二回死ぬだなんて聞いてない   作:ファザー

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第4話

 

 

「おにーさん、変な格好だね」

 

とある休みの日。久し振りに休日を言い渡された俺はそこらの公園で一休みしていたのだが、とある中学生に声をかけられた。

学ランであろうそれは茶髪の彼には似合っていた。重たい上半身を上げて首を傾げ、そうかな?と言う。

俺の今の格好はなんというか真っ赤な服だ。語彙力が乏しいのでちゃんと言えないが、黒いタンクトップに黒いジーパン、ブーツ。その上から真っ赤な袖なしコートの様なものを着込んでいる。多分革製品。右手には革グローブとよく分からない黒いオペラグローブみたいなので、左手には包帯と指ぬきグローブ。

……首を傾げといてなんだが、こんな格好現代日本でするべきではないな……。

 

「そうだぜ。どっかの軍人……いや、軍人でもそんな格好はしないな」

「……ま、昔は軍人だったからあながち間違いじゃねぇかもな」

「え、軍人だったのか?」

「嘘だけど」

「嘘かよ」

 

あっさり引っかかった少年に笑う。彼は俺の態度が気に入らなかったのか、むすっとして隣に座ってきた。

 

「おにーさん、マジックは好きか?」

「マジックってーと、手品か?」

 

そうと頷く。少年は何処からか取り出したトランプを手際よくシャッフルする。良くある参加型の手品だろうか。一枚選んで良いぞと言われたので選び、そして見る。

 

「三秒後、そのカードの絵柄が変わります」

 

スリー、ツー、ワン。ぽんと軽く音を立てて煙を発生させたそれは、いつの間にか絵柄が変わっていた。驚いて眼を見張る。しっかり掴んでいたのにも関わらず変わったそれを、角度を変えて何度も見る。不思議なものだ。魔法のようで、でもタネも仕掛けもある手品。んー、わからない。

ききーっと猿の様な笑い声が聞こえた。

 

「良い反応するな、おにーさん。マジシャン冥利に尽きるぜ」

 

そう笑われて頬をかく。本当のことを言われたのに何故か居た堪れない。子供に言われたからだろうか。最近は純粋に驚くだなんてなかったし。

 

「でも、その年でそこまでできる君も凄いな」

 

中学生で大人並みのマジック。正直凄いと思う。先程見せられたのは簡単な方なのだろうか、それとも難しいのか。俺には判断基準なんてないから分からないけど、やっぱ凄いなとは思う。

心からの本心を言うと、彼は頬を染めてはにかんだ。まるで内から湧き上がってきた感情を押し殺そうとした感じだ。ただの褒め言葉なのに、とても喜んでいる少年に驚く。

 

「ありがとう、おにーさん。俺さ、マジックしてるから人の表情の機敏とかわかるんだよな……だからさ、おにーさんのそれ……本当だってわかったから、嬉しいぜ」

 

そっか。この身体になっても表情がある事、人にそう言われて嬉しく思う気持ちがある事。その全てを残してくれたジムに感謝しつつ、まだ俺は気持ちを忘れていない事に嬉しく思う。

裏にいるとどうしても、感情が消えるから。

その後少年は話してくれた。マジックは初見は驚いてくれるけれど、同じ事を繰り返せばマンネリ化する。観客を喜ばすのは難しい。少年にはまだ、レパートリーが目標程ないからまだ勉強中なんだそうだ。

 

「目標って?」

「親父!俺の親な、マジシャンなんだ!黒羽盗一って知ってっか!?」

「あの世界的マジシャンのか!?知ってるも何も結構な有名人だぞ?」

「知らない奴だっているんだよ!」

 

知ってると言ったら少年はキラキラと表情を光らせて、黒羽盗一の事に関して話し始めた。

黒羽盗一と言えば、世界中で活躍するマジシャン。そこまで知らない俺でも知ってる程の有名人だ。だが、約六年前にマジックの仕掛けがうまく作動せずに死亡。マジックの失敗というマジシャンにあるまじき失態を最後にあの世に去った。

だが、世界的マジシャンとなると今更マジックの失敗なんてするだろうかと当時は思った。失敗すれば命がない危険なマジックだったのだから、何度も仕掛けをチェックしたはずだ。なのに死亡。不審すぎる。

そこは息子である少年もそう思っていたらしく、皆親父の失敗だって言うけど絶対おかしい!と憤慨している。

 

「親父は悪くねぇ!段取り通りにしようとしただけだ……!だから!……だから」

 

俯く少年。握りしめた拳は震えていた。

どう声をかけて良いのか分からず、同じように俯くことしかできなかった。

ただ軽く少年の頭をぽんぽんと叩いて、撫でる。くしゃりと癖っ毛がさらに癖付く。

 

「そんなに思い詰めるな。世間は事故死だと思ってる。けど、君がそれを覆すような証拠を見つけて世間を驚かせたのなら」

 

それはそれでマジシャンぽくはないか?

そう悪戯っ子のように笑って、もう一回少年の頭を撫でた。

彼は一瞬ぽかんとした表情を浮かべてから、きししと笑う。

 

「それ、良いな!最高だ!」

 

 




ケケケーッ。
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