二回死ぬだなんて聞いてない   作:ファザー

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第1話

 

 

死んだと思ったら生きてた。白い天井を見上げてそう思う。

俺には前世というものがある。普通に生まれて生きて、平凡の凡を生き抜く凡人だった。大人になって会社からの帰宅途中で死んでしまったけれど、この世界に生まれて第二の生を授かり、前世での平凡とはかけ離れた生活を送っていた。

俗に言う、両親が裏側の人間だったというものだ。生まれた時から、表では生きられない運命。表で生きていてから裏に落ちて来たやつとは違い、俺は最初から裏側の人間だった。

生きるか死ぬかのこの世界では、皆が皆生きるのに必死で、それで他人の命など考えてはいない。とにかく俺はもう死にたくないから、必死に腕を磨いた。今ではもうアクションをしながらヘッドショットもできるし、刃物だって扱える。人の骨の関節の外し方やら、どこを刺せば撃てば死ぬのかなんて把握済み。表で青春を謳歌しているだろう歳にはもう、俺の両の手は真っ黒に染まっていた。

そんな中俺は死んだ。……いや、今生きて回想してるから死にそうになったが正しいか。

俺の所属していた組織と、裏側でも有名な世界的犯罪組織との抗争。勿論、俺たちの負けで。相手の組織の仲間であろう銀髪野郎に腹を撃たれて倒れた。

油断していた。あの真っ黒なトレンチコート相手に俺の動きについてこれないだろうと判断して、いつもよりも少し遅く対処していたのがいけなかった。動きを止めるためだろう。的の大きい胴体を狙ったのは正解だ。血を吐き、動きを止めた。さらに何発もの銃弾を貰って、衝撃で浮かんだ体が地面に倒れる。ビシャッと血の池に放り込まれた。

血を失いすぎたのか、段々と視界が霞む。でもそれでも、聴覚は衰えなかったのかある言葉を拾ったのだ。

曰く。

 

「良い素体になるだろうな」

 

銀髪野郎からは考えられない女の人の声が聞こえて来たのが、最後の記憶だ。

そして今、見知らぬ白い天井を見上げている。こういう時はなんと言うのだろう……確か。

 

「知らない天井だ」

 

操縦者と機械がリンクしているアニメのセリフであったはず。

周りを見渡すと知らない機械が沢山ある。下手に触ると壊れそうで、でもずっと寝ているのもダメな気がするから起きよう。寝転がった状態から起きて、頭を振る。髪の毛が舞った。

 

……………………舞った……?

 

恐る恐る後頭部に手をやり、己の髪の感触を味わいながらそれを辿っていく。目の前に来るようにしてやると、腰ぐらいまである鈍い銀色の髪が目に入った。目をひん剥く。

 

「な、なっっっっが!?!?」

 

えっ???長!?!?髪の毛が長いよ!?!?いつの間にこんなに伸び!?えっ?????しかも銀!!!!鼠色!!!!何コレ!?!?俺の髪じゃねぇ!!!!

ええぇっ!?と驚いていると、ベットであろう場所から落ちた。ゴン!!という物凄い音がして、腰を打ち付ける。衝撃が伝わって顔を顰める。

 

「痛い……」

 

地味に痛い。打ち付けた部分と言うより、衝撃が痛かった。

腰をさすりながらベットを手すりに立ち上がる。寝ていたからか、身体が重く感じたけれどうごかせない事はない。

というより、先程ブチブチと何かを引きちぎるような音がしたのが心配だ。ベットの周りを見渡すと、やはりというか機材が転がっている。この線みたいなのが俺につながっていたのだろう。点滴か何かだろうなと思いながら持ち上げるが、生憎その先っぽは針ではなかった。どう見てもコード。巨大コンピュータに刺すようなコードだった。

え?と目を見張る。元を辿っていけば、献血パックなんて無くて何やらタッチパネル式の機械があるではないか。

 

「え、えぇー……」

 

何コレ。超怖い。

コレが俺に刺さっていなかった事を願って、それを置いて辺りを見渡す。やはり知らない場所だ。となると、あの記憶の後何処かに連れ込まれたか……またもや転生したかの二択だ。後者の場合、一度起きた事だ。もう一度起きていてもおかしくはない。銀色の髪がそれを証明しているような気もした。

その時だ。自動ドアが開くような音がしたのは。誰かが来たと判断すると同時にその後の方向へ振り返り、腰にあるホルダーから愛銃を抜こうとして、丸腰であった事の気がつく。しかし目の前を睨むのを忘れない。

 

「気分はどうだ?」

「良いように見える?」

「くくっ、見えないな」

 

悪い顔で笑う今しがた入って来た女性。紫がかった黒髪を揺らしながらこちらに歩み寄って来た。正確には俺の側にある機械にだ。

露出度の高い格好をしている彼女は白衣を羽織っている。医者か、研究者か。どちらかわからないけれど、この部屋の雰囲気からして後者だろう。嫌な予感がするのは俺だけだろうか。

 

「途中でデータが途切れているな……先ほど聞こえた音からして、ベットから転げ落ちたか」

 

なんとも間抜けな奴とくつくつ笑う。

正直にむっとするが、本当の事なのでおし黙る。仕方ないだろう、驚いたんだから。

ところで今の俺の状況を説明してくれる人で良いのだろうか。

機械を弄る彼女を見ていると、ふと振り返った。にまりと笑う。

 

「混乱しているようだな、リカルナ=フォルドー。無理もない、知らない場所だからな。だが、そうだな……直々に俺が説明してやろうではないか」

 

お、おう。俺っ娘なのね。前世でモードレッドが好きだったオレにとってはたまらない設定ですね。年上好きでもないので、なんとも言えないが。

 

「まぁその前に、動作状況はどうだ?何か違和感は?」

 

ん?動作状況?どういう意味だろう。違和感ならないけど。そう伝えると満足そうに笑みを作り、いつの間にか挿していたUSBメモリを抜いて彼女は歩き出した。どこかに行くらしい。

後をついていく。自動ドアの向こうにある廊下も真っ白で無機質だった。何処かのラボだろうか。ここまで研究所だぜ!と主張しているところは初めて見たな。そんなのに携わるような人生歩んでないし。

いくつかの曲がり角を曲がってある扉を潜った。彼女が首から下げていたパスケースをかざしていたからID入力が必要なのだろう。その後に網膜認証的なのもあったし。ハイテクだなー。

その部屋はやはりというか全体的に白い。そこは良いが、ソファーやテーブル、ダイニングと思われるテーブルと椅子。ましてやキッチンまでもがある。というかめっちゃ広い。一人で使用するにはもったいないぐらいの広さだ。奥にも扉があるのが見えるので、あれは多分寝室かシャワールーム、トイレとかだろうな。

 

「座れ」

 

命令口調で言われたが、意外と不快感はない。まぁあの状態から助けてくれたので文句はないし、俺はただ状況を確認したいしな。座れと言うことは、説明してくれるのだろう。

大人しく彼女が座った対面側のソファーに座る。ふかふかのそれは、思いの外沈んだ。思わずうぉっと声を上げてしまう。

 

「鈍臭いな……ま、戦闘に関しちゃピカイチだから良いか」

 

脚を組み白衣のポケットからタバコを取り出す。手際よく火を付けたと思えば、息を吸う。

タバコは前世の俺も良く嗜んだものだ。ちょっとかっこいい所があるからで始めたそれだが、中盤辺りではハマっていた。最初は煙たくて良く咳をしていたというのに……ニコチンとは恐ろしい。

 

「さて、自己紹介と行こうか。俺の名はジム。本名かどうかはさておき、そう呼ばれてるしそう名乗っている」

 

彼女、ジムは手元にあったタバコを口元に持って来て吸う。煙がジムの口から吐き出された。

 

「お前の自己紹介はなくて良いだろう。知っているしな。それよりここはどこかどうかを気になっているかと思うが、ここは黒の組織の一部。私が仕切る研究所だ」

「…………は??黒の組織だって!?」

 

驚いた。

黒の組織とは世界を跨ぐ犯罪組織。俺の所属していた組織とは違って、何十年も前から存在している謎に包まれた組織だ。

入るのは簡単だとは聞いているが、出るのには自身の命を手土産にしなくてはならないらしい。そんな名前もないトレードマークが黒ってだけの謎の組織に俺は引き入れられたらしい。

そして、その黒の組織とは俺が最後に戦っていた相手の組織だ。

……そりゃ負けるわけだ。日本だけに展開している俺の組織とは違う。世界を相手にしている巨大組織。何十カ国も敵に回しておきながら、何十年も存在するそれは正直規模が違いすぎた。

 

「と言っても、俺がしたい事をしたいが為にこの組織の力を借りている状態だ。ま、その最初がお前だなんて思わなかったがな、リカルナ」

 

ん?と首を傾げる。まるで昔から俺を知っているかのような口ぶりだ。俺は知らないぞ?お前のような俺っ娘なんて。娘っていう年じゃないだろうけど。

俺の様子を見たジムは苦笑しから立ち上がった。

 

「この部屋をお前に与える、好きに使え。それと、お前に頼みたい事がある。付いて来い」

 

またもや部屋を出て行く。どれだけ移動すれば良いのだろうか。

はぁとため息をつきながら、同じく扉を潜る。この後、廊下を歩くその道中で説明された事に俺は発狂するだなんて、この時は思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全身サイボーグになるなんて誰が思うだろうか。

 




支部でも投稿しようか迷う。
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