ハリー・ポッターと野望の少女   作:ウルトラ長男

68 / 85
(*´ω`*) 皆様こんばんわ。皆様のおかげで遂に累計1位に入る事が出来ました。
登録してより65日……長い道のりでした……。


ハリー・ポッターと野望の少女編
第64話 8人のポッター


 プリベット通り4番地にあるダーズリー家。

 そこはハリーにとって決していい思い出がある場所とは言い辛い。

 だがそれでも、そこはハリーの家であった。

 ハリー自身がどう思おうと、ハリーを守ってきた場所であった。

 母が遺した護りの魔法によって、ハリーをずっと死喰い人達から守った場所だったのだ。

 だがそれも、17歳の誕生日と共に終わる。

 この護りは成人を迎えるまでの間、ハリーが家と認識する場所に1年に1度帰る事で持続し、彼を保護する力を備えていたのだ。

 だが17歳の誕生日を迎えれば護りは失われ、ヴォルデモート達が一斉に攻め込んでくるだろう。

 そうなる前に、ハリーはこの家を出る必要があった。

 

「ハリーよ、準備はよいか?」

「はい、先生」

 

 この家に、もうダーズリー一家はいない。ヴォルデモートが襲撃する前に魔法使い達によって安全な場所へ移動させられたからだ。

 代わりにここにいるのは、ハリーを守る為に集結した頼もしい仲間達である。

 ガッシリした身長のロン。

 豊かな髪を後ろで縛り、三つ編みにしたハーマイオニー。

 フレッドとジョージの双子コンビと、相変わらずハンサムなビルのウィーズリー兄弟。

 ビルに寄り添うように立つフラーに、禿げ頭が眩しいウィーズリーおじさん。

 歴戦の闇払いであるマッド・アイ・ムーディの隣に控えるのは弟子のトンクスだ。

 名付け親のシリウス・ブラックとその友人であるリーマス・ルーピンは頼もしい笑みを浮かべ、天井に頭が届く巨体のハグリッドは落ち着きなくソワソワしている。

 黒人のキングズリーと、不機嫌そうな顔をした蝙蝠のような魔法使い、スネイプ。

 そして先ほどハリーに準備の有無を問うた大魔法使い、ダンブルドア。

 ここにいるのはスネイプを除き、ハリーの大好きな人達だった。

 その仲間達が、命の危険を承知で集まってくれた事に喜びを感じずにはいられなかった。

 

「ハリーよ、計画は変更じゃ」

 

 ダンブルドアが昔から変わらぬブルーの瞳を輝かせながら、話す。

 

「パイアス・シックネスが闇の陣営に寝返ってしまった。

シックネスはこの家を『煙突飛行ネットワーク』で繋ぐ事も『移動キー』を置く事も、それどころか『姿現し』で出入りする事すらも禁じてしもうた」

 

 魔法執行部部長であるパイアス・シックネスが持つ権力は脅威だ。

 彼が決めたこれらの取り決めを破れば犯罪者の烙印を押され、監獄に送られてしまう。

 建前上は出入りを禁じる事でハリーを守るというものだが、その実はハリーを無事に家から出さない為の行動であった。

 

「そして君にはまだ『臭い』がついておる」

「臭い? 僕、別にそんなもの……」

「ああ、『臭い』というのは魔法省が使用しておる“未成年者の周囲で行われた魔法行為”の探知魔法じゃ。本当に臭うわけではない」

 

 ハリーの疑問に、ダンブルドアが朗らかに笑いながら答える。

 この『臭い』は最も厄介な事柄の一つだ。

 これがある限り、姿現しなどでハリーを連れ出せばシックネス経由で死喰い人にハリーの場所が伝わってしまう。

 

「そこで『臭い』を辿れない方法で家を出る。箒、セストラル、そしてハグリッドのバイクじゃ。

何せこれらは魔法をかける必要がないからのう」

 

 これは『姿現し』などの瞬間移動に比べれば途中で襲撃される危険が高い方法だ。

 だからこそ、これほど多くの護衛役が来たのだろう。

 ハリーは改めて事の重大さと、自分の立ち位置の重要さを思い知らされた。

 

「我々にとって有利なのはヴォルデモートが今夜の出発を知らぬ事じゃ」

 

 ヴォルデモート側には“30日まで出発しない”というガセを流してある。

 もしスネイプがまだスパイとして機能していれば、あえて正しい情報をスネイプ経由で与えてヴォルデモートの信頼を得るという手もあったのだが、それはナルシッサを連れ出した瞬間に崩れ去った。

 スネイプもそれなりの細工はしたようだが、残念ながらスパイであった事はすでに露呈してしまっている。

 だからこそ彼は今、ここにいるのだ。

 

「出発したらハリーよ、君はトンクスの家へ向かうのじゃ。

そこにはわしらがかけておいた保護呪文がある。移動キーも使えるようになるはずじゃ」

「それはわかりました……けど、ここにいる全員でトンクスの家に行ったら目立ちませんか?」

「ああ、その心配はない。16人全員がトンクスの家に向かうわけではなく、今宵は8人のハリー・ポッターが空を飛ぶのじゃ」

 

 そう言い、ダンブルドアは懐から泥のような物が入ったフラスコを取り出した。

 その薬はハリーも知っている。

 『ポリジュース薬』……髪の毛を入れる事でその人物に成りすます魔法薬だ。

 

「駄目だ!」

 

 ハリーは計画の全容を一瞬で理解した。

 事もあろうに、この計画は7人の囮を用意する事でハリーを危険から遠ざけるという危険極まりない策なのだ。

 ハリーは、自分が傷付き死ぬ事を今更恐れたりはしない。

 だが自分の為に他の誰かが傷付く事は何よりも怖かった。

 しかしダンブルドアは無情にもハリーの言葉を一蹴し首を横に振る。

 

「ハリーよ、必要な事なのじゃ。

ヴォルデモートが待ち受けておるかもしれんし、魔法省の半分はすでに敵じゃ。

この家の大体の位置も既にバレておるじゃろうし、間もなく護りの呪文も失われる。

しかも、最悪の場合ヴォルデモートだけではなくミラベルが出て来る可能性もあるのじゃ」

「でも!」

「わかっておくれ、ハリー」

 

 ダンブルドアの透き通った青の瞳に見詰められ、ハリーはそれ以上何も言えなくなる。

 皆が死ぬくらいなら自分が死んだ方がいい、と思う。

 しかし同時に自分という存在が持つ重要性も分からぬ程子供ではなかった。

 ハリーは苦渋に満ちた顔をして髪の毛を数本引き抜き、泥状の液体の中に投げ入れた。

 するとポリジュース薬は金色の透明な液体に変化した。

 同じ黄金でも、ミラベルのような自己主張の激しい暴力的な黄金ではない。

 どこか優しさを感じさせる、澄んだ金色であった。

 

「わあ、ハリー、貴方ってベレスフォードのより美味しそう」

 

 ハーマイオニーの賞賛に、ハリーは照れくさそうに頬をかく。

 するとフレッドとジョージがヒューヒューと口笛を鳴らし、二人をからかった。

 

「さあ、ハリーに化ける者達は並んでおくれ」

 

 ダンブルドアに言われ、メンバーの中から7人が歩み出てフラスコの前に整列する。

 ロンとハーマイオニー、フレッドとジョージ、フラーとトンクス、そしてシリウスだ。

 彼等は一斉にポリジュース薬を飲み、ハリーへと変化する。

 それから服を着替え、眼鏡をかけ、寸分違わぬ8人のハリーが並ぶ事となった。

 どれが本物なのか、見分ける事は困難だろう。

 

「よし、次に組み合わせを決めよう。

まずわしは、ジョージ・ウィーズリー君じゃ」

 

 ダンブルドアの言葉にハリーが驚いた。

 てっきりダンブルドアが自分に同行するものとばかり思っていたので、これは意外であった。

 

「あの、先生……僕はてっきり先生が僕と一緒に来て下さるものかと」

「うむ、その考えは正しい。そしてきっとヴォルデモートも同じように考えるじゃろう。

じゃから、わしはあえて他の者に付く事にしたのじゃ」

 

 ダンブルドアの隣は世界で最も安全な場所だ。

 故に本物のハリーを置くならそこしかない。誰もがそう考えるだろう。

 だからこそダンブルドアはあえてそれを逆手に取った。

 自分が側にいる事で本物にヴォルデモートが近付かないようにしたのだ。

 

「キングズリーはハーマイオニー・グレンジャー嬢。

ムーディはシリウス、アーサーはフレッド。

ハグリッドはロナルド・ウィーズリー君についておくれ」

 

 組み合わせを発表され、それぞれがパートナーの隣へと移動する。

 

「フラー嬢はビル・ウィーズリー。

トンクスはリーマスがいいじゃろう」

 

 組み合わせが次々と決まり、それぞれがパートナーの場所へと向かう中、ハリーは冗談じゃないと心の中で叫んでいた。

 これがどうして不満を持たずにいられよう。

 自分の側に来るのはダンブルドアだと思っていた。

 それが無理ならシリウスかルーピンだと思いたかった。

 いや、そうでないとしても他の誰かだと信じたかった。

 だがこれは……これだけはないだろう!?

 

「セブルス……ハリーを頼むぞ」

「……校長がそう言うのならば」

 

 よりにもよって、スネイプ!

 最悪、としか言いようが無い。

 ここで決まったパートナーとは即ち、命運を共にする相手だ。

 背中を預ける存在なのだ。

 だが……正直に言うならばハリーは、スネイプは背中を預けるに値しないと思っていた。

 個人的な嫌悪感は勿論あるが、それだけではない。

 この男は死喰い人だった過去を持つ男だ。そして、シビル・トレローニーの『予言』をヴォルデモートに話した張本人でもある。

 こいつが『予言』をヴォルデモートに教えたからこそ、ヴォルデモートは自らを滅ぼす者を殺すべく行動し、結果ハリーの両親が死んだのだ。

 いわば間接的に両親を殺した、憎き仇!

 背中から撃ってやりたいと思いこそすれ、背中を預けるなどとんでもなかった。

 

「せ、先生!」

「変更はなしじゃ、ハリーよ。わしはセブルスこそ本物の君を隠すのに最適と判断した。

スパイとはいえ、以前までヴォルデモートの配下だった男に本物を託しはしないだろうと、敵も思うはずじゃ」

 

 その判断は確かに正しくはあった。

 少なくともダンブルドアやシリウスが一緒にいるより、余程ハリーらしくない。

 だが、そう分かっていてもハリーは抵抗を感じていた。

 理屈など関係なく、この男と一緒にいるのが堪らなく嫌だった。

 

「さて……ハリーや、ファイアボルトを貸してもらえるかね?

それがあった方がより本物らしくなる」

 

 ハリーが箒に乗る事を得意とし、そしてファイアボルトを愛用している事はすでに死喰い人も知るところだ。

 というよりはスパイ活動をしていたスネイプが信頼を得るために公開した情報なので、知っていて当然である。

 ハリーは非難するようにスネイプを睨んだが、スネイプはまるで気にした様子もなくそっぽを向いた。

 

「ハリー。君はセストラルで……」

「先生、僕も箒に乗ります」

 

 セストラルに乗るよう促すダンブルドアであったが、ハリーはそれに従わなかった。

 スネイプを信用するなどどうかしている。自分が箒に乗らない事こそこいつの計画かもしれないじゃないか。そうハリーは考えたのだ。

 スネイプは信用出来ない。こいつは敵だ……父と母を死に追いやった敵なのだ。

 そして、その敵が護衛役になってしまった以上、いざという時信頼出来るのは自分の技量だけだ。

 

「ファイアボルトがなくても、僕にはニンバス2000があります。お願いします先生。

僕は僕自身の力で己の身を守りたい」

 

 これは、実質上の『スネイプは一切当てにしていない』宣言と同義だった。

 もとより、隠す気すらない。

 今までの嫌悪とはわけが違う、仇に対する絶対的なまでの怒りと憎悪がそうさせていた。

 

「……わかった。ハリーよ、君が箒で飛ぶ事を認めよう。

じゃが、どうかわかっておくれ。セブルスもまた、君を護る為にここにいるのだと」

「…………」

 

 ハリーは返事を返さなかった。

 ダンブルドアの事は尊敬している。いつだって正しいと思っている。

 だが彼とて人間だ……間違える事もあるだろう。

 だから、思うのだ。

 スネイプを信用した事は、きっとダンブルドア唯一の間違いなのだ、と。

 

「出発すべき時間まで3分を切った。

鍵は閉めずともよい……どうせ無駄じゃろうからな」

 

 ハリーは荷物を纏め、玄関に出た。

 まずはリュックサック。中にはシリウスからもらった鏡やプリンスの教科書などの大切な物が入っている。

 このプリンスの教科書は去年1年の間ハリーを助けてくれた宝物だ。

 結局プリンスが誰なのかは分からなかったが、手放す事など考えられなかった。

 それからヘドウィグを入れた鳥籠。

 彼もまた大事な友達だ。置いて行く事など出来ない。

 

「では、心の準備はよいな? 皆、無事でまた会おう!」

 

 ダンブルドアが出発の合図を発する。

 それと同時に全員が飛び立ち、分散した。

 ハリーもまたスネイプの事など見もせずに飛び上がり、大空を翔ける。

 数年ぶりに乗ったニンバス2000はファイアボルトには劣るものの、ハリーが始めて乗った箒で、そして今でも暇を見ては手入れをしていた大事な相棒だ。

 その乗り心地は以前から変わる事なく、素晴らしい速度で景色が後ろへと流れていった。

 

「何をしている! 先行し過ぎだ、ポッター!」

 

 スネイプが怒声を発しながらハリーの後を追う。

 護衛役と離れるのは得策とは言い難い。

 だがハリーは気にする事もなく、それどころか更に速度を上げてスネイプを引き離そうとした。

 これには流石にスネイプも腹が立ったのか、先程よりも更に強い語調で叫ぶ。

 

「いい加減にしろ! これは子供の遊びではないのだ!

お前を守る為にも近付いて行動せねばならん!」

 

 スネイプの言葉にハリーは内心で嘲笑った。

 守る? 笑わせてくれる。

 父を憎み、母を蔑んでいた男にそんな感情があるものか。

 今だってきっと、いつ後ろから攻撃してやろうかと考えているに違いない。

 

「そうやって信用させて僕をヴォルデモートに売り渡す気なんだろう? 父さんと母さんのように!」

 

 『選ばれし者』がヴォルデモートを打ち倒すという予言をしたのはシビル・トレローニーだ。

 彼女は本人すら自覚出来ていないが、極稀に本物の予言をする事がある。

 だからこそ、無能でありながらホグワーツにいる事を許されているのだ。

 そしてその予言をスネイプは盗み聞きし、当時死喰い人であった彼はヴォルデモートに予言を教えてしまったのだ。

 結果としてそれは途中まで盗み聞きしただけの中途半端なものであった為、肝心の『選ばれし者』が誰かわからず、『3度抗った両親の元に産まれる』という部分しか伝えられなかった。

 

 そしてそれが、最大の不幸だった。

 

 ヴォルデモートはその『選ばれし者』がポッター夫妻の元に生まれる子供だと判断してしまったのだ。

 結果、ジェームズ・ポッターとリリー・ポッターは殺され、ハリーは額に稲妻型の傷を負わされてしまう事となった。

 そう、両親の死の原因はスネイプにあったのだ。

 その事を知ったハリーはダンブルドアに直訴し、何故あんな男を教師にしているのかと問い詰めた。

 だがダンブルドアはそれに確かな答えを返さず、ただ『彼は悔いている』とだけ言った。

 それがまたハリーの不満を蓄積させたのだ。

 

 悔いている? そんなはずはない。

 あいつは父を憎み、母を蔑んでいた。

 きっと自分の両親が死んだ時もざまあみろと高笑いしていたに決まっている。

 そんな奴をどうして信頼出来る? どうして仲間だなどと思える?

 故にハリーはスネイプを信じないし認めない。

 こいつは仲間ではない、敵だ、と。

 

「何を……!」

「知っているぞ! お前が予言をヴォルデモートに教えた事も、それが原因で父さんと母さんが殺された事も!」

「――!」

 

 それは、不満の爆発であった。

 あるいはダンブルドアが彼にしっかりとした説明をしていればこうはならなかったかもしれない。

 だがハリーに与えられた情報は信ずるに足らない物ばかりで、無条件でスネイプを信用しろというものであった。

 その結果がこの重要な場での暴発である。

 

「さぞいい気分だったろうな! お前は母さんがどうやって死んだかも知らないだろう?

僕の命乞いをして、ヴォルデモートに虫ケラのように殺されたんだ! 全てお前が引き起こした事だ!」

「……ッ」

 

 ハリーの言葉に、スネイプの顔が怒りとも悲しみとも取れる歪んだものになる。

 だがハリーはその顔に、ただ苛立ちだけを感じた。

 そんな顔をしても騙されるものか。こいつに後悔なんてあるわけない!

 

「僕はお前を信じない。お前は母さんの仇だ!」

 

 

 その言葉は深く、ナイフのようにスネイプの胸を抉った。

 決して消えぬ罪と過ち。それが今、言葉の刃となってスネイプに突き刺さったのだ。

 

 




ニンバス2000「きた、きたわよこれ。私の時代きたわよ!
イヤッホォォォウ! ニンバス無双の時間じゃー!」
ファイアボルト「あ、お前の出番これで終わりだから」
ニンバス2000「」

(*´ω`*)というわけで皆様こんばんわ。
今回より最終章のハリーポッターと野望の少女編スタートです。
ちなみに原作は前章で木っ端微塵になってしまいましたので、ほぼオリジナルですね。
スネイプも最初から味方側におり、ダンブルドアとシリウスも生存しております。
条件としては最高の条件でのスタートと言えるでしょう。
ただし難易度は原作より少し高いのでまあバランスは取れているはずです。
それではまた明日、お会いしましょう。

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。