二回死ぬだなんて聞いてない   作:ファザー

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第6話

 

 

楽しくショッピングといきたいところだったが、そうもいかなかった。いきなりジンから連絡が来たからだ。内容は組織絡みであり、今手に持っていた袋に入った服を落としてしまう程には衝撃的な事だ。

 

『喜べ、リカルナ。スコッチがNOCだ。殺せとのお達しだぜ』

 

仲良しこよししていたテメェへの罰だそうだ。

何だそれ。意味がわからない。確かに一年前にスコッチ達と一緒の任務をこなしてからは仲良くしていた。元々俺は組織の人物を嫌悪丸出しに警戒なんてしない。ジンは嫌いだが、殺そうとは思わないほどだ。だから気が合うスコッチとは友達とも言える間柄になっていっていた。

あぁ。昔からいい奴だったのに……ここで死なせてしまうのだろうか。それはとても悲しくて辛い。一生会えない辛さを俺は知っているから。

取り落とした袋を掴み上げて、此方を怪訝そうな表情で見ていた中学生二人にごめんと謝る。

 

「用事できちゃったんだ。どうしても外せないやつ」

「えっ!」

 

青子ちゃんは純粋に驚き、じゃぁ仕方ないと言ってくれた。良い子かッ!

対照的に快斗はマジかよという表情をしている。確かに今買い物をして遊んでいるのは快斗達だ。そこへ来た用事。勿論俺としてはこのショッピングを優先したいのだけど……彼の事を考えると早めに動いた方がいいし。

 

「……仕事か?」

「……まぁ、な」

 

仕事と言えば仕事だ。

快斗には俺は学校へは通わず働いていると伝えている。本来なら(見た目は)高校生だからな俺。まぁ外国人の血が混じっているのにも関わらず童顔なのはさておき、両親が他界してるから働くしかなかったと伝えている。高校は義務教育じゃないしな。

嘘とは真実を交えるからこそ、現実味を帯びる。両親が他界したのは本当、働くしかなかったのも本当。高校云々は嘘だ。

 

「はぁ……やめといた方がいいぜそこ。休日に呼び出すなんざ、ブラックだブラック」

 

黒の組織だけに惜しい事を言っている。労働基準法なんか守ってくれない組織はまさにブラック企業。唯一良い点は羽振りが良いことだけだ。

ジムに拾われた日から俺はブラック企業の仲間入り。まぁ前の組織よりは断然マシな待遇なので、突然の任務には目を瞑ろう。

快斗達とまた今度遊びに行く約束をして、別れる。自身の戦闘服が置いてあるセーフハウスへ早足で向かいながら、俺はジムへと連絡した。ツーコールで彼女は出る。

 

「もしもし!ジム!?」

『てっめ。わざわざ携帯で電話とか、時代遅れてんじゃねぇのか?せっかくあるんだから脳内の通信機能使え』

「いや、ジムが先先行きすぎてんだよ!それに使い方わからないし!っあーそうじゃなくて……もう聞いたか?」

『このポンコツ……。あぁ、NOCの件だろ。俺だって組織の中枢にいる人物だ、入って来てるぜ。全く間抜けな顔してると思っていたが、案の定NOCだったとはな』

 

溜め息を吐きながらそう言う彼女の言葉に驚く。それではまるで前から彼がNOCだと知っていたような。

 

「知ってたのか……?」

 

思わずそう聞くとジムは鼻で笑った。

 

『寧ろ、知らないとでも?』

 

回線が携帯電話から脳内の通信機能へと変わった。携帯電話での通話は切って、ポケットにしまう。自信満々にわかっているだろう?とそう言っているかの様な声音に溜め息を吐いて、思ってないよと返す。

俺を殺し、そして改造した人間が元々の素性を調べていないわけがない。寧ろ改造しても大丈夫かどうかを気にするだろう。黒の組織は犯罪組織。公的機関ではないからこそ、周りを気にして潜まなければならない。まぁ偶にジンが派手にやらかしていたりするが……アイツ本当になんで幹部落ちしないのか謎だ。

ジムはきっとスコッチが俺の友人だと知っている。知っていながら組織に報告しなかった。忠誠心なんてなんのその、彼女は自分がやりたいことができるからこそ此処にいる様なものだ。

 

『そんなてめぇに良い案を授けてやろう。俺にそのスコッチの死体を持ってこい。ジンには俺が引き取ったと言うだけで大丈夫だ』

「っ!!」

 

息を飲む。だって、それって……その意味って。

 

「彼女は良いのかよ。まだ一年しか経ってないぜ」

『あぁ。お前と違って通常装甲だからな。時間も金も十分の一で事足りる。事前に準備していたのが幸いした』

「なんで俺だけ特殊なんだよ」

『リカルナ=フォルドーは特殊。これは前々から決まっていたことなんだよ』

 

どういう事だよ。

ジムの言うことは時々よくわからないけれど、今回の意図は理解した。

何故か視界が滲んでよく見えない。鼻水が出て来た。花粉症だろうか。年中出ている花粉の中で何かこの時期のにでも当たってしまったのだろうか。杉とか全くないのに。

ずびっと鼻をすすって、ジムに礼を言う。ありがとう、そう言っただけなのに鼻から鼻水が垂れた。

 

『きったねぇ音だな、おい。設定ミスったな…………礼は後だ、馬鹿野郎』

 

鼻で笑った様な声が聞こえた。

 

『命令だ、リカルナ=フォルドー。スコッチをぶち殺してこい!!』

「了解!ボス!」

 

勢いよくそう返事をすると、ジムは笑い出した。良い感じに締めたというのに、台無しじゃねぇか。なんたよ、とふてくされる。

 

『くくっ、俺はボスじゃねぇぞ。リカルナ』

 

なんだ、そのことか。

俺にとってのボスはアンタだよ、ジム。

 

 




ずぴっ。イイハナシダナー。

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