シンとレンの十二の冒険   作:kuraine

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第33話 レイナ

 数日が経ち、二人はエルナまで後数分というところまで近づいていた。ここまで来ると、気温は今までより更に下がり二人は厳しい寒さに曝されていた。

 

「とんでもなく寒いんですけど。」

 

「あともうちょっとでエルナです。我慢して下さい。」

 

 肩を手で擦って温めながら言っていたシンに、レンは寒さに慣れているようでほんのり顔が赤くなるぐらいで、今までと特に変わった様子も無く言った。暫く歩くと、二人の視界に村らしきものが見えてきた。

 

「あれがエルナです。」

 

「遂にここまで来たんだな。」

 

「ええ。」

 

 エルナが見えた時、二人は今まで一緒に旅をしてきた何気無い日々やダンジョンを攻略した時の事を思い出していた。だが、それと同時にレイナの事が気になった。二人はレイナの事を心配しながら歩き、エルナに着いた。エルナはログハウスが数十軒しかない小さな村だった。

 

「これがエルナの村か……」

 

「はい、こっちです。」

 

 シンがエルナの村を見渡していると、レンが先導して村の中を進んでいく。二人が村の中を歩いていると薪を運んでいた中年の男がこちらを向いた。すると、レンに気づいたのか薪を持っていた中年の男が薪をその場に落とし、慌ててこちらに向かってきた。

 

「レンちゃん!帰ってきたのか!」

 

「はい。たった今、戻ってきました。」

 

 慌てて近づいてきた男に、レンは冷静に返事を返した。

 

「今すぐに長老の家に行ってくれ。レイナちゃんが……」

 

「……ッ!!」

 

 中年の男がそう言った瞬間、レンが最後まで聞かずに走り出した。

 

「おいっ!レン!」

 

 シンがそう言ってもレンは止まらず、シンはレンに置いて行かれないように後を追いかけた。すると、レンがとあるログハウスの階段を駆け上がって、ドアノブに手を掛けた。レンはドアの前で少し止まっている。シンは何とかレンに追いつこうとしたが、階段を上ろうとしたところでレンがドアを勢いよく開けた。

 

「レイナ!!!」

 

 レンがレイナと呼びながら勢いよくドアを開けると中に入っていく。シンもその後を追い、中に入る。すると、シンの目に飛び込んできたのはベッドに横たわる痩せこけた女の子の右手を握るレンの姿だった。その横には恐らくレンの話していた長老とその妻だと思われる老夫婦が椅子に座っていた。

 

「レイナはもう一ヶ月近くは、水を辛うじて飲むぐらいで、食べ物を食べれていなんじゃ……」

 

「そんな……、レイナは今どんな状態なの……」

 

 レンが涙を流しながら長老に聞いた。

 

「レイナはいつ死んでもおかしくない状態だそうじゃ。ここ一ヶ月ぐらいからますます容態が悪化してな、医者にも診てもらったが施しようが無いと言われてしまったんじゃよ……」

 

「そん……な……」

 

 レンがレイナの右手を両手で握りながら泣いている。それを見ていたシンは何だか心苦しかった。

 

「あんた、レンのお連れさんだね?こっちに座りなさい。」

 

 長老の妻がシンに話しかけてきた。シンは言われた通りにベッドのそばにあったレンの後ろの椅子に座った。

 

「………」

 

 シンは何か自分にできる事が無いかと考えてはみるものの、どうしようも出来ない事に遣る瀬無さを感じていた。

 

「こればっかりはどうしようも出来ない事さね。あんたは何も悪く無いさね。見守ってやんなさい。」

 

 シンが重い面持ちでいるのを見た長老の妻が話しかけてきた。シンは何も言わずただただ頷いた。

 

「レンが出て行ってから、レイナはお姉ちゃんに会いたいと口癖のように言っていての、レイナが死ぬ前に戻ってきて良かったわい……、ワシらにはどうする事も出来んからの……」

 

「ごめん……レイナ……、見つけられなかったよ……」

 

 長老からレンがこの村から出て行ってからのレイナの事を聞いたレンは、責任を感じてか、涙を流しながらレイナに謝った。その時だった。レイナの目が薄っすらとだが開いた。

 

「……ッ!!レイナ!!!」

 

 レイナが目を薄っすら開けた事に気づいたレンがレイナの名前を呼んで、手を握りながらレイナの顔にレンが顔を近づけた。薄っすらと開いている目の隙間からは碧色の瞳が見えていた。

 

「レイナ!!聞こえる!?私よ!レンよ!」

 

 レイナに向かってレンが話しかける。レンの目からは大粒の涙が流れていて、頰を伝い、ぽたぽたとレイナの肌に落ちていた。まるで、レイナが涙を流しているように見えるぐらい、レンは涙を流していた。するとその時、レイナの口がほんの僅か動いた。

 

「…………ぇ……」

 

「…………うん」

 

 レイナは今にも消えてしまいそうな声で言った。そこに居た全員が何と言ったか聞こえなかったが、レンにはそれが何と言ったのか分かったようだった。レンがうんと言うと、レイナはほんの僅かだけ頰をピクリと動かした。すると、今まで薄っすら開いていた碧色の目が徐々に見えなくなっていく。

 

「レイナ!!!!」

 

 レンはレイナの名前を叫んだ。だが、レイナの碧色の目は徐々に見えなくなっていく。そして、次の瞬間、碧色の目が完全に見えなくなった。

 

次回、レンの涙

 

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