試し斬りをダンジョンで行うのは間違っているだろうか   作:アマルガム

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巻き込まれ――十二

「僕らは、ここに少し留まるけど、ティーズはどうする?」

「……このまま、行く」

 

 ダンジョン18階層にある迷宮の楽園、リヴィラの街入り口にて、ティーズとロキ・ファミリアの面々は向き合っていた。

 

「えー?ティーズも一緒に行かないの?」

「止めなさいよ、ティオナ。ティーズにも用事があるでしょ」

「でも、武器の話とかしたいし……」

「……武器」

 

 ティオネが、愚図るティオナを嗜めていたが、彼女の武器発言に、ティーズの方から食い付いてきた。

 

「……ティオナ、何造る?」

「え?えーっと…………あ、大双刃のサブウェポンとか?」

「じゃあ、剣とナイフ?」

「うんうん!あ、でも重い方がアタシは嬉しいかなー、なんて」

「重い…………」

 

 ティーズの頭には、様々な武器の案が浮かび始めていた。

 大まかに、剣と呼んでもその種類は多岐にわたる。

 ブロードソード等のオーソドックスなモノから、ショーテルやケペシュ、ファルカタ、ソードブレイカー等の変り種まで。

 ナイフならば、諸刃片刃から始まり、ククリやハンティング、山刀、肥後の守、ツイスト等々、山のよう。

 更に、重心、材質etc.オーダーメイドの面倒たるや半端なものではない。

 何より、ティーズはそのオーダーメイドをしたことがない。

 彼の場合は、冒険者に合わせる、ではなく冒険者が合わせる。それだけの価値が彼の造り出す武器にはあった。

 

「…………とりあえず、コレ」

 

 いつぞやと同じように、ティーズはその手に武器を造り出した。

 肉厚な刀身に、切っ先の無い角形の刃とシンプルな柄を合わせた代物である。

 

「うわっ!結構重いね、コレ!」

「鉈だから」

 

 受け取ったティオナは、重いと言いながらもソレを片手で振るっている。

 ティーズの返答もシンプルだが、そもそも彼自身が長々と語れる口を持っていない事にもこの返答には表れていると言えるだろう。

 鉈の重さと剃刀の切れ味。この二つを要するのが日本刀。戦場での機能を突き詰めた代物だ、仮にダンジョンのモンスター相手に振るったとしてもその鋭い切れ味がその肉を容易く切り裂いてくれることだろう。

 だが、今回ティオナが求めているのは、大双刃のサブ。咄嗟に抜けて、尚且つ片手で振るえる物でなければならない。ついでに、アマゾネスである彼女が身に着けて煩わしくない物、というティーズにしては珍しくも相手の事を考えた一振り。

 鉈は、刃が分厚く重い。元は林業などで用いられるもので枝葉を落としたり、薪を割ったりする時に用いるためだ。

 これを武器に転用すると、結構強力だが、同時に癖が強い代物が出来上がる。

 前述のとおり、鉈は重い。しかし片手持ちであり、振り回せば場合によっては逆に振り回される事もある。更に切っ先が無いために突くことが出来ず、動きが円軌道に限定されやすい。

 それら要素を払しょくしたのが、マシェテ等か。枝葉を払う事も、敵を殺す事も可能。片手での取り回しなどを考えた片刃の形状と軽く頑丈でしなりのある刀身と短いグリップがうまく噛み合っている。

 

「…………どう?」

「うーん…………もう少し、大きい方が使いやすいかも」

「大きい…………これ位?」

 

 次に出したのは、鉈よりも長いが片手持ち。諸刃でこれまた厚めの刀身を持った剣。こちらは、切っ先がありより戦う事を意識した武骨さがあった。

 

「これは?」

「グラディウス。剣闘士の剣」

 

 古代ローマで重用されていた剣であり、幅の広く分厚い刀身が特徴的。

 西洋の剣特有の斬るのではなく、叩き潰すタイプの剣であり使い手によっては受け太刀諸共叩き潰す事も可能だろう。

 受け取ったティオナは、ぶんぶんと剣を振り回した。

 先程の鉈と違い、より武器としての特性が強い、というかガッツリ武器である。振り心地もより対象を破壊する事に特化している。

 

「おお!これはいいね!大双刃と似た感じだし、振りやすいよ!」

「そう…………」

「ねえ、フィン。椿だけじゃなくて、ティーズにも依頼出さないの?」

「それは、話し合ったじゃないか。彼にまで依頼を出していたら、キリがない、ってね」

「依頼?」

「ティーズも遭っただろう?あの、虫型のモンスター。あれは倒すだけでも、強力な酸で武器を溶かされてしまう。そこで、椿に僕ら個人で依頼を出す事に決まったんだよ」

「…………不壊属性か?」

「ああ」

 

 頷くフィン。ティーズとしても分からない事ではない。それだけ、あの虫型モンスターは厄介であったし、彼の様に武具を己の魔法で作り出せるものでなければ、すぐに丸腰になってしまう。

 その点、不壊属性が付与されているならば切れ味などは落ちていくものの壊れる事は無い。

 代表的なのは、アイズのデスぺレートか。彼女の雑な使い方にも対応でき、定期的なメンテナンスこそ必要にはなるものの、それだけの価値がある。惜しむべきは、付与できる鍛冶師は少ない事か。

 因みに、ティーズも出来る。ただ、不壊属性を付与すると同時に武器としての性能が若干落ちるデメリットが存在しており、彼としては頑丈な武器を作る方が好みだ。

 

「…………行くのかい?」

「ああ。ティオナの剣、完成したら持ってく」

「えー?もう行くの?」

「ん。深層、潜ってくるから」

 

 アッサリとそう言い、ティーズは荷物の入ったバックパックを背負い直し下層へと通じる階段へと向かってしまう。

 元々、レベル6の状態ですらひょいひょい下層に降りていくのが彼なのだ。レベル7となった今、その実力はどれほどのものなのか。

 その背を見る者たちには、分からない。

 

 

 

■■■■

 

 

 

 ダンジョンの恩恵は様々と言える。

 モンスターからは、魔石やドロップ品。ダンジョンそのものからも、植物や鉱石が採取可能であり深層のみならずその階層でしか取れない物は多々存在している。

 

「…………ふぅ」

 

 下層25階層。巨蒼の滝と呼ばれる大瀑布であり、主に水棲モンスターが多々存在する階層の始まり。

 今のティーズは全身鎧を纏うという重装甲の状態であり、背中に背負っていたバックパックも一緒に内包できるオリジナル鎧を武具創造によって造りあげていた。

 理由はある。

 イグアスという燕型のモンスターが居るのだが、不可視と言われるほどの速度で突っ込んできて相手を切り裂くか、若しくは自爆して潰れて死ぬかという生きた弾丸の様なものが居るせい。

 動きづらくもなるが、バックパックを破られるよりはマシだ。何より、重量などほとんど感じない特別性。このまま遠泳しても鎧の影響で沈む事は無い。

 彼がここに来たのは、有る蟹を求めての事。

 

「来た」

 

 水辺でぼんやりと突っ立っていれば、ガチャガチャと金物がこすれる音が近づいてくる。

 彼が振り向けば、そこに居たのはシオマネキを巨大化させて、全身を金属加工したような大きな蟹がハサミを鳴らして前進(・・)してくるではないか。

 蟹のくせに横歩きしない蟹、ブルークラブ。

 ティーズの目的は、この蟹が落とす鋼殻だ。

 というのも、今回でお釈迦となった鎚を新たに作るついでにガタの来始めたその他の道具も新調しようと考えていた。

 迫ってくるブルークラブ。ティーズは拳を握り、速攻で懐に潜り込むと中々に凶悪な面構えをしたその顔面へと拳を放っていた。

 本当に強力な、効かせるパンチは相手が吹っ飛ぶ事無く、その場に崩れ落ちる。

 

 そもそも、ティーズにとって、この階層で敵足り得るのは階層主位であり、大半は素手によって仕留める事など余裕である。

 

「…………ん?」

 

 だが、ダンジョンは冒険者に牙を剥く。

 水面が大きく揺らぎ、巨大な水柱と共に現れる、巨大な存在。

 

「アンフィス・バエナ?」

 

 双頭の龍が飛び出してきた。

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