「これ、どうやって進めば良いんだ?」
「さぁ〜、取り敢えず先に進んでみようか?」
二人は目の前に広がる魔訶不思議な光景に困惑しながらも先に進んだ。幸いな事に一本道だった為、道に迷うことは無かった。だが、シンが不意に振り返ると自分達が通ってきたはずの道が垂直になっていた。
「このダンジョンは一体どうなっているんだ?」
「これはなんか凄いね……」
振り返ったシンの事を見たレンが同じ様に振り返ると、垂直になっている道を見て驚いていた。
「何だかここまであべこべだと自分が今、何処にいるのか分からなくなるな。」
「うん。でも、シンは普通に行方不明になるからあんまり変わらない気もするけどね。」
「おい……」
シンの話を聞いたレンが微笑みながら面白がって言うと、シンはレンの様子を見て目を細めていた。
「ごめん、ごめん。行こっ!」
「お、おい。」
レンが微笑みながらシンに謝ると先に進んだ。シンはそんなレンに置いて行かれないよう後をついて行った。暫く道なりに進んでいると、このダンジョンは重力が少し特殊で、側から見た時、階段に宙吊りで引っ付きながら歩いている変わった人達に見えるが、その事で階段に吸い寄せられる様に重力が働いているダンジョンなのだと言うことが分かった。すると、二人の進んでいた道が神殿の奥へと続く道に続いていた。
「ここから先は今までのダンジョンと同じ様な造りだね。」
「そうみたいだな。」
「気をつけて行こう。」
「ああ。」
二人はそんな会話をして中へと進んでいく。今までの道は視界を遮るものは何も無かったが、二人の進んでいるこの道は翠色の壁で出来ていた。暫く真っ直ぐ奥へと進んで行くと、二人は開けた場所に出た。
「ここってもしかして……」
「ああ、道は違う様だけど、さっき俺たちが通っていたよく分からん空間だな。」
周りを見た二人が困惑した様子で言った。
「でも、真っ直ぐ進んだはずなのにどうして……?」
「このダンジョン自体が普通じゃないって事だな。」
レンが不思議に思っていると、シンがそんな事を言った。
「取り敢えず、今のところは一本道だから迷う事は無いだろうから、このまま先に進もう。」
「うん……」
シンがそう言って先に進むと、レンは心配そうな顔をしてシンの後について行った。二人が進んでいると、また奥へと続く道まできた。
「こんな感じで進んで行って方向感覚が分からなくなるっていうダンジョンなのか?」
「どうなんだろう。」
二人はこのダンジョンに疑問を抱きながら先に進んだ。暫く真っ直ぐ歩くと、二人はワイ路の別れ道のあるところまで来た。
「分かれ道か……、参ったな……」
「どうしよっか」
二人はどちらの道に進むか頭を悩ませていた。
「クア〜〜」
「ん?」
二人が悩んでいると、右の道の方から可愛らしい感じの声が聞こえてきた。すると、二人の前に右の道の奥から全身が白の毛で覆われた、頭に青色の角が一本、申し訳程度にちょこんと生えており、青の丸い目をした片手に乗るサイズのイタチの様なフォルムをした可愛らしい見た目の魔物が現れた。
「魔物か!?」
「クア〜」
その魔物の首には紫色のハートのアクセサリーが付いているネックレスをしていた。そして、狼の様な三角形の耳をピクつかせ、白の尻尾を左右に振りながら四足歩行で近づいてくる。
「か……かわゆい!!」
「え……っ?」
シンはこの魔物を見たレンが、初めてリナザクラを見た時ぐらいに目を輝かせているのを見て驚いていた。
「クア?」
そんなレンを見た魔物が首を傾げた。
「さ、触っても良いよね……」
「お、おい。」
首を傾げた魔物の愛くるしい姿を見たレンが目を回し、手を出して魔物に触ろうとした。シンはそんなレンを見て止めようとしたが、もう遅かった。レンの手は魔物の体に触れていた。
「クア〜」
すると、魔物は瞼を瞑り、満足そうにしていた。
「おい、大丈夫なのか……」
シンは魔物に触れているレンを見て不安に思っていた。
「うん、大丈夫だよ。この子、大人しいし。それにこんなに可愛いんだよ!?ね〜?」
「クア!」
「いや、可愛いから触っても良いとか無いからな……」
レンが幸せそうに魔物に触りながら言うと、それに応えるように魔物も嬉しそうに相槌をした。そんな様子を見ていたシンは呆れた顔をして見ていた。
「シンも撫でてみなよ、可愛いよ。」
「ええ〜……」
レンは幸せそうな顔をして話してきたが、シンは魔物に触れるという事に本当に大丈夫なのかと疑問に思い、少し危険を感じていた。
「ね!ね!」
「おお……、まあ、じゃあ……」
目を輝かせながら余りにも勧めてくるレンの勢いに押されて、シンは少しだけ撫でてみる事にした。
「クア?」
シンが右手を魔物に近づけると、それを見ている魔物が首を傾げていた。そして、シンは右手の平で魔物に触れた。
「クア!!!」
すると、シンが魔物に触れた瞬間、魔物は大きな声で威嚇し、全身からパチンと音を立てて、青白い電気を放電した。
「痛っ!?」
シンは魔物から放電された電気が右手に当たり、驚いていた。
「クア!」
魔物はシンに向かってもう一度威嚇すると、素早く動いてレンの肩に乗った。
「なんでシンの時だけ威嚇したんだろう?」
「俺が聞きたいよ……」
レンの話を聞いたシンが溜め息混じりに言った。
「クア!」
すると、魔物は頭でレンの肩を突き、魔物が来た方の道とは別の道に顔を向けていた。
「こっちに行けって事?」
「クア!」
レンが魔物に聞くと、魔物は頭をコクリと頷いた。
「魔物の言う事を信じるのか……?」
「どっちに行って良いか分からないんだから、どっちに行ったって良いでしょ?それにこの子が教えてくれた道だしね。」
シンの問いにレンは魔物の顎を人差し指で撫でながら言った。すると、撫でられた魔物は幸せそうな顔をしていた。
次回、魔物VS魔物