二回死ぬだなんて聞いてない   作:ファザー

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第8話

 

 

スコッチNOCバレの一件から一年。前はやたらと話しかけてくれたバーボンとは滅多に会うこともなく、ウィスキートリオの一人であったライは最近NOCだと判明して抜けた。

あの三人の内二人がNOCだと思っていたが、まさかライまでとは。本当に黒の組織はそこら辺が杜撰すぎる。

 

「ジムー、今日って俺当番?」

 

何かと関わっていた俺まで疑われて、頭が痛い今日。最近使い慣れてきた脳内の通信機能を使ってジムへと連絡を入れる。そうすると何よりも早く彼女が通信に出てくれるので楽だ。

 

『あぁ。忘れていたとは言わせないぜ?』

「忘れてなんかないさ。ただの確認」

 

自分に当てがわれた部屋を出て右に曲がる。壁も床も天井も真っ白なここは迷子になりやすいが道順はもう既に覚えている。足取りは軽く、次の曲がり角を曲がる。

 

『んじゃ、今日の任務、シャルに肩代わりさせとくぞ。後で礼言っとけ』

「いつもシャルには申し訳ないな」

『仕方ねぇな。彼奴はここに正式に入って一年だ。実力はあるとしても実戦が少ない。リカルナの肩代わりをすることで、有能さも示せる事ができる。一石二鳥だ』

 

シャル。シャル=ファインデット。

約二年前、バーボンとスコッチ、そしてライと任務に当たった時に連れ帰った少女の名前だ。生まれて間もなく両親を亡くし、裏社会に売られてあの女性に買われたという。俺と同じように壮絶な人生を歩んでる少女だ。

年齢的には俺より下。高校生あたりだろう。まぁ俺は空白の十年を含めた数字だが、前世分もあるので間違いではない。

そして一年前に目覚めた新たな俺たちの仲間である。通常装甲の彼女は特殊装甲である俺とは違って、スピード特化タイプ。ロッドを用いて戦う。俺より断然軽いんだそうだ。何で俺だけ重いんだろうなぁ。

文句を言っても仕方がない。彼女はいつでもこう言うのだ。“リカルナ=フォルドーは特殊装甲”ってな。

 

『そうだ。パス変更してあるから』

「えぇっ!?先言ってくれよ!」

 

重厚な扉の前に着き、勝手に認識されて開いた扉を潜る。いつものように近くにあるコードを手に取り繋いだところでそう言われた。

全く、ジムは直前に言うことが多い。それまでに言ってくれれば、何かと対処できるのに。

 

『お前のせいで疑われてんだよ。ったく技術提供してやってるの何処のどいつだと思ってやがんだ、あのクソ餓鬼』

 

成る程。よく連んでた三人組の内二人がNOC。しかもその一人は手元に、もう一人は出て行った。俺もNOCじゃねぇかって疑っているんだろう。経歴見ればNOCじゃないって一瞬でわかるのにな。そもそも今一番疑われてるのはバーボンの方だろう。大変だな、NOCは。

この分なら、この施設のあらゆるパスが変わっているだろうなぁ。覚えるの大変だったんだけど……!

 

「で、パスは?」

『待て、今送った』

 

脳内に直接送られてきたそれを浮かべてパスコードを解除する。コードを通じて機械的な音声が流れる。

 

【入力を確認しました。識別コードを確認……確認しました。識別個体名“MOTHER KEEPER”、“リカルナ=フォルドー”の接続を許可します】

 

そもそもNOCじゃねぇかって連んでた奴を疑うぐらいなら、そのNOCを組織にまんまと入れてしまったジンに何か罰を与えればいいのに。というか、組織自体がセキュリティガバガバなんだよな。どうしてここまでやっていけてるのかが、謎だ。

っと。

 

「接続」

【確認しました。識別名“MOTHER”へ接続…………確認。“MOTHER”を起動します】

 

白く広い空間の中、中心にある巨大な動力部が点滅してとある一点に集中する。子供一人分程入れる収納スペースらしきものの蓋が開く。

真空だったのだろうか。空気が抜けるような音がして開いたそこから、一人の少女が起き上がった。寝たきりの状態だったのに背伸びもせず、ゆっくりとした動作で目を開き俺を捉える。

 

【“MOTHER”の起動を確認。現在時刻10時24分09秒です。おはようございます、マザー】

「おはよう、マザー」

 

俺より少し明るい銀色の髪に、深紫色の生気のない瞳。無表情な彼女はコクリと頷いて、近くにあった真っ白なウサギの人形を抱きかかえた。

 

【個体名“リカルナ=フォルドー”への接続を解除します】

 

コードが勝手に外れて、収納スペースへと勝手に帰っていく。AIってのは本当に便利だなと思うけれど、全身サイボーグな俺もある意味AIかもしれない。元人間だから違うかもだが……まぁ、このマザーは多分そうだろう。

マザーへと近づき、跪いて手を差し出す。気分はまるでお姫様をダンスに誘う王子のよう。俺は王子なんて性分じゃないけど、バーボンの方が似合うだろう。

 

「行こう、マザー。月に一度のお出かけだ」

 

コクリと頷いた彼女が俺の手を取ったのを確認してから立ち上がり、扉へと向かう。

 

「戸締りよろしく」

【了解しました。いってらっしゃいませ。“リカルナ=フォルドー”、そして我らが“MOTHER”】

 

 




マザー、可愛いよね。
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