ハリー・ポッターと野望の少女   作:ウルトラ長男

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皆様こんばんわ。貫咲賢希様よりミラベルの素晴らしきイメージイラストを頂いてテンション鰻昇りのウルトラ長男です。
もはや悔いはない……わたしの仁星の命はまちがっていなかった!!
我が生涯に一片の悔いなし!!


第36話 ダンスパーティ

 第一の課題は無事、ミラベルの知る流れとはほんの少し異なる形で終了した。

 しかし試合はこれで終わりではなく、次に彼らは第2の課題に取り組まなければならない。

 ならばすぐにでも準備に取り掛からなければならないわけだが、その前に一つ、生徒達を悩ませるイベントが待ち受けていた。

 クリスマス、ダンスパーティーである。

 3校の交流を深める為に用意されたこのイベントは、異性のパートナーを一人選ばなくてはならない。

 そのせいか、校内は異様な熱気にギラついていた。

 お目当てのパートナーを得られるかどうか。これは思春期の少年少女にとって何よりも重要な事なのだ。

 

「ダンスかあ……ミラベルはもう相手見付けた?」

 

 夕食の席でソーセージを齧りながら、そう言ったのはイーディスだ。

 だが何もこの話題は彼女だけが気にしているものではない。

 ダンスパーティーの件が決まってからというものの、あちこちのテーブルで同じ話題が上がっている。

 

「ああ、フリントの奴に誘われたので了承しておいた。貴様は?」

 

 イーディスの問いに、この上なくどうでもよさそうにミラベルが答え、同じ問いを聞き返す。

 するとイーディスは気落ちしたように肩を落とし、小さく溜息を吐いた。

 

「いや、それがまだ……。

ハリーとハーマイオニーは一緒に踊るっていうし、私一人だけ決まらなかったら嫌だなあ」

「何? グレンジャーはビクトール・クラムと踊るのではないのか?」

「いや、誘われたらしいんだけどハリーを優先したんだって。で、クラムはウィーズリーの末妹を誘ったらしいよ」

 

 イーディスの言葉を聞き、ミラベルが顔をしかめる。

 随分、知識と違う組み合わせになったものだ。

 本来ならばハリーはパーバティと踊るはずだし、ハーマイオニーはクラムと組んでいたはずだ。

 そしてジニー・ウィーズリーはネビル・ロングボトムをパートナーに誘うはずである。

 だがその組み合わせが滅茶苦茶に解れているのはやはり、去年1年だけとはいえロナルド・ウィーズリーがいなかった弊害であろう。

 あれによってハリーとハーマイオニーの距離が狭まり、誘う事に抵抗がなくなってしまったのかもしれない、とミラベルは推測した。

 

「ミラベル、誰かいいの知らない?」

「シドニーでよければ貸すぞ。アレは私が命じれば逆らわん」

「……いや、いい。それで踊ってもらってもなんか虚しいし」

 

 ミラベルの弟であるシドニーは確かに容姿端麗だ。彼と踊りたいと思う女子はいくらでもいるだろう。

 しかし命令で踊ってもらってもそんなのは惨めなだけだ。全然嬉しくない。

 イーディスはその事を伝え、ミラベルの案を断った。

 

「ま、誰か適当に探してみるよ」

「まあ、それがよかろう」

 

 クリスマスまではまだ時間があるし、まだ焦る時間でもないだろう。

 最悪パーティーを欠席するという最終手段だってある。

 そんな事を考えていると二人の会話に懲りない男・マルフォイが割り込んで来た。

 

「おいベレスフォード、君、もう相手は決まったのかい?

まあ大方その性格の悪さじゃあ誰もいないだろうけどさ。

もし君がどうしてもというのなら僕が情けをかけて仕方なく組んでやっても……」

「もう決まっている。貴様は大人しくあのパグ犬と踊っていろ」

「…………」

 

 マルフォイは目に見えて落ち込み、トボトボと自分のテーブルへと引き返していった。

 いつもの事ながら慈悲の欠片もない追い返し方である。

 そろそろイーディスとしてもマルフォイが不憫に思えてきた頃だ。

 その後の授業でもほとんどの生徒はダンスパーティーの事で頭が一杯らしく、真面目に話を聞く生徒はほとんどいなかった。

 もっとも、ゴーストのビンズ先生が教える魔法史は普段から誰も聞いていないようなものなので、あまり変わらないのだが。

 

 そうして落ち着かない日々が過ぎて行き、遂にクリスマスの当日を迎える事となった。

 イーディスが朝起きると、ベッドの足元にはプレゼント箱がちょっとした小山を作っていて、思わず顔が綻ぶ。

 もう4年目になるが、朝起きてこうして自分宛のプレゼントを見る瞬間というのは心が昂揚する。

 ライナグル家から贈られて来た様々なアクセサリに、ダフネ・グリーングラスを始めとするスリザリンの友人達が贈って来た様々なお菓子。

 ハリーは髪飾り、ハーマイオニーは首飾りをプレゼントしてくれた。恐らくダンスパーティー用のお洒落としてだろう。

 ミラベルが用意してくれたのは黄金の、ドラゴンを象った置物だ。

 しかもこれは何とミラベルが錬金術で作ったお手製らしい。相変わらず様々な才能に恵まれているようで呆れるばかりであった。

 

(3つ首の龍……なんか日本の映画にこんなのいたなあ)

 

 ミラベルがくれた置物を隅に寄せ、その友人のベッドを見る。

 するとそこには文字通りの山があった。

 彼女の信奉者達から贈られた大量のプレゼントが巨大な山を形成するのは、何も今年に始まった事ではない。

 そしてそのほとんどを、確認もせず数十羽のフクロウに括りつけて実家の倉庫送りにしてしまうのもまた、例年通りの事であった(これのせいでフクロウ小屋のフクロウが一時的に半数以下になる)。

 だがそんな中で自分やマーカスといった信奉者“以外”からのプレゼントだけは手元に残して中身を確認してくれているので、別にプレゼントが要らない訳ではないらしい。

 

 そして夜。

 とうとう、生徒達が待ちに待ったパーティーの時間が訪れた。

 談話室ではすでに多くの生徒が待機しており、皆が皆普段とは違う色とりどりの服で身を固めている。

 イーディスは青いワンピース・ドレスを着こなし、その胸元にはオパールのネックレスが輝いていた。

 その普段と違う格好に慣れないのか、何度も鏡を見て自分が変でないか確認をする様は笑いを誘うだろうが、生憎この場で笑う者は一人もいなかった。全員が同じようなものだからだ。

 そうして鏡の前で何度もチェックを繰り返していたイーディスだが、突然談話室が沈黙に包まれた事で動きを止めた。

 何事だろう、と思って振りかえればそこにいたのは、物語のお姫様をそのまま連れてきたかのような現実離れした生き物であった。

 いつもは腰まで伸ばしている見事な金髪は上品に結い上げられ、プリンセスカールになっている。

 頭には銀のティアラを付け、身に纏うのは純白のプリンセスドレス。

 普段は何のメイクもしていない彼女だが(あれで化粧をしていないとか本当に化物だ、とイーディスは考える)今日は薄く、目立たない程度に化粧を施し、幼さを残しながらもある種完成された美貌を更に際立たせている。

 露出した肩と鎖骨が危うい色気を生み、普段とはまるで異なる上品な佇まいは神聖さすら感じさせた。

 

「絵本の中に帰って下さい」

「何だ、いきなり」

 

 開口一番、イーディスは思わずそう口走っていた。

 これはひどい。こんなのがウロウロしていては他の女性全員が引き立て役になってしまう。

 対抗出来そうなのはボーバトンのフラー・デラクールぐらいなものだが、あれはスリザリンどころかホグワーツの生徒ですらないので除外する。

 

「とりあえず貴女にお洒落させちゃいけないって事はよくわかったわ」

「まあ、元々私にそんなものは必要ないがな」

 

 よくわかった。彼女はいつものホグワーツ制服で十分だ。

 これは本当にまずい。元々得体の知れない魅了を振り撒いているというのに、この格好のせいで数倍に跳ね上がっている。

 これでは最早インペリオである。許されざる呪文が服を着て歩いているも同然だ。

 もしかしたらクルーシオとアバダケダブラもどこかにいるかもしれない。

 とりあえず今日から彼女の二つ名に『歩くインペリオ』が追加されるのは間違いないだろう。

 

「まあいい。下に降りるぞ、ライナグル」

「え? 一緒に行くの? 私完全に引き立て役じゃん」

「案ずるな。私の前では全員が引き立て役だ」

 

 普通ならば自信過剰、で終わる所をそう言えないのが困る。

 イーディスは溜息を吐き、ミラベルから少し距離を取って後に続いた。

 隣? 冗談ではない。比較対象にされるなど御免である。

 大広間に行くとミラベルを待っていたらしく、マーカス・フリントが出迎えてくれた。

 だがミラベルの姿を見るやその顔は凍り付き、まるで銅像のように全身が硬直してしまった。

 

「oh……」

「ちょっと、フリント先輩!? しっかり!」

「我が生涯に一片の悔いなし……このマーカス、天へ還るのに人の手は借りぬ……」

「落ち着いてフリント先輩! 還っちゃ駄目!」

 

 正気を失い、意味のわからない事をブツブツと呟くマーカスを揺すり、呼びかける。

 するとハッ、と我に返り周囲を見渡した。

 どうやら自分が正気を失っていた事にすら気付いていなかったらしい。

 恐らく自分が何を呟いていたかも覚えていないだろう。

 

「お、俺は一体何を……」

「おいフリント、貴様大丈夫か? エスコートも出来ん男は流石に願い下げだぞ」

「だ、大丈夫だ、問題ない、一番いい装備を頼む」

 

 これはもう駄目かもわからんね。

 そんな事を考えながらイーディスは自分のパートナーを探す為に広間を見た。そろそろ彼も到着していていい頃だが。

 だが視界に入ったのはパートナーの姿ではなく、銀髪をなびかせて歩く超絶美少女の姿であった。

 ボーバトンのフラー・デラクールだ。

 彼女の進行方向にはミラベルがおり、その逆も然り。

 互いに広間の中央で立ち止まり、無言で睨み合った。

 

「どいーてくれませんか? オグワーツ生。わたーしは、この先に行きたいのです」

「貴様が退け、ボーバトン生。私が退くのは道に汚物が落ちている時だけだ」

 

 バチバチと、二人の間で火花が散る。

 比喩ではない。高まった魔力が本当に火花を発生させているのだ。

 互いに自らの美貌に絶対の自信を持つ者同士、出会えばこうなるのは必然であった。

 フラーの視線が厳しくなり、手がゆっくりと上がる。

 それに呼応するようにミラベルがゴキリ、と指を鳴らし獰猛な笑みを浮かべた。

 

「ちょ、ストップストップ! 二人共こんな所で喧嘩しないで!

パートナーの二人も止めてよ!」

「もはや拳王の称号は要らぬ……このマーカス、魔王となりて全てを……」

 

 マーカスはもう何か、色々と駄目であった。

 ミラベル一人だけでも正気を失ったのに、更にそこにフラーが加わった事で意識が飛んでしまっている。

 もうミラベルとフラーが何を言っているかさえ理解していないだろう。

 ならばフラーのパートナーであるロジャー・デイビースに手伝ってもらおうとそちらを見るが、彼も何か意味のわからない言葉をブツブツと呟いてトリップしていた。

 

「オケアノスの海はここにあった……あの潮騒こそがオケアノスだったのだ……」

「…………」

 

 こっちも駄目だ、完全に理性がアバダケダブラしてしまっている。

 しかしそれを責める気持ちはイーディスにはなかった。

 同姓の、普段ミラベルを見慣れている自分ですら気を抜けば魅了されかねないのだ。

 男という生き物に生まれ付いたこの二人に抗えなど、口が裂けても言えるものではない。

 

「はいはい、他の人の邪魔になるから! 喧嘩なら後でやって!」

 

 もういっそこの美少女二人だけを別の空間に隔離すべきではないだろうか?

 そんな失礼な事を考えながらイーディスは強引に二人の間に割って入り、睨み合いを中断させた。

 そしてミラベルの腕を引き、その場から連れ出す。

 

「すげえ、あの二人の間に割って入ったぞ……」

「……すごい女だ」

 

 喧嘩を止めただけだというのに、何故か周囲から称賛と尊敬の入り混じった視線を送られてしまった。

 顔が熱くなるのを感じながら内心でミラベルを罵倒する。

 せっかくのパーティーだというのに、何故こんな恥をかかねばならないのだろう。

 そしてそんなイーディスの気持ちを察しもしないミラベルが、至っていつも通りの調子で話しかけてきた。

 

「ところでライナグル、貴様のパートナーは誰なのだ?」

「セオドール・ノット」

 

 フラーから十分に離れた所で止まり、パートナーの姿を探すと丁度、向こうから痩せ気味の男が向かってくるのが見えた。

 スリザリンの男の中ではまあまあの当たり物件だ。

 ミラベルもほう、と感心したように呟いており、面白そうに口元を歪めている。

 

「なかなか悪くないのを選んだな」

「ん……まーね」

 

 照れを隠すように素っ気無く答え、イーディスはさっさとテーブルへと移動した。

 すでに多くの生徒が着席しており、戸惑ったような空気を発していた。

 というのも、目の前に置かれた金の皿には何も乗っていないからだ。

 メニューは手元にあるものの、ウェイターらしき者の姿も見えず、どう料理を頼んでいいのか誰もわからないらしい。

 

「何これ……どうやって頼めばいいの?」

「ふむ。随分趣向を凝らしたようだな」

 

 顔をしかめるイーディスとは対照的にミラベルが面白そうに言い、メニューを見る。

 そして一通り見た後で「カルパッチョ」と呟いた。

 すると彼女の金の皿にカルパッチョが出現し、それでスリザリンテーブルの生徒達もこの斬新な注文の仕方を理解した。

 

「へえ……どうやってるんだろ。ええと、スコッチエッグ……でいいのかな?」

 

 戸惑いながらもイーディスがメニューを読み上げると彼女の前にスコッチエッグが現れる。

 それを見て感心したように声をあげた。

 

「おお、凄い……けど、ハーマイオニーが文句言いそうなやり方だね」

「ああ、そういえば奴は最近『S.P.E.W.(反吐)』なる団体を立ち上げようとしているらしいな」

「『反吐』じゃなくて『Society for Promotion of Elfish Welfare』を略して『S.P.E.W.』らしいよ」

「で、その目的は屋敷妖精の権利向上だったか」

 

 最近ハーマイオニーは何かに取り憑かれたかのように屋敷妖精の権利向上を目指している。

 各寮を飛び回って誰彼構わずメンバーに加えようとしたり、寄付用の空き缶をあちこちに置いたり、道行く生徒を捕まえては長々と演説したりと、かなりアクティブだ。

 だが今の所その努力は実らず、ほとんどの生徒は見向きもしない。

 メンバーもハーマイオニーの他には無理矢理加えられたハリーとロン、それにイーディスだけだ。

 

「グレンジャーは賢いが、時々馬鹿になるな」

 

 屋敷妖精の権利向上……なるほど、字面だけ見れば立派な事だ。

 だがハーマイオニーはどうも屋敷妖精の事を理解せずにその題目を掲げている節がある。

 そもそもからして、肝心の屋敷妖精達が権利の向上など望んで居ないという事を彼女は知るべきだ。

 しかし、ミラベルは必ずしもこの思想に反対というわけではなかった。

 能力史上主義の彼女にとっても、高い能力を誇るハウスエルフ達が無能な魔法使いに扱き使われるのはあまり好ましい事ではない。

 彼らに望まぬ解放を与えようだなどとは思わないが、せめて彼らに相応しい優れた主の下に就けてやりたいとは考えていた。

 そういう意味ではハーマイオニーの思想に半分程ミラベルは同調しているのだ。

 

「あ、ダンスが始まったみたい。あれ、ハーマイオニー……だよね?」

 

 ダンスパーティーの主役は代表選手とそのパートナー達だ。

 音楽に合わせてハリー、フラー、クラム、そしてディゴリーが踊りを披露するが、イーディスはそのうちの一つのペアであるハリー、ハーマイオニーを見て目を丸くしていた。

 “あれは誰だろう”、思わずそう考えてしまったイーディスを、責められる人間が果たしてこの場にいるだろうか?

 

「ああ、あれは間違いなくグレンジャーだよ。

元々あの女は魅力的になれるだけの素質を持っていたのだ。

今まではそれを研かなかっただけに過ぎん」

 

 普段のボサボサな髪とはまるで異なる、滑らかな茶髪を優雅なシニョンにし、薄く化粧を施したその顔は彼女の魅力を存分に引き立てていた。

 身に纏っている青いドレスは驚く程に似合っており、普段背負っている本の山がないせいで余計に雰囲気が違って見えた。

 ハリーと共に踊るその少女は、紛れも無い美少女であった。

 それもミラベルやフラーのような近付く事さえ戸惑われる人間離れした美貌とは違う、隣を歩みたいと思える身近な少女としての美しさだ。

 

「さて、そろそろ私達も踊るとしようか。行くぞ、フリント」

「お、お、おう!」

 

 ミラベルが席を立ち、その後に慌ててマーカスが続いた。

 更にイーディス、セオドールも続きダンスホールへと出る。

 そして音楽に合わせてステップを踏み、一夜の踊りを楽しんだ。

 

 

 第2の課題を前にしての優雅なダンスパーティー。

 こういうのもなかなか悪くないな、と。慣れないダンスに四苦八苦しながらも、イーディスはそう考えた。

 願わくば、この楽しい学園生活がいつまでも続きますように――。

 

 




クラム「パルパルパルパル(ハリーを睨みながら」
ジニー「パルパルパルパル(ハー子を睨みながら」
ニンバス「パルパルパルパル(ファイアボルトを睨みながら」

(゚∀゚三゚∀゚) ∩(・ω・)∩<オチツケ……
なんだかハリーとハー子が少しいい雰囲気になった36話でお送りしました。
そしてクラムはハリーに、ジニーはハー子にジェラシーを感じまくっております。互いに相手の事など見てもいません。
そしてロンは過去にタイムワープし、未来のレジスタンスリーダーの少年を守ってT-1000と激闘を繰り広げています。
まあそのうち帰ってくる事でしょう。

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