シンとレンの十二の冒険   作:kuraine

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第53話 シンが旅する理由

 みんなで雑談をしていると、リビングの窓から夕陽が射し込んでいた。

 

「お母さん、お腹空いた!」

 

「そうね、そろそろご飯作ろっか。」

 

 リアナが元気に言うと、モナが席を立ってそう言った。

 

「私もお母さんのお手伝いする。」

 

「ありがとう。」

 

 リアナも席を立ってそう言うと、モナがリアナに笑顔でお礼を言った。

 

「私も何か手伝いますよ。」

 

「いえいえ、お客さんに手伝ってもらう訳にはいかないです。ゆっくりしていて下さい。」

 

 レンは何もしないのも悪いと思いそう言ったが、モナもお客さんに手伝ってもらう訳にはいかないと遠慮がちに断った。

 

「そうですか?ありがとうございます。」

 

「そんな、お気持ちだけで充分です。それに私にはリアナがいるので。」

 

 レンは申し訳なさそうにお礼を言った。すると、お礼を言ったレンにモナはきまりが悪そうに返事をした後、リアナの事を見て頭を撫でた。リアナは自分が頼りにされた事が嬉しかったのか満面の笑みをしていた。

 

「じゃあ、作ろっか。」

 

「うん!」

 

 そう言うと、リアナとモナはリビングの隣にあるキッチンに行った。

 

「仲が良いんだな。」

 

「ああ、うちも含めてこの村の人はみんな仲が良い人ばかりなんだ。」

 

「へ〜、良いですね。」

 

 仲の良い親子の様子を見ていて、二人は微笑ましかった。

 

「本当に、グラートさんには感謝しても仕切れないぐらいだよ。」

 

「そういえば、グラートは数日前にこの村を出たんだよな?」

 

 タークがそう言うと、グラートという名を聞いたシンが思い出してレンに聞いた。

 

「お食事処の店主から聞いた話だとそうだね。」

 

 レンはシンの問いに、店主から聞いた時のことを思い出しながら言った。

 

「会えると良いな、今度こそ。」

 

「うん。」

 

 シンがそう言うと、レンは頷いて返事をした。

 

「グラートさんならうちの馬車でリネオスまで行ったから追い付くのは厳しいな。」

 

「そうか……、まあでも、何も手がかりがなかった時と比べたら大分楽だからな。リネオスに行ったら一度、城に行ってエルフィンたちに会って探してもらうのも良いかもしれないな。」

 

「うん、お願いしてみよっか。」

 

 二人はタークからグラートが馬車でリネオスに向かい、追い付く事は難しいと聞かされたが、シンは楽観的に考え、リネオスにグラートが行ったのなら、エルフィン達にグラートを探すのを手伝ってもらう事を考えた。レンもシンの考えを聞いて、賛成した。

 

「二人はリネオスの城に知り合いがいるのかい?」

 

「えっと……」

 

 タークが二人の会話を聞いてそんな質問をしてきたので、リネオスであった事を簡単に話した。

 

「なるほど、そういう事だったのか。それなら、リネオスにグラートさんが留まってくれてさえいれば、会う事が出来るかもしれない。」

 

 二人がリネオスで何があったか説明されたタークがそんな事を言った。

 

「はい、後はリネオスに着いてからだね。」

 

「そうだな。」

 

 こうして、二人はリネオスに着いてからの予定を話し合った。すると、リビングにキッチンの方からリアナがきた。

 

「ご飯が出来たよ!」

 

「今、全部持ってくるので少し待ってくださいね。」

 

 リアナがそう言うと、後ろからモナが料理が盛られた皿を持ちながら言った。それからテーブルには次々と料理が並べられた。全て揃うと、モナもリアナも席に着いた。

 

「いただきま〜す!」

 

「いただきます。」

 

 リアナが先にそう言うと、みんなもリアナに続いて、夜ご飯を食べた。それから、夜ご飯を食べ終えると、順番にお風呂に入った。その後、二人はリビングでリアナ達と少し話をしていると明日に備えて早めに寝る事にした。

 

「それじゃあ、おやすみなさい。」

 

「おやすみ、レンお姉ちゃん、シンお兄ちゃん。」

 

「おやすみ。」

 

 二人はこうして挨拶をした後、リビングを後にして二人が寝る寝室に行った。寝室に行くと、二人はそれぞれのベッドに入った。ベッドはふかふかで、二人の旅の疲れを癒してくれるようだった。

 

「ねえ、シン。起きてる?」

 

「起きてるけど、どうかしたのか?」

 

 シンがベッドに横になっていると、レンが話しかけてきた。

 

「リネオスでグラートを見つけたらシンはどうするつもりなの?」

 

「そうだな……、俺は適当に旅をして兄さんを探すかな。」

 

「そっか……」

 

 シンの言葉を聞いたレンが何か考えているように言った。

 

「ねえ、聞いても良い?お兄さんの事。」

 

「……そうだな……」

 

 レンの問いにシンは何かを考えているようだった。レンはそんなシンの事をただじっと見つめていた。

 

「……あの日は雲が多くて、どんよりとした日だった。俺はその日、家に両親と一緒に居たんだ。いつもは兄さんと一緒に故郷の村の周辺を歩いて、動物を狩ったりして競争していたんだけど、その日は珍しく兄さんだけで狩りに行ったんだ。兄さんが家を出てから暫くして雨が降ってきたから家族で心配してたんだけど、夕方頃になって兄さんが帰ってきた。心配していた父さんが兄さんに近づいて行った時だった。朝、家を出て行った時には無かった腰に携えていた剣を父さんに突き刺した。剣は父さんの心臓に刺さって手遅れだった。そしたら今度は母さんに向かって剣を向けた。何が起こったか、咄嗟の事で理解が出来なかったけど、このままだと母さんも殺されてしまうと思った俺は、兄さんの手を抑えてなんとか防いだ。だけど、俺は兄さんに蹴り飛ばされた。そして、兄さんはこれさえあれば何でも出来るとかよくわけの分からない事を父さんを刺した剣を見ながら言って、そのまま何処かに姿を消した。これが、俺が兄を探している理由だ。」

 

「そんな事があったなんて……」

 

 シンの話を聞いたレンが驚きながらも、少し下を見て、落ち込んだ口調で言った。

 

「それから俺は父さんの埋葬を済ませて、色々と準備をしてから故郷を出て、兄さんを探す旅に出たって訳だ。こんな話をして悪いな。」

 

「ううん、そんな事無い。私こそ聞いちゃってゴメンね。」

 

 シンは人に話す事では無いと思いレンに謝ったが、レンはそんなシンに優しい口調で言った。

 

「そんな事ない。今日はもう寝よう。明日からまた馬車の旅が始まる訳だし。」

 

「うん、そうだね。おやすみ。」

 

「ああ、おやすみ」

 

 二人はこうして眠りに就いた。そして次の日の朝、二人はリアナ達と食事を済ませると、リネオスまで準備を済ませて馬車に荷物をのせた。

 

「俺は店があるからリネオスに送る事が出来なくて悪いな。リネオスまでは一週間程度だから気をつけてな。」

 

「ああ、世話になったな。ありがとう。」

 

 心配して言ったタークにシンがお礼を言った。

 

「グラートさんに会ったら、よろしくお伝え下さい。」

 

「はい。」

 

「レンお姉ちゃんもシンお兄ちゃんも元気でね。」

 

「うん、ありがと。」

 

 モナとレンが話していると、リアナが会話に入ってきた。レンはそんなリアナの頭を撫でると、リアナは満面の笑みで幸せそうな顔をしていた。会話を済ませて二人が馬車に乗り込むと、馬車が動き出した。すると、リアナ達が手を振っていたので二人も振り返した。こうして、二人はリネオスに向かい、エスタルトを後にした。

 

次回、二回目の王都リネオス

 

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