3年B組ハーデス先生~ブレイブルー学園パロ~   作:トッシー00

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第12話です。


第12話:容疑者シシガミ・バング

 ブレイブルー学園の職員室……。

 なにやらライチが困り果てた顔で机に座っていた。

 ため息が止まらず、どよんと落ち込んでいる。

 

「おう、どうしたんだライチ先生?」

 

 ラグナがそんなライチを見かねて、話しかけてみる。

 するとライチは真剣な顔で、ラグナにこんな相談を持ちかけてきた。

 

「実は……下着を盗まれたみたいなのよ、昨日私が寝てる間に」

「は? 下着? なんだよ今どき下着泥棒なんていんのかよ」

 

 相談の内容は下着泥棒にあったことだった。

 世の中には女性の下着を見つめてははぁはぁしている輩がいる。ライチほどの美人なら狙う男も数多いだろう。

 その話はすぐさま他の先生にも伝わり、みんなで犯人を見つけようという話になった。

 

「まったく、女性の下着に手を出すなんて、下衆の極みね」

 

 と怒りを毒舌にして現わすのはレイチェル校長。

 淑女の代表ともいうべき彼女はその行いが許せないようだ。

 

「見つけたら即悪滅だな、我ら同僚を困らせた罪は重いぞ」

「そうだな、見つけたら即GETBだな」

 

 ハクメン先生とテイガー先生も、悪質なその犯行に対して素直に許せないでいた。

 ライチを狙う悪質な下着泥棒、目的は何か、その犯人はどういう思いで犯行に至ったのか。

 ライチは寝ていたので犯人に心当たりはない、証拠なども一切家にはなく、捕まえるのは限りなく困難だろう。

 みんなが頭を悩ます。だが一人だけ、頭を抱えることもなく、すでに解決しているといった涼しい顔をしている者が一人いた。

 

「てかよ、もうこの犯人わかったようなもんじゃね?」

 

 そう、ラグナである。

 ラグナはすでに、この事件の真相を解き明かしつつあった。

 ライチの下着を盗んだ。たったそれだけで、ラグナはスラリと推理して見せたのだった。

 

「ほう、思い当たる節があるのか?」

 

 とハクメン先生がラグナに問う。

 聞かれたラグナは勿体ぶったような顔をして、なにやらすぐさま支度をし始めた。

 

「とりあえず今日の夜そいつの家に行ってはかせてくるわ。タオカカ、ノエル、ついてこい!」

「ニャス!」

「はい……ってなんで私まで!?」

 

 なぜかその場にいたタオカカとノエルを強引に誘い、作戦を決行する。

 

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 その夜……。

 ラグナ達三人はその犯人の住んでいる家へと向かった。

 ラグナがその人物の家を知っている。すなわち犯人は身内の誰かということである。

 カグツチから少し離れ、場所は浪人街へ。

 そこは和を尊重した場所で、主にイカルガ出身の人たちが住まう場所だ。

 

「タオカカ、ノエル、準備は万全か」

「了解ニャス! タオはいつでも準備おっけ~ニャス!」

「こちらも大丈夫です」

 

 抜き足差し足忍び足。

 相手は結構手ごわい相手なので、ラグナたちは慎重に行動を開始する。

 そして目的地へ、浪人街の中でもひと際大きな家。

 立派な一軒家で、入るとなんとも男らしいというか、むさくるしい匂いが湧きたつ。

 ターゲットの家に潜入し、まずラグナたちが行ったことはというと。

 

「タオカカは周りの捜索、ノエルは冷蔵庫を物色!」

「ニャス!」

「はい!」

 

 タオカカは家の隅から隅へと見回り、ノエルは冷蔵庫から材料を取り出す。

 ラグナはいつのまにかエプロン姿となり、料理の準備をしている。

 

「よし、こんくらいあれば大丈夫だな。じゃあ俺は腹ごしらえのまかないを作るから、ノエルは別で何か作っておいてくれ。それがこの作戦の最終兵器となる」

「なんか聞き捨てならない一言が飛んで来たような気がしますが……わかりました」

 

 と、人様の家にも関わらずラグナとノエルは別々に料理を開始する。

 ラグナはエプロン姿にガスマスクとなんとも言えない格好である。たぶん隣でノエルが料理という名の兵器を作っているからだろう。

 タオカカはそのまま放置、料理の最中に手を出されるのはラグナ的には耐えられない。

 そして約十分ほどして、ラグナはまかないのチャーハンを、ノエルは得体のしれない何かを作った。

 ラグナはそのチャーハンを大皿へ移し、ノエルの何かは厳重な重箱に入れ、鍵をかけてその場に置く。

 

「よし、料理完成! では……いただきま~す!」

「いただきニャス!」

「いただきます。わ~先生の料理美味しそう!!」

「おいしそうでござるな~」

 

 腹が減っては戦にならない。

 ラグナ、ノエル、タオカカ、バングの四人はまず、ラグナの作ったチャーハンを食べる。

 ラグナが作ったチャーハンは普通においしく、その場にいた全員が絶賛していた。

 

「……ってお主ら拙者の家でなにやってるでござるかぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 と、チャーハンを食べていた最中。

 いつのまにかいたバングの全力のツッコミが飛び散った。ついでに頬張っていたチャーハンまで飛び散った。

 そう、ラグナ達が向かった先はバングの住んでいる家であった。

 そして勝手に冷蔵庫を物色したあげく、勝手に料理を開始してしまったのだった。

 そんなラグナたちは、冷静にバングの方を振り返った。

 

「なにって、腹が減っては戦ができぬっていうだろう」

「いやいや、確かにそうでござるが何を拙者の家に勝手に入り拙者の冷蔵庫を勝手に物色して、これはいったいなんでござるか!?」

 

 バングが混乱しているのも無理はない。

 いったいどうしてこんなことをしているのか、バングからすれば何が何だかわからない。

 まぁまぁとラグナはバングを落ち着かせ、そしてなにやら腰から何かを取りだした。

 

「まぁ細かいことは気にすんなや、ってことで犯人逮捕」

「は? 逮捕……?」

 

 ラグナが取りだしたのは頑丈な手錠だった。

 何が何やらわからぬ間にバングの腕にその手錠がはめられる。

 そして何食わぬ顔で連行しようとするラグナを見て、バングは我に返る。

 

「いやいやちょっと! 拙者が何をしたでござるか!? 拙者何もしてないでござるよ!!」

「はんにんは、み~んなそういうニャスよ」

 

 タオカカの冷たい一言にバングは尚更否定する。

 状況説明を大声で求めるバングに、ラグナは耳を押さえる。

 あまりにもバングがうるさいので、仕方なさそうに説明する。

 

「とぼけんじゃねえよ、昨日ライチ先生の下着が何者かに盗まれたんだよ」

 

 ラグナはライチが下着泥棒にあったことをバングに話す。

 するとバングはその出来事に対し、怒りの表情を浮かべた。

 

「なぬ!? ライチ殿の下着が盗まれたとな!? どこの誰でござるかその悪党は、成敗してやるでござる!!」

「だから、そこにいるじゃないですか」

 

 と、叫ぶバングを指差しノエルが答える。

 バングは「ほへ?」と負抜けた顔をする。

 一連のやり取りが終わったのち、さてととラグナ達はまた、何事もなかったかのようにバングを連行し始めた。

 

「……って拙者!? 拙者はそんなことしないでござるよ!!」

 

 いやいやおかしいと、バングは必死に抵抗する。

 バングには覚えがないし、下着泥棒事件の話もついさっき聞いたばかりだ。

 だがラグナからすれば、犯人はバングしかあり得ない。

 これはライチが下着を盗まれたと、そう相談を持ちかけた時からバングの顔が脳内によぎった。

 直観と推測。その二つをラグナはバングに付きつける。

 

「ライチ先生のことをいつもストーカーしてて、ライチ先生のことが好きで、下着を盗みそうなムサイ暴漢って言ったらもうお前しかいないだろうが」

「ってちょっとーーー! それは決めつけがすぎるでござる!てかストーカーなんてしてないでござるよ!!」

 

 あまりにもひどい言われようである。

 全力で否定するバングに、ラグナは冷ややかな目でバングを見てこう言った。

 

「自分では気付かないもんなんだよね、ストーカーってさ、守ってやってるって思ってるんだから」

「だから違うでござるーーーーーーーーーー!!」

 

 等々バングの目にも涙が浮かんできた。

 本当に犯人はバングなのか。ここまできたら犯人は別な人物な気もしてきたが、ラグナの疑いは晴れることがない。

 しびれを切らしたラグナは一切容赦なく、バングに詰め寄る。

 

「しゃあねぇな、これだけは使いたくなかったが……」

 

 そう言ってラグナは、厳重にロックされてる重箱から黒い物体を取り出し、バングに付きつけた。

 その黒い何かから湧きたつ死臭。禍々しい闇に覆われたそれは、バングの圧倒的な熱き魂をも滲ませるほどの。

 

「なぬ!? なんでござるかそれは!? 眼にしみるでござる!!」

「ノエルが先ほど開発した料理という名の未元物質(ダークマター)だ。これを食いたくなければいい加減口を割れ」

 

 そう、それは先ほどノエルが料理していた卵焼きであった。

 どうして卵焼きを作っただけでこんなことになるのか、ノエルの料理の腕は未だに未知数。

 後ろでノエルがこめかみをぴくぴくさせていたが、ラグナはあえてノエルの方を振り向かなかった。

 バングはそれでも否定する。やってもいないのに見かけだけで犯人にされてはたまったものではない

 というか、仮にこのまま犯人扱いされれば、ライチ先生に完全に嫌われてしまう。

 

「拙者はやっていない! 漢シシガミ・バング!神と殿下とライチ殿に誓って下着泥棒などやっていないでござる!!」

「しゃあねぇな、タオカカ!バングを抑えろ!今から未元物質(ダークマター)を使用する!危険極まりないのでガスマスクの装着も許可する!!」

「了解ニャス!!」

 

 後ろのノエルの瞳が徐々に蒼く染まっていっているが、ラグナはまったくノエルの方を振り向かなかった。

 バングを押さえつけるタオカカ、もがくが抜け出すことはできない。

 そしてラグナはヒヒイロカネで出来た箸を片手に、ダークマターをつまむ。

 つまんだ先からじゅ……と、焦げた音が彼らの耳に響き渡る。

 だがバングはそれでも否定する。やっていないものはやっていない、そして何よりライチに嫌われる方がもっと怖い、恐ろしい。

 バングは覚悟を決めたのか、自ら眼を強く閉じ、自ら口を開ける。

 漢バング、哀れバング、そしてさよならバング。おまえはいいやつだったよと、ラグナはバングのその覚悟を受け入れた。

 

「いいだろう! これで拙者の疑いが晴れるなら……さあかかってくるでござるーーー!!」

 

 バングはみずからその物質を口にした。そして……。

 

「ほ……星が見えるでござる……」

 

 バングは自らの信念を貫き散った。

 自らの力で立てぬほどの凶悪なダメージ。それを追ってもなお、自分はやっていないと無実を訴え続けた。

 これにはさすがのラグナとタオカカも心打たれ、バングへの疑いを晴らす。

 

「せんせい、ムサイ人は多分犯人じゃないニャスよ」

「そうだな、あの未元物質(ダークマター)を自ら口にする奴が犯人であるはずがない」

 

 そうだ。あの何かを自分から食べようとする人が、そんな勇気溢れる人が犯人なわけがないのである。

 

「さてと帰るかタオカカ、帰りなんか食ってくか?」

「ニャス~!! タオは肉まんがいいニャス~!!」

 

 と、二人して何事もなかったかのように、立ち去ろうとした時である。

 

「……おい」

 

 ノエルは重くのしかかる声で二人を止める。

 

「ノ……ノエ……ル?」

「どうしました先生? 話すならば目を見て話してください」

「ノエル、今のお前の瞳の色は……何色だ?」

「……自分の目で確認してみたら……いかがですか?」

 

 さすがに限界だとラグナとタオカカはノエルの方を振り返ると、ノエルの瞳の色は完全なる蒼色。

 恐怖の笑顔を浮かべるミュー・トゥエルブが、そこにいたという……。

 

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 次の日……。

 

「ごめ~んみんな~、下着の件ね、あれ私が一人酒で酔って下着をかぶってばらまいていたみたいなの、探したら全部あったわ~」

 

 聞くと下着泥棒など最初からおらず、全部ライチ個人のせいであった。

 結局ラグナがやったことは全て無駄であり、おまけに大けがまで負った始末。

 ライチが必死に治療をしてくれたが、包帯ぐるぐる巻きで保健室で、タオと一緒にいた。

 

「……ラグナ先生、タオ」

 

 二人の様子を見に、青白い表情でバングが保健室を訪ねる。

 

「はっはっはバング先生、おまえは漢のなかの漢だな~」

「ニャスな~」

「……キレてもいいでござるか?」

 

 こうして、下着泥棒事件は何事もなく終わりを迎えたのであった。

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