3年B組ハーデス先生~ブレイブルー学園パロ~   作:トッシー00

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第一話です。

※この作品はpixivでも連載しています。


第1話:恋のカレーは殺人カレー

 第十三階層都市、カグツチ市。

 無限の蒼穹が広がるこの町には、ありとあらゆる人々がすみついている。

 下の階に行けば繁華街、上の階に行けば魔操船の発着場がある。

 その間にも若者が入り浸るマック、ケンタ、ミスドにツ○ヤ。この蒼広がる市は若者を飽きさせることはない。

 

 ここはカグツチ市、ブレイブルー学園……。

 歴史は古く、百年以上前からその地に大きく立っているという。

 長年優秀な若者を輩出しており、侍から猫まで在学しており、ヒャッハーな凶悪ヤンキーをスーツが似合う紳士に公正させたとかなんだとか。

 学級委員長は魔法使いだとか、その妹は可愛かったと思えばそのクラスには本当に高校生かと疑いたくなるような執事までいた。

 メガネにうるさい女性もいた。まぁそれは百年前の話なので今は関係なかろう。

 

 A.D.2200。

 ブレイブルー学園の教師"ラグナ・ザ・ブラッドエッジ"は、今日も仕事に励んでいた。

 逆立った銀髪、左右の眼の色は違うこの教師。

 派手な外見ながら、やる気の方は感じられない。めんどくせぇ、なんだかんだがモットーだが一応教師。

 

「はい、授業始めっぞ~」

 

 ラグナの一声で、クラス委員長のノエルが号令をかける。

 長めの金髪が特徴の、容姿は正直のところ整っており、素直に美少女と烙印を押せる元気な少女である。

 見かけだけならばまじめそのもの、その少女が先生に言われ号令を言う。

 

「規律、礼、着席」

 

 ノエルの号令と共に、クラスの皆が着席をする。

 ここまで至って普通の出来事、ラグナが担任をする3年B組のなんら変わらない朝のホームルームである。

 

「はいよくできましたね、やったね"ない人"」

「先生、いきなり失礼じゃないですかそれ?」

 

 ラグナ先生はいきなりノエルにつっかかる。

 このやり取りも、大抵1週間に一度は行われるやり取りである。

 ちなみにこのない人というのはけして能力が欠けているわけではない。

 ノエルにはあるものが足りない。それは年頃の女の子が憧れるプロポーション的な、有体にいえばそういうものである。

 

「あん?お前だって乳がないだけの女だろ?乳がないのが仕事だろ。つ~か乳無さすぎだなおい~」

「いきなり失礼すぎるでしょ!!つうかさっきから乳無いしか言ってないよね!?始まって早々胸の話しかしてないよね!?」

 

 ラグナは教師として生徒とコミュニケーションを取っているにすぎない。

 ノエルは抗議するが、ラグナはまったく耳を貸さない。

 それどころかほかの人の反応はというと……。

 

「うるさいぞない人、ないんだからしょうがないニャス」

 

 そう冷徹にもの申すのはタオカカ。

 フードを被った猫のような人のような、なんとも言えない奴である。

 

「ない のはな 」

 

 文字化けしているのではない、こういうしゃべり方なのである。

 彼の名前はアラクネ。液体状の何かで、第一印象では某なんたら神隠しに出てくるあれである。

 

「授業が始まってますよ、ナイチチ先輩」

 

 後輩からも厳しい一言が飛び出る。

 カルル・クローバー、小学生のような外見であるがこの舞台では立派な高校生。

 飛び級とかではない、年齢的にも高校生である。

 

「み、みんなしてナイチチって言うな!!」

 

 このナイチチ、ノエルを代表するあだ名の一つ。

 最初に言い出したのはもちろんラグナ先生。名付けた理由は当然乳が無いから、それ以上でも以下でもない。

 ノエルの最大のコンプレックス。胸もなければ実のところ頭脳も危うい。色々と無い少女である。

 

「う……うえええええええええええええええええん!!」

「お~、今日も元気いっぱいだな~」

 

 皆の侮辱に耐えかね、教室からマッハで逃げ出すノエル。

 ラグナはこれを悪びれることもなく、わっはっはと笑いながらただただ見ていた。

 そして数分後、馬鹿にされたうっぷんを泣いて晴らしたノエルが教室へと帰ってきた。

 

「おいノエル、ホームルーム中に教室から抜け出すとは、胸も無い上に常識も無いな」

「おめぇまだ言うか!?」

 

 先ほど泣くまで馬鹿にしたというのに、ラグナは反省の色一つ見せない。

 ノエルの必死の抗議に耳も貸さず、ラグナは明日の授業の件について話を進めた。

 

「え~。明日は家庭科の授業でカレーを作るんで、ハンカチとエプロンと三角巾を忘れずに持ってくること。忘れても先生は予備持ってきたりしねぇからな」

 

 そう、明日は生徒が心待ちにしていた家庭科の料理実習。

 数ヶ月に一回行うのだが、日ごろの座学で寝ていたりする生徒にしてみれば、やりがいがあり新鮮さが感じられるもの。

 その料理実習、その中でも特に張り切っている生徒がいた。それは……。

 

「明日は料理実習。今日の夜から準備しておかないと」

 

 それはノエルだった。

 ノエルは料理を作るのが大好きで、みんな以上に家庭科の授業を楽しみにしていた。

 料理が好きな女の子。それだけで言えば聞こえはいいのだが……。

 

「ノエル。お前は明日休んでも出席扱いにしてやるから明日は寝ててもいいぞ」

「なんでですかぁぁぁ!?」

 

 そうラグナは冷徹な目でノエルに言う。

 どうしてラグナがノエルにそんなことを言ったのか、それは後々わかることである。

 

「いや、マジで頼むから。休んでもいいぞ。てか休んでくれ。いや休んでくださいお願いします」

「私そこまで言われなきゃいけないんですか! あぁ~腹立つ腹立つこの銀髪クソ教師!! 絶対に休まずいち早く来てやる!! 風邪引こうが絶対に来てやるぅぅぅ!!」

 

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 そして翌日。

 ブレイブルー学園、家庭科の授業。

 日ごろの堅苦しい授業とは違い、みんなでわいわいと料理を作り、そして食す。

 それぞれ材料を持ちより、役割担当を決め、楽しみながらも他人との関係を築く。

 学生からすれば楽な授業で楽しいということで、人気なこの授業。

 

「というわけでこれからカレーを作る。ついでだから面白いことを考えた」

 

 家庭科の授業、今日のテーマはカレー。

 料理の基礎とも言われており、簡単だけど達成感のある料理。

 それでもっと子供から大人まで幅広く愛される料理の伝統である。

 

「おもしろいこと?いったいなんですかね?」

 

 ラグナが言うおもしろいことにいち早く反応を見せたのはノエル。

 しかし、ラグナはというと。

 

「ノエル、おまえにはまったくもって関係のないことだ」

「ラグナ先生ひど!!」

 

 ノエルは少しだけカチンときた。

 ノエルがまったく関係のないというその真意は、後になってわかることである。

 

「俺はこれでも料理自慢だ、そこで、俺が最も気に入ったカレーを作ったやつの成績を少しだけあげてやろう!!」

 

 ラグナのこの言葉を聞いて、生徒達は俄然やる気を出す。

 肉を炒めて野菜をぶち込んで似てカレールーを入れる。大雑把にいえばこんな流れでラグナ先生をうならせれば成績が上がるというのだからこれほどのチャンスはないだろう。

 たかが料理一つで成績が上がるというのだ。これを聞いてもめんどくせぇともらすやつは学園生活がだらけているやつだけであろう。

 そんな中でもノエルは、成績も著しく、料理には自身があったためなおやる気が出る。のだが……。

 

「成績があがる……よ~し、私もがんばり……」

「ノエルは、今日はもう帰っていいぞ」

「だからなんでですかーーーーー!?」

 

 ラグナの一言にノエルは反論した。

 まさかの料理をする前から門前払いである。

 これは教師が生徒にして良い処遇ではない、が……ノエルに限ってはラグナ側の正当な理由がある。

 

「だってお前が作るカレーだろ? 俺まだ死にたくないし~」

 

 ラグナは『ノエルがカレーを作る』という一動作に対して恐怖を抱いているように見える。

 そう、なんせこのノエル・ヴァーミリオン。料理が得意というのはあくまで自称であり、実際のところはまったくの逆、料理で殺戮が出来てしまうほどに凶悪な腕前を持っている。

 彼女が野菜を炒めれば火山灰に等しく、彼女が煮物を作ればマグマのようにぐつぐつに。

 彼女が卵焼きを作れば未元物質(ダークマター)と化し、彼女がサラダを作れば超電磁砲(レールガン)のように遥か彼方へ……ともはやここまで言えば説明の必要もないだろう。

 

「いやいや! 今度は大丈夫ですって!!」

 

 ノエルは念に念を押す。

 まあ、押したところで彼女の料理がうまくなるわけでもないが。

 むしろ念じるだけ念じれば凶悪な物に変貌するのだからかえってやめてほしかった。

 数十分の議論の末、ラグナは心折れたらしく。

 

「……しゃあねえな、お前また殺人的な料理作ったら退学にすっかんな」

「が……がんばります!!」

 

 退学という処置にするほどの大罪なのだろうか、ラグナはそれでもし足りないといった顔色であった。

 

「まあ俺だけ食うわけにはいかないんで、審査員を三人ほど呼んできたぞ」

 

 ラグナは他の先生方にも我がクラスの料理を召し上がっていただきたく、3人の教師を選抜してきた。

 

「レイチェル校長です。みなさんおいしい料理を作ってちょうだい」

 

 一人目はこの歴史あるブレイブルー学園の校長であるレイチェル・アルカード。

 金色に光るツインテールが特徴の、見た目は気品あふれる小さな女の子であるが実年齢は数百を超えており、かつてハクメン達がいたクラスを受け持っていたこともある。

 この学園でも最も長く居座っている立派な校長なのである。

 

「ハクメン教頭だ、私も料理にはうるさくてな~」

 

 二人目はこの学園の教頭であるハクメン先生。

 常に白いお面を手放さない、侍のようなガチガチの鎧の上にスーツを羽織っているがっちりとしたその姿は、憮然の二文字がはっきりと見て伝わってくる。

 ちなみにこの人だけハクメン"先生"と、後ろに先生と付けるのがデフォルトとなっている。

 

「熱き熱血教師シシガミ・バングでござるーーー!!」

 

 三人目はもはや台詞からでも伝わってくる、熱き男その名はシシガミ・バング。

 ブレイブルーの熱血体育教師であり、とにかくむさく、そして熱き男である。

 副業として忍者をやっているとかなんとか、ブレイブルー学園の忍者部の顧問でもある。

 

「レイチェル校長。ハクメン先生。バング先生。そして俺。四人で評価するから」

「がんばります!そして……先生に認めてもらって、むふふふふ」

 

 今まで散々言われてきた料理に対するこの侮辱。

 それを晴らしながら尚且つ成績まで上がる。ノエルにとってこれ以上の好機はないだろう。

 ノエルは俄然やる気になる。が、完全の教師陣はというと……。

 

「教頭、ノエルの料理はあなたが全部食べなさい」

「はははははレイチェル校長、学校の代表としてお前が食べるべきだろう」

「なら、間を取ってバング先生。あなたがノエルの黒き獣(※カレーの事)を飲み干しなさい」

「拙者がでござるかーーー!?やはり代表のラグナ先生が……」

「いやいやいや!ノエルの料理はな、ぜひとも先生方に食べさせたいな~なんて!!」

 

 と、それぞれノエルの料理を他者に押し付けようと必死になっている。

 惨劇から逃れようとそれぞれ言いたいことを言いまくる始末。

 これを見たノエルは、しょぼんとした表情でぼそりと。

 

「私ってそんなにだめですかね……」

「「「「ああ、まるでだめだ!!」」」」

「ひっど!!」

 

 4人の教師に一斉に駄目出しされるこの扱い。

 それだけノエルが犯してきた罪は、償いきれるものではないのだ。

 初めて給食当番をやったあの日、ノエルは数々の猛者どもをアストラルフィニッシュで葬ってきた。

 この光景を見た一部の生徒が、暗黒大戦の惨劇を例に出したほど。ノエルの料理は黒き獣と同等、もしくはそれ以上である。

 なお、補足ではあるがそんなノエルの黒き獣を笑顔で食べられる生徒がこの学園に一人だけ存在するとかしないとか。

 

「あのクソ教師共、絶対に見返してやる……」

 

 そしてノエルの戦いは始まった。

 全てを見返すために、そして惨劇を終わらせるために。

 

「え~と、とりあえず材料はたくさんあるし~」

「あ、個性を出そうと思っていろんな食材集めたのがまずかったな……」

 

 ただでさえ標準の食材をそろえたところで手順で兵器になり得るというのに、今日に限って威力を上げる爆薬剤の選択肢が広まっている。

 もうこれはノエルが何をやらかしてもおかしくない、隣を見るとレイチェルが結界を張っている始末。ハクメン先生は雪風を展開しており、バングは風林火山状態である。

 ここはラグナもブラッドカインをするべきだろうか。あ、でもやったら体力減るから余計に悪化するだけである。

 

「う~ん……とりあえず好きにやっちゃえ」

 

 そんなノエルの一言が悪魔のささやきに聞こえるのは、何かあるのだろうか。

 と、言いながらノエルが最初にやらかしたことは。

 

 おでん汁を煮込み始めた……。

 

「なんでじゃーーーーー!!」

 

 もはや根本を逸脱してしまっている。ラグナは咄嗟に全力のツッコミをする。

 これがまだ序章だというのだから太刀が悪い。

 

「おいノエル、お前やっぱりかえ……」

 

 帰れ、とラグナは言いたかったが。

 

「ふふふ~ん♪」

「……ラグナ先生、すでにノエル殿は自分の世界に入ってしまっているでござるよ」

「う……ううぅ……」

 

 バング先生の言う通り、もうこうなったノエルは誰にも止められない。

 ノエルの周りにはマイワールドな謎の結界が展開されたことだろう。ラグナは深く頭を抱えた。

 

「スパイスはどうしようかな、そういえば塩入れるといいってツバキが言ってたような~」

 

 次になにやらスパイスを求め始めたノエル。

 そう言ってノエルが取り出したのは。

 

 砂糖であった……。

 

「………」

「ラグナ先生! しっかりするでござるよ!!」

「ズェア……これは神に祈るしかないようだな」

 

 ラグナは半分気絶。

 バングはなんとかラグナを支えつつ、ハクメン先生は神に祈り始めた。

 はたしてこの先何が起こるのか、たかが料理で、また一つ、天の岩戸(ネメシスホライゾン)が開くとでも言うのだろうか。

 

 その後もノエルは自分を信じて料理を進めた。

 ニンジン、玉ねぎは皮をむかずに鍋にダイブ。

 肉は半生、というか赤いまま。

 カレールーは自分で作ると言って、できあがったのは魔素……基、焦げの塊であった。

 こうしてカレー作りは終了。他の生徒が楽しく作っている中、孤立するノエルの周りだけが邪悪なオーラで満たされていたのを皆は知っていた。

 先生方が最初にノエル以外の生徒のカレーを試食し、それぞれ評価しあい、ほんの少しの平穏を分かちあっていた。

 そして時は来た。ついにノエルのカレーと対面する時であった。

 

「次は、いよいよノエルのカレーか……」

 

 ラグナの絶望にも満ちた、低く重苦しい声が響き渡る。

 

「バング先生、どこへ行くのかしら?」

「ギクゥ!」

「ここで逃げたら、後で悪滅だぞ」

 

 その中でバングは風林火山で逃げようとしたが逃げきれず。千年生きる吸血鬼と六英雄最強の男に脅されその場を留まる。

 こんなすごい面子がいる中でも、ノエルのカレーはひと際黒く濁っていた。

 カレーとは、ライスの白い部分とカレーの茶の部分が絶妙なハーモニーを醸し出すものだ。少なくとも普通はそう言った表現が一番適しているであろう。

 ところがノエルのカレーは全部が真っ黒。とことんまで黒、深淵に染まる黒、黒、黒である。

 千年生きる吸血鬼も、六英雄と呼ばれた男をも引かせるその圧倒的な貫禄に、ラグナとバングも押し黙る。

 そして最初に食べる人を決める。食べる人というか、そう書いて"生贄"とでも読める勢いである。

 

「最初に誰が食べるんだよ……」

 

 ラグナが嫌悪感MAXで言う。

 誰かが犠牲にならねばならない。わかっていながら勇気が出ない。

 そんな中、一人の男が名乗り出た。

 

「……しかたない、嫌なことは最初に済ませておくのがいいからな」

「ハクメン先生、犠牲になってくれるのか?」

「ああ、それが正義だ」

 

 この時ほど、ラグナはハクメン先生という漢に敬意を表したことはなかったであろう。

 他の二人もそうである。あのレイチェルが泣いていた。バングが敗北の表情を浮かべていた。

 そんな中、教師陣をそこまで追い込んだ等の本人はというと。

 

「あなた方さっきから失礼なことばかり……」

 

 ノエルは怒りを浮かべる。だがノエルに怒る権利などないことは言うまでもない。

 

「………」

 

 そしてハクメン先生は、闇の扉を開いた。

 スプーンでカレーを掬った際、スプーンが嘆き悲しむのがハクメンには深く伝わってきた。

 すまぬ……と、ハクメンは己もまた一つの犠牲であると念を押し……食べる。

 

 パクリ……。

 

「……ズ……ズェェェェェェェェェェェェェアアアアアアアアアア!!」

「ハクメン先生!?」

「だだだだ、大丈夫ですか!?」

 

 ハクメン先生の突然の叫びに、ラグナとノエルが駆け付ける。

 もがき苦しむハクメン先生、そして……

 

「あ……あぁ、これは……なんだ? 黒き獣よりも禍々しい……グハァ!!」

「先生ーーーーー!!」

「お気を確かにでござる!!」

「今すぐ救護班を!!」

 

 ハクメン先生は朽ち果て、他の3人の教師が慌てふためく。

 黒き獣と対峙した本人(あくまで本編の話)がそれよりも禍々しいと口にした以上、このカレーの恐ろしさが伝わってくる。

 

「そ……そこまでひどいの……かな?」

 

 他人事である。

 こんな恐ろしいものを製錬しておいて、ノエル本人は未だに信じられていない様子。

 

「ノエル!! ああもうこれだからお前は!!」

「す……すいませ~ん!!」

 

 取り返しのつかないことをしてしまった。

 全てはノエルの担任でありながら、彼女に料理をすることを許してしまった自分にある。

 そう言ってラグナ先生は、罪意識を感じながら、その黒き獣よりも禍々しいカレーを捨てようとする。

 本来ならば境界の底にでも封印したいところであったが排水溝に流すしかない、が……

 

「せ、先生。その……せめて一口くらい……」

 

 こんな時までノエルはなんてことを言いだすのだろうか。

 ハクメン先生をこんなにしておいて、それをラグナに食べてくれと言うのだから太刀が悪い。

 これには等々、ラグナもキレた。

 

「あぁ!?こんなもん食えるわけねえだろうが!!」

 

 ラグナ先生の強気な一言に、ノエルは一歩後ずさり。

 そして、少女は涙を一粒流してしまう。

 

「う……うぅ……」

「う!?」

 

 その光景を見て、今度はラグナが一歩後ずさる。

 

「だってぇ、先生のために……私、わたしぃ……」

「な……泣いたってなぁ」

 

 普通に見れば、頑張って作った料理を食べてくれと生徒が教師に泣いて頼む光景。

 ひねくれた言い方をするならば、凶悪兵器の実験台になれということに聞こえなくもないが。

 ラグナは困り果てる。その時、ラグナの肩をポンと叩く者が。

 それは、熱き熱血教師、バングであった。

 

「先生、生徒が一生懸命作ったのでござる。それを食べてあげるのが……教師のつとめではござらぬか?」

「バング先生……」

 

 全うなその言葉に、ラグナは言葉を詰まらせる。

 

「そうよラグナ、教師失格よ?」

「校長、マジかよ……」

 

 校長にまでそう言われてしまえば、教師としてやらねばならない。

 生徒が必死に頑張ったその証を、担任の先生である自分が味合わなければ意味がないだろう。

 そしてラグナ先生は覚悟を決めた。

 

「わあったよ……第666拘束機関解放! 次元干渉虚数方陣展開!!」

 

 ラグナはそう言って、術式のコードを唱える。

 

「蒼の魔道書(ブレイブルー)、起動ーーーーーーーー!!」

 

 ラグナは蒼の魔道書を展開する。

 相手は黒き獣より禍々しい何か、そこまでする必要がある。

 アンリミ状態になってなお、多大なるリスクが伴うこの状況下で、ラグナは勝負に出る。

 

「ラグナ先生がブレイブルーを使ったでござるよ!!」

「本気なのね……ラグナ先生」

 

 ラグナの覚悟に感化される二人。

 唾を飲み込みぐっと見守るノエル。そして……。

 

「いただきまーーーーーーーーーす!!」

 

 ラグナはノエルのカレーを食べる。

 

「ぐあああああああああああああ! ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 まるで何かの力が暴走するかのように呻くラグナ。その結果……。

 

「があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 バタン……。

 

「蒼の魔道書を使っても、耐えられなかったでござるか……」

「ご愁傷さまね……」

 

 ラグナ、教師としての矜持を見せるが、朽ち果てる。

 たかが一人の生徒が作った努力の料理、それが一人の教師の覚悟をも打ち砕く。

 朽ち果て一歩の動かなくなったハクメン先生とラグナ先生、それを見てノエルは。

 

「……もっと料理……勉強しよう」

 

 その言葉に、レイチェルとバングは心の中で思った。『やめてくれ……』と。

 そして今日もまた、ノエルの料理によって尊い犠牲が出るのであった。

 これが後に第三次暗黒大戦と呼ばれたかは、誰も知らない。

 

 ブレイブルー学園、3年B組。

 教師ラグナをはじめとした、ブレイブルーの学園コメディ。

 これは一つの確率事象、かっこつけるならばコンティニュアムシフトである。

 

 3年B組ハーデス先生、ちょっとおかしな蒼の物語が始まる。




ブレイブルーアニメ化記念。こちらでも載せることにしました。
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