3年B組ハーデス先生~ブレイブルー学園パロ~   作:トッシー00

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第11話です。


第11話:ラムダの休日

 日曜日。

 少女は河川で空を眺めていた……。

 長い金髪を後ろに縛り、その瞳は赤く染まっている。

 その表情はというと、なにやら遠くを見ているように真っ白。その少女の名はΛ-11。

 やりたいこともなく、やることもなく。

 小鳥が白い雲を飛んでいるのをただただ見ている。

 そこに楽しいと言う感情があるのか、それともなにかしらの感情があるのか。

 

「………」

「あん? ラムダじゃねえか?こんな河川でなにやってんだ?」

 

 ラムダのいる河川に買い物帰りのラグナがたまたま通りかかる。

 普段は学校の中にいるラムダが外にいるのは珍しい。

 声をかけると、ラムダはテンションを一つ変えず、素朴に答える。

 

「ココノエ先生に……休みをもらった」

 

 済むところのない彼女はココノエ先生のラボに住み込みをしており、家賃がてらほぼ毎日ココノエ先生の手伝いをしている。

 学校に住んでいるので遅刻をしたことはない、成績も優秀でスポーツもそこそこできる彼女。

 そして大抵の休みは自身のメンテナンスが入るため、あまり休みがないのである。

 そんな今日の休みはメンテナンス不要であるため、気分転換で外に出たはいいがやることがなく、半日ぼーっと過ごしていたというわけである。

 

「休みか、じゃあなんでこんなところで空をぼ~っと見てるわけ?」

「やることが……ない」

「ああそうかい。休みにやることが無いなら、のんびりするのが一番よ」

 

 ラグナはアウトドア派だが、やることがないと自宅で休養を取る。

 したいことをむりに探す必要もない、他人の休みをとやかく言うのもおせっかいというものだ。

 

「のんびり、のんびり……」

「その調子だ。じゃあな~」

 

 そう言って、ラグナはその場を去る。

 ラグナにアドバイスをもらったラムダは、言われるがままのんびりとまた空を見上げ始めた。

 数分、数分と経ってもラムダはそこを動こうとしない。

 

「………」

「う………」

 

 それを遠目でこそっと見ていたラグナ。

 本当にのんびりと動こうとしないラムダを見兼ね、ラムダの方へ戻ってきた。

 そして少し沈黙した後、耐えかねたラグナはラムダに声をかける。

 

「はぁ……俺も暇なんだわ、一緒に行くか?」

「……うん」

 

 せっかくの自由な休み。

 それを河川でのんびり過ごすのはもったいない、そして休日にやることもないのは可哀そうだとラグナは思った。

 自身も午後からやることがなかったため、ラムダに何か楽しい休日を教えよう。

 なんだかんだ優しいラグナは、めずらしくめんどくさがることもなくラムダと行動を開始する。

 

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 カグツチ中心部にて……。

 

「んで、どこ行きたい?」

「どこでもいい……特にやりたいこともない……」

「というか、楽しみ的なものも知らないんじゃないのか?」

「……うん」

 

 素直にこくりとうなずくラムダ。

 ほぼ毎日が勉強と手伝いでは、娯楽に気を使うことすらないようだ。

 悩んだラグナはまず、近くにあったペットショップに向かった。

 

「ここは?」

「ペットショップだ。俺も一度働いたことあるが、いい所だぞ」

 

 ラグナは昔ペットショップで働いていたことがある。

 森の奥深くにいる野犬と違って穏やかな動物が多いここは、ラグナのやさぐれた精神をも癒してくれる場所だった。

 ただ、いつぞやレイチェル校長が冷やかしにやってきて、無茶ぶりに答えた際に怒りに駆られやらかしてしまいクビになってしまった。

 その後は結婚相談所、中華料理屋などバイトを繰り返しながら教員免許を取得し、現在はブレイブルー学園の教師をやっているのである。

 

「ペット……動物……生き物……」

「うちの女子生徒なんかよくここに来てるみたいだけどな、かわいい犬や猫を見に……」

 

 ラムダは無表情で動物を見ている。

 犬を愛でたり猫を眺めたり、だがその表情に変化はない。

 何を思っているのかわからない、後半はただ動物を見ていた。

 

「生きている……この子たちは……」

「……やりにくい」

 

 ペットショップではラムダの心を開くことはできなかった。

 結局1時間ほどペットショップを満喫した後、二人はゲームセンターに行くことに。

 歩いて20分くらい、ラグナとラムダは小さなゲームセンターについた。

 中に入るとUFOキャッチャーがあり、上の階にはプリクラコーナー。

 更に上には音ゲーコーナーや、格ゲーコーナーがある。

 

「ここは……?」

「ゲームセンターだ。ココノエ先生ゲーム好きだけどお前はやらないのか?」

「やるけど、いつもココノエ先生が勝つ……」

 

 ココノエは自身のラボに大量のゲーム機を所有している。

 ラムダは乗り気ではないがいつも無理やりココノエ先生に付き合わされているのだという。

 とりあえず周りを見渡していても拉致があかないため、ラグナはラムダに何をしたいのかを問う。

 

「んで、なんかやりたいゲームはあるか?」

「じゃあ……これ」

 

 これとラムダが指をさしたのはUFOキャッチャーだった。

 フィギュアやぬいぐるみ等様々な景品が所狭しと設置されている。

 二人は一通りUFOキャッチャーを見あさる、そしてラムダは一つのキャッチャーに目を付けた。

 

「このひっかけて落とすやつか? こりゃちょっと難しそうだな」

 

 ラグナから見た限り、引っかけて徐々に入口に近付けるそれは中々にお金がかかりそうであった。

 だがラムダはまず百円入れ、そのUFOキャッチャーがどの挙動で動き、どこまで下がり、そしてアームの強度がどの程度なのかを全て目視して計算をする。

 なにやら早口でぶつぶつと独り言をつぶやいた後、何かがわかったように口を開いた。

 

「……使用金額は八百円での九回。位置計算オールクリアクリア、景品の物量およびアームの強度の計算をプログラム……。行動開始(ミッションスタート)」

 

 ラムダはそう言うと、的確な位置にアームを引っかけ、一気に景品を入口へ持っていく。

 自身による高度な演算能力を使ったUFOキャッチャー。その一部始終を見てラグナはただ口ごもる。

 そしてラムダの宣言通り九回目で景品は取れてしまった。

 

「……とれたよ」

「いや、うん。なんつうかその……つまらねぇな」

 

 ラムダは自身の右脳で高度な計算が出来てしまう天才少女。

 おそらくどのUFOキャッチャーも一度プレイすれば、アームの強度と景品の物量、そしてそれらを含めた上での最良の順序で景品が取れてしまうのであろう。

 興味本位であと三機のUFOキャッチャーを触らせたところ、案の定ラムダはこう回答した。

 

「一つ目の使用金額は五百円。二つ目は千二百円。三つ目は仕様上景品取得は不可能……」

「うん、やめよう。チートすぎるわ。興奮も楽しみもあったもんじゃないわ」

 

 その後、UFOキャッチャーは諦め二人は音ゲーや格ゲーをプレイした。

 しかしどれをやってもラムダは高度な計算と認識能力を駆使し、音ゲーでは最高難易度をパーフェクトで、格闘ゲームでは精密なアルゴリズムでラグナを返り討ちに。

 ラムダにゲームをやらせれば全てが人外レベルの計算が行われるためゲームにならないことがわかった。

 ちなみにココノエ先生相手に関しては全部わざと負けてあげてるとのこと。

 

-----------------------

 

 2時間後

 

「どうだ? 少しは息抜きになった。」

「うん、私こうやって楽しむこと……あまりないから」

 

 ラムダはぼそっと答えた。

 どうやらあれでも少しは気晴らしになったようだ。ラグナ自身は何が楽しかったのか理解はできないが。

 

「ふ~ん、ゲーム以外でココノエ先生と遊んだりしないのか?」

 

 道中、ラグナはそう質問をする。

 

「ゲーム以外だと……。※※※とか※※※とか※※※とか……」

「もういい!なにあの鬼畜メガネなにやってんだよ!!」

 

 けして文字には出来ないほど卑猥な内容の事を、ココノエ先生はたまに付き合わせているらしい。

 それを聞いたラグナは動揺し、もじもじし始める。

 

「結構……たのし」

「言わなくていいから!男してそれはムラムラする……」

 

 ラムダ自体はまんざらでもないらしい。

 これ以上聞くとラグナの性欲が上がるため、普通の話題に反らす。

 その際にラグナは、一つ気になることを見つけ、ラムダに質問をする。

 

「なあ? ココノエ先生で思ったんだけど、お前ってココノエ先生と繋がってたりする?」

「……うん」

 

 普段ラムダはココノエに事象干渉を受けているため、日常はモニタリングされている。

 ということは、ラグナの額から急に冷や汗が吹き出る。

 ラムダとココノエが繋がっていると言うことは、ラムダの視界に映るものは全てココノエにも見えていることになる。

 

「ってことは……今の俺たちの行動って全部……」

「……筒抜け」

 

 そう、これまでの行動はすべてココノエ先生に知られているのである。

 教師が生徒を連れて街を出歩く。そんなことを知られていると意識すれば黙ってはいられないラグナ。

 

「なんだとーーー! っていうかそれだもん自由に遊べないわな!!」

 

 確かに二十四時間監視されていれば好きなこともできやしない。

 プライバシーの侵害意外の何物でもない、一応ココノエはラムダの親代わりだがそれでもやりすぎ感が否めない。

 このままラムダと一緒に居続けるのはまずい。口の軽いココノエが変な噂を流すかもしれない。

 焦るラグナ、それを見てラムダは表情を変えずにこう口にした。

 

「ちなみに……いるよ」

「……は?」

「うしろ……」

 

 それを聞いて、ラグナの身体は硬直する。

 ラムダを通して一部始終を見られているだけでなく、つけられているというのだ。

 それを信じたくないラグナは、その一心で動揺しながら言葉を発する。

 

「……ま……まさか~ ラムダお前も冗談を言うもんd」

「楽しんでいるかラグナ先生?」

「いるーーーーー!!」

 

 ココノエは確かにそこにいた。

 バレてしまっては仕方がないと、観念して姿を現わしたココノエ。

 

「い……いつ……から?」

「お前がラムダをデートに誘って、ペットショップに向かうところから……か」

 

 どうやら河川で声をかけていた辺りから二人をウォッチングしていたらしい。

 

「ていうか、ストーキングとはますます趣味が悪いな」

「お前がラムダをあらぬ方向へ連れて行かんようにな」

「連れてくか! てかお前は娘が心配な母親か!? 過保護か? 過保護なのか!?」

「似たようなものだ。実質あいつには母親と呼べるものはいないしな」

「それは……そうだが」

 

 ココノエの言葉にラグナは複雑な気分になった。

 ラムダは幼少時イカルガの道端に捨てられていた捨て子だった。それをテイガーが見つけココノエに引き取られた。

 引き取られた当初のラムダは極度の対人恐怖症であり、どう元気づけても抵抗し暴れ、ココノエ達を困らせたという。

 今では他人に対してそれなりに会話を出来るようになったが、様々な経緯を得た上に常人としての感情をほぼ失ってしまっのである。

 

「とりあえずまだ時間があるし、アッチな店に連れて行かぬのなら遊んでてもいいぞ」

「だから行かないって! てかお前に見張られてるんじゃ行動しにくいわ!!」

「そうか、じゃあ遠くでモニタリングを……」

「同じだ!とりあえずここで解散だ。十分楽しんだだろうし……」

 

 二時間ほど、ラグナとラムダは二人で休日を満喫した。

 ラムダもそれなりに楽しんでいるはず、これ以上教師が生徒を巻き込むのはよくない。

 ましてや見張られていてはラグナとしては恥ずかしい。あれらを見られていると考えるだけでも悶々する。

 じゃあな、とラグナが二人の元を後にしようとした時であった。ラムダは去りゆくラグナを追いかけ。

 そして、強く彼の服を握りしめた。

 

「ラム……ダ?」

「………」

 

 ラムダはラグナ先生の腕にしがみつく。

 まるで離れたくないかのような反応だった。もっと一緒に遊びたいと、そう主張しているようにも思えた。

 そんな彼女を突っぱねてでも、ラグナはこの場を去れるだろうか。

 否、ラグナにはそれができなかった。ラグナは困り顔で呟く。

 

「……はぁ、こういうの苦手なんだよな」

「ほう、ラムダがそんな反応をするとは、めずらしいこともあるもんだな」

「確かにな、いっつもこいつ無口で無表情だからな」

 

 ラムダがここまで意思を主張するのは非常に珍しい。

 そんなラムダを見て、それはラムダの教え子としての思考か。

 それとも親としての考えか、少し黙った後、ココノエはラグナに頼む様に。

 

「……いい機会だ。仕方ない、モニタリングはやめるからもう少しそいつと遊んでやってくれ」

「あ……ああ」

「くれぐれもラ○ホとか……」

「行かねえっつってんだろうが!!」

 

 むしろそこへ連れて行けばラグナの教師人生、それどころか自分の人生が終わるのは明確である。

 その後ラグナはラムダを連れ、カラオケやカフェなどいろんな場所に行った。

 だがラムダは、相変わらず無表情であった。

 が、心は表情だけでは人の心の内はわからないもの。

 ラムダは間違いなく、心の底から楽しんでいた。

 いつも以上に彼女は生き生きとしていた。他者と娯楽を楽しみ、充実した休日を過ごしたと心から言えた。

 その証拠に時の流れは速く。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった。

 

「もう5時か……そろそろ日が暮れてきたな」

「……うん」

「今日は楽しかったか?」

「……うん」

 

 ラグナは色々聞くが、ラムダはうんとしか言わない。

 やはり表情も変わらない。だがきっと楽しかったのだろう。ラグナはそう信じたかった。

 

「本当か?まあ楽しめたんならいいわ」

「ラグナ先生。今日はありがとう……ございます」

 

 その時だ。ラムダは感謝の言葉を言った際、変わることのなかった表情が少し変化した。

 その表情は少しやわらかなものだった。とびきりとはいかないもの、そこには人としての笑顔が確かにあった。

 ラグナの目には、そう見えた気がした。

 その笑顔に、全てを救われたような気がした。思わずラグナもふっと笑う。

 

「じゃあな、明日学校でな」

 

-----------------------

 

 翌日学校にて。

 そこには友達に囲まれ、静かな笑顔を見せるラムダがいた。

 彼女はなにかを得たのか。それとも元から持っていたものなのかはわからない。

 だが今の彼女は昔とは違う。もう彼女はたくさんのものを持っている。

 全てに拒絶をする彼女はもうこの世にいない。そして彼女を捨てる者もいないだろう。

 Λ-11は今確かに幸せと、心から言える人生を送っているのだろう。

 

「なんだ……ちゃんと笑えるじゃねえか」

「あ、ラグナ先生……」

 

 名前を呼ばれたラグナは、口には出さず表情だけで答える。

 ラムダはそのラグナに、心からの感謝を述べる。

 

「昨日は……楽しかった」

 

 その感謝に対して、ラグナは静かに手を振った。

 そしてその顔には、達成感が漏れ出していた。

 本当によかった。よかったなと……何度も心の中で呟き続けた。

 そしてこの一部始終を見ていたココノエも、自然と笑顔をこぼしていた

 

「……ラグナ先生、感謝するぞ」

「どうしたココノエ? うれしいことでもあったのか?」

「ちょっとな、さてまた忙しくなるぞテイガー!」

「いつにもまして張り切ってるな、やれやれ……」

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