.hack//SAO G.U.   作:メルフェン

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気まぐれでの投稿です笑


.00 プロローグ

『The World』

 

今から五年前に一世を風靡したゲーム。そして四年前にサービスが中止になったゲームである。原因はおおよそ理解している。異邦の電脳生命体「AIDA」による一連の事件の影響で運営事態がほぼ不可能になったからだろう。目を瞑れば今でも思い出せる。仲間たちと駆け抜けた広大なフィールド。大切な人を救う為にがむしゃらに戦った日々。一次は己の中に眠る力に飲み込まれかけたが、仲間たちの必死の説得によって助かったこともあった。

結果として、ある男の企み通り、「AIDA」は死滅し世界は救われた。しかし、これにより世界規模のネットワークトラブルが発生。金融、通信、医療、メディア、輸送などあらゆるものに大打撃、資産だけで見れば二度の世界大戦すら霞むほどの損害を与え災害とトラブルによる被害や財産消失による自殺で数多くの人間が死亡した。

 

2017年、夏ーーー第三次ネットワーククライシス。世界はこの事件をそう呼んだ。

 

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「はぁ、んで、俺にそのデスゲームに飛び入り参加してくれって事か?菊岡さん」

「話が早くて助かるよ、ハセヲくん」

「ーーーーざっけんな!冗談じゃねぇ!なんでわざわざ死にに行くようなことしなくちゃいけねぇんだよ!」

「これは君にしか頼めない事なんだよ」

 

ハセヲの怒声は総務省の応対室に響いた。

菊岡という男はコーヒーを啜り、ハセヲの顔を見る。

 

「あの「The World」を戦い抜き、かの反存在にも討ち勝った君にしか頼めないんだ」

 

そして菊岡は席を立ち、頭を下げた。

 

「無理を言っているのは重々承知している。また君に重荷を背負わせてしまう事も。だが、私はあのゲームに囚われてしまった人達を助けたい。だが、我々だけでは到底不可能だ」

「・・・・・・・」

「どうか我々に力を貸してくれ」

 

ハセヲは重いため息を吐き、面倒くさそうに頭を掻きながら言った。

 

「・・・・・・・・わーったよ、やるよ」

「本当かい!?」

「英雄になんざ興味はねぇけど、もう誰かを失うのは嫌だからな」

「・・・・・・・・ありがとう、ハセヲくん」

 

それから作戦決行の日時を決め、その日は解散となった。

そして時間は流れ、遂にデスゲームへ強制ダイブする日がやってきた。ハセヲは一人暮らしのアパートを出ようとした瞬間、立ててあった写真に目がいった。『The World』最後の日に仲間たち全員で撮った記念写真だった。

 

「みんな、またちょっと行ってくる」

 

そう言って家から出た。

 

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「やあ、準備はいいかい?」

「ああ、でも俺ナーヴギアもアカウントもねぇけど」

「そちらは気にしなくていいよ、ナーヴギアは我々の方で用意させてもらった。アカウントの方もね」

 

大勢の研究員らしき人達が忙しくなる動き回っている。

 

「これからダイブする君を我々は全力でバックアップする。ナーヴギアの方は少し弄らせてもらったよ。ゲームオーバ時の高電圧による脳の破壊は心配しなくていい。でもやはりログアウトだけはどうしようもなくてね、君はダイブしたら最後、クリアするまで現実には戻ってこれない。本当にいいんだね?」

「ああ」

「わかった。それじゃ、始めるとしよう」

「菊岡さん、アカウント作成終了しました」

「これが、俺のアカウントか?」

「そう、かつて君が使っていたアバター、Xthフォームを元に再構築したハセヲくん専用アバター。さしずめ5thフォームと言ったところかな」

「すげぇ・・・・・・・・・」

「そしてこれが5thフォーム専用武器の八相剣《無限竜ノ門(ゲート・オブ・ウロボロス)》」

「八相・・・・・それって」

「あの武器にはモルガナ八相の第一相から第八相までの八つの碑文の力を擬似プログラムだけど設定してある。流石に本物(・・)のモルガナ八相はもうこの世界にはいないからね」

「ははっ・・・・・あんたって、なにもんだよ・・・・・・」

 

苦笑いを浮かべ、菊岡を見る。

 

「アインクラッドの基幹プログラム、カーディナルに察知されないようアクセスする。チャンスは一度きり、頼んだよ」

「わかった」

 

ハセヲはナーヴギアを被り、用意してあるベッドに横になった。

 

「《無限竜ノ門》は本来SAOには存在しない武器カテゴリーだ。故にこの武器にソードスキルは存在しないから注意しておいてね」

「はぁ!?」

「そのための八相の力を擬似プログラムで設定してあるのさ。君はただ使いたい技を叫べばいい。後はシステムが勝手にしてくれる」

「って事はスキル使用後の硬直状態はねぇってことだな?」

「さすが、ハセヲくん。理解が早くて助かるよ」

(それってふつーに打ち放題じゃねぇか)

 

それはそれで大丈夫なのか、と思いながらハセヲは深呼吸をし、目を閉じた。

 

「リンク・スタート」

 

チクッと何かに刺されると同時に己の意識は電脳世界へと旅立って行った。

 

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暫くの気だるさから解放され、ようやく目を開ける。そこに広がっていたのは広大な石畳。周囲を囲む街路樹と、瀟洒な中世風の街並み。そして正面遠くに黒光りする巨大な宮殿。恐らくここがゲームのスタート地点だろう。

 

「ここが、ソードアート・オンライン・・・・・・・」

 

本当にここが仮想世界なのかと錯覚してしまうほど現実味を帯びておるこの世界にしばらくの間、呆気に取られる。地面を踏む感触も、自分の息遣いも見事に再現されている。

しかし、その感慨も直ぐに収まる。自分のいる前方でぎっしりと幾重にもひしめく人波があったからだ。

色とりどりの装備、髪色、眉目秀麗な男女の群れ。間違いなく、この世界に囚われたSAOプレイヤーたちだ。どう見ても数千ーーーいや、一万人近くはいる。

 

(もうログアウトが出来なくなっているのか)

 

ざわめきが次第に苛立ちの色を増し始めたところに、それらの声を押しのけ、誰かが叫んだ。

 

「あっ・・・・・上を見ろ!!」

 

ハセヲは反射的に視線を上向けた。そしてそこに、異様なものを見た。

百メートル上空、第二層の底を、真紅の市松模様が染め上げていく。

 

(運営のアナウンス・・・・・じゃねぇよな)

 

見れば、それは二つの英文が交互にパターン表示されたものだった。真っ赤なフォトンで綴られた単語は【Warning】、そして【System Announcement】と読める。

空を埋め尽くす真紅のパターンの中央部分が、まるで巨大な血液の雫のようにどろりと垂れ下がった。高い粘度を感じさせる動きでゆっくりとしたたり、だが落下することなく赤い一滴は突如空中で形を変えた。

出現したのは、身長二メートルはあろうかという、真紅のフード付きローブを纏った巨大な大人の姿だった。

 

『プレイヤー諸君、私の世界へようこそ』

 

その言葉でこの世界は有り様を変えた。人の命を奪う、闘争の世界へとーーーー

 

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《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルと称した、真のこの世界のルールを突きつけられたプレイヤーたちの精神は急速に摩耗していただろう。それもそうだ、このゲームでの死は現実世界での死と同じなのだから。

 

「プレイヤー諸君の健闘を祈る、ねぇ・・・・・・」

 

ハセヲは握り拳を更に強く握りしめた。

 

「人の命をなんだと思ってやがる、茅場・・・・・!」

 

やり場のない怒りが自分を焦がし始める。どうしようもない苛立ちがフツフツと沸き上がる。

今もどこかで自分たちを高みの見物をしている茅場という男を一発ぶん殴る、それがハセヲの第一の目的となった。その為にはやはり百層からなるこの鋼鉄の城を攻略する他ない。そうと決まればフィールドに出てレベリングしながら次の村へと行くべきだが、肝心なメニュー画面の出し方が分からない。

 

「どうすりゃ出んだよ」

 

腕をブンブン振ってもうんともスンともいわない。今の自分の動きは、よそから見ればさぞかし滑稽だろう。しかし今はそんな事を気にしている場合ではない。メニュー画面が出ないのだ。

あーだこーだとすったもんだしている所に後ろから声をかけられた。

 

「なぁ」

「・・・・・あぁ?」

 

少しイラついていたため、荒っぽい返事になってしまった。振り向いた先には黒髪に黒目、そして中性的な顔立ちをした少年だった。

 

「何か困ってるのか?」

「ん、まぁ、大した事じゃねぇよ。ただ、メニュー画面の出し方が分からねぇだけ」

「ああ、それなら右手の人差し指と中指を真っ直ぐ揃えて掲げ、真下に振るだけだよ」

 

試しにハセヲも実践する。すると、たちまち鈴を鳴らすような効果音とと共に紫色に発光する半透明の矩形が現れる。

 

「うお、ホントだ」

「もしかしてこの手のゲームは初めて?」

「いや、似たようなものを前にやってた」

(このゲームとは勝手が違うけどな)

「何だったらレクチャーしてやろうか?状況も状況だし」

「はぁ」

 

曖昧な返事をしてしまったが、他人であれ厚意を無下にすることは出来ない。大人しくついて行くことにした。まあ、確かに状況が状況だ。このゲームの勝手を知っておくのも悪くない。はじまりの街の北西ゲートを潜り、目の前に広大な草原が姿を現した。

その光景に目を奪われていた所に黒髪の少年から疑問を投げかけられた。

 

「そういえば君、珍しい装備だよな」

「え?あ、ああ、まぁな」

 

裾が四つに別れた黒いコートに白い籠手。灰色のスボンに珍しい意匠のブーツ。そして上半身裸のうえに黒い斑点のようなものが首元から一直線に腰のあたりまで伸びていた。そして白髪に赤眼。両目には黒い線のフェイスペイント。これが菊岡らが自分専用に作成した5thフォームなるものだった。

 

「そんな装備、ベータ時にあったっけかなぁ・・・・・・・」

 

あるわけがない。これは規格外の装備なのだから。

そんな事を言っているうちに一匹のMobがポップした。

 

「イノシシ?」

「あれは《フレンジーボア》。他のゲームでいうスライム相当のモンスターだよ。序盤のレベル上げには打って付けのモンスターだな」

「へぇ」

 

そう言ってハセヲは歩き出す。

 

「お、おい」

 

黒髪の少年が何か言いたげにハセヲを止めた。

 

「なんだ?」

「武器、あるのか?」

「武器?ああ、あるぞ」

「え?でも君、今何も装備して・・・・・・・」

 

ハセヲが戦闘状態に入ると同時に、空の一角が煌めいた。その煌めきの中から一本の剣がハセヲに向かって飛来する。

それをタイミングよくキャッチし、二、三振りしてから肩に担ぐ。

 

真紅の八つの刃を繋げたような剣、所謂蛇腹剣のようなものだ。

 

八相剣《無限竜ノ門(ゲート・オブ・ウロボロス)

 

「そんじゃ、肩慣らしと行くか」

 

ここからハセヲの新たな戦いの幕が上がった。




ハセヲの装備は5thフォームまんまです
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