ハリー・ポッターと野望の少女   作:ウルトラ長男

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∩(・ω・)∩<アンシンシロ……マダヒコウヲツキキッテハイナイ
皆様こんばんわ。
自分でミラベル書こうと思ったらジャギになってしまったウルトラ長男です。
やはり慣れない事はするもんじゃないですね。
フォーイ。


第41話 超越

 遂に始まった第3の課題、迷路。

 ハリーは今までと違い、一番落ち着いて、そして自信を持って挑む事が出来た。

 迷路は確かに難解だろう。

 そこにいくつもの危険な罠な生物が解き放たれている事だろう。

 だがそんなものは、ハリーにとって今更であった。

 1年の時は賢者の石を守る為に3頭犬や悪魔の罠などを突破した。

 2年の時はトム・リドルと戦い、3年の時は吸魂鬼に囲まれた。

 どれも、命がけの戦いだった。

 それを思えば、この迷路はハリーにとってさほど怖いものではない。

 いざとなれば教師達に助けを求める事も出来る。

 その経験がハリーを後押しし、迷い無く進む事が出来た。

 

 また、状況もハリーの有利に働いてくれた。

 この競技は先の二つの競技における得点が高いほど有利になり、必然的にハリーが一番最初のスタートを切る事になったのだ。

 

 高く聳える、分厚い板垣が迷路の壁だ。

 迷路に入ると観衆の声はまるで聞こえず、水の中のように暗い。

 ハリーは杖に明かりを灯し、急ぎ足でひたすら右手沿いに進む。

 別れ道などに目を向ける事もなく、ただ右の壁に沿って進むこのやり方は『右手の法則』と言い、最も有名な迷路攻略法だとハーマイオニーより教わったものだ。

 

 それにしても不思議な事だ。

 ここまで進んでいるのに、何も障害が現れない。

 罠の一つもなく、邪魔する生物も未だ見ていない。

 それがかえってハリーに不安感を抱かせた。

 おかしい……何かが、変だ……。

 運がいいだけなのか? それとも、これ自体が罠なのか?

 そう考えていると、後ろの方から誰かの悲鳴が聞こえてきた。

 ……セドリックだ!

 セドリック・ディゴリーが何らかの障害に遭い、悲鳴をあげている!

 それから数秒後、声が聞こえた位置から赤い火花が飛ぶのが見えた。

 

 赤い火花を空に上げるのは、棄権の合図。

 つまり、セドリックは何らかの要因により、脱落したのだ。

 

「…………」

 

 ライバルが一人減った。

 それは喜ばしい事だ。

 だが次は我が身かもしれない。あのセドリックすら脱落するような何かが、この迷路にいるのだ。

 

 更にそれから進み、途中でようやく障害らしい障害……真似妖怪と遭遇したりしつつも、ハリーは順調に迷路を攻略していた。

 だが違和感が拭えない。

 順調だ……不可思議なほどに、順調すぎる。

 自分ですらこんな簡単に進める迷路で、あのセドリックが落ちたのか?

 そう思案を巡らせていると、何と今度はフラー・デラクールの悲鳴が響き、空に赤い花火が打ち上げられた。

 それどころか、その直後にはもう一つの火花が打ち上げられ、これで代表選手3人が脱落した事をハリーは知った。

 

(ちょっと待て……僕だけか? もう、ここに残っているのは僕だけなのか!?)

 

 何だこれは。どうなっている?

 順調、どころの騒ぎではない。

 これでは、もう自分の優勝は確定したも同然だ。

 ライバルがいない以上、脱落さえしなければいずれゴールに辿り着く。

 仮に棄権したとしても、ここまでの得点や最後に棄権した事を思えばやはり優勝は間違いない。

 ……ならば、もう、棄権してしまってもいいのではないか?

 

 そこまで考え、ハリーは首を振った。

 いやまて、そう思わせる事がこの迷路の罠かもしれない。

 実際はまだ誰一人として脱落しておらず、あれは自分が見た幻覚か、あるいは偽の火花ではないだろうか。

 そうして油断させて、愚かにも火花を打ち上げて脱落させる……そういう罠という事はないか?

 そうでないにしても、自分から勝負を捨てるのはハリーの矜持が許さなかった。

 

 ――棄権はしない。このまま進む。

 

 ハリーの脳裏に、優勝した自分の姿が思い浮かぶ。

 全校生徒の前で優勝杯を掲げる自分……笑顔で出迎えてくれる皆。

 もしかしたらハーマイオニーが頬にキスくらいしてくれるかもしれない。

 それを思うと、何としても優勝杯が欲しくなってきた。

 どうせ勝つなら、拾ったような勝利ではなく、堂々と誇れる勝利を手にしたい。

 

 もしこの時、ハリーが冷静であったならば……あるいは、違和感をもっと突き詰めて考える事が出来たかもしれない。

 自分だけこんな都合よく、邪魔らしい邪魔もほとんど入らず、他の選手が全滅しているという異常……これをもっと、深く考察出来たかもしれない。

 4年度の始まりの時、ホグワーツ特急で告げられたあの警告を、思い出せたかもしれない。

 

 ――この1年、精々身の回りに気を付ける事だ。

 

 しかしハリーは、その忠告を脳の奥に仕舞いこんでしまっていた。

 勿論最初は警戒していた。

 代表選手などになり、誰かが命を狙っているかもしれない、と恐れた。

 だがここまで来れたという自信と、目の前にある栄光に目が眩んでしまったのだ。

 勝てる……勝ててしまう……!

 14歳の自分が、他の正規の代表選手を出し抜いて勝ててしまう!

 そんな浮ついてしまった心が、ハリーの警戒心を薄れさせた。

 

 そして、不思議なほどに障害のなかった迷路をとうとう抜け、ハリーは優勝杯の前に辿り着いた。

 

 本当に終わりか?

 こんな……こんなものなのか? 最終課題は?

 こんなに簡単でいいのか? 何かおかしくないか?!

 

 不安と期待。喜びと疑念。

 それらが綯い交ぜになり、五月蝿いほどに心臓を高鳴らせる。

 だが事実として自分は今優勝杯の前におり、他には誰もいない。

 ゴクリ、と唾を飲み込みゆっくりと優勝杯に手を伸ばす。

 

 そして――ハリーはそこから消えた。

 

*

 

 姿現しを用いてマグノリア・クレセント通りにある別荘へと飛ぶ。

 屋敷内での魔法行使はある程度魔法省に黙認されているとはいえ、流石に大掛かりな儀式などを本邸で行おうものなら闇祓いが飛んでくるだろう。

 いや、本来ならばミラベルが『武装解除』を用いた時点で誰かが来なければおかしいのだが、そこは皮肉にもヒースコート自身が黙認するよう申請してしまっていた。

 腕利きの闇払いである彼は魔法省に対して多大な発言力を持つ。

 その権力を使えば我が子が行う屋敷内での魔法行使を特例として見逃させる事など造作もなかったのだ。

 だが、結果的にそれが自らの首を絞め、武装解除や磔呪文を受ける羽目になったのだから救われない。

 

「お待ちしておりました、お嬢様」

「うむ」

 

 ヒースコートを伴って別荘に現れたミラベルをクィレルが出迎え、うやうやしく一礼する。

 その横には青い顔をしたサイモン・ベレスフォードが横たわっており、恐怖に目を見開いていた。

 恐らくは石化呪文でもかけられたのだろう。動こうにも動けないようで、視線だけがせわしなくミラベルを捉えていた。

 逆側には亜麻色の髪を後ろで束ねたメイドが控えており、緊張で顔を強張らせている。

 彼女はミラベルがこの日の為に連れてきた『処女』であり、この先に待つ己の運命を知っているからこその恐怖であった。

 

「ミ、ミラベル……貴様、一体何をするつもりなのだ……?」

「まあ黙って見ているがいい。すぐに解るさ」

 

 ヒースコートの問いを無視し、ミラベルは床に描かれた魔法陣の中央へと立つ。

 そして吸血樹から作り出した己の杖を取り出すと、それを床に突き立てた。

 瞬間、魔法陣は金色の光を発し、室内を怪しく照らし始める。

 

「さあ、始めようか。今宵私は人を超え、魔の極地へと至る。

死を超越し、永久に魔法界を支配する王者とならん」

 

 

 

 同時刻。

 リトル・ハングルトン村の協会裏に存在する共同墓地。

 そこにある墓石の一つにハリーは縛り付けられていた。

 何故こんな事になっているのか……それはハリーにもよくわかっていない。

 確かに先程まで彼は対抗試合の第3課題に取り組んでいたはずだった。

 いくつかの障害を抜けて、見事他の3人に先んじて優勝杯を手にしたはずであった。

 しかしその瞬間ハリーはこの墓地へと飛ばされ、そして突然現れたワームテールによって縛り付けられてしまったのである。

 

「準備が出来ました、ご主人様」

 

 ワームテールは目の前にある巨大な石鍋を見ながら、震える声で告げる。

 彼の腕の中には不気味な赤ん坊のような物体があり、モゾモゾと蠢いていた。

 しかしそれは断じて赤ん坊ではない。こんな気味の悪い赤子がいて堪るか。そうハリーは思った。

 こんな赤ん坊らしくない物は見た事が無い。

 頭は鱗に覆われ、顔はのっぺりとしており蛇のようだ。

 ワームテールは嫌悪感を隠しきれない表情で赤ん坊を抱き上げ、そして鍋の中へと投げ入れた。

 鍋の中はボコボコと沸騰する水のような液体で満たされており、ハリーは心の中で「溺れてしまえ」と強く願った。

 そのハリーの願いは、しかし届かない。

 ワームテールは杖を上げ、両目を閉じ、夜の闇に向かって唱える。

 

「父親の骨、知らぬ間に与えられん。父親は息子を蘇らせん!」

 

 

 

「汝、血を分けた我が兄弟よ、その血を我に捧げよ。その命、我が糧となれ!」

 

 黄金の光に満たされた魔法陣の上でミラベルが謳う。

 その声に合わせてクィレルがナイフを取り出し、無造作にサイモンの首に突き立てた。

 悲鳴を上げる暇すらない。

 あまりにも呆気なく、あまりにも無慈悲に、血を分けた実の兄弟であるサイモンの命が奪われたのだ。

 ゴトリ、と床に落ちたサイモンの亡骸から血が吹き出し、赤い霧となってミラベルの周囲へと取り込まれていく。

 

 

 

「しもべの肉……よ、喜んで差し出されん。……しもべは……ご主人様を……蘇らせん」

 

 ワームテールは唱の内容とは裏腹に、全然嬉しくなさそうな声でヒーヒー泣きながら腕を出す。

 そして恐怖に凍りついた啜り泣きを上げながら、銀色に光る短剣を腕に当て、一思いに振り切った。

 瞬間、響く絶叫。

 切り落とされた右腕が鍋の中に落ち、液体の色を真紅へと染め上げていく。

 自ら成した事とはいえ、ワームテールはその痛みに泣き叫び、無様に地面を転がった。

 

 

「汝、無垢なる乙女よ。我に永遠の忠誠を誓うか? その穢れのない肉体を捧げ、我が永遠の僕となるか?」

 

 答えの解り切った問い。それを己の忠実なメイドへと投げかける。

 すると亜麻色の髪のメイド……メアリーはミラベルの側に行き、覚悟を決めた殉教者のような表情で静かに言う。

 

「貴女が、それを望むなら」

 

 満足のいく返答だ。

 ミラベルは静かに、いっそ優しさすら感じさせる笑みを浮かべてメアリーを抱き寄せる。

 そして彼女の首筋を2度、3度と優しく舐め、指を這わせた。

 ――そして、次の瞬間、その白い首筋に喰らい付いた。

 

 

 

「敵の血……力ずくで奪われん……汝は……敵を蘇えらせん」

 

 痛みで喘ぎ、呻きながらもワームテールの詠唱は止まらない。

 彼は銀の短剣をハリーの右腕に突き立て、その血を薬瓶へと入れる。

 そしてその血を鍋に入れれば、真紅の液体は眼も眩むような白へと変化した。

 頼む、溺れてしまえ……失敗してくれ……そうハリーは強く願う。

 だがその願いに反し、鍋からは白い蒸気が立ち上がり、骸骨のように痩せ細った黒い影がゆっくりと起き上がる。

 骸骨よりも白い顔、真紅に染まった不気味な瞳。蛇のように平らな、切れ込みを入れたような鼻腔。

 人からは到底かけ離れた醜く、恐ろしい姿。魂の理を否定したが故の呪われし外見。

 

 これこそが闇の帝王。

 英国魔法界全てを恐怖に陥れ、名を呼ぶ事すら禁忌された恐怖の化身。

 未だ人の身でありながら、しかしどこまでも人間離れしたおぞましい生き物。

 ――ヴォルデモート卿が、復活した。

 

 

 

「神よ、統ての父よ! 私は貴様を否定する!

貴様の敷いた命の理を、今踏み越える!」

 

 もはや眼も開けていられないほどの黄金が全てを満たし、生贄の血がミラベルへと注ぎ込まれる。

 血を分けた家族を殺すという『罪』。

 穢れ無き身を生贄に捧げるという『業』。

 その二つを以て魂を変質させ、人外へと至るのがこの魔法だ。

 ある意味では、他者を殺して魂を裂く分霊箱と非常に似通っていると言えるだろう。

 外見こそ変わらず、しかし体細胞は怪物のそれへと作り変わる。

 生命活動が止まり、時が止まり、生者から生ける屍へと生まれ変わっていく。

 陽の光を嫌悪し、夜の輝きたる月の光こそを至上とする祝福されざる存在。

 神の敷いた法を真っ向から全面否定する愛すべからざる光。

 黄金の瞳が禍々しく輝き、生来生まれ持っていた覇者の威圧と魅了は更に強く、真紅へと染まった爪は長く伸び、牙のようだった犬歯は本物の牙へと生え変わる。

 

 この姿こそ、神の愛を否定し、夜を統べる邪悪なる王の姿。

 『真祖』! 『吸血鬼』! 『ヴァンパイア』! 『ノスフェラトゥ』! 『ドラキュラ』!

 様々な文献に登場し、あらゆる呼び名で呼ばれる不死者の王。

 その呪われながらもしかし、果てしなく美しい化物が、光の中からゆっくりとその姿を現した。

 

 

 

「クッ、ククククク……」

 

 ミラベルが嗤う。

 生まれ変わった己の姿を見て、歓喜に唇を歪める。

 

「フフフ、フハハハハ……」

 

 ヴォルデモートが嗤う。

 青白い指で己の身体を愛おしそうに撫で、勝ち誇ったように口端を歪める。

 

「フハハハハハッ……」

 

 試しに魔力を解放すればどうか。

 たったそれだけで黄金の旋風が吹き在れ、室内を激しく揺らすではないか。

 今ならば何が相手でも負ける気がしない。

 このミラベルは、今、あらゆる生物をぶっちぎりで超越したのだッ!

 

「ハハハハハハハハッ!」

 

 杖を上げてワームテールへと向ける。

 すると彼は抵抗すら出来ず墓石に叩き付けられ、惨めに地面を転がった。

 これだ、この魔法力だ。今ならば何が来ても恐れる事はない。

 このヴォルデモートは今、あらゆる存在を上回るかつての力を完全に取り戻したのだッ!

 

「「ハーッハッハッハッハッハッハッハ!! アーハハハハハハハハッ!!!」」

 

 ミラベルが嗤う。ヴォルデモートが嗤う。

 これは何の偶然か、運命の悪戯か。

 今新しく産声を上げた黄金の暴帝と、力を取り戻したかつての闇の帝王。

 新たなる邪悪と旧き巨悪。

 

 

 その両者が同時に、遠く離れた地で高笑いをあげていた。

 

 




DIO「新しい邪悪が誕生したと聞いてJOJOから来ました」
レミリア「吸血鬼と聞いて東方から(ry」
アルクェイド「真祖と聞いて(ry」
エヴァンジェリン「デイライトウォーカーと聞いて(ry」
黄金の獣「死者の王と聞いて(ry」
ミラベル「この面子……負ける気がせん!」

ヴォルデモート「帰って下さいお願いします(お辞儀」

∩(・ω・)∩<ハンニンマエノワザデハオレハタオセンゾ!
今回は第3の課題、ヴォルデモート復活、ミラベル吸血鬼化でした。
そしてセドリック、地味に生存。
まあ生存してもそこまで活躍はしませんが。
それではまた明日、お会いしましょう。

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