二回死ぬだなんて聞いてない   作:ファザー

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第9話

 

 

黒の組織には幹部のみ知り得る特殊な部隊が存在する。

指揮官を入れてたった三名しかいないその部隊は、一人だけで幹部を数人相手取る力を持ち得る。隊員への指揮権はその部隊を率いる指揮官のみ。例え組織のボスやNo.2のラムでさえ、その指揮官が許可しなければ命令できる立場でもない。

隊員は普段はネームレスとして組織に役立っているが、その実力は幹部以上。その事からネームレスの中で幹部昇格に近いと言われている。

ただ、先程も言った通り組織のボスでさえ指揮権を持たない。つまり完全独立している為に、隊員にはコードネームは与えられない。

謎に包まれた部隊……その名は。

 

 

 

 

 

 

 

特殊独立部隊“MOTHER KEEPER”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ってのをやろうと思う』

「マザーとの買い物楽しんでる時に、言うことか!?それ!!」

 

ジムの突拍子さにはいつだって振り回されてきたが、何回でも慣れることはない。

月に一度のマザーとのお出かけ。彼女が服を選んで試着室でお着替え中に、暇だからとジムと本当に何気ない世間話をしていたというのに、途中から突然物語の冒頭シーンのような説明された俺のことを考えて欲しい。場所も弁えず、叫ぶと思う。

突然叫んだ俺に店員さんはジトリとこちらを見る。髪色で年の離れた兄妹だとは思われているが、彼女の事をマザーと呼ぶ俺は相当おかしな奴だろう。そもそも日本語を流暢に話す外国人だ。元から目立っていた。

日本人特有の苦笑いで誤魔化すを発動して、ジムとの通信へと戻る。いやほんと、急になんでそうなった。

 

『今までただの研究機関だったからな。俺の研究成果を組織に提供する事で、金を貰っていた』

「まぁ、win-winな関係ってわけだ」

『そうだな。だが、俺が目指していた研究は完成したわけだ。お前という実例がな』

「なるほど」

『で、シャルも加わった。いつになるかわからんが、NOCもいる。で、重要なのはお前の大事な大事なこのNOCだ』

「………………なるほど」

 

NOCを殺したまでは良い。その後に研究の素体としたのも別に組織としては有りだろう。しかし、その完成形が俺のようなサイボーグならどうだろうか。前よりも強くなった裏切るかもしれない爆弾を抱え込む事になる。

当然、ジムが開発した技術だ。本人の意思関係なく、意識を落とす事ができる。つまりはシャットダウン。

しかし、せっかく生き返ったNOCだ。潜入捜査するほどの実力を持っている事から、黒の組織に有利な情報をたんまりと持っているに違いない。

あいつは日本の警察だしな。それも世界を脅かす犯罪組織に潜入となれば、十中八九公安だ。

情報が入った端末は破壊されたとは言え、ご本人がご健在ならばその必要もなし。拷問フィーバータイムの始まりだ。

 

……サイボーグ相手に拷問できるのかは謎だが。

 

「(まぁ痛覚はあるから、無駄ではないか)お前に権限はねぇからってことか」

『そういうことだ。ま、ラムにはもう言ってある。俺もそれなりに組織に貢献している。少し脅せば、簡単に頷きやがった』

「ラムちゃんに会ったのか?」

『あぁ。契約書にサインしてもらう為にな……って何だ、そのラムちゃんってぇのは』

 

ん?大分前からそう呼んでたんだけど。知ってるのってまさかラムちゃんだけか。

何故か待ち伏せでもしていたのか組織内でラムとご対面した事があった。その時はラムだとわからなかったが。

何せラムは老若男女、あらゆる姿を持っていると言われている。男か女か、若いか老いているか。出身地は、年齢は、誕生日は。どんな姿をしていて、どんな声を発するのか……その全てが謎だ。

幹部とのやりとりはメールか、電話にしても毎回声は変わる。ボスよりは表に出てきているはずなのに、相変わらず正体不明。そんな奴がひょっこり目の前に現れたとしても、わからないだろう。

俺が会った時は少女の姿をしていた。淡いピンクのゴスロリ衣装を着ていた。彼女がラムだと名乗らなかったら、なんで組織内に子供がいるんだろうと首を傾げていた。

ま、その時にその姿からラムちゃんと呼んでいる。決してだっちゃの方ではない……掛けてはいるけども。

 

『そのラムは、RUM21だろうな。俺が作り出した電子信号で動く機械人形だ』

「えっ」

『彼奴は引きこもりだからな。普段は俺が作り出した人形を操って生活している。脳波を直接汲み取って人形へと電波を送っているからな……多少のラグはあれど、反応速度は人間とさして変わらない』

「どうやって電波送ってるんだ?」

『そりゃ、街中に張り巡らされた電線を伝ってだ。こうしてお前と会話しているのと同じ要領だな』

「…………因みに、何番まであるんで?」

『確か…………百番代まではいっていたはずだぜ』

 

あー、うん。そりゃぁ姿がわからないはずだ。だって会ったとしても、それは全部仮初めなんだから。しかも滅多に死ぬ事のない、言うことを再現してくれる人形。

ジムがラムちゃんを脅せたのもわかった気がする。ラムちゃんは自分の生活を脅かされたくないのだらう。あれ壊れたら本人が出なくちゃならない。いつかは錆びる機械人形。手入れの仕方なんてわからないだろうし。

はぁとため息をついて、前を見る。丁度試着が終わったのか、カーテンを開いてこちらを見るマザーがいた。

どう?と問うてるように、その場でぐるりと一回転してまた見つめてくる。いつもの黒いロリータファッションではなく、清楚な白さをイメージしたレースのあしらわれたワンピースは彼女に似合っていた。

コクリと頷いて、グッとサムズアップする。

 

「大丈夫。めちゃくちゃ似合ってるぜ!」

 

俺の声を聞いた彼女は一旦ワンピースを見下ろして、そしてまた俺を見た。コクリと頷いてサムズアップする。私もそう思うの意だろう。

シャッとカーテンをまた閉めたマザーはごそごそとしている。多分次のやつに着替えるのだろう。

女の子との買い物は付いていくだけかと思いきや、感想を聞いてくるから疲れる。マザーはまだ良い方なので、こうしている時間が暇だ。もしお喋りなら、忙しかったろうに。

 

「ジム」

『なんだ、リカルナ。私は今忙しい』

「また暇になったから話し相手になってくれ。さっきの続きが気になる」

『なんで俺が…………まぁ良いさ。少しだけ長くなりそうだ』

「……できるだけ短めでお願いしまーす」

『てっめ……!図々しいな!』

 

図々しいさは俺の取り柄だからな!

 

 




ストックが尽きたので、不定期更新は移行します。
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