二回死ぬだなんて聞いてない   作:ファザー

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第2話

 

 

「おい、リカルナ」

 

呼ばれて振り返る。

この組織に所属する事になった俺は、ここ一年間は慣れる為にと様々な軽い任務を与えられた。

あの後、俺の状況を説明された俺はこうして渋々ではあるが組織に貢献している。元々所属していた組織よりも強大な場所だ。逆らう気もなかった。

まぁ前の組織のように、カモフラージュとして学校に通えないのはなんとも言えない。前の時は高校の半ばで死んでやめてしまったから、あの時の友人達には申し訳なく思う。彼らは正義感の塊だ。俺の死が足枷にならなきゃ良いけど。そもそも死んでないけど。

死んではいないが前とは印象が違うので気づかれないだろうし、俺が死んだ時より十年は経っている。忘れてるだろうしな。

視界の端に映った鈍い銀色の髪を尻目に、俺を呼んだ人物を見る。ガタイが良く、サングラスに黒いスーツ。ウォッカだ。

 

「なんだ、ウォッカか。どうしたんだよ」

「兄貴がお呼びだぜ?」

「うわ、マジかよ」

 

因みにこの黒の組織の幹部は全員酒に因んだコードネームを与えられる。因んだと言っても酒の名前そのままだけどな。

リカルナと本名で呼ばれている事から察せられると思うが、俺にはコードネームは与えられていない。ただ、数々の任務をしっかりとこなして来ているからネームレスの間では幹部有力候補らしい。ジムが教えてくれた。

このガタイの良い男性であるウォッカも、こいつが兄貴と慕っているジンも幹部。しかも古株の実力者だ。

それはともかく、黒の組織ではネームレスにとっての幹部は全員上司に当たる。そんなコードネーム持ちから呼び出されでもしたら断れるわけでもなく。渋々ウォッカに着いて行く。

そもそもあいつ、呼び出しを断りでもすれば次会った時に問答無用で銃をぶっ放してくるからな。避けられない速度ではないので、軽々と避ければ盛大な舌打ちをくれちゃうが。

ま、避けなくても問題ないけど。

 

「ここだぜ」

 

ウォッカが三回ノックする。入れという低音ボイスが聞こえたと思うと、ウォッカは徐にドアを押した。組織のドアは殆ど押し扉式である。

 

「やっとか。待ち草臥れぜ」

 

ニヤリというような効果音が付きそうな笑みを目の絵の銀髪から向けられる。約一年前、俺を殺した張本人である。あの時は油断したが、あの時以降は全く油断せずに相手している。まぁ早々死ぬような身体では無くなったが、念のためだ。

銀髪、ジンの側まで歩いて行ったウォッカの後ろについていき、対峙する。俺はあまりこいつが好きではない。ジンは何故か俺を気に入っていたりするが、多分それは兵器として見ているんだろう。使い勝手の良い道具は、笑みを自然に溢れさせる。

 

「なんだよ、ジン。俺、これからメンテナンスなんだけど」

「そりゃぁ悪かったな」

 

全く悪びれない口調でそう告げる。そんなジンの態度に溜息を吐いた。こいつはいつもこうだ。上司と部下に挟まれる中間管理職である彼にとって、部下とは弄るもの。きっと彼の銀髪は俺と同じくストレスでなったのだろう。そんなわけないだろうけど。

 

「テメェに任務だ、リカルナ。そこの幹部共と一緒に害獣駆除してこい」

 

幹部共と言われて指されたのは三人組。一人は三人の中でも目立つ、銀髪褐色。一人は無精ひげの男。一人はジンと同じくロン毛でニット帽を被った悪人面。

うち二人めっちゃ見たことある面影してる。すっげー見たことある。正直に言うと十年前に、通ってた高校での友人達だ。

あの二人は警察官になるとかなんとか言っていた。人生のやり直しという得点を貰っていた俺に負けに劣らずに優秀な彼らが黒の組織になんて落ちるわけもなく。多分潜入捜査だろうなぁと推測する。

紹介された幹部のうち二人がNOCだなんて、やっぱ黒の組織ガバガバだ。誰でもウェルカムすぎる。

ジンは詳細は幹部達に渡しているとだけ告げると、ウォッカを連れて部屋から出て行った。ポツンと残された幹部×3とネームレス一名。相手は覚えてないだろうけど、十年ぶりな友人達に少し気まずい。ま、俺の体感時間では一年ぶりぐらいなんだけども。

 

「あー、リカルナ=フォルドーだ。ネームレスだけど、幹部並みには動けるぜ」

 

よろしく、と右手を差し出す。グローブに包まれたそれはここ日本じゃ失礼かもしれないが、ま、裏の人間には関係ない。

そもそもこの手を無視する奴だっているしな。ジンとかジンとかジンとか。

 

「初めまして、バーボンです。情報屋をしています」

「俺はスコッチ。狙撃手だ。ま、隣の奴には負けるけどな」

「ライ。スコッチと同じく狙撃手だ」

 

順番に俺の手と握手して行った幹部達。手を取るあたりまだ友好的だな。

しかし、狙撃手二人という偏ったメンバーだな。ここに遊撃に長けた俺が加わると丁度いいってわけか。

 

「早速ですが、貴方の得意分野を教えて頂きたい。噂はかねがね聞いていますが、何せ初めて会いますしね」

「おいおい、噂ってなんだよ」

「知らないのか?」

 

曰く、幹部最有力候補。

曰く、ジンのお気に入り。

曰く、組織の隠し球。

曰く、あの方直属の部下。

 

などなど。絶えない噂があるようだ。

過大評価にも程がある。そもそもの話だ。俺はあの方には会ったことはない。ジムはあるらしいから、多分直属の部下はジムの事だろう。

 

「最初の二つはともかく、後半は知らない」

「ホー……最初のは認めるのか」

「認めるも何も、そう言われたからな」

 

ウォッカとベルモットに。

ジンとウォッカとベルモットは幹部の中でも有名中の有名。しかもベルモットはあの方のお気に入り。あの方が次の幹部はこいつにしようかだなんて言ったら、伝えるのは大体ベルモットの役目だからな。あ、ジンもその役目を担っていたか。

 

「ま、それは置いておこうぜ。で、俺の得意分野だったな。遊撃だ」

 

俺を呼んだからには抗争とかあるんだろ?と視線を投げかければ、バーボンは怪訝な表情を浮かべた。

 

「……変ですね。今回のターゲットは女性。しかも表向き一般企業の秘書です。それにここには暗殺と書かれています。つまり貴方が出る出番は---」

 

呼ばれたのに出る出番はないだなんて理不尽にも程があるだろうとジンに不満を募らせていると、バーボンの資料をペラリとめくっていた手が止まった事に気がついた。

どうした?と今度は俺が怪訝な表情をする。

 

「---いや、ありましたね」

「え?ないんじゃないのか?」

 

くるりと資料を差し出してくるバーボンの手から受け取る。

褐色の指が指し示した場所は、ターゲットの異性の相手の好み。

 

「身長は自分より上、長髪が好みであり特に銀色が好き。まぁつまりは貴方に当てはまるんですよね」

 

ターゲットの身長は百六十七。女性にしては高めだが百七十七ある俺より下だ。そして俺は鈍い銀髪の長髪。確かにストライクゾーン真っ只中だろう。

 

「俺にハニトラをしろと……?」

「そういうことですね」

 

でも言わせてくれ。

 

「これ、ジンでも良かったよな……?」

 

そうポツリと零して周りを見るが、三人共に目を逸らされてしまった。巻き込まれたくないんだろう。わかる、俺もそうだ。

資料を持つ手がわなわなと震えた。破らないように気をつけながら、俺は心の声を叫んだ。

 

「逃げやがったなッ!!!!!!!あの野郎ーッ!!!!!!!!」

 

今度会ったらぶん殴ってやる!

 

 

 




殴れ殴れー。
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