私はお兄ちゃんの後姿に向かってそう呟いた。

この日、私の心の中で最後まで今まで引っかかっていた物が無くなった。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

会談のあと、私は折神家親衛隊の面々や紫様、本部の人間に手当たりしだいに当たった。

お兄ちゃんのギャラルホルンなる組織は一体なんなのかを知る為だ。

 

そこで幾つかの事実を私は知る事になった。

 

私が入院中の時に、既に私の知るギャラルホルンはまったく違った物になっていたのだ。

 

今、ギャラルホルンは完全に発足時に一人の学生が作った学校内の組織の枠を超えて巨大化し、もはや警視庁刀剣類管理局の下部組織としての地位を確固たる物として築いていたのだ。

話によれば学校時代のギャラルホルンはCGSモビルワーカーと言う対荒魂用の画期的な高速戦車を開発してそれが、刀剣類管理局や防衛省に認められて本格的な組織化が行われたらしいかった。

それで、お兄ちゃんは学校を卒業した後もギャラルホルンに残り今もギャラルホルンのトップとして局長の椅子に君臨しているのだ。

 

「流石はお兄ちゃんだね……」

 

この事を知った時ばかりは流石の私もつい呟いてしまった。

 

ギャラルホルンは現在、本拠地を綾小路総合武芸学舎から東京の奥多摩に移し今や巨大な工場を有する基地を持っているそうだ。しかも、副支部を綾小路総合武芸学舎に置き、その他にも千葉県に支部があるらしかった。

 

ギャラルホルンはこれらの基地に特別祭祀機動隊や自衛隊から割り振られ転属配備された部隊や伍箇伝、特に綾小路武芸学舎からの入局希望をした刀使、民間の技術者、科学者を多く抱えていて対荒魂用の新装備を幾つも開発している様だった。

紫様によるとS装備の開発にも関わっているらしかった。

ギャラルホルンが持つ組織の規模は今や警視庁館内では刀剣類管理局に次ぐ規模だという。

ちなみに、幾ら刀剣類管理局に次ぐ規模といっても規模自体は刀剣類管理局の方が遥かに凌駕している。

何せ刀剣類管理局は日本全国に支部があり伍箇伝も荒魂も御刀もギャラルホルンに譲渡された物以外は全てを管理しているのだ。

 

「でも……これではっきりしたね、お兄ちゃん……」

 

私は自分の部屋のベットの上で一人呟く。

 

「お兄ちゃんは、結芽よりもそっちの方が好きだったんだね……」

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

お兄ちゃんのギャラルホルンがすごく大きくなったという事を知るのと同時に私はある疑問を紫様に聞いた。

それは、お兄ちゃんが紫様に燕マクギリスではなくマクギリス・ファリドと呼ばれていたことだ。

なぜ燕ではなく燕家に来る前のファリド家の苗字を名乗っているのか。

私は気になった。

 

そして紫様から教えられた事実は、少し私の予想を超えるものだった。

 

お兄ちゃんは……理由は分からないが燕家を破門されたというのだ。

それでお兄ちゃんは今では燕ではなく旧姓のファリドを名乗っているらしい。

 

お兄ちゃんはもはや、私のお兄ちゃんですら無くなっていたのだ……。

 

でも、そんな事はもう私にとってはもうどうでも良かった。

私のすべき事はもう決まっているのだから。

 

とにかく強い刀使と戦いたい。

 

そして、私の存在を焼き付けたい。

 

それが私の望みだった。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

でも、私の中でお兄ちゃんへの気持ちはどんどん嫉妬という感情に変わっていった。

 

最初に再開したあの日から、私はお兄ちゃんと会う事も多くなったし、刀使として荒魂と戦う際にもギャラルホルンに所属する人たちと会う事も多くなった。

 

最初に荒魂と戦う際にギャラルホルンと鉢合わせたのは何時だったであろうか。

 

確か、その日は珍しく荒魂が東京で同時多発的に現れた時だった気がする。

 

本来なら東京での荒魂は鎌府女学院の刀使が相手をする事になっているのだがその日は荒魂の数が多く私達、折神家親衛隊にも仕事が回ってきたのだ。

 

私は東京の西葛西駅周辺に現れた大型の荒魂の討伐を紫様に命じられた。

 

私はヘリで向かったのだが、その中で連絡員がすでに現地部隊が荒魂と交戦していると私に報告してきた。

よく聞けば現地部隊には刀使はおらず事態は膠着しているという。

 

この時私は少し疑問に思った、小型の荒魂なら特別祭祀機動隊でも相手はできそうだが、今回の相手は全長30mを超える大型の荒魂だ。

 

それを何処の誰かは知らないが刀使が居ない状況で事態を膠着させるとはどういう事なのだろうかと。

 

そして、その答えは現地についてから分かる事になった。

 

私が西葛西駅の上空でヘリから飛び降りて地上で見た光景は、

 

ムカデの様な様相をした巨大な荒魂が西葛西駅に巻きつき、それを見たこともない戦車か装甲車の様な車両が囲んでいる姿だった。

 

その車両は車体の左右に取り付けられた機関銃……後から聞くと30ミリマシンガンとかいう銃で荒魂を足止めしていた。

 

そしてその周りにいたのは特別祭祀機動隊……ではなく、一度見たら忘れられないあのギャラルホルンの制服を着た者達だったのだ。

その者達は私が到着すると私に向かって敬礼をした。

 

「刀使の方ですね?お待ちしておりました!」

 

「……そうだよ。で?あんた達は?特別祭祀機動隊って訳じゃないみたいだけど」

 

私は若干イラついて私に対して敬礼をした者に言った。

正直、正体はギャラルホルンだと分かってはいたが嫌がらせの意味もあって聞いた。

 

「はっ!我々は警視庁刀剣類管理局に属するギャラルホルンの対荒魂特別機動部隊です。いや、助かりました。我々も弾薬がそこを尽きそうでして」

 

「ふーん……まっそんなのはどうでも良いけどね」

 

その後、私は、特に苦戦する事もなく一瞬で荒魂を片付け任務を終わらした。

後で聞けば荒魂と戦っていた戦車や装甲車に見えた物は噂に聞くCGSモビルワーカーだった。

そのCGSモビルワーカーの横腹にはギャラルホルンのマークが描かれていた。

 

その後も、ギャラルホルンの名前はよく聞いたし、よく会うことが多くなった。

 

特別祭祀機動隊も彼らの事は一目置いているみたいで、特にギャラルホルンのCGSモビルワーカーはあちこちで見かけた。

 

私はその様子を見て何故かイライラを積もらせていった。

 

そして、一番の決定的だったのがギャラルホルンが主催したギャラルホルン結成8周年の記念イベントだった。

 

ギャラルホルンは刀剣類管理局の下部組織である為に紫様もこうした記念イベントに来賓として参加するのだ。

正直私は別に参加なんてしなくていいじゃないかと思っていたが、大人には嫌でも人と付き合わなければならない事があるらしかった。

 

そしてギャラルホルンの結成8周年の記念イベントが行われた。

 

記念イベントは奥多摩のギャラルホルン本部施設の屋外の広場で行われた。

私はギャラルホルンの施設に入るのは初めてだった為、その施設を初めて見た時は少しだけ驚いたのを覚えている。

 

私はてっきりギャラルホルンも刀剣類管理局ひいては折神家の管轄の組織なのだからその建物も和風な感じの建物があるのかと思っていた。現に、折神家の建物は和風の建物が多いのだ。

しかしギャラルホルンの本部施設はそうではなく、未来的な形をしたビルや工場が大半を占めていた。

 

そんなギャラルホルンの本部の真ん中に位置する広場で記念イベントは演奏楽団の演奏で幕を開けた。

 

私を含めた折神家親衛隊の面々は紫様の側につき来賓やギャラルホルンの幹部席についていた。

その幹部席の前ではギャラルホルンの制服とヘルメットをつけた人達がまるで軍隊の様に隊列を組んで並んでいた。

 

紫様は司会紹介で警視庁刀剣類管理局の局長、そして折神家の代表として最初にギャラルホルンの面々の前の演台に立ち訓示を行った。

 

その後、その他の来賓たちが挨拶を行い、最後にお兄ちゃんが演台に立った。

 

お兄ちゃんの演説は5分程続いたと思う。

 

演説の最後には「刀使とギャラルホルンに栄光あれ!」という臭いセリフで演説は占められた。

そしてその言葉の後にギャラルホルンの人たちが歓声を上げた。

 

そして屋外イベントの最後はCGSモビルワーカーのパレードで幕を閉じた。

ちなみにその間、お兄ちゃんはパレードの様子を演台の上敬礼をしたまま見続けていた。

一方の私はそのお兄ちゃんの後姿を複雑な気持ちで見ていた。

 

屋外イベントが終わると今度は屋内で来賓やギャラルホルンの重役を交えたパーティーだ。

パーティーはバイキング形式で広いパーティー会場には料理が置かれたエリアと客席のエリアに分かれていた。

ちなみに、私が手に取った料理はケーキやマカロンだ。

 

料理は一流の料理人が作っているらしく美味しかった。

 

ただ、やはり、その会場でも私はお兄ちゃんの姿を何度も見かけた。

 

お兄ちゃんの周りには沢山の取り巻きの人が居て、私はそれを遠くで見ていたが、見れば見るほど、どんどん嫌な気持ちになっていった。

 

どうして、お兄ちゃんばかり……。

 

少し前までは私もあの場所に居たのに……。

 

どうして結芽の事は誰も見てくれないの……。

 

お兄ちゃんの周りには相変わらず沢山の人が居る。

一方で私は折神家親衛隊第四席なんて言われているが、お兄ちゃんを見ていると自分はまだ、お兄ちゃんと肩を並べてはいないのではないかと思ってしまう。

その気持ちが嫉妬だという事に気がついたのはパーティーが終わり帰りの車の中での事だった。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

お兄ちゃんへの嫉妬を抱いた私はお兄ちゃんに会うとイライラをつみかさねていった。

 

私を見捨てたお兄ちゃん……。

一番つらい時に私を見捨てた男マクギリス。

 

どうやったらお兄ちゃんを見返せる?どうやったら私を見捨てたお兄ちゃんを見返せる?

 

嫉妬は次第に私の理不尽な状況への怒りへと代わっていく。

 

私の命はノロの力で延命をしているとはいえ、長くは持たない。

もって数年の命だ。

 

こんな短い期間でお兄ちゃんをどうやって見返せるのだろうか?

 

私は別に他の人の記憶に私という存在を焼き付ければそれで良い。

その目的自体は頑張れば絶対に出来ると私は信じている。

ただ、その目的にお兄ちゃんへの嫉妬が加わりお兄ちゃんを見返してやりたいという気持ちが加わると話は別だ。

 

お兄ちゃんを見返す……言葉にすると簡単な話だが正直言って出来る気がしなかった。

 

あの紫様と対等に話すことができる地位にまで上り詰めたお兄ちゃんに……。

 

ただ、このままお兄ちゃんを見返せずに死ぬのは嫌だ。

私の脳裏には未だに約ほとんど2年ぶりに再会した時のお兄ちゃんの私を無視する後姿が焼きついている。

 

すると私が10歳になった時、ちょうど、そんな時に、私は警備の名目で紫様とお兄ちゃんの会談を立って聞いていた時、今の私にとってすごく良い話が舞い込んできたのだ。

 

「ガンダムフレーム……ですか?」

 

「ええ、そうです」

 

その話を最初に持ち出したのはお兄ちゃんだった。

紫様がその話を聞いてお兄ちゃんに聞きなおす。

この話をしている時、お兄ちゃんは不敵な笑みを浮かべていた。

 

「具体的にはどの様な物なのですか?」

 

「ガンダムフレーム、これはS装備の技術と我々のロボット工学の技術を融合させた新装備です」

 

お兄ちゃんはなにやらソファーテーブルに資料を出して紫様に見せる。

私も資料を紫様越しではあるが少しだけ見る。

 

そこには図面らしき物が書いてあり、その図面にはまるでロボットアニメにでも出てきそうなロボットが描かれていた。

 

「まだ開発段階です。しかしこれが完成すれば、荒魂への対処が現在の体制から大きく覆る事になるでしょう。さらにこの装備の特別な点がもう一つ、阿頼耶識システムです」

 

「阿頼耶識システム?」

 

「ええ、このシステムは搭乗者の脊髄にナノマシンを注入しピアスと呼ばれるインプラント機器を埋め込み、操縦席側の端子と接続することで、パイロットの神経と機体のシステムを直結させる……つまりは機械と人間との融合。これによって直感的かつ迅速な操作が可能となります。さらに現在、機体の情報伝達回路に珠鋼を使用する事を計画しています……これはあくまで我々の科学者の見解なのですが機体の情報伝達回路に珠鋼を使用する事で刀使がこの機体に搭乗した場合、阿頼耶識システムによって理論上は機体もろとも写シを張る事が可能になるのです」

 

「なるほど……あなたの言いたい事は大体、分かりました。マクギリス局長、つまりは我々折神家にその開発の援助をして頂きたいという訳ですね?」

 

「流石は折神家当主。その通りです。我々に折神家が管理している御刀をこのガンダムフレームの開発の為に1刀、融通させてもらいたいのです。この装備の完成には神聖な希少金属、珠鋼がどうしても必要です。珠鋼を組み込む事によってこの機体は神聖を帯び、荒魂とも戦えるようになる可能性が高いのです。この機体が完成すれば刀使の戦いのありようが確実に変化するでしょう」

 

「確かに……従来、大型の荒魂への対処法は数人の刀使による殲滅。仮にこの機体が資料通りのスペックを出す事ができたのならば大型の荒魂を相手にしても一機で倒す事が可能となるという訳ですね」

 

「その通りです」

 

お兄ちゃんは満足そうに笑みを浮かべた。

 

「ですが、この計画は危険ではありませんか?マクギリス局長」

 

「というと?」

 

「このままの計画を採用するとすれば、その阿頼耶識システムを刀使に手術をして取り付けるという事ですが、刀使はその大半が学生の少女達です。しかも御刀を持っている期間は人生の内短い期間でしょう。その少女達に手術までして機械を繋げるというのは問題が多すぎると思いますが」

 

「なるほど。確かにあなたのご指摘も一理ある。しかし、少し考えていただきたい。確かに現状では大半の刀使は若い間だけ、しかも少女の期間で刀使の役目を終えてしまう者が大半です。ですが近年、再生医療の技術が飛躍的に発展している。この状況を垣間見れば、いずれは人間の寿命の飛躍と共に刀使の適正期間も長くなる可能性が高い。現に全国の刀使に対して我々が行ったアンケート調査では、もし刀使として満足な仕事が一生できるのであればどうするか?という質問に対して43%以上の生徒が刀使を続けたいと言っている。折神家としてその点はどのようにお考えですか?」

 

「再生医療については我々、折神家でも一目を置いています。ですが再生医療が刀使としての寿命までを延ばせるかは未だに証明されていない」

 

「ですが、それも時間の問題では?」

 

「ならば、再生医療の優位性が確認できてからでも遅くは無いでしょう」

 

「残念ですがこのプロジェクトはすでに動いるのです紫様。我々ギャラルホルンの威信と刀使の正義をかけたプロジェクトとして」

 

「…………」

 

紫様がお兄ちゃんを睨みつける。

だが、お兄ちゃんは怯まず作り笑みを浮かべる。

 

「それにここだけの話、我々ギャラルホルンも一枚岩という訳ではありません。一部には強硬派という輩がおりましてね。この開発を折神家抜きでやろうなどという愚かな連中がいるのですよ。私としては、刀剣類管理局の下部組織であり刀使を補佐すべき我々がその様な愚行をすることは看過できない。そこで今回のお話をしに参ったのです。ぜひとも紫様には英断をお願いしたい。ギャラルホルンの愚行を抑えるためにも」

 

「……良いだろう。では我々も検討するとしましょう」

 

「良い答えをお待ちしておりますよ」

 

ここで紫様とお兄ちゃんの会談は一段落した。

お兄ちゃんは折神家親衛隊第三席、皐月夜見が入れた紅茶を飲み干す。

 

「それでは紫様、本日はお忙しい中、私どもの様な若輩者の話を聞いていただきありがとうございました。それでは本日はこれで。またお会いしましょう」

 

そう言うとお兄ちゃんはソファから立ち上がった。

そしてそのまま扉の方へと歩いていった。

 

「時に、マクギリス局長。一つお聞きしてもよろしいか?」

 

マクギリスが付添い人のギャラルホルンの黒髪の男と護衛の刀使と共に部屋を後にしようとしたその時、紫様がお兄ちゃんを呼び止めた。

お兄ちゃんが立ち止まる。

 

「なんでしょうか紫様」

 

「実は私の知り合いが少し面白い噂話を聞きましてね」

 

「ふっ……どのような噂話ですかな?」

 

「あなたの呼び方に関してですよ」

 

「……呼び方?」

 

その瞬間、私はお兄ちゃんの口調に違和感を感じた。

いつも余裕そうにしているお兄ちゃんが警戒感を露にしたのだ。

 

「いえ、もしあなたが局長と呼ばれるのが嫌なのでしたら私としても呼び方を改める必要があるのではないかと思いましてね」

 

紫様が薄っすらと笑みを浮かべる。

 

「……話が見えませんな」

 

「准将」

 

「…………」

 

「と呼ばれているそうではないですか。ギャラルホルンの中では。いや、確かに局長よりもマクギリス・ファリド准将の響の方が似合っている様に感じますからね。ですから、もしも、あなたが局長よりも准将の呼び名がよろしいのでしたら我々もそうしましょう」

 

「ふっ……おたわむれを。私はあくまでギャラルホルンの局長、マクギリス・ファリドです。誰が私の事を准将などというのかは分かりませんが、准将を名乗るのでしたら折神家の当主たるあなたが、適任ではありませんかな?いや、それとも大将でしょうか……まぁ冗談はさておき、私は次の予定がありますのでこれで失礼します」

 

そう言うとお兄ちゃんは会議室から去っていった。

私は正直言って詳しくお兄ちゃんと紫様が何を話していたのかは分からなかった。

でも、二人が険悪なムードというか、そこまでは行かなくても、なんだか両者警戒をしている雰囲気だとは私も感じていた。

 

ただ、同室にいた獅童真希や此花寿々花は話までが分かっていたようで紫様と同じように警戒した様子で聞いていた。

 

私はそういうお役所話とかそう言う話にはあまり興味がなかったが、いつからか紫様はお兄ちゃんと会う時に警戒を見せるようになっていた。

特に今日の雰囲気は本当にピリピリしていた気がする。

 

会談が終わった後、紫様は私達に下がるように命じたため私達は紫様の執務室から外に出た。

ようは暫くの間、暇になったのだ。

私が後ろで獅童真希と此花寿々花が前になる形で歩いている。

 

そんな獅童真希と此花寿々花は二人でなにやら話していた。

 

「ギャラルホルン……最近、手口が露骨になってきましたわね」

 

「ああ、そうだね……でも、少し前の様に僕達の影でこそこそ色々されるよりは良いんじゃないかな」

 

「確かにそうですわね。ギャラルホルン、果たして彼らは何をしようとしているのかしら……」

 

「正直言って僕にも良く分からないが、紫様には何かお考えがあるんだろう」

 

「そうですわね。ですが、最近のギャラルホルンの動きは解せませんわ……急激な軍備拡大。関係各省への圧力。それどころか御刀を要求するなんて……許せませんわ」

 

普段、私の前ではお兄ちゃんに関する話をしない二人が今日は珍しくお兄ちゃんのギャラルホルンについて話している。

私はそれを見て会談中の二人の様子を思い出して納得する。

 

二人はお兄ちゃんが紫様に対して色々言っている様子を見てあからさまにお兄ちゃんに敵意と不快感を向けていたのだ。

当然といえば当然だ。

自分達が尊敬し敬愛している紫様に対して非礼な事をお兄ちゃんはずっと言っていたのだから。

普段においても二人は、お兄ちゃんとの会談の時はただでさえ、嫌そうなのに今日はいつもよりもお兄ちゃんに対して怒りに近いものを向けている様だった。

恐らく、怒りでいつもは私の前ではしない話をしてしまっているのだろう。

なぜ、二人が私の前でその話をしないのかは何となく予想がつくが……。

 

私はこれを良い機会だと思った。

 

私は二人の前に出ると声をかける。

 

「ねぇ!真希おねーちゃん!寿々花おねーちゃん!」

 

「……!ゆ、結芽」

 

獅童真希と此花寿々花が少し驚く。

そして、今時分たちが話していた内容を思い出す。

 

「おねーちゃん達はさ、いつもお兄ちゃんがここに来たりするとさ、二人でコソコソ話してる事が多いけどさ……何の話をしてるの?結芽に内緒で……ねぇ?おねーちゃん」

 

私は二人に笑みを浮かべながらも睨みつける。

 

「はぁ……失敗しましたわね。真希さん」

 

「そうだな……結芽には余り心配を掛けたくは無かったんだが……」

 

二人は私を見てやってしまったと表情を落とす。

 

「……どういう事なのか、もちろん教えてくれるよね」

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

獅童真希と此花寿々花の二人が私に語った事は中々にスケールの大きい事だった。

聞けばお兄ちゃんのギャラルホルンはここ最近、不穏な動きを見せているというのだ。

私がここに来たばかりの時はまだ、疑惑はあるものの、警戒するほどではないという段階だったらしいが、今は警戒を厳重にするべき段階にまでなっているのだという。

 

二人の話によればギャラルホルンは正式に公的機関として昇格されてから急激な組織の拡大と組織が持っている武装の数を刀使の支援に使う為だとして急激に増やしているのだという。

すでにギャラルホルンは錬度は不明だけど刀使を37名が在籍していて、さらにそれに加えて対荒魂用のCGSモビルワーカーを少なくとも300両以上の数で保有しているようだ。

一警察組織が保有している数とすれば明らかに過剰戦力であるが、名目上はギャラルホルンのCGSモビルワーカーの保有数は50両で、その他の車両は警察や自衛隊への引き渡し予定の装備なのだそうだ。

 

しかし、本来ならば完成しだい注文を出した警察や自衛隊に引渡しをするのが普通なのだが、ギャラルホルンはどうやら警察や自衛隊の上層部に秘密裏に圧力をかけているらしく、引渡しを延期するという形で、過剰なその戦力を自分達で抱えこんでいるのだという。

しかも、最近では自分達の施設で大規模な演習までもしているそうだ。

 

そして、ここに来て、今日の会談だ。

獅童真希はあの会談は脅しも同然だと怒りを露にしていた。

それは、此花寿々花も同じ。

 

私はこの二人の話を聞いて確かにこの話は怪しくて危なそうな匂いがぷんぷんすると思った。

 

ただ、私はこの危なそうな匂いを

 

「へぇ~そうなんだー」

 

内心、少し楽しんでいた。

 

何か面白い事が起こりそう……。

 

私はそう考えていた。

 

それと、所変わって、ちなみに獅童真希と此花寿々花の二人が私にこの話を内緒にしていたのは、私のお兄ちゃんがギャラルホルンのトップだから遠慮していたのだという。

正直、こういう事をされるのは迷惑なのだが、それは言わなかった。

 

そして、この話をした日から1週間後の事。

 

私は紫様の執務室でいつもの様に紫様に切りかかっていた。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

コンコンと私が紫様の執務室の扉をノックする。

すると、中から「入れ」と返事がした。

 

私は満面の笑みで扉を開けて中に入る。

紫様は座って資料を見て仕事をしている。

 

「ゆっかりっさまー」

 

リズムをつけてそう言うと私は部屋の中へと入り扉を閉める。

そして紫様の方へとスキップして歩み寄った。

 

「あーそーぼっ!」

 

言葉の最後のタイミングでスキップをしていた足をバネに紫様めがけて足を踏み出し瞬時に御刀を抜いて紫様の顔へと向けて刺し込んだ。

しかし、私の御刀は紫様に軽くかわされる。

私はすかさずテーブルの上で姿勢を変えて今度は御刀を紫様の豊満な胸へと向けて突き出した。

だが、それもかわされる。

 

そして、紫様は写シより御刀を一本取り出して私に切りかかった。

私はそれを御刀でガードするがその太刀の勢いに負け壁に叩きつけらた。

 

「もー!!また勝てなかったぁ!!」

 

私は少しばかり悔しさを出す。

 

すると、紫様はそんな私を見て呆れたように言った。

 

「そんなに退屈か?」

 

私は立ち上がると御刀を鞘へと戻し紫様の元へと頬を膨らませて歩み寄る。

 

「もぅ!だって最近なんにも面白い事ないんだもん!それどころかお兄ちゃんも、来るし!やになっちゃう!」

 

「ふっ……」

 

私がここ最近の不満を紫様に言うと紫様は一瞬だが、かすかに笑みを浮かべた。

 

「結芽、今は待て。直に面白い遊び場を用意する」

 

「本当!?」

 

私は紫様の言葉に食いつく。

 

「一週間前にお前の兄が来たのは覚えているな?お前も兄には随分、ストレスを抱えているようだが」

 

「むぅ……もったえつけないで教えてよ紫様!」

 

「まぁ落ち着け。実は例のギャラルホルンの新装備、ガンダムフレームとかいったか、実はこの度、これの開発を我々、折神家でも支援をする事になった」

 

「へぇーあれ、結局、協力する事にしたんだ」

 

「ああ。だが、一つ条件をつけてな」

 

紫様は薄っすらと笑みを浮かべる。

 

「条件?」

 

「我々、折神家がギャラルホルンに開発の援助として適合者の居ない御刀を提供する代わりに、ギャラルホルンは新装備の開発後、その試験運転として我々、折神家の刀使と試合を行う事になった。刀使にも勝てないようでは装備として役に立たないからな」

 

「それって……」

 

私の胸がトンと高鳴る。

 

「そこでだ。私はその試合を結芽、お前に出てもらおうと考えている」

 

「え!?ほんとに!?その試合、結芽がやって良いの?」

 

それを聞いて私は一気に気分が高揚した。

 

お兄ちゃんは言っていた。

「残念ですがこのプロジェクトはすでに動いるのです紫様。我々ギャラルホルンの威信と刀使の正義をかけたプロジェクトとして」と。

つまりは、このガンダムフレームとか言うのは、お兄ちゃんの意思だ。

これは、一週間前に獅童真希と此花寿々花から聞いた事だが、お兄ちゃんはギャラルホルンは一枚岩ではないと言っていたが、その話は果たして本当なのか疑問だという事だ。

 

ギャラルホルンはお兄ちゃんを中心に発展してきた組織だ。

しかも折神家の情報筋によると、お兄ちゃんはギャラルホルンの一般職員の中でもかなり慕われているとの話だ。

そのお兄ちゃんの組織が一枚岩ではないというのは疑わしい話だった。

 

これがお兄ちゃんの意思ならば、そのガンダムフレームとかいう物を私がこれを機会に壊せば、お兄ちゃんを見返すことが出来るのではないか。

 

私はそう考えた。

 

「ああ、問題ない。それに三ヵ月後後はお前の誕生日だろ?丁度良い誕生日プレゼントだ」

 

「でも、紫様。本当に私がやっちゃっても良いのー?試験じゃなくて壊しちゃうかもしれないよー?」

 

「ふっ、思う存分暴れるが良い」

 

「やったー!それで、それで?その試合っていつ?ゆっかりっさまー!」

 

「今日より三ヵ月後。奥多摩のギャラルホルンの本部によってとり行われる」

 

「そっかーそれじゃあ、それまで、結芽、良い子で待ってるね。紫様!」

 

「ああ、楽しみにしていろ。試合のことは折り入って知らせるそれまでは待っていろ」

 

「うん!分かった!それじゃあ、良い話も聞いたから結芽は帰るねー」

 

「うむ」

 

私は気分が高揚した為、久しぶりに良い気分でスキップをしながら、執務室の出口の方へと戻った。

だが、私はふと思い、扉の前で立ち止まる。

 

「ねぇ紫様」

 

「ん?まだなにか用か?」

 

「あのさー、無かったら別に良いんだけどさー」

 

私は紫様に振り返りながらに笑みを浮かべる。

 

「そのさーお兄ちゃんが作った新装備?よく分かんないけど、そのロボットみたいなヤツに名前があったら教えて欲しいなーって」

 

「あれの名前か?確か……」

 

紫様は机の上の資料を見る。

 

「バエルだ」

 

「バエル?」

 

「そうだ。ガンダム・バエル……レメゲトンの第一書ゴエティアに記載された所謂、ソロモン72柱の悪魔の一つで66の軍団を率いる序列1位の悪魔の名前だ。その名を持つ相手がお前の今回の相手というわけだ」

 

「へぇー強そうな名前だね……でも、そんなの関係ないや。そんなの私が倒しちゃうから」

 

そう言うと私は笑みを浮かべたまま紫様の執務室から出て行った。

 

その時の私の頭の中は三ヵ月後後の試合の事でいっぱいでワクワクした感情と、どうやってそのバエルとか言うのを、倒して、お兄ちゃんを見返そうかとか、そんな事をばかりを考えていた。

 

ただでさえ時間のない私に舞い込んできた数少ないチャンスだ。

 

いや、数少ないチャンスどころか、もしかしたら、もうこれが私に残された兄を見返す為の最後のチャンスなのかもしれない。

 

私はなんとしてもこのチャンスを上手く使ってやると、心の中で誓ったのだった。

 

 

 

 

 

しかし、三ヵ月後、この私の誓いが果たされるべきチャンスはやってこなかったのだ……。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

三ヵ月後。

 

私の誕生日の日。

お兄ちゃんのバエルとの試合の当日の夜8時ごろ。

 

その日、私は昼間に行われたバエルとの試合の勝利から気分が高揚していた……という訳はなく。

 

鎌倉に侵攻してきたテロリストとの戦闘を行っていた。

 

「うぅ!!今日はお兄ちゃんとの試合の日だったのに!!もう邪魔っ!!」

 

私は文句を言いながら迅移で加速する。

 

「刀使だ!総員一斉射撃!!」

 

「弾幕をはれ!!」

 

私に対して彼らは自動小銃を使って銃撃をするが私はそれを一瞬にしてかわすと敵の懐に飛び込み敵の兵士が目にも止まらない速さで13名の敵兵を全員切る。

 

「なっ……」

 

「グハッ……」

 

バタバタと敵兵はその場に倒れる。

私は御刀についた血を一回勢いよく振って落とす。

 

それから私は倒した敵の死体を見た。

黒い戦闘用の防弾装備に全身を包んだ者達が自動小銃を持って倒れている。

私は横向きに倒れているその死体を足で上向きに倒すとその防弾ジョッキに描かれたマークを見つめた。

 

そこには見覚えのあるマークが描かれていた。

 

私は周囲を見る。

 

私が今居る通りには、今は敵はいない。

しかし、この当りは敵だらけだ。

 

あちこちで銃声の音が断続的に鳴り響いている。

 

「はぁ……こんなザコ共を相手にしてる場合じゃないのに!」

 

私は敵の死体の頭を踏みつける。

すると、その時、後ろの方から特別祭祀機動隊の部隊と鎌府女学院の刀使部隊がやってきた。

 

「燕様!」

 

「こ、これは……まさかお一人で?」

 

駆けつけてきた部隊の各員は私の周りに転がる死体を見て若干表情を青ざめる。

 

「あたりまえじゃん。こんなザコじゃ私の相手になんかなれないよ……」

 

私がイライラから強い口調で言う。

すると、ちょうど、その時。

 

上空で多数の爆発の閃光が光った。

 

「…………」

 

私は空を見上げる。

私以外にもその場の全員が空を見上げる。

ただ、私以外は皆、怖がっていた。

 

上空での複数の爆発。

そしてその爆発を次々と引き起こしている〝原因〟が夜空に青い軌道を描いてものすごい早さで空を駆けている。

 

爆発を起こしているのは敵に向かって発射された陸上自衛隊や海上自衛隊のミサイルだ。

しかし、それらのミサイルは、目標の敵に辿りついて爆発しているわけではない。

青い軌道を描いている〝それ〟に次々と撃墜されているのだ。

 

私はその光景を今までにない程、ワクワクした気分で見ていた。

いや、睨んでいた。

 

この気分は三ヵ月後前に試合が決まった時よりも遥かに強い。

 

そして私は笑みを浮かべ呟く。

 

「……待っててね。絶対に結芽が倒してあげるから」

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

全ての始まりは二日前の夜の事だった。

 

神奈川県の鎌倉にある警察庁特別刀剣類管理局の本部。

ここには折神家の本家や伍箇伝の一員である鎌府女学院が隣接している。

つまりは私が普段から居て一年の長い期間を過ごしている場所だ。

 

その警察庁特別刀剣類管理局の本部では、いつにもない程、あわただしい空気に包まれていた。

 

時にして夜九時頃の話である。

 

その時の本部の空気はたった二文字で表す事ができる。

 

 

 

混乱

 

 

 

それが、その時の本部全体、そして司令室での状況だった。

私はその時は非番で夜に突然、本部から連絡が入り呼び出され本部にやって来ていた。

紫様や折神家親衛隊3人は別件で長野の方に行っていた為、4人が帰ってくるまでの間、司令室に居て欲しいとの事だった。

 

司令室勤務の職員達の間で怒号や混乱の声が飛び交う。

 

私は司令室の隅でその様子をポッキーを食べながら見つめていた。

 

「警察庁本部との連絡は!?」

 

「ダメです!!何処も混乱していて……」

 

「他にも連絡をしろ!防衛省!経産省!文部科学省!何処でも良い!!なんとしても向こうの状況を把握するんだ!!」

 

「鎌府女学院から緊急の問い合わせが!」

 

「何だこの忙しい時に!」

 

「警察庁の会議に出席していた高津学長とも連絡が取れないようです!」

 

「なに!?あのヒス学長も東京にいたのか!?」

 

「どうやらその様です!」

 

「くそ……一体、何が起きているんだっ!!」

 

そんなやり取りを司令室の隅で私は聞いていたわけだが、正直言って

 

「何これ?」

 

私は首を傾げていた。

私も他の職員と同じく意味が分からなかったのだ。

何せ私が来た時にはすでに司令室はこんな状況で、大混乱だったのだ。

司令室の職員をつかまえて聴いてみたりもしたがその答えはあやふやな物で使えなかった。

 

ただ、一つ分かったのは何か大事が起きているという事であった。

 

司令室の大型モニターにはまるでハリウッド映画でも見ているような気分になる映像が沢山映っている。

 

モニターに映っていた画面は東京都内の防犯カメラの映像で、本来は荒魂を見つける際などに使用されるのだが、その映像には炎上するパトカーや乗用車、たまに映る街中を爆走するCGSモビルワーカーらしき車列、銃撃戦の様子等が映っていた。

 

私がその映像を見てると、その時、司令室の扉が勢いよく放たれた。

 

「うろたえるな!!」

 

「親衛隊の……それに紫様も……」

 

職員の誰かがそう呟いた。

 

私は開けられた扉の方を見る。

勢いよく扉を開けて司令室に入ってきたのは紫様を先頭に続いて獅童真希、此花寿々花、折神家親衛隊の第三席の皐月夜見だった。

 

先の怒声は普段は大声など出さない紫様だった。

 

「まずは状況の報告をしろ!何が起きているのか状況を精査する!」

 

「は、はい!」

 

紫様の叱責に職員の一人がタブレット端末を持って紫様の近くにかけよる。

 

「ほ、報告します!今から3時間ほど前、埼玉県、千葉県、東京23区内において、同時多発的に大規模な所属不明の部隊による攻撃が発生しました!すでに霞ヶ関とは完全に通信が途絶!新宿区では都内の特別祭祀機動隊と所属不明部隊との間で激しい銃撃戦となっており、そのほかの地域でも戦闘が行われています!」

 

「霞ヶ関との連絡が取れないのか?」

 

獅童真希が職員に聞く。

 

「は、はい。霞ヶ関との連絡は一時間前に警察庁からの通信を最後に完全に途切れています……」

 

「ほかの警察署は?」

 

「八王子市の警察署はどうやら被害を免れているようです。しかし、東京23区内の警察署とは連絡が取れません。また、通信回線も次々と断線されており警察庁の防犯カメラのネットワーク網が寸断されつつあります」

 

「霞ヶ関との連絡が取れないのはまずいな……」

 

「ええ、そうですわね……確か、国会議事堂では臨時国会が開催中でしたはずですし……所属不明の部隊とやらが気になりますわ」

 

「そうだね……君、すぐに所属不明の部隊が映っている防犯カメラの映像を映してくれ。これだけ沢山あるんだ。ひとつくらいはあるだろう?」

 

「了解!」

 

そう言うと職員の男はモニターに画像を表示した。

 

だが、獅童真希はその画像を見て目を細めた。

 

「これが……所属不明の部隊か?」

 

「は、はい。そうです。服装だけを見ますと……いえ、確認を取ろうにも何処も混乱していて確認が出来ません」

 

「ですが、これは……黒ではありませんの?」

 

此花寿々花も獅童真希と同じように目を細る。

 

その先にはモニターの画像があった。

 

「い、いえ、それはまだ……まだ、確定した情報ではないので……?紫様?」

 

紫様が数歩前に歩みだしモニターの画像を見つめる。

そして睨み呟いた。

 

「……ついに本性を表したか」

 

モニターには防犯カメラに映ったCGSモビルワーカーの静止画、その拡大写真が映っていた。

その車体の周りには一度見たら忘れられない派手で特徴的な制服を着て自動小銃を持った者達の姿。

 

そして、その車体の側面には紛うことなきギャルの角笛のマークがしっかりと映りこんでいた。

 

「ギャラルホルン」

 

紫様は睨んだままそう言った。

そして、紫様と同じくモニターを見ていた獅童真希も根幹とも言うべき事を呟く。

 

 

 

「反乱だ……」

 

 

 

と。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

その事件は私の10歳の誕生日の二日前、つまり試合の二日前に起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『聞け!ギャラルホルンの諸君!今、三百年の眠りからマクギリス・ファリドのもとにバエルは蘇った!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは奥多摩のギャラルホルン本部にて事件が始まった3月1日にマクギリス・ファリドがパワードスーツの様な物に乗ってギャラルホルンの局員達に向けて夕日をバックに一斉生中継された映像にて最初に発した一言である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〝マクギリス・ファリド事件〟

 

今ではみんな、あの事件の事をそう呼んでいる。

 

日本の歴史上、戦後初にして規模から見れば近代日本では歴史上初めて発生した大規模クーデター事件。

 

事件の首謀者はギャラルホルン局長マクギリス・ファリド。

 

そしてその事件において事件を首謀したのはギャラルホルンだ。

ギャラルホルン奥多摩本部と千葉支部の二つの支部が反乱の中心組織で、総勢約5300名が反乱軍を形成した。

 

二日前、ギャラルホルンは何の前触れも無く突如として埼玉県、千葉県、東京23区にて荒魂対策の名目で配備していた部隊で攻撃を開始し反乱を開始。

 

最初に標的となったのは埼玉県内や千葉県内にあった航空自衛隊の基地で、数両のギャラルホルンのCGSモビルワーカーが基地内にフェンスを破壊して突入し30mmマシンガンを連射。

その戦闘能力を満遍なく示して基地を占拠した。

 

その次に事があったのは東京23区。

 

ギャラルホルンは貨物列車や輸送トラックなどにCGSモビルワーカーを隠していたようでそれらの戦力を使って電撃的に侵攻を開始した。

 

テレビ局を占拠もしくは破壊し、さらには霞ヶ関の関係各省庁を強襲。

 

突然の出来事に関係各省は対応しきれずに霞ヶ関はほんの僅かな時間で陥落した。

 

ここまでの出来事は全て3時間以内での出来事である。

 

そして紫様が折神家親衛隊を引き連れて出張先の長野からヘリで緊急で本部に帰還し本部の司令室に到着した時、

その時は既に事件開始から3時間もの時間がたった後の事だった。

 

事件発生から6時間後。

 

全てが動き出したのは事件発生から6時間もの時間がたった後の事だ。

 

東京が陥落した事によって全ての関係各省が事実上の機能不全に陥った後、警察本部を失った全国の警察は臨時的な処置として紫様の名の下に折神家の一時的な傘下に入り、自衛隊は新たに臨時作戦本部を静岡県の駒門駐屯地に設置した。

 

事件発生から8時間後。

 

警察と自衛隊は協力体制をくんで部隊を東京23区を包囲するように配置した。

ちなみに、この間、ギャラルホルンからの攻撃は無かった。

 

その後も、ギャラルホルンからの動きが無かった為、自衛隊と紫様は刀剣類管理局の本部で対策会議を開いた。

 

この対策会議では時にはギャラルホルンの反乱を許した警察への自衛隊側からの怒号も飛んだりもした。

 

私はその間、常に紫様の後ろに他の折神家親衛隊の3人と共に控えてていたが、もちろん、そんな会議に私は興味はない為、私は御刀のキーホルダーを握ったりして気を紛らわしていた。

 

会議の内容は私が理解できた範囲でこうだ。

 

自衛隊の強行派による先制攻撃案と警察の相手の出方を待ってから対応を決めるという案の二つの話し合いだ。

 

自衛隊が強硬姿勢だった事も災いして会議の時間は伸びに伸びて結論が出たのは1時間半ほどたった後のことだった。

 

会議での結論は、警察が提案した、相手の出方を見てから行動するというものになった。

 

そんなこんだで、私達が事件への対応を後手にまわる中、事態が本格的に動き始めたのは3月2日の午前6時の事だった。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

3月2日の朝の6時。

 

『全国民に告げる!私は警察庁特別刀剣管理局ギャラルホルンのライザ・エンザである!私は我々、ギャラルホルンのリーダーであるマクギリス・ファリド准将に代わって恐れながら、この私が今ここで、全国民に宣言する!』

 

ライザ・エンザを名乗るその青年の演説はギャラルホルンの制服を着てテレビに中継されていた。

撮影場所は国会議事堂の衆議院議場の様で演台の上から力強く演説をしている。

 

『我々、ギャラルホルンは、今日この日をもって霞ヶ関を含めた東京23区の全域を完全に掌握した!』

 

ライザ・エンザがそう言うと映像は何処かの道路の路上に切り替わる。

映像には警察官達が列を作ってギャラルホルンの黒い戦闘服を身にまとった隊員達に連行されている様子や、銃を突きつけられ拘束される政府の職員達。

そして映像が国会に戻ると議場の議員席にて複数の戦闘員に銃を突きつけられて座る国会議員たちの姿になった。

 

『我々は、我々ギャラルホルンはついに立ち上がったのだ!革命の時が来たのだ!新しい風を起こし、この国に蔓延した腐敗と災いを吹き飛ばす!我々が一人一人の力でこの欺瞞に満ちた世界を変革する時が来たのだ!』

 

『もはや東京には我々と戦う事ができる戦力は残されていない!』

 

破壊された航空自衛隊の基地の様子が映り次に国会議事堂前に配備されたCGSモビルワーカーが映る。

そして日本の国旗が地に落とされ、変わりにギャラルホルンの青い旗が掲げられた。

 

『我々の目的はただ一つである!この腐りきったこの国を我らギャラルホルンの名の下に再編成し!平和と秩序と刀使の正義の名の下に誰にも等しく権利を与えられる国へと作り変える!この国を完全に新しい物へと生まれ変わらせるのだ!』

 

『しかし、全国民よ!我々を恐れないで欲しい。我々ギャラルホルンは全ての国民の味方である!真なる敵は、この国を腐敗させていく愚かな政治家共である!もはや他者の揚げ足取りと化し自己の権利を乱用しこの国を停滞させている政治家や官僚共なのである!我々、ギャラルホルンは独自に行った内偵によって到底許す事が出来ない幾多もの不正や汚職を明らかにした。今日、我々はそれを白日の下へとさらす!』

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

朝6時に行われたこのテレビ放送は夜が明けたばかりの日本全国を大混乱へと叩き込んだ。

ただでさえ、一般の国民は昨日から殆どのテレビ番組が映らなくなった事に困惑し何が起きているのかも分かっていなかったのに、朝起きて、テレビを点けてみたら革命だ。

 

一般国民は慌てふためき、近隣の警察署や役場に押しかけた。

 

この混乱で警察や自衛隊も多かれ少なかれ人員を割く事になってしまった。

 

今思えばわざわざ事件発生から朝まで待って犯行声明を出して来たのは、東京を包囲する人員を少しでも少なくしようというお兄ちゃんの策略だったのではないかと思う。

 

だが、この放送の問題は別の所にも届いていた。

 

このテレビ放送では国会議員や役人の不正や汚職の実態を放送した。

中には警察関係者や自衛隊の物までもが僅かに含まれており、これを見た自衛隊の強行派は焦った。

これ以上、ヤツラにテレビを使わせて自分達の情報を流させるわけには行かないと考えたのだ。

 

そう考えた自衛隊の強行派の行動は早かった。

 

 

 

 

 

「なんだと!?」

 

刀剣類管理局の司令室に獅童真希の驚いた声が響いた。

 

「それは本当ですの!?」

 

獅童真希に続くように此花寿々花も声を上げる。

その声が向けられているのは先ほど司令室に駆け込んできた男性職員だ。

 

「は、はい。間違いありません!陸上自衛隊は先ほど輸送ヘリ部隊を使った大規模なヘリボーンを実行すると一方的に通知してきました!」

 

「なんてことですの……紫様があれ程、下手な行動は慎むようにと言っておられましたのに……」

 

「恐らくあの放送が彼らにとって、かなりまずい内容だったんだろう……」

 

「とにかく紫様に報告ですわね……紫様は?」

 

「紫様は現在、お勤め中です」

 

皐月夜見が此花寿々花の質問に答える。

 

「そうですか……でしたら夜見さん、お勤め中の所、申し訳ありませんが紫様を呼んで着てくださいますか?」

 

「分かりました」

 

そう言うと皐月夜見は司令室を出て行った。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

事件後に発表された、このヘリボーン作戦に参加し生還した自衛隊員の体験談をまとめた本には、この様な内容の出来事か書かれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、作戦決行が言い渡されたその日、3月2日の午前6時半。

その日の関東の天気はこれから挑む始めての実戦への不安を表すように、空はどんよりと暗く厚い雲で曇っていた。

ただ、天気予報では午後には晴れるそうだった。

 

そんな天気の中、東京都八王子市のとある小学校の校庭の仮設ヘリポートでは陸上自衛隊・東部方面航空隊、第4対戦車ヘリコプター隊に所属する彼、大山照幸は校庭に停まっている自分の愛機、AH‐1Sコブラ対戦車ヘリコプターの横で空の雲を見つめていた。

 

彼、大山照幸はほんの1年半前にAH‐1Sコブラ対戦車ヘリコプターのパイロットになったばかりの36歳の男である。

 

彼はどんよりと曇った空をまるで自分の今の心のようだと思って見つめていた。

 

するとそんな彼の元に自衛官が近寄ってくる。

 

「パイロットの大山照幸3佐ですね?」

 

「あっはい、そうです。自分が大山です」

 

「先ほど、作戦本部より予定通り作戦は決行するとのお達しがありました!作戦決行は午前7時丁度です!」

 

連絡してきたその隊員によって彼は作戦が決行される事を知った。

まぁ、テレビであんな事を大々的に暴露されてはいつ自分達の下へも被害が及ぶか分からないから、さっさと決着をつけてしまおうという上の判断なのだろうと決行の知らせを聞いた瞬間、彼はすぐにそう思った。

恐らく彼以外にも少なからずの自衛隊員が、そう思っているだろう。

 

彼は知らせを受けてすぐにAH‐1Sコブラ対戦車ヘリコプターのコックピットに乗り込んだ。

出撃の指示があるまでコックピットで待つのだ。

 

現在、彼の乗るAH‐1Sコブラ対戦車ヘリコプターにはハイドラ70ロケット弾を装填したM261発射ポッドを二基、ガトリング砲1基、それに加えて対空ミサイルを計8発、搭載している。

普通、AH‐1Sコブラ対戦車ヘリコプターには対空攻撃能力は無いのだが、日本では空を飛ぶ荒魂に対抗する為に倒せないにしても荒魂を牽制する為にAH‐1Sコブラ対戦車ヘリコプターを改良して対空ミサイルを搭載できるようにしているのだ。

 

そして、彼の乗る機体はすでにいつでも飛びたてる状態になっていた。

あとは出撃の指示があり次第、彼が操縦桿を引けば彼のAH‐1Sコブラ対戦車ヘリコプターは飛び立つことが出来るのだ。

 

すると、コックピットの中で一足先に機体に乗り込んでいた攻撃手の男、伊藤純一が操縦席に座った彼に話しかけた。

 

「お、どうだった?」

 

「作戦は決行だとさ。時間は午前7時丁度だ」

 

「マジか」

 

「ああ、マジだ。まぁ、あんなもんがテレビで流れたらそりゃこうなるわな」

 

「お偉いさんも相当焦ってると見えるなぁ。でも、どっちにしろこれが俺達の初めての実戦ってわけか……」

 

「まぁな……はぁ」

 

彼は操縦席で計器を操作しながらため息をつく。

 

「どうした?」

 

伊藤純一は首を傾げた。

 

「いや……この作戦、成功するのかなと面ってな」

 

「ん?そりゃ成功するだろ」

 

「なんでそう言えるんだ?」

 

「だってそりゃあーよ、こちとら今回の事件の為にかなりのヘリを用意してんだぜ?攻撃ヘリだけでも、四十機はいるし輸送ヘリも同じくらいいるじゃんか。しかも空だけじゃなくて陸からも同時に23区に突入だし東京湾には海自がイージス艦までもってくんだぜ?一方の相手のなんだっけ、えーっとギャ……ギャラ……」

 

「ギャラルホルン」

 

「そう!一方そのギャラルホルンとか言う二二六事件の真似事みたいな事やってる連中の戦力はCGSモビルワーカーとか言う装甲車か対空戦車に毛が生えた程度の装備をいくらか持ってるだけだろ?俺達、対戦車ヘリ部隊を相手じゃ勝ち目無いって。ま、気を楽にしていこうぜ?」

 

「はぁ……まったくお前はいつも能天気だよな」

 

「へっそれが俺のとりえだからな!」

 

「ふっまぁ違いないか……っと、準備、準備と」

 

彼は機内の時計を見る。

時刻は6時48分。

 

出撃まであと12分だ。

 

 

 

 

 

午前7時9分。

 

『こちら、中央集団。現在、部隊は府中市上空を飛行中。周囲に異常無し』

 

『こちら、左翼集団。現在、部隊は中央集団の左翼側の位置にて府中市上空を飛行中。同じく周囲に異常なし』

 

『こちら、右翼集団。現在、部隊は中央集団の右翼側の位置にて府中止上空を飛行中。同じく周囲に異常なし』

 

彼と相棒の伊藤純一が乗る愛機、AH‐1Sコブラのコックピットには無線機を通じて隊長機から本部へと向けた通信の内容が流れていた。

 

ヘリのローター音が激しく鳴り響き通信からの声が聞こえる中、彼は操縦桿をしっかりと握り締め、窓の外やレーダーの反応に細心の注意を向けながらAH‐1Sコブラを操縦していた。

 

今から僅か9分程前の午前7時。

彼を含めた自衛隊のヘリコプター部隊は予定通りに強襲作戦を実行する為に出撃した。

各飛行場や臨時へリポートから輸送ヘリや攻撃ヘリがほぼ同時に出撃し八王子上空で編隊を組み、今、これらの大部隊は市街地上空では恐らく初めてではないかと思うほどの大規模で東京の上空を革命謳うギャラルホルンが待ち受ける東京23区へと向けて前進していた。

 

今回のヘリコプター部隊の概要は極めてシンプルだ。

 

前衛に戦闘ヘリの部隊がつきその後方に輸送ヘリ部隊つくという内容だ。

彼の攻撃ヘリは中央の集団の左側担当だ。

そして地上からは戦車や装甲車を含めた自衛隊の部隊がヘリコプター部隊の後に続くように前進する。

 

その兵力はもはやギャラルホルンの総兵力を遥かに超える。

 

勝利は間違いない。

 

誰もがそう考えていた。

 

しかし……。

 

『ん?あれはなんだ?』

 

誰かが無線でそう呟いた。

 

『どうした6番機。何か見えたか?』

 

『は、はい……当機の前方に何か光るものが……』

 

その呟きは彼と同じ中央集団に属する攻撃ヘリからの通信だった。

その呟きを放った6番機は中央集団の中央のヘリだ。

 

「光るものだって……?」

 

彼は自分と同じ中央集団からの通信内容に機体の前方を凝視した。

視界にはただひたすら眼下の街と灰色の厚い曇り空がただ広がっている。

 

「レーダーにはなんに反応も……っ!?」

 

すると丁度、その時だった。

 

彼は機体前方部にそれを見つけたのだ。

ついさっきまでは明らかに無かったはずのそれを。

 

「なんだあれは……」

 

彼はそれがなんだか分からず呟いた。

遠くの方、前方の上空で何かが光って見えた。

それは反射光のようで何かが光っている。

 

『部隊前方に正体不明の飛行物体!!全機警戒せよ!!』

 

その存在に気がついた部隊の隊長が全部隊に警戒を命じる。

彼はもう一度レーダーを見る。

すると今度はさっきまで何も映っていなかったレーダーに反応が弱いものの確実に何かの反応があった。

そして、その反応は空中で静止しているようで止まっている。

 

「おいおい!敵さんは航空機を持ってなかったんじゃないのかよ?」

 

伊藤純一が疑問の声を上げる。

 

「わからん……もしかしたら、航空自衛隊の基地を襲ったときにヘリか何かを奪ったのかも……」

 

「ヘリ?だがよ、ヘリにしてはレーダーの反応が小さすぎねぇか?」

 

「とにかく!今は警戒だ!いつでも撃てるようにしておけ!」

 

「……あいよ」

 

伊藤純一は対空ミサイルをいつでも発射できるようにしておく。

 

すると、その時だった。

 

『正体不明の飛行物体!当部隊へと向けて速度を上げて突っ込んできます!』

 

正体不明の飛行物体は中央集団のど真ん中へと向かって急激に速度を上げて突っ込んできた。

レーダーを見れば正体不明の飛行物体を示す点がどんどん中央集団へと接近しているのが嫌でも分かった。

彼はこの尋常ではない速度を見てミサイルかもしれないと思った。

 

『全攻撃ヘリに通達!対空ミサイルを有している機体は正体不明の飛行物体を撃墜せよ!』

 

隊長機より指示が入る。

 

「よし……行くぞ伊藤」

 

「おうよ」

 

そう言うと彼は操縦桿を操作して攻撃ヘリを中央集団の前列へと移動させた。

他の攻撃ヘリも自分のポジションへとつく。

今頃、伊藤純一は、対空ミサイルの照準を正体不明の飛行物体へと合わせている事だろう。

そして、命令は下った。

 

『全機、攻撃開始!撃て!!』

 

「対空ミサイル発射!!」

 

隊長機からの指示が聞こえた瞬間、伊藤純一は対空ミサイルの発射スイッチを押した。

攻撃ヘリの対空ミサイルの筒からミサイルが二発放たれる。

 

それは周りの自分達と同じ対空ミサイルを有した攻撃ヘリも同じで一斉に攻撃した。

 

発射された数発の対空ミサイルが音速で目標へと接近していく。

そしてレーダーにもその様子は捉えられた。

あと少しで命中する。

あと少し……あと少し……。

 

しかし、結果は予想は遥かに超えるものだった。

 

「な、なんだあれは!?」

 

正体不明の飛行物体は数発にも及ぶ対空ミサイルを異常な俊敏な動きを見せてミサイルを着弾寸前で全弾回避した。

遠くなのに回避したと分かったのはレダーのミサイルが目標を通り過ぎた事と、遠くに見えるその物体が青い光の尾を発しながら縦横無尽に空を駆けたからだ。

そしてその物体はそのまま異常な速度で中央集団へと向かってきた。

 

この出来事に中央集団はパニックになった。

 

『な、なんなんだあの物体は!?』

 

『ミサイルじゃないぞ!?』

 

『まさか戦闘機!?』

 

レーダーの点が中央集団に見る見るうちに近づいていく。

それは視界の方も同じでさっきまでは光っている点にしか見えなかった物が段々その正体を現してきていた。

 

「ロボット……?」

 

攻撃ヘリの望遠カメラがついにその姿を捕らえた。

望遠カメラの映像には白いロボットが映しだされていた。

まるで子供の時に見たロボットアニメに登場するようなロボットを小さくしたようなロボットだった。

彼がロボットの姿に唖然としているとまた通信が入った。

 

『ぜ、全機!機銃、対空ミサイルの使用は問わん!前方のロボットに対して攻撃を開始せよ!!』

 

隊長機からの焦った声が聞こえる。

 

するとその通信を皮切りに一斉に攻撃ヘリによる攻撃が始まった。

対空ミサイルを積んでいる攻撃ヘリはミサイルを発射したりその他の機体は機銃をロボットへと向けて乱射する。

 

しかし、全ては遅すぎた。

 

ドンという爆発音が発しられた。

こちらに接近してきていたロボットが全ての攻撃をかわして中央集団へと突っ込んで着たのだ。

 

そして突っ込んだ瞬間に中央集団の中央のヘリの集団が一斉に爆発する。

 

彼は何が起こっているのか全く理解できなかった。

 

彼はロボットを探そうとコックピットの外を見回す。

すると、ロボットはいつの間にか中央集団の上空に居た。

そしてそのまま、急降下を始めたかと思うと青い火の様な尾を背中の翼の様なものから出しながら再び中央集団へと突っ込んでくる。

 

そしてそれは、彼の攻撃ヘリの隣を飛んでいたヘリにも及んだ。

 

そのヘリは一瞬の間にヘリの後部を分断されバランスを崩して墜落していった。

だが、彼はその時、何が起きたのかを理解した。

 

「け、剣……?」

 

彼が見たのは黄金の剣だった。

二刀の黄金色の剣を白いロボットは両手で持って、高速で移動しながらヘリを切り裂いていたのだ。

それだけではない。

ヘリの回転翼を黄金の剣で切り裂きヘリのバランスを一気に崩して撃墜したり、コックピットを潰したり、少し離れたヘリに対して黄金の剣を投擲して突き刺し撃墜したり、機体を切り裂いたりして次々とヘリを落としてしったのだ。

 

「く、くそ!なんなんだよコイツは!?」

 

伊藤純一が叫ぶ。

伊藤純一の操作でガトリング砲が火を噴く。

しかし、当たらない。

 

白いロボットは中央集団の前方を駆け抜け一度集団から離れてからU字を描くように再び中央集団へと向かってきた。

 

そして、今度の進路は彼と伊藤純一が乗る攻撃ヘリだった。

 

伊藤純一がやられまいとガトリング砲やミサイルを連続発射する。

 

彼はその光景を見ながら、もうダメだと思った。

 

なぜなら、そのロボットの二つの赤い瞳が光を放ち、獲物を狩らんとする絶対的な強者の姿が攻撃ヘリのすぐそこまで着ていたのだから。

 

彼は目を瞑った。

 

「う、うわあああああああああああああああああ!!!!」

 

次の瞬間、彼と伊藤純一が乗る攻撃ヘリに強い衝撃が走った。

ガラスが割れる音と何かが潰れる音が彼の耳に響く。

そして、その次には強烈な浮遊感だ。

 

彼は死んだと思った。

 

だが彼は死んではいなかった。

彼が次に目を開くと、彼の視界にはボロボロになったコックピット。

原型を留めないほどに完全につぶれ赤い何かが大量に付着している伊藤純一の席だった。

 

彼の目の前に伊藤純一はいない。

 

彼は周囲を見回した。

 

割れたコックピットの窓の外には、市街地が広がっていた。

 

「うっ……ん……落ちた、のか……」

 

彼の攻撃ヘリは市街地に墜落していた。

彼がそれを認識した丁度、その時、上空の方から連鎖的に爆発音がした。

 

「……」

 

彼は空を見上げる。

 

すると、彼の頭上の空ではあの白いロボットが青い光の尾を引きながら高速の速度で大空を駆け巡り、その青い光の線上のヘリコプターが次々と爆発していった。

自衛隊が誇るヘリコプターが群がまるで七面鳥撃ちのように次々と無残な姿で墜落していった。

 

彼はその様子を見ながらこう呟いた。

 

「…………悪魔だ」

 

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ……これは……」

 

「化物だ……」

 

私を含めたその場にいた全ての人々がそのテレビ中継に釘ずけとなった。

テレビ画面を見るほとんどの者がその映像に戦慄し刀剣類管理局の司令室の全ての職員が呆然とその場に立ち尽くした。

その戦慄の生放送はつい先ほど突然、始まった。

 

生放送の始まりは、ギャラルホルンの兵士から脅されたと思われる国民的ニュースキャスターがギャラルホルンからの緊急生中継ですと言って始まった。

 

ニュースキャスターは最初こう言った。

 

『え、えー……ぎゃ、ギャラルホルンから、全国民に向けた緊急の生放送があるようです。えー、現場からの生放送の前にギャラルホルンからの声明文を読み上げます。先に行った、我々の忠告は残念ながらこの国の愚かな政治家に従う自衛隊には届かなかった。その為、我々、ギャラルホルンは大変遺憾ながら、我々がギャラルホルンたりえる正義の絶対的な力によって正義の鉄槌を下すことにした』

 

中継の映像は自衛隊の作戦開始時刻からほんの僅かな時間しか経っていなかった時に突然、テレビに映し出された。

現場からの中継で最初に映ったのは遠くからやって来る自衛隊のヘリコプターの大集団。

間違いなく出撃した自衛隊のヘリコプター部隊だ。

 

そして、その次に、それを待ち構える様に空を静止する白いロボットが映し出された。

 

そのロボットは両手に金色の剣を持ったまるでロボットアニメに出てきそうな形のロボットだった。

 

「あれは……バエル?」

 

私はそのロボットに見た瞬間そう呟いた。

見覚えがあり映像を見た瞬間、すぐにあの書類の図に書いてあったロボットの事を思い出した。

それは私だけではなく、獅童真希も此花寿々花も皐月夜見も、もちろん紫様も気づいた様子だった。

 

テレビに映し出されたそのロボットは青いジェットを背中のブースターらしきものから放ち飛んでいる。

 

すると、しばらくしてそのロボットは突然静止状態から急加速しそのまま自衛隊のヘリコプター部隊に突っ込んでいった。

そのロボットが通った場所がブースターの青い光で尾を引く。

そしてその進路にあった自衛隊のヘリコプターは瞬く間にそのロボットに撃墜されていった。

 

まさにその光景は蹂躙の二文字が似合うものだった。

 

そしてそれから1分も絶たない間に映像に映し出されていた戦闘は終結した。

 

「ふっ……まさか、ここまでの代物だったとはな」

 

紫様が映像を見ながら不敵な笑みを浮かべる。

 

その戦闘は誰が見ても明らかな結果だった。

テレビに映った空には白いロボット……ガンダムバエルが悠々と飛んでいるのみであり、その周囲の空には鳥一羽、存在しなかったのだ。

 

この映像でこの司令室の職員の殆どが全ての職員が呆然とその場に立ち尽くす状況になったというわけだ。

 

そして、各々の面々が様々な気持ちでその映像を見ている中、私はその映像に恐らくただ一人とり憑かれていた。

私は口にくわえていたポッキーを落とした。

 

「結芽?」

 

私の異変に気がついたのか獅童真希が私に声をかけてきた。

 

だが私は、それには反応しなかった。

だが、私は頭の中で歓喜していた。

 

なぜなら、あのバエルの戦いの動きを見てある事を直感的に感じたのだ。

 

「もしかして……お兄ちゃん?」

 

私は小さく呟いた。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

「きゃっ!?」

 

「ふっ……これで今日の試合は一回引き分け九回がお兄ちゃんの勝ちだね」

 

「むぅー!!お兄ちゃん強すぎ!また勝てなかったー!」

 

「まぁまぁ、昨日までは引き分けもなかった事を考えればお兄ちゃんが結芽に超えられるのも時間の問題だよ」

 

私が剣術を始めたばかりの頃、私はお兄ちゃんによく家の道場で剣術を教えてもらった事がある。

私の剣術の流派は天然理心流。

一方でお兄ちゃんは二刀流の剣術を使っていた。

ただ、お兄ちゃんの剣術は日本の剣術ではなく西洋剣術のとある流派のものだった。

 

道場でのお兄ちゃんとの練習は日本の剣術流派と西洋剣術流派のぶつかり合い。

 

だから、当時の私にとってお兄ちゃんとの剣術の練習は本当にいい練習となった。

日本の流派にはない剣の動き方。

当時の私は同じ年や年上の刀使達と試合を行い、その殆どに勝利を収めていた。

しかし、それでもお兄ちゃんとの試合では私はなかなか勝てなかった。

 

だから、私はお兄ちゃんの剣術を調べてお兄ちゃんに勝とうと努力していた。

結局、私はお兄ちゃんに1勝するまでで病気で倒れちゃったけど……。

 

でも、私はお兄ちゃんとの練習のおかげで脳裏にお兄ちゃんの剣術の動きを焼き付ける事ができた。

 

だから、私は分かったのだ。

 

バエルが空を飛翔し自衛隊のヘリコプター部隊を薙ぎ払うその姿を見て、その動きを見て私は直感的に感じたのだ。

 

あれに乗っているのは……お兄ちゃんではないのかと……。

 

そう思ったのだ。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

恐らく日本史上もっとも衝撃的な生放送が流され映像を見た日本全体がさらなる戦慄と困惑に包まれたその後、暫くの間は、日本中の役所には今流れた映像が本物なのかという問い合わせが殺到した。

しかも、それだけに混乱はとどまらず状況はどんどん悪いほうへと変わるばかりであり東京に近い住民が一刻も早く東京に近い場所から逃げだそうとするという動きも起こった。

特に東京の府中に近い町では自衛隊のヘリが墜落した影響で発生した爆発音や煙などを見たり聞いたりしていた為、その地域のパニックはかなり深刻だった。

 

こうした大混乱の中、結局、自衛隊は作戦の要であったヘリ部隊がほぼ壊滅した事を理由に、地上部隊の全てを後退させた。

この作戦には海上自衛隊のイージス艦も航空部隊、地上部隊の攻撃に合わせてミサイル攻撃を行う予定だったが、作戦が失敗した事を受けて海上自衛隊も護衛艦を退かせた。

こうしてギャラルホルンに対する自衛隊の反撃作戦は事実上、失敗したのだ。

 

その後、短時間の間に起こった事を端的に思い出すと、自衛隊は対地ミサイルを東京から離れた場所から撃つなどしてギャラルホルンに損害を与えようとした。

 

それだけではなく航空自衛隊の戦闘機も出撃し爆撃をしようとしたという。

 

しかし、結果は全て失敗したのだ。

 

あのロボット、ガンダム・バエルによって……。

 

そして、その後のギャラルホルンの声明はこうだった。

正義の鉄槌は下されたと。

 

そのあとこうも発表した。

 

全ての地方自治体、それに属する行政機関は今後、ギャラルホルンの指示に従い警察、陸上自衛隊、航空自衛隊、海上自衛隊などの全ての部隊も武装解除しギャラルホルンの指示に従うようにと。

 

まさにそれは最後通牒だった。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

3月2日の午前8時半頃。

 

ギャラルホルンによって占領された東京23区の霞ヶ関の防衛省の庁舎の上層階にある会議室ではギャラルホルンに捕まった自衛隊幕僚や警察庁長官、そして、事件の日に偶然東京の警察庁に行っていた伍箇伝の鎌府女学院の学長、高津雪那もあつめられていた。

 

この会合の存在は事件後に明らかになった出来事である。

 

なぜ、この様な事が分かったのか。

 

それは鎌府女学院の学長、高津雪那が持ち込んだボイスレコーダーのその場にいた者達の証言によって分かったからである。

 

その内容はこうだ。

 

 

 

 

 

「こんな所に我々を集めてどういうつもりだ!マクギリス・ファリド!」

 

「高津学長、大きい声を出さないで頂きたい。今からその件についての話をするのです」

 

「おい!お前達は何も言わないのか!」

 

高津学長が席から立ち上がり机を挟んで向こう側の席に座る自衛隊の幕僚や警察庁長官を指差す。

 

「高津学長」

 

マクギリスがそう言うと後ろに控えていたギャラルホルンの兵士が高津学長の肩に手をのせた。

 

「席におつきください」

 

「くっ……いいわ。話を聞いてあげましょう」

 

高津学長は肩に乗せられた手を振りほどくと席に着く。

 

「では、落ち着いた所で今後の話をしましょう。まず、本日私があなた方に集まって頂いたのは、我々、ギャラルホルンの名の下に日本国を再編する為の手伝いをあなた方にして頂きたいのです」

 

「なっ……」

 

マクギリスの言葉に自衛隊の幕僚や警察庁長官は唖然とする。

一方で高津学長はそれを鼻で笑った。

 

「ふんっ何を言い出すかと思えばマクギリス・ファリド!なにを馬鹿な事を。たかが反逆者風情に我々が手を貸すと思ったか!」

 

「確かにただの反逆者ならばそうでしょう。しかし、あなた方もその目でご覧になったはずだ。私が操るバエルの力の片鱗を」

 

「脅しというわけか」

 

「いいえ、これは脅しではない。あのバエルは我らギャラルホルンの科学技術の粋を結して作られた物です。高津学長はご存知ではないとは思いますが、そちらのお二方は違うのでは?防衛省の制服組トップ、外山統合幕僚長。警察庁長官、大山坂城長官」

 

マクギリスはそう言いながら薄っすらと笑みを浮かべて二人を見る。

その様子に高津学長は違和感を覚えた。

 

「まさか……さっきから静かにしてると思ったら、まさか貴様ら、この反逆者とつながりあったのか!」

 

「…………」

 

「…………」

 

高津学長の言葉に防衛省の制服組トップ、外山統合幕僚長と警察庁の大山坂城長官は深刻そうな顔で俯く。

 

「我々の計画に協力して下さった、あなた方ならその意味が良く分かるはずだ。バエルはその玉座に私が腰を掛けることを許した。これも紛れもない事実だ」

 

「ぐっ……」

 

外山統合幕僚長と大山坂城長官は苦い表情をする。

 

「貴様さっきから何を意味の分からない事を言って……」

 

高津学長はマクギリスが二人に対して話している内容の意味が全く理解できず、疑問の声を上げる。

すると、外山統合幕僚長が閉じていた重そうな口を開いた。

 

「マクギリス・ファリド准将……確かに私達はあなたの計画に賛同し協力しました。しかし、今回の行動はあまりにも独善的かつ性急ではありませんかな?我々に相談もなく……それに、そもそも本来の計画では計画の始動は5年後だったはず……それにバエルは象徴的な存在で留めておくと仰っていたではありませんか?」

 

「当初の計画ではそうでした。しかし、状況は変わったのです。我々が想定していたよりも折神家の力はここ数年で強大になりすぎた。今やらなければ我々には失敗の道しかなかったのです」

 

「だ、だが、例えそうだとしても、個人がバエルを起動させるなどと……」

 

「そうだ!バエルはAIによる自動操縦で動かす筈だったはずだ!」

 

大山坂城長官が突然声を荒げてマクギリスを指差す。

 

「確かにバエルの当初案ではAIによる操縦が決定していました。しかし、残念ながらバエルはAIによる自動操縦を受け付けなかったのです」

 

「な、なんだと!?そんな事が……」

 

「そんな事が現実に起こったのです大山坂城長官。そもそも、バエルの技術は刀使用のS装備技術を発展させたものです。そのような機体が我々の予想すら超える結果をもたらすのは仕方ないのではないでしょうか?どうせでしたら証拠の資料を後ほど部下に届けさせましょう。ぜひ、ご自身の目でご覧になって確かめるといい」

 

「馬鹿な……」

 

大山坂城長官は座席に力なく深く座り込んだ。

 

「しかし、結果はどうであれ、私がバエルを起動させた以上、あなた方は私に従わなければならない。それを拒否すればアグニカ・カイエル、ひいては新生日本国や刀使、ギャラルホルンという組織と国家そのものを否定することになる」

 

「し、しかし……このようなクーデターでは国民は……」

 

「ご安心ください。バエルを手に入れた私はそのような些末事で断罪される身ではない。それに、すでに彼の国も我々の技術提供を条件に革命には口を出さないと言っている」

 

「…………」

 

「…………」

 

「そもそも、我々が作り出したバエルはギャラルホルンの象徴たるアグニカ・カイエルが遥か昔に着ていた神聖なる鎧、バエルを我々の現代の科学技術で再現した物……そのような神聖なものにAIを搭載しようなどという考えが愚かだったのです」

 

マクギリスがそう言うと外山統合幕僚長と大山坂城長官は言葉を失ったように黙り込んだ。

マクギリスは二人が静かになったところを見てその場を見回す。

 

「では、本題に移りましょう。あなた方二人には、現在抵抗を続けている警察と自衛隊への説得をしていただきたいのです。ギャラルホルンに従うようにと。あなた方の言葉ならば彼らも納得せざるをえないでしょう。それにあなた方の〝ご友人〟の戦力も念のためお貸し頂きたい。そして、高津学長」

 

「……なんだ?」

 

「今回、我々が行動を起こした時に偶然にもあなたはこの街にいらっしゃった。私はこの出会いをただの偶然ではなく運命であると思っています」

 

「それはこの私を馬鹿にしているのか?まんまと貴様の様な反逆者に捕まった私を!」

 

「そういうわけではない。先にも言ったように私はこの出会いを運命だと思っている。18年前の相模湾岸大災厄にてまさに英雄的ご活躍された高津学長にお会いできたのですから。そこで私はあなたにも我々、ギャラルホルンに協力していただきたいと思っているのです」

 

「協力ですって?」

 

「ええ。あなたにはぜひ、ギャラルホルンに入って頂きたい。そうすれば、我々が主導する新生日本国では、あなたに刀剣類管理局の局長をお任せしましょう。その為にまず、あなたには折神家を説得し、折神家が保有する御刀をすべて、私に差し出していただく」

 

「なっ!?この私に紫様を裏切れというつもりか!?」

 

「悪い話では無いかと思いますが……」

 

「そんな馬鹿な話は断る!私を見くびるな!!」

 

「そうですか……それは残念です。では、あなた方はどうしますか?」

 

マクギリスは断ると言った高津学長に意外そうな表情もひとつ浮かべずにそのまま、外山統合幕僚長と大山坂城長官に質問をふった。

 

「…………」

 

「…………」

 

二人は暫くの間沈黙する。

そして、しばらくすると、外山統合幕僚長が口を開いた。

 

「マクギリス・ファリド准将……我々はバエルに敵対することはできない。しかし君の言葉に従うこともできない」

 

「わ、私も外山統合幕僚長の意見に賛同する……我々は今回あくまで中立の立場を取らせてもらう」

 

「……どうやら、あなた方は状況を理解できていないようだ。今あなたは今回はと仰いましたが、この我々の計画が失敗すれば我々にもあなた方にも未来はないのですよ」

 

「とにかく……我々はバエルに背くつもりはない。だからこそ政府側にも手を貸すつもりはない」

 

「ふふふ、滑稽だなマクギリス!我々だけでなくお仲間にまで嫌われてるとはな!」

 

外山統合幕僚長の協力できないという言葉に高津学長が笑い出す。

その一方でマクギリスは外山統合幕僚長が拒否をした事に不快感を覚えている様だった。

 

「バエルを持つ私の言葉に背くとは……」

 

マクギリスは明らかに不機嫌そうに呟く。

だが、それをよそに、高津学長はさらに言葉を続けた。

 

「ふっ、だが、それにしても面白い事が分かったな。外山統合幕僚長、大山坂城長官。まさか貴様らが反逆者に協力……いや、反逆者と同類だったとはな」

 

「…………」

 

「…………」

 

高津学長の鋭い言葉に外山統合幕僚長と大山坂城長官は視線を背ける。

 

「このことは全てが解決した後で、必ずや断罪されることになるぞ?覚えておくといいわ!」

 

 

 

 

 

高津学長が録音した内容はここで途切れている。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

午後1時頃、刀剣類管理局の司令室に設置された警察と自衛隊の合同作戦本部。

 

そこでは紫様、それに加えて自衛隊のこの事件を担当している臨時の司令官が2人が他の司令室職員たちと共に緊張のテレビ電話会談を行っていた。

 

会議の主役はもちろん紫様と自衛隊の司令官の二人だ。

その一方で私達、折神家親衛隊四人は紫様の背後に控えていた。

 

そしてテレビ電話会談という事はもう一人、電波の向こう側に居る会談の主役が存在する。

会談の相手はもちろん、今事件を引き起こしているギャラルホルンだ。

 

トップ級の会談という事もあって向こうもトップが応じている。

そのトップというのは、やはり私のお兄ちゃんだ。

 

お兄ちゃんの姿は司令室のモニターにでかでかと映され、お兄ちゃんの着る派手なデザインの制服や、金髪の髪の毛、翠色の瞳、がくっきりと映し出されていた。

 

『……では、あなた方はあくまで我々の指示には従えないという事ですか?』

 

「当然だ!!そのような指示に従える訳がないだろう!!」

 

「そうだ!貴様の様な卑怯なテロリストなどに従えるものか!!」

 

『あなた方も、バエルの力を見たはずですが……それでも私に逆らうと?』

 

「くっ……」

 

『既にお気づきかもしれませんが、同盟国は私についた。つまり、あなた方の戦力は、あくまであなた方だけだ』

 

お兄ちゃんの高圧的な態度に自衛隊の司令官も言葉を詰まらせる。

その場面で私の隣に立っていた獅童真希、此花 寿々花、皐月夜見が小声で話していた。

 

「同盟国が私に付いたとはどういう意味だ?」

 

「恐らく……アメリカの事では?夜見さん、何か聞いていますか?」

 

「いえ、私は直接聞いてはいません。ですが、会談前に自衛隊の方々がアメリカが要請を断ったと話している所を聞きました」

 

「要請?」

 

「恐らく自衛隊はアメリカ軍へ今回の事件の対処に協力を求めたのではないでしょうか。でも、頼みの綱に断れたという事でしょうね。私もまだよく分かりませんが、恐らくあのバエルとかいうロボットの技術を狙っているのではないでしょうか」

 

「なるほどな……」

 

すると、紫様がお兄ちゃんに向かって口を開いた。

 

「ふっ、貴様もすっかり俗物に成り下がったものだなマクギリス」

 

『紫様、あなたも私の指示に従う気はありませんか?』

 

「当然だ。愚か者に付き合うほど私も暇ではない」

 

『バエルを持つ私に背くとは……良いでしょう。では、我々ギャラルホルンの力を……バエルの力を見せてやろう』

 

ギャラルホルンによって行われた最後通牒を自衛隊や紫様は拒否した。

当然の事だとは思うが、それから、数時間は何も起こらない不気味な時間が続いた。

 

 

 

 

 

しかし、事態は3月3日の夜7時頃。

私の誕生日当日に事態は急激に変化を迎えたのだ。

 

 

 

 

 

「その情報は確かなのか!?」

 

獅童真希が司令室の職員の報告に声を上げた。

それに対して司令室の職員は焦った様子で報告を続ける。

 

「はい!自衛隊の偵察衛星、並びに偵察に出していたドローンが東京23区を沿岸部沿いに神奈川県方面を移動中のギャラルホルンの大部隊を捉えました!」

 

「敵の目標は……」

 

獅童真希は少し考える。

そして、答えはすぐに出た。

 

「横須賀……いや、ここ鎌倉か!」

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

端的に思い出すとこの時。

 

ギャラルホルンは突如として東京を占拠していた部隊を二つに分けて進軍を開始した。

半分は東京に残りもう半分が鎌倉を目指して進軍した。

 

東京を包囲する自衛隊の部隊はこれと交戦。

 

しかし、この部隊にはお兄ちゃんが操るバエルがいて、自衛隊の包囲部隊は壊滅し突破。

ギャラルホルンの部隊は進軍を続けた。

 

そして、私の誕生日、3月3日の午後7時頃。

 

鎌倉はギャラルホルンによる猛攻を受けたのだ。

 

この時、鎌倉には刀剣類管理局の特別祭祀機動隊が全国から集められていて、さらに陸上自衛隊の部隊や近海にはギャラルホルンが侵攻してくる前に横須賀より出港していた海上自衛隊の艦隊の一部部隊である護衛艦3隻が停泊していた。

 

陸上自衛隊は鎌倉外縁で戦車部隊を中心に防衛を行ったが戦車部隊はギャラルホルンのモビルワーカーによる機動攻撃と上空からのバエルによる攻撃で突破されてしまった。

その後は航空自衛隊から戦闘機2機も出撃してバエルの撃墜に挑んだが、圧倒的な機動力をもつバエルに戦闘機は

落とされ、護衛艦による対空ミサイル攻撃も失敗し、そして午後8時頃、ギャラルホルンは鎌倉の市街地に突入する事になったのだ。

 

特別祭祀機動隊や自衛隊とギャラルホルンの部隊から発せられる銃声が交わる鎌倉市内。

 

この非常な事態に鎌府女学院の刀使も成績優秀者のみ戦闘に参加した。

もちろん学生も出撃しているのだから、私達、折神家親衛隊も出撃する。

 

そこで私は刀使の部隊と特別祭祀機動隊の部隊をそれぞれ1隊ずつ与えられ鎌倉市内に突入してきたギャラルホルン部隊の迎撃をする事になった。

 

そこで次々と現れるお兄ちゃんの配下の兵士達。

 

彼らは皆、黒い戦闘用のボディアーマーと頭部を覆うマスクをつけて完全のフル装備。

しかもモビルワーカーが何台も戦場に投入されていた。

 

でも、それでも私の敵ではなかった。

 

他の刀使達は荒魂ではない人を切ることに多少なりの抵抗を持っていたが、私はあまり気にしなかった。

 

事実、私は多くのギャラルホルンの兵士を切り捨てた。

 

でも、その時の私には焦りからくる苛立ちがあったと思う。

 

自分の頭の上……鎌倉市の上空ではお兄ちゃんの乗るバエルが夜空ジグザグ模様の蒼い軌道を描いて高速で空を舞い、海や陸より放たれる何十発というミサイルを次々とかわし撃ち落としていく……。

 

この時、私の頭の中には、早くお兄ちゃんと戦いたい。

そして、勝って絶対に見返してやるんだ。

 

という考えしか頭になかった。

だから、お兄ちゃんがやられないか、ヒヤヒヤしていたのだ。

 

でも、状況は私のそんな心配など余所にギャラルホルンの有利となっていった。

 

「燕様!!」

 

「ん?なに?私今、忙しいんだけど」

 

そう言いながら私は今しがた倒したギャラルホルン兵の体にとどめを刺す。

 

「本部からの緊急の入電です!」

 

「本部から?」

 

「はい!そ、それが……」

 

「なに?さっさと言ってよ」

 

「ほ……本部の最終防衛線が一部突破され賊軍の部隊が折紙家の敷地内に侵入したようです!それで、本部より燕様はすぐに本部施設の防衛に当たれと伝令が」

 

「はぁ……こっちはお兄ちゃんの事で忙しいのに……もぅ……あっでも、本部に侵入されたって事は、もしかしたらお兄ちゃんも降りてくるかも……」

 

「あ、あの……燕様?」

 

伝令をした刀使が不安そうな表情を浮かべる。

 

「うん分かった。それじゃあ、ここの指揮はあなたに任せるね」

 

「えぇ!?わ、私ですか!?」

 

「それじゃあ、あとよろしくー」

 

私はそう言うと本部へと急いで向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

午後9時半頃。

 

ギャラルホルンの鎌倉市の中央部の部隊は刀剣類管理局が敷いた最終防衛線を突破。

 

一部のギャラルホルン兵が刀剣類管理局の本部がある折紙家の敷地内へと侵入した。

 

私はこの部隊を迎撃するという目的の為に……いや、お兄ちゃんを倒すというただそれだけの目的の為だけに折紙家の敷地内へと急いだ。

 

 

 

 

 

「ぐあっ!?」

 

「あ、あれは燕結芽!?例の親衛隊か!!」

 

「総員攻撃を集中せよ!!」

 

私は次々と放たれる銃撃を迅移でかわし、そのまま彼らにとっては高速の速度で瞬時に切って行く。

 

「うわっ!?」

 

「こいつっ!?」

 

「……邪魔」

 

私は敵が体勢を整える前に一気に御刀でその体を切り捨てる。

 

すると、その時だった。

 

折神家の闘技場がある建物の方で青い閃光とともに爆発音がしたのだ。

私はすぐにそっちの方を振り向いた。

すると、丁度その時、自分の足元で倒れているギャラルホルンの兵士の無線機から声が流れてきた。

 

私はそれに気がつくと無線機を拾い上げる。

 

『――総員聞いてくれ!こちらはライザ・エンザだ!今、ファリド准将が折神家に突入した!我々の勝利は目前だ!これより我々も参る!ファリド准将に続け!』

 

テレビで聞いた覚えのある声が無線機から聞こえた。

だが、私にとって重要な情報はそこではなく、さっきの爆発音はお兄ちゃんが降りてきた音だとはっきりした事だった。

 

私は無線機を強く握り締める。

 

「待っててねお兄ちゃん……私が倒すまで他のヤツに倒されちゃダメなんだから……」

 

私はそう呟くと爆発音がした方へと走っていった。

 

 

 

 

 

しかし、私はお兄ちゃんの所にはたどり着けなかったのだ。

 

 

 

 

 

お兄ちゃんがやってきた方へと向かった私を待っていたのはお兄ちゃんではなく……普通の色ではない青い色をしたCGSモビルワーカーだった。

 

 

 

 

 

『ファリド准将の邪魔はさせない!』

 

さっき無線機から聞こえたのと同じ声が青いCGSモビルワーカーから聞こえてきた。

 

「もぅ!さっきから!なんなの!」

 

私はそれに対してここ数年で一番いらだった。

 

『私はライザ・エンザ!あなたは折神家親衛隊の燕結芽とお見受けする!』

 

「もうめんどくさい!」

 

私は早くお兄ちゃんの所へと行きたい一身から迅移を使ってCGSモビルワーカーを攻撃した。

しかし、私の剣はその鋼鉄の巨体に防がれてしまう。

そして、攻撃を仕掛けてすぐにCGSモビルワーカーは高速で移動をはじめた。

CGSモビルワーカーは移動しながら私に向かって本来は荒魂用の武装である30mmマシンガンの弾を連射してくる。

 

『女性に銃を向けるのは気が引けるが……ここを通すわけには行かない!』

 

「ふざけないでよっ!私は……お兄ちゃんと決着をつけなきゃいけないのに!!」

 

 

 

 

 

結論から言ってCGSモビルワーカーとの戦いは私が勝利だった。

装甲には刀は入らないが機械の間接部分をついて行動不能にしたのだ。

私は青いCGSモビルワーカーを停止させた後、すぐにまたお兄ちゃんの元へと向かったが、そこで待っていたのは、私を待ち構えるお兄ちゃんのバエル……ではなく、東の空へと飛び去っていくお兄ちゃんのバエルと広場で二本の御刀を持って立っている紫様だけだった。

 

広場を見ればどうやら激しい戦闘があったようで所々の地面が大きくえぐれていた。

 

紫様とお兄ちゃんがここで戦っていたのだ。

どれだけ激しかったかはこの現場が物語っている。

しかし、それに私は参加できなかった。

つまり、私は間に合わなかったのだ。

 

「くっそっ!」

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

その後、鎌倉市での戦闘には大きな変化が起きた。

ギャラルホルンの部隊が急に撤退を始めたのだ。

聞けばお兄ちゃんが去っていったのもそれが関係しているという。

 

私は正直、意味が分からなかったが、司令室に戻った時、その謎は一気に解けたのだ。

 

司令室に私達、折神家親衛隊が全員戻ると紫様は事の次第を私達に説明をしてくれた。

 

その話によると紫様は密かに綾小路武芸学舎に連絡を取り、刀使の部隊を編成してお兄ちゃんが鎌倉市へと侵攻してきたタイミングを狙って自衛隊の特殊部隊も含めた部隊を東京23区へと突入させて人質になっていた国会議員を国会議事堂地下の秘密通路から脱出させていたのだ。

 

いわば奇襲だ。

 

その為、東京のギャラルホルンは混乱。

しかも、紫様は自衛隊とも協力してその作戦とほぼ同時に地上からの戦力投入による東京23区への侵攻作戦を実施したのだ。

 

恐らく、鎌倉市の撤退が行われたのはバエルが居ない東京の状況が思わしくなくなってしまったからだと言うのは考えるのにたいして時間を要しなかった。

 

まさに、非の打ち所も無い見事な作戦。

ギャラルホルンが二つの部隊に分かれた隙を見て特殊部隊を突入させて国会議員や政府の要人を救出する。

 

これは全て紫様の作戦の賜物だった。

あとでこれを聞いた時はその場に居た全員が驚き、紫様の作戦に感服したほどだ。

 

その後、この事件の解決まではまさに電撃的に進むことになる。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

午前2時には自衛隊と警察の特別祭祀機動隊は東京23区外縁へと集結。

私達も輸送ヘリですぐに鎌倉から東京の集結地点へと向う事となり、向かった。

 

集結地点では作戦の説明がされて私達親衛隊には再び鎌倉の様に一人一人に刀使と特別祭祀機動隊の一般隊員の混成部隊の指揮を命じられた。

 

作戦はこうだ。

自衛隊の戦車、装甲車を中心とした部隊と刀使が前衛としてギャラルホルンに占拠されている霞ヶ関周辺へと侵攻し空からも航空自衛隊の戦闘機部隊を使ってバエルを足止めする作戦だ。

 

この作戦は午前2時半には開始された。

 

当初はギャラルホルンに敗退した自衛隊だけど本格的な戦車部隊を投入したため、バエルの援護を受けられない火力に劣るギャラルホルンのCGSモビルワーカーは圧されていった。

 

私はこの時最前線で戦っていたけど、この時、私の焦りはピークに達していたと思う。

 

なぜなら、目に見えてギャラルホルンの部隊がやられていくのが私の目に見えたからだ。

 

勝敗は決したといっても良い。

正直言ってお兄ちゃんがいつやられてもおかしくはない状況だった。

だから私は空を飛び回るお兄ちゃんのバエルを見て焦ったのだ。

 

でも戦いの終盤。

 

それでもお兄ちゃんは生き残っていた。

お兄ちゃんは地上に降りて、地上戦を戦っていた。

 

私は真直ぐにお兄ちゃんのほうへと向かった。

 

ようやく、ようやくお兄ちゃんと戦える。

そう思って。

 

でも、私はまたしてもお兄ちゃんと戦う事はできなかった……。

 

私はお兄ちゃんの近くまではたどり着くことができたのだが、私の行く手をギャラルホルンの刀使が数名で塞いだのだ。

 

そして、お兄ちゃんは私ではなく紫様を相手に戦いをしていた。

 

 

 

 

 

「ふっ……力だけは一流だなマクギリス・ファリド」

 

『バエルの剣撃を受け止めたか……流石は折神家の当主だ』

 

お兄ちゃんのバエルと紫様の戦いは熾烈を極めていた。

紫様の身長は163cm、一方でバエルの方は3m以上だ。

しかも紫様が御刀と写シを使っているとはいえ生身なのに対してバエルは完全に機械だ。

先ほどからお兄ちゃんの剣が当たった地面は大きくえぐれている。

でも、紫様はそんなお兄ちゃんが操るバエルの明らかに重い剣撃をバエルと同じく二本の御刀で防いでいた。

 

「だが、力のみでは私には勝てんぞ」

 

『迅移か!』

 

「そうだ!だが、それだけではない!!」

 

『くっ!?』

 

紫様は巨大なバエルに対して迅移をしかけ連撃をバエルに与える。

だが、バエルはその強靭な装甲でそれを防いだ。

 

「さすがに硬いな」

 

『バエルに逆らう愚か者が……』

 

「ふっだが硬いだけがとりえでは……」

 

『私のバエルを愚弄するか……ならば、見せてやろう!折神紫、純粋な力のみが成立させる真実の、世界を!!』

 

 

 

 

 

お兄ちゃんと紫様の戦いは熾烈を確かに極めた。

私が見た限り紫様をここまで本気で戦わせたのは今の所、お兄ちゃんくらいだろう。

 

しかし、それでも最終的に戦いに勝ったのは紫様だった。

お兄ちゃんのバエルは剣を振るう力こそ強かったが、紫様の剣術はそれを殆ど無効化した。

刀使は物理的には非常に大きい荒魂の突進を御刀の力を借りる事で剣撃のみでそれをとめる事が出来る。

紫様はそれを上手く利用してバエルとの戦いをした。

 

紫様は戦いの終盤、バエルの間接部分に剣撃を与える事でバエルに大きなダメージを与えた。

私があの青いCGSモビルワーカーを倒したのと同じ要領だ。

 

お兄ちゃんは最後、左腕と右足が動かなくなった状態にまで追い込まれ、逃亡した。

 

しかし、お兄ちゃんが東の空へと飛び立ったあと、自衛隊が奪還した防衛省内のPAC‐3を使ってお兄ちゃんを攻撃したのだ。

 

一方で私はギャラルホルンの数人の手練の刀使と戦っていて勝ちはしたものの、お兄ちゃんを追って飛んでいくミサイルとビルの向こう側で大きな爆発がするのをただ見ているしかなかった。

 

「く……そっそがあああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

事件後、警察はマクギリス・ファリドの死亡を発表した。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

日本を震撼させたマクギリス・ファリド事件。

 

この事件は結局、ギャラルホルンの敗北によって幕を閉じた。

事件に関わったギャラルホルンの関係者は全員が逮捕されギャラルホルンも組織解体された。

 

一時はギャラルホルンによって、民衆からの社会的信用を失いかけた日本政府だったが、紫様率いる警察によって事件を早期に解決したことで、改めてその力を世界に示し、民衆からの社会的信用も刀使が中心となって回復した。

 

しかし、この一連の事件によるギャラルホルンによる汚職等の暴露によって事件当時の政権及び与野党を問わない殆どの国会議員や役人は失職もしくは白日の下に曝された汚職行為によって逮捕された。

 

誰にも等しく権利を与えられる国。

 

マクギリス・ファリドの目指した理想の一端は奇くしくも紫様を中心とした刀使達の手によって成し遂げられようとしている。

 

と、当時のテレビのワイドショーでは事件後によく言っていた。

 

 

 

現実はそんなに甘くはないけど……。

 

 

 

まぁでも、あの事件からもう既に2年の月日がたった。

今ではギャラルホルンのクーデターがまるでなかったかのように日本はいつも通りの日常を送っている。

 

ちなみに、お兄ちゃんの側近だった石動カミーチェ、全国放送を行ったライザ・エンザは現在も逃亡中だという事だ。

 

事件後暫くは私もお兄ちゃんと一戦もできないままお兄ちゃんが死んだ事に激しい怒りと憤りを持っていたが、今ではなんとか吹っ切りもついた。

 

居ない物はいないで割り切るしかない……。

私は最初の目的に戻るだけだ。

 

私という存在が居た証明を、強い刀使と戦って焼き付けるのだ。

 

 

 

 

 

でも、あれから2年の月日がたった今でも私には時々思い出すことがある。

 

それは最終決戦を行っていたあの日の夜明け頃に起きたある出来事の事だ。

決戦終盤、ギャラルホルンの敗北が確定した頃の霞ヶ関での戦闘中。

 

その頃のギャラルホルンの兵士達は明らかな状況の悪化に私達でも分かるほどまでに、士気が低下していた。

 

一部の兵士達は刀使が目の前にたっただけで降伏をしてきたほどだ。

 

私達はこのままこの戦いはギャラルホルンの敗北で終わる。

 

そう、思っていたその時だった。

 

『まだ革命は終わっていない!!』

 

突如として上空から霞ヶ関全域に聞こえるほどの大音量で声が流れてきたのだ。

その声は明らかにお兄ちゃんのものだった。

 

多くの者が声のする方、つまりは上空を見上げた。

 

敵味方関係なくだ。

 

すると、そこにはバエルが空中で青白いブースターの炎を出しながらホバリングしていた。

 

『諸君らの気高い理想は決して絶やしてはならない!アグニカ・カイエルの意思は常に我々と共にある!!』

 

見るとギャラルホルンの陣営の方では一部の兵士がバエルを指差して見ている。

 

『ギャラルホルンの真理はここだ!皆、バエルの元へ集え!!』

 

お兄ちゃんの乗るバエルが黄金の剣を高く掲げる。

 

すると、その瞬間、ギャラルホルンの陣営から大きな歓声が上がった。

その時、ギャラルホルンの兵士が喋っていた内容は私が聞き取れた範囲でこうだ。

 

「バエルだ!」

 

「アグニカ・カイエルの魂ッ!!」

 

「そうだ!ギャラルホルンの……刀使の正義は我々にある!!」

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」

 

ギャラルホルンの兵士達はこれまで士気が下がりに下がった所から、お兄ちゃんの演説を境に突如として再び士気が異常に上がった。

霞ヶ関のあちこちでギャラルホルンの兵士達からの雄たけびがなり響く。

それは先ほどまで負けそうだった者達のものとは思えない物だった。

 

それに対して私の隣に居た紫様はこう呟いていた。

 

「ふっ……この戦況で今だ、ハーメルンの笛を吹き続けるか。マクギリス・ファリド」

 

私はこのお兄ちゃんの演説とギャラルホルンの兵士達の歓声の中で、ただ空を見上げてお兄ちゃんのバエルを睨みつけていた。

 

この時。

 

この時私はこう思ったのだ。

 

事件が終わった今なら正直に認める事ができる。

 

お兄ちゃんは……やっぱり、すごかったと。

 

正直、私にはこんな事はできない。

ここまで、人をひきつける事はできない。

 

私は黄金の剣を高く掲げるお兄ちゃんとの、長い長い距離を感じたのだ。

 

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

でも、さぁ……。

 

確かにあの時、お兄ちゃんは死んだ。

 

というのなら、私はお兄ちゃんへの嫉妬という感情と怒りを押さえ込む事ができた。

 

でも……。

 

でも、その死んだはずのお兄ちゃんが、今も……。

 

あの事件から2年がたった今も実は死んでいなく、生きていたとしたら私は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなの押さえ込めるわけないよねー。お兄ちゃん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの事件から2年の月日が経ち、私が紫様に命じられた任務。

それは紫様に反旗を翻す舞草なる反逆者の集団の本拠地を壊滅させる事。

 

その、舞草の拠点の地下にあった大きな洞窟。

 

海に繋がり、大きな潜水艦が停まっているその洞窟の桟橋で私は出会ってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか……生きてたなんてね。2年ぶりだね、お兄ちゃん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お兄ちゃんが操るガンダム・バエルに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




続きは必ずキット・イツカ...
現在、少しづつ書いてます。ちなみに次の話の視点は可奈美ちゃんの予定です。
アニメの可奈美ちゃんの立ち絵...フトモモに見とれてしまうのは私だけでしょうか?
 
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